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「牛肉」よりも負荷が高く、あらゆる面で有害な「鶏肉」 

畜産業がリスクの多い産業だということは広く認知されるようになってきている。多くの人が知るようになっているのは特に「地球温暖化」への影響だろう。

畜産業から排出される温室効果ガスは、畜産は人為的な世界の温室効果ガス排出量の18%を占めており、車・飛行機などのあらゆる輸送手段から出される総量を超える。2018年のIATP(農業貿易政策研究所)の報告によると、今後肉と乳の消費量が増え続けた場合、2050年には温室効果ガスの81%を畜産業が占めることになるという1
2019年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表したレポート2は「動物ベース食品の消費量が多いほど環境への影響の推定値が高くなり、植物ベース食品の消費量が増えると環境への影響の推定値が低くなる
さらに「動物性食品がまったく消費されない最も極端なシナリオでは、現在使用されているよりも少ない土地で、2050年でも十分な食料生産を達成でき、かなりの森林再生を可能にし、温室効果ガス排出量を3分の1に削減できる」と報告した。

2020年9月、国連環境計画が発表したレポートの中では「各国の温室効果ガス削減目標(NDC)には、持続可能な食品システムへの移行が重要」として、「健康的な食生活に移行することで、世界の陸上部門からの排出量を年間0.7〜8 Gt CO2e削減できます。その食事は、粗粒、豆類、果物、野菜、ナッツ類、種子を多く含み、エネルギー消費型の動物由来食品を少なくする必要があります。」などと植物ベース中心の食事の重要性を述べている。

環境や社会に配慮している企業に投資しようという「ESG投資」の世界的な流れを作っている国連責任投資原則(PRI)が毎年開く会議 PRI in person では、ランチ、軽食などですべて完全菜食の料理が提供される。PRIには、すでに世界3,370機関以上のアセットオーナーや運用会社などが署名。日本からも年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、日本政策投資銀行など84社が署名しており、かれらも畜産物が環境負荷の高い食事だということは承知しているだろう。

だが、少なからぬ人が、環境負荷=「牛肉」というイメージを抱いているのではないだろうか?牛肉を鶏肉に替えれば地球に優しいなどと思っている人はいないだろうか?

それは誤りだ。毎年世界中で660億以上の鶏が肉のために殺されており3、それだけの鶏を飼育する工場畜産からは地球温暖化だけではない、それ以上の負荷を地球に、そして私たちにもたらしている。

地球温暖化を加速させる「鶏肉」

「牛肉」はたしかに突出した量の温室効果ガスを排出する。そのため、「牛肉」から「鶏肉」へ切り替えることを推奨する人がまれにいる。しかし「鶏肉」は「牛肉」と比べればマシだというだけであって、実際は、鶏肉産業から出る温室効果ガスは、他のほとんどの植物ベースの食品よりも高いものとなっている。たとえば「鶏肉」は豆と比べると温室効果ガスの排出量は約19倍。トウモロコシの約15.7倍。じゃがいもの約8.5倍(各食品1000キロカロリーあたりの温室効果ガス(二酸化炭素換算)比較)4だ。

*PoultryMeat = 鶏肉

しかも、世界中で食べられる「鶏肉」の量は、過去30年間でほぼ2倍と、急増しており5「牛肉」よりも「鶏肉」のほうがはるかに多く生産されている。もはや「鶏肉」は「牛肉」よりもエコ、などと言えるような状況ではない。(日本人も、2018年の年間一人当たり肉消費量は「牛肉」6.5kg、「豚肉」12.9kg、「鶏肉」13.8kgと、鶏肉が最も多い6。)

*FAOSTATより 豚肉、鶏肉、牛肉の生産量推移(単位:百万トン)

土地を多く利用し、生物多様性に圧力をかける「鶏肉」

農業の拡大は、生息地を変更し、生物多様性に大きな圧力をかける。IUCNレッドリストで絶滅の危機に瀕していると評価された28,000種のうち、農業が脅威となっているのは24,000種だ4。そして農業に使用される土地のうちじつに77%が、畜産業(放牧地、飼料生産用地を含む)に使用されている。

ここでもまた「牛肉」の土地使用量は高いが、「鶏肉(Poulty Meat)」もほとんどの植物性ベースの食品よりも高いものとなっている。「鶏肉」の土地使用量は、豆の約3.1倍、じゃがいもの約5.5倍、トウモロコシの約10倍だ(各食品1000キロカロリーあたりの土地使用量)4

森林破壊する「鶏肉」

WWFによると、農作物飼料の最大の消費者は、アジア太平洋、ヨーロッパ、北アメリカの家禽産業だという(2番目は豚産業)7。アメリカでは大豆ミール(大豆粕:大豆の75%が大豆粕となる)の半分が家禽産業に使われる13

2020年の国連環境計画のレポートは、農地の約3分の1が畜産動物の飼料に使用されており、一部の国では、これが森林減少を引き起こしているという。2019年、アマゾンで増加した森林火災の主な原因は、牛の牧草地と、大豆畑のための放火だ。そして、その大豆の約74%は畜産動物用の飼料として使用されるそしてその大豆の生産のために、先住民が殺されたり死に追いやられたりしている

人畜共通感染症のリスクとなる「鶏肉」

動物由来の感染症である新型コロナの広がりをうけ、人畜共通感染症への関心が高まっているが、「鶏肉」産業の危険因子の一つ、それも非常に危険性が高いといえるだろう。
まず、正確な割合は不明だが、「鶏肉」産業の大部分は工場式畜産で生産されている3。日本人が消費する国産の「鶏肉」もほとんどが工場式畜産由来だし、「鶏肉」輸入の7割を占めるブラジル産も、工場畜産が98%を占める3。そして、2020年の国連環境計画のレポートは、人畜共通感染症リスクの一つに「工場式畜産」をあげている。レポートは、動物に感染する病原体の約80%は「マルチホスト」で、時々、人間を含むさまざまな動物宿主間を移動し、野生動物由来のものが「家畜」を通してヒトへ感染することもあると書かれている。

徹底した「品種改良」で遺伝的に同一な「肉用鶏」が、数万単位で収容された工場式鶏舎ほどウィルスにとって適した繁殖場はないだろう。多様性がなく、感染を遅らせるための免疫防壁は取り除かれている状態だ。増殖の過程で変異を起こすウィルスにとって、進化するのにこれほど適した繁殖場はない。

もうかなり以前から、鳥間の鳥インフルエンザが、人の間のパンデミック になることを専門家たちは懸念している。 H7N9型ははじめは低病原性だったものが2016 年後半に変異し高病原性となり、さらにヒト型のレセプターに結合できるよう変異しているのだ。これまで起きた新型インフルエンザのパンデミックはおよそ10-40年おきに発生している。次のパンデミックに備えなければならない時期はすでに来ている。(養鶏と人畜共通感染症の関係についての詳細はコチラ

抗生物質耐性菌の温床となる「鶏肉」

抗生物質耐性菌は社会問題となっている。エコノミストのJim O’Neill 氏は、2050 年までに毎年 1000 万人が耐性菌によって死ぬだろうと予測する。抗菌薬が多用される畜産業(日本は抗生物質全体の約3分の2を畜産業で使用)は耐性菌の温床となるため、 2017年、WHO は畜産動物への抗菌薬を削減するよう勧告をだしたほどだ。

その抗菌薬、日本国内で「牛肉」産業よりも「鶏肉産業」のほうが多く使用される(圧倒的に多いのは「豚肉」産業)9。アメリカでも飼料添加される抗菌薬は「鶏肉」産業が「牛肉」産業の2倍ということだ10

2000年から18年までに発表された900件以上の研究を4年かけて分析した研究によると、中国やインド、ブラジルなどの大規模畜産が増加している国では、治療薬が無効になった細菌の割合は、2000年から2018年にかけて、鶏で約2.7倍、豚で約2.6倍、牛はほぼ横ばいだという8

日本でも2018年、国産鶏肉の約7割から薬剤耐性菌と報道され、衆目をあつめている。

労働者福祉をそこなう「鶏肉」

新型コロナのクラスターが各国の食肉加工工場で発生し、そこがウィルスにたいして脆弱な労働環境にあることが浮き彫りになった11

アメリカでは食肉加工工場で感染がひろがってもトランプ大統領が再開を指示、その後コロナウイルスは、最初の週に主要な食肉工場のある郡で、全国の 2 倍以上に広がった。これだけでも同国における食肉加工工場の労働者への扱いのひどさが分かる。さらにオックスファムの報告12によると、アメリカにおける家禽の屠殺および処理ラインの労働者は、その多くが女性、移民で、何時間にもわたって反復運動を行うため、ほとんどの業界よりも負傷率が高いという。家禽工場の労働者は2秒ごとに約1羽の鶏に同じタスクを実行することを求められ、トイレに行く時間もなく一部の労働者はオムツをして仕事に従事する。労働契約書のない移民は、国外追放されることを恐れ、虐待的な状況に対して沈黙するしかないという低劣な労働環境にある。

アメリカの話だと他人事のように言ってはいられない。アメリカは日本にとって鶏肉輸入第3位の国なのだから。

食品安全-食中毒菌汚染の高い「鶏肉」

野菜を生で食べる人は多いだろう。生で食べたほうが栄養価が高いとも言われる。しかし肉は熱を加えることが求められる。なぜか。腸管出血性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターなどの食中毒菌に汚染されている可能性があるからだ。食中毒菌は解体される畜産動物の大腸や消化器官から飛び散ったり、かれらの糞便が付着して汚染される。

はじめに忘れないでほしいのだが、一羽一羽に対して、これらの食中毒菌の検査は行われていない。法的にも求められていない。国内だけで一日に屠殺される鶏は200万羽。一つの食鳥処理場(鶏の屠殺場)で数万羽が一日に屠殺される。一羽一羽食中毒菌の検査を行うことは、実質不可能な状態だ。肉にこれらの食中毒菌の付着ししていたとしても、ごく当たり前にスーパーで販売されている。

厚生労働省は毎年「食品中の食中毒菌汚染実態調査」で、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、カンピロバクターの調査を行っている。そのデータから2013年-2018年までの動物種ごとの「ミンチ肉」の汚染状況を比較した。

サルモネラ

 201320142015201620172018
 検体数陽性数検体数陽性数検体数陽性数検体数陽性数検体数陽性数検体数陽性数
5512411232001100101108113
1195410255944410054364712
311548331855352263281450432149

群を抜いて「鶏肉」のサルモネラ汚染がひどい。考えてみれば「鶏肉」にされる鶏たちは敷料を変えられることもなく、一生糞の上で生活しているので、汚染されていないほうが不思議かもしれない。(「鶏肉」にされる鶏たちがどのような一生を送っているのかはコチラ

腸管出血性大腸菌

厚生労働省は、サルモネラ以外に、腸管出血性大腸菌、カンピロバクターの調査も行っている。2008年から2018年のデータをみると、腸管出血性大腸菌については各食肉とも汚染率は0の年が多く、まれに牛、豚から1%程度の陽性が出ることがある(鶏肉については0)。

カンピロバクター

カンピロバクターについては、2013年-2018年の間、各食肉の検体数は最高で8と少なく、食肉種によって検査を行っていない年もあり比較が難しい(それでも、陽性が出ているのは「鶏肉」だけだが)。一応、すべての動物種の検体が行われている2013年と2015年は次の通りだ。

 20132015
 検体数陽性数検体数陽性数
300500
300300
85635120

また牛と豚のミンチの検査は行われていないが、鶏のミンチのみのまとまった検査が行われた2010年-2012年の結果は次の通り。

鶏ミンチのカンピロバクター汚染率(2010-2012)

「鶏肉」が広く汚染されていることが分かる。

検体数陽性数
20101977136
20111596038
20122107636

糞便などによるコレラ食中毒菌の汚染は「熱を加えればいい」という人もいるが、熱を加えれば加えたで問題が起こる。詳細はコチラ

健康リスクのある「鶏肉」

牛・豚などの赤肉に比べて、鶏肉はヘルシーと思っている人はいないだろうか?そう思っている人はコチラをご覧いただきたい。

奪う命が膨大な「鶏肉」

最後に、命は数ではかるものではないことを承知の上でいうが、1頭の牛から得られるのと同じ量の肉を得るために約200羽の鶏が殺される10肉用に飼育される牛の状況も酷いことが往々にしてあるが、鶏はそれをしのぐ。「肉用」の鶏は一日でも早く太るように「品種改良」されており、急激な体重増加に体の機能が耐えられなくなり心不全や骨格障害で苦しむ。さらに1m×1mに16羽(「肉用」鶏は体重3kgにも成長する)の過密飼育、一度も交換されない敷料、産まれてたった40-50日での屠殺。苦しんでいても安楽殺さえしてもらえないなど、その扱いはモノレベルといってもいい(「鶏肉」にされる鶏の詳細はコチラ)。

鶏ではなく牛を食べろと言っているのではない。見てもらった通り牛産業から排出される温室効果ガスは膨大だ。牛たちもまた麻酔なしでの角の切断去勢、過密飼育などに苦しみ、本来の寿命よりはるかに短い期間で殺される。

もし誰かに「牛肉」より「鶏肉」のほうが環境負荷が低いよといって勧められたら、上記の事実を示し、「鶏肉」も「牛肉」と変わらず、地球と、私たちを含むそこに住む生き物にとってかなり有害であることを伝えてほしい。そして牛か豚か鶏にかかわらず、動物性食品より、植物性食品を選ぶ方が、エコでフレンドリーだということを知らせてもらえたらと思う。

 

1 Emissions impossible Jul 18, 2018 by IATP by GRAIN

2Climate Change and Land An IPCC Special Report on climate change, desertification, land degradation, sustainable land management, food security, and greenhouse gas fluxes in terrestrial ecosystems 07 August 2019

3 Statistics: Broiler Chickens CIWF

4 Environmental impacts of food production by Hannah Ritchie and Max Roser First published in January 2020.

5 Is eating chicken really better for the environment than eating beef?

6 農林水産省 食糧需給表

7 APPETITE FOR DESTRUCTION Summary report 2017

8 Global trends in antimicrobial resistance in animals in low- and middle-income countries Science 20 Sep 2019

9 食用動物由来耐性菌の現状とリスク管理 2016/03/20 人と動物の一つの衛生を目指すシンポジウム (東京)
平成30年動物用医薬品、医薬部外品及び医療機器販売高年報 各種抗生物質・合成抗菌剤・駆虫剤・抗原虫剤の販売高と販売量

10 Replacing beef with chicken isn’t as good for the planet as you think What the advice to replace beef with chicken in your diet is missing.By Leah Garces Dec 4, 2019

11 Coronavirus: Why have there been so many outbreaks in meat processing plants? By Anthony Reuben BBC Reality Check 23 June 2020

12 INTRODUCTION LIVES ON THE LINE The high human cost of chicken

13 ANIMAL AGRICULTURE AND SOYBEAN QUALITY United Soybean Board

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