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農林水産省は、2020年6月12日、放牧中止を削除した新たな飼養衛生管理基準案を提示した。

6月12日の食料・農業村政策審議会 第44回家畜衛生部会で持ち回り審議されるこの案では、パブリックコメントの際に含まれていた放牧中止規制が消えた。

パブリックコメントでは多くの放牧中止に反対する声、アニマルウェルフェアに配慮してほしいという声が上がったと報告されている。また、中には「当該農場は、周辺農場の理解を得るためにも、舎外飼養に係る防疫対策の取組について、情報提供することとする。」と書かれており、閉じ込め飼育の農家からの偏見があることが伺える。正直、市民からしてみると舎飼のほうがなにが行われているか全くわからず、情報もクローズされており、情報提供願いたいものだ。

農林水産省に確認したところ、大臣指定地域であっても放牧ができなくなる事態はなくなり、かわりに野鳥を誘引してしまう餌場に防鳥ネットを張ることと夜間などの人がいない時間などに避難できる場所を用意することが規定されている。おそらくこのままの案で答申、6月中に公布になるものと思われる。

変更になった内容

放牧制限の準備=畜舎準備から避難設備の準備へ変更

「放牧制限の準備」は変わらず記載されている。法34条に放牧制限の規定があることを追記し、予防線を張っているようだ。しかし、元の案にあった【家畜を飼養できる畜舎の確保】は、【家畜を収容できる避難用の設備】となり、明らかに一時的な避難のみを想定した書きぶりに変更された。

9 法第三十四条の規定に基づく放牧の停止又は制限があった場合に備え、家畜を収容できる避難用の設備の確保又は出荷若しくは移動のための準備措置を講ずること。

この規定により、来年の4月までに放牧農家は全ての豚が健康を害すことなく十分に収容できる大きさの避難用の設備を設ける必要がある。

農家にとっては幸い、先日の堀越啓仁衆議院議員が窮状を訴えた農水委員会での質問に対して、江藤大臣が国が半分、自治体が半分で農家負担ゼロと発言している。国民としては税金の使いみちであるため、もっと審議していただきたいが、アニマルウェルフェア的にこの避難施設は使える可能性がある。例えば豚たちは台風に襲われた時や弱ったときなどに避難する場所を得られる可能性がある。放牧農家ならではの、アニマルウェルフェアに配慮された、快適で、生態に反しない設備を作っていただきたいと思う。

放牧等、屋外飼育の中止は撤回

最も大きな課題であった【大臣指定地域においては、放牧場、パドック等における舎外飼養を中止】という一文はなくなった。

代わりに次の項目に、

大臣指定地域におい ては、放牧場について給餌場所における防鳥ネットの設置及び家畜を収容で きる避難用の設備の確保を行うこと。

との一文が加わった。これは前述の通り、野鳥(カラスなど)を誘引してしまう給餌場所に防鳥ネットを設置することと、人の目が行き届かず野生動物侵入リスクが高まるような場合を想定して豚を避難させる設備を確保するという内容だ。避難設備の確保と9の避難設備の準備がどう違うかはいまいちはっきりしないが、いずれにせよ、少なくとも日中、放牧し続けることは可能だ。

ただし、畜舎間の移動時、普通に外を歩かせることは出来ない。工場畜産の動物にとって、唯一空の下の大地を歩ける瞬間だったがそれは奪われた。消毒してあればいいのではないかと思うが、いろいろな対策を行っても日本では結局ワクチン以外で豚熱(豚コレラ)を防ぐことは出来なかったため、何か対策を取らねばならないと考えているのだろう。

しかし、豚舎内で飼育している動物の弱い免疫においては、いかなる疫病も防ぐ事は難しかろう。

なお、飼養衛生管理基準(牛、水牛、鹿、めん羊、山羊)においては、これら項目はスッキリ削除された。ただし口蹄疫が発生した際には直ちに法34条に基づき放牧が制限される見込みであり、十分な広さの避難場所を早急に整備しておく必要がある。屋内飼育に切り替えればあっというまに不衛生な状態になることは間違いがなく、日頃から制御可能な範囲に頭数を制限しておくべきだろう。

変わらなかった内容

密飼いは密飼いのまま

【12 家畜の健康に悪影響を及ぼすような過密な状態で家畜を飼養しないこと。】

この規定には変更は加えられなかった。衛生面を保つためにはとても重要な部分なのに・・・過密になればどうやったって動物は糞尿まみれになるし掃除も行き届かなくなるし(そもそも肥育豚だとほぼおこなわないが)、糞尿の発酵は間に合わなくなる。糞尿の中であなたは眠る状態で健康的だと感じるか?私だったら糞を踏んでしまうのだって嫌だし、糞を踏みまわらないといけない状態で健康が保てるとは考えられない。

密飼いの基準すらもあるかないかあやふやで、かつその基準が低ければ、意味がない。結局の所、密飼いは日本ではほとんど指導の対象になっていない。

【家畜の健康】というのはなんなのか。

一般の消費者が考える健康と、集約的畜産に携わる人々または農水省の考える健康は、全く別物だ。

ここで書かれている【家畜の健康】とは、出荷までなんとか死なずに生きることができる状態だ。肉用の豚であれば寿命の40分の1の期間、肉豚を生むために飼育される母豚であれば寿命の6分の1の期間、死なないこと、これが彼らの考える健康だ。

6ヶ月齢の肉用の豚の体内は病気だらけで、食用豚の約65%強(都道府県により65%~83%)である状態を健康と呼んでいるのだ。

あなただったら、膿毒症になったら健康と呼ぶだろうか、全身が炎症に侵された状態を健康と呼ぶだろうか。

豚が豚を食べる可能性もそのまま

EUなどでは禁止されている項目だが、日本ではそのままとなった。【肉を扱う事業所等から排出された食品循環資源を原材料とする飼料を給与】することは許可されたままだ。豚熱、アフリカ豚熱の2大感染経路は、1つが感染した豚やイノシシからの直接感染、もう1つが感染した豚やイノシシの肉からの感染だ。肉の中では相当長くウイルスが生存し続けることが分かっている。冷凍してもだめだ。高温で長く加熱すればよいが、リスクを減らすというのなら、この部分を禁止しないのはおかしい。

そもそも、豚に豚を食べさせてしまう可能性を残すべきではない。人が人(どんなに加工されていても)を食べるべきではないことと同じだ。

 

病気になりやすい飼育をし、病気を蔓延させ、病気が感染爆発しやすいようにDNAを均一化し、病気が凶暴化するように異常な数の群れを作る。

今の日本の畜産の考え方は、私達には理解できない。

引き続き、飼養衛生管理基準案の動向は注視していきたい。またこれらに違反し不衛生、密飼い、そういった業者がなくなるよう監視していく必要もあると考える。その役割を行政に頼んだところであまり実効性はなかろう。そういうものだと諦めるしかない。頼りになるのは良心を持った市民の目だけだ。もし、ひどい業者、ひどい畜産施設を見つけたら、私達に知らせてほしい。

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