畜産動物の福祉 アニマルウェルフェア

アニマルウェルフェア(動物福祉)―日本の状況

2017/03/01

日本の畜産動物福祉への取組状況

日本には現在、畜産動物の飼育方法について、実行力のある法規制はありません。
諸外国が禁止しているバタリーケージや、妊娠豚ストールも、日本では一般的に使用されているという状況です。
 
しかし、海外に後れをとってはいますが、日本においても少しずつ畜産動物福祉への取り組みは進められています。
 
 
国レベルでの取り組み
2011年には、畜種ごとの「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針が公表されています。
しかし残念ながら、年月をかけて策定されたこの指針は、業界紙などに掲載はされましたが、2014年まで各自治体への周知が行われていませんでした。そのため畜産農家と直接つながりがあるにもかかわらず「アニマルウェルフェア」という言葉すら知らない行政の担当者もおり、各自治体の担当部署にこの指針を周知していただくよう農水省に求めていたところ、2014年にようやく、農林水産省のサイトに「アニマルウェルフェアについて」というページが追加されたのを機に、各自治体への「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」の通達がなされました。
*ただし、アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針は、拘束力のあるものではありません。
 
農林水産省のサイト「アニマルウェルフェアについて」
 
 
また、2014年6月には「アニマルウェルフェアの向上を目指して」というパンフレットが作成されています。
このパンフレットには、動物の正常行動を促すための方法などが掲載されています。
豚なら豚房に鎖やボールを設置してあげる、採卵用鶏なら従来型のバタリーケージに止まり木と巣箱兼砂浴び場を設置する方法などが、写真入りで掲載されており、「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」よりも、わかりやすくとっつきやすいものになっています。

2016年6月
ブロイラー、肉用牛、乳用牛の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」が、OIE(世界動物保健機関)の「アニマルウェルフェアと肉用鶏生産方式」「アニマルウェルフェアと肉用牛生産システム」「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」の基準に対応するものに変更されました。さらに飼養管理指針には、生産者自らがアニマルウェルフェアの取り組み状況を自己点検するためのチェックリストも追加されました。
http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/index.html

2016年9月30日
農林水産省から各県に対し、生産者自らがアニマルウェルフェアの取り組みを進めるよう指導を要請。
「農林水産省生産局畜産部は、9月30日に農水省講堂で開催した平成28年度第1回全国畜産課長会議で、28年度補正予算や29年度当初予算概算要求の概要、各課の主な施策などを説明した。この中で、畜産部の畜産振興課から各県に対し、「アニマルウェルフェアに関する取り組みの自己点検の取り組み改善を進めるよう指導してほしい」と要望した。
わが国におけるアニマルウェルフェアの推進では、平成21年から(公社)畜産技術協会を中心に、畜種ごとの「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」を作成。ただ、26年度に実施したアンケート調査で、同指針の生産現場への浸透が不十分であったことから、今年度は指針の改定とあわせて生産者自らがアニマルウェルフェアの取り組み状況を自己点検するためのチェックリストを作成し、農水省も積極的な活用への指導を要請したもの。」
(鶏鳴新聞「畜種ごとにアニマルウェルフェアのチェックリスト作成 自己点検での活用へ 畜産技術協会」より引用)

2017年3月24日
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は選手村の食事など大会で使用する農産物と畜産物の調達基準を決定した。畜産物は農産物の要件に加え、快適性に配慮した家畜の飼養管理も要件に入った。アニマルウェルフェアの考え方に対応していることが必要になる。(全国農業新聞2017.3.31より引用)
 
国会
2016年3月10日(木曜日)
参議院農林水産委員会で、小川勝也議員(民主党・新緑風会)が畜産動物のアニマルウェルフェアについて言及しました。
小川議員は冒頭「私は日本は先進国だとならってきて祖国に誇りを持っていた。しかし近年日本が世界に劣っているなあと思う分野がいくつかある。その中でも一番劣っているのがアニマルウェルフェアの概念だと思います」と述べ、日本の畜産動物福祉の評価が、中国やフィリピンよりも劣っていることを明らかにしました。そして、アニマルウェルフェアの意識を高めることを求めました。
http://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=440

2016年10月18日 (火)
TPP特別委員会で松浪健太議員が(日本維新の会)からアニマルウェルフェアについての発言がありました。
ラクトパミンやホルモン剤のが使用された畜産物が日本で流通していることについて、「アニマルウェルフェアという言葉があるけど、こういうやり方は日本には合わない」「一種の動物虐待だと思う」と発言。農水省の示す五つの自由、海外の基準を提示し、こういうやり方は違うと思う、「アニマルウェルフェアを含めたあらゆる角度からやれば世界が健康になる。対外貿易戦略はそのように取り組んでいくべき。」と発言しました。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=46082&media_type=fp
 
都道府県の取り組み
2016年4月に公表された茨城県養豚振興計画では、豚の飼養衛生管理の高度化に関する事項として、群管理システムの推進が挙げられている。(茨城県は豚の飼養戸数が全国第3位)
『効率的・省力的に飼養管理を行うために,リキッドフィーディングシステム※や群管理システム※※など高度な技術導入を推進する。
※ リキッドフィーディングシステム:液状化した飼料を各豚房に給餌するシステム。
※※ 群管理システム:繁殖豚を一群で管理するシステムで,従来のストールに比べ,豚のストレスを軽減できる。飼料給与量やワクチネーションなどは,コンピュータで管理する。』

 
民間レベルでの取り組み
2016年5月28日
AWFC・JAPAN(Animal Welfare Food Community Japan)第一回設立総会が開かれました。
「このコミュニティは会員がAW畜産を実践する事で、 健康な家畜から安全で品質のよい食品を供給する事業を実現する。また 高い家畜福祉価値観をもつ同志の協働によって、相互助言し合い、各個別事業の補完をし合い日本国内においてのAWの認知度向上と一般消費者の理解を深めることを目的とする。」(第一回総会案内「活動目標」より)


2016年6月18日
『家畜にやさしい飼育 認証へ』
家畜にできるだけストレスを与えない飼い方の普及を目指して「アニマルウェルフェア畜産協会」が設立されました。
18日の設立総会で一定基準を満たした家畜の飼い方をしている生産者を協会として特別に認証する制度を始めることが報告されました。
協会は、2016年9月をメドに認証されたことを示すマークを作成し、早ければ来年の春には生産者への認証を始めたいとしています。
http://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20160618/3161131.html

2016年9月29日
動物福祉研究会第一回シンポジウムが行われました。傍聴してきましたが、第一回にもかかわらず5,60人の方が参加しており、関心の高さが伺われました。
当日のレジュメによると
「動物福祉研究会について:動物福祉研究会は動物福祉の学術研究会です。(中略)この研究会では、多様な専門分野の研究者が集い、多角的な情報共有と議論を行うことで、家畜福祉を総合的に理解し、学問分野として総合的に位置づけるとともに、関係者の有機的な組織化を行うことを目的としています。」
とのことです。
*この研究会の「動物福祉」は、畜産動物に限定されるものではありません。
動物福祉研究会フェイスブックページ
https://www.facebook.com/animal.welfare.science/
 
生産者の意識
■アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針の認知度
(畜産技術協会 2014年飼養実態アンケート調査報告書
肉用牛 26.7%
乳用牛 22.2%
採卵鶏 59.5%
ブロイラー 35.7%
ブタ 51.7%

■養豚協会の調査
2015年度の調査は、2009年度養豚基礎調査以来6年ぶりに本格的な養豚生産者に対する調査が実施されています。
2015年度は「アニマルウェルフェアの取組み」についても調査されています。
その結果、は次のようなものでした。
 

農場におけるアニマルウェルフェアの取組状況について、「特に考えていない」54.3%と最も高く、次いで「十分理解していないので情報が欲しい」25.2%となっている。「飼養管理に考え方を採用」、「具体的に検討中」がそれぞれ 10.2%と全体の約 2 割となっている。
(養豚農業実態調査全国集計結果 http://www.jppa.biz/pdf/2016_pdf/2016-actual_investigation-result.pdf
 

日本では妊娠ストールなど諸外国で禁止されている飼育方法が行われているという状況です。
にもかかわらず「特に考えていない」が54.3%というのはやはりまだまだというところかもしれません。
 
消費者の意識
2016年にアニマルライツセンター主体で行った「畜産動物に関する認知度調査」では妊娠ストールや体の一部の無麻酔切断、繋ぎ飼いなど畜産動物の飼育方法に関する認知度調査を行いましたが、それぞれの項目で「知っている」と回答した人は4~13%と非常に低く「アニマルウェルフェア」という言葉さえその認知は4.9%にとどまりました。
その後2017年に、再度同じ内容の調査を行った結果、「平飼卵、あるいは放牧卵がスーパーなどで販売されていることを知っていますか?」「「アニマルウェルフェア」あるいは「動物福祉」という言葉を知っていますか?」という2問を除き、他の7問では認知度*が上がっていました。もっとも認知度が上がっていたのが「卵用の鶏の多くが、バタリーケージという、一羽あたり22センチ×22センチほどの金網の中で飼育されていることを知っていますか?」という質問で、2016年に比べて4.7%認知度が上がっていました。
しかしどの質問も1~5%程度の差があるだけなので、有意な差とは言えなさそうです。

一方で2014年に同じくアニマルライツセンター主体で「畜産動物に関する消費者意識・行動調査」を行っています。この調査では畜産の現状を示し、こういった状況をどう考えるかという質問を行っています。結果、約8割の人が、畜産動物が放牧などで自然な行動ができることを望んでいる事が分かりました。また麻酔なしで体の一部を切断する行為もそのままでよいと答えた人は1~2割にとどまり、多くの人が現状の飼育方法に問題意識を持ったことがわかりました。アニマルウェルフェアが広がる下地は日本にも十分あるということをこの調査結果は表しているといえます。

こういった中、消費者レベルでアニマルウェルフェアを広めようという動きがおこっています。

消費者庁「倫理的消費」調査研究会では、アニマルウェルフェアが議題に。
http://www.arcj.org/lifestyle/00/id=896

2016年10月2日 「エシカル消費と動物への配慮を考えるシンポジウム」
http://www.arcj.org/information/00/id=960
このシンポジウムでは企業も含めた250名もの来場者が集まり、関心の高さが伺われました。

高校生向け消費者教育パンフレットにアニマルウェルフェアが。
東京法規出版「「つくろう! 消費者が主役の社会」全20ページ。監修は妊娠ストール廃止運動に賛同する日本女子大学の細川幸一教授です。
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ゴミの原料や省エネ、食品ロスの問題と並んで、アニマルウェルフェアも掲載されています。
 

知っていますか?「アニマルウェルフェア」
 昔、食肉は大変高価でした。しかし、今は値段が下がり、安くておいしい肉が食べられるようになりました。低価格でたくさんの量を食べられる。食べ放題などもあります。しかしその食肉は牛や豚や鳥など動物の命をもらったものです。私たちはそうした動物たちのことも考えて日ごろから消費を行っているでしょうか?
 実は、消費者が安い肉を大量に求めるあまり、家畜が劣悪な環境で、動物らしい行動を抑制されながら飼育されているという現実があります。そうした家畜の苦悩を最小限に抑えるための配慮をしようというのが、アニマル・ウェルフェア(動物福祉・家畜府福祉)の考え方です。家畜が快適な環境で健康に飼育されるための取り組みが中心ですが、日本ではあまり進んでいません。
 消費するときはそうした背景も考え、大切に、適量を消費するよう心がけましょう

 
その他国内でのアニマルウェルフェア関連ニュース
2016年11月23日 
採卵鶏飼養羽数約21万羽のうち、約5万6000羽を平飼いしている会田共同養鶏組合が内閣総理大臣賞に。
http://www.keimei.ne.jp/article/20161105n1.html
後については、 「鶏舎の建て替えや平飼い飼育の規模拡大、さらなる耕畜連携と飼料用米の利活用による水田事業の活性化、食料自給率の向上など、〝消費地に近い生産者〟の利点を生かした安全で高品質な鶏卵生産を目指している」としている。

2016年11月24日
NHKテレビ「食で支える東京五輪」で、東京五輪の原料調達基準の一つとして動物福祉が放送されました。


(NHKサイトより下記引用)
Q.そのための対応が必要だと言うことですね
たとえば農業については、農薬の使用回数を減らしたり、環境への影響を最小限にする散布方法を考えたもの。また化学肥料については、土壌診断を行って余分な化学肥料を使用しないで、栽培された農産物を選ぶべきだとか、様々な意見が出ています。
大変なのは畜産です。畜産の分野では動物にとっても快適な飼育環境の確保が求められているのです。

Q.動物にとって快適な飼育環境ですか?
例えばニワトリですが、日本では効率性を考えて狭いケージで飼われるのが一般的です。ところがニワトリは朝起きたら羽ばたきをし、毛繕いをし、砂浴びをするきれい好きの動物です。ゲージ飼いであればそうしたことはできません。
また豚はけんかをして、お互いが傷つかないように、生まれてすぐに歯を切断しますし、尻尾もすぐに切り落とします。こうしたことは、動物のためではありますが、一方で動物が意識ある存在であることを理解していないという見方もあります。
そしてたとえ短い一生であっても、動物の生態・欲求を妨げることのない環境で適正に扱うことを求めているのです。そうした取り組みが持続可能な社会をつくるという考え方です。

国際オリンピック委員会IOCは近年、「スポーツ」「文化」に加え、「環境」をオリンピック精神の第三の柱とすることを宣言しています。大会運営を通じて、持続可能な社会を次世代に残すために畜産動物福祉の考えに基づいた原料調達が求められています。
 

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