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動物の犠牲数

下のグラフは1961年から2017年にかけて、世界中で肉・卵・乳のために犠牲になった動物数の推移を示している。

出典:FAOSTAT
*左軸の単位Mは100万。少し分かりづらいが、Laying Eggs hen(採卵鶏)とMeat chicken(肉用鶏)は一番左端の1000Head(1000頭)の軸を使用し、Meat pig(豚) Meat cattle(肉牛) Milk whole fresh cow(乳牛)は左から二番目の軸を使用する。

2017年に犠牲になった動物の数は次のとおりだ。その数は世界人口の10倍以上にのぼる。

採卵鶏78億3,838万羽
肉用鶏665億6,672万5000羽
14億8,598万6756頭
肉牛3億441万4,858頭
乳牛2億7,801万4,142頭

*上記の数字は魚を含んでいないことに注意しなければならない。魚を含むとその数は跳ね上がり年3000億もの動物が人間の食のために犠牲になっていることになる。

2011年、FAOは世界の食肉消費が2050年までに73%、乳は58%増えるだろうと発表*45したが、その予測通りに動物性たんぱく質の消費は着実に増えていっている。2018年7月3日に発表された「OECD-FAO Agricultural Outlook 2018-2027*46」は、肉、乳だけでなく魚の消費も増加するとの見通しを示している。

畜産による環境破壊

人口増加に伴い動物性食品の消費は増えるというのが大方の予測だ。
しかし地表面積の2/3をおおうまで拡大した工場型畜産は、今や森林破壊、温室効果ガス排出、水資源の大量消費など環境破壊の主要原因となっている。2006年に、FAOは調査報告書「家畜の長い影」(Livestock’s long shadow)*23「畜産業はもっとも深刻な環境問題の上位2.3番以内に入る」と発表したが、それから10年以上がたち、工場型畜産はますます広がっている。

2019年1月16日付の英医学雑誌The Lancetには「野菜を多くとり、肉、乳製品、砂糖を控えるよう」に提案する論文が、発表された。栄養や食に関する政策を研究する世界の科学者30人が3年にわたって協議し、100億人の食を支えるために、各国政府が採用できる案をまとめたもので、こうした食の改革を行わないと、地球に「破滅的」なダメージが待ち受けているという*47

動物の犠牲を伴わない「肉」へ移行する動き

ここ数年、多くの人がこの問題に気がつき、対策を講じはじめている。クリーンミートや植物性の代替肉といった動物の犠牲の無い「肉」への切り替えがそれだ。すでに欧米では食肉企業ですら植物性肉の生産を開始している状況だ。世界的な経営コンサルティング会社ATカーニーの分析は、2040年には「肉」市場における培養肉・代替肉の占める割合は60%になるだろうと予測する。現在の畜産由来の肉は実に40%にまで低下するだろうという*49
2019年現在、250以上の大手企業、非営利団体、研究機関が、クリーンミートや植物性の代替肉の開発、投資、販売を行うようになっている。*33

「動物飼育」を伴わない動物性食品への切り替えは国家レベルの関心事にもなりつつある。

2019年、イギリスの環境・食糧・農村地域省担当大臣マイケル・ゴーヴはオックスフォード農業会議の演説で「合成生物学の進歩により、研究室の中で卵白や牛乳や肉作りだすことができるようになるかもしれない。イギリスがこの革命をリードする可能性は非常に大きい」と述べた*27
同年、世界経済フォーラムはダボス会議の前に代替肉についての報告書を出した。
報告書の中では肉に替わるタンパク質は食品汚染のリスクが無く、温室効果ガス排出量の大幅な削減につながる可能性があるとして、今後の増加する人口のタンパク質需要を満たすためにはタンパク質システムの変革が必要だろうといっている。

重要なのは、これらの動向が、動物の犠牲を減らすことに直結するということだ。
2015年に設立されたGood Food Instituteはクリーンミートや代替肉への切り替えをプロモートするために立ち上げられた非営利団体だが、その目的は動物の犠牲を減らすことにある。同団体の創設者であるBruce Friedrichはもともと毛皮のファッションショーへ抗議するなど直接行動的な動物の権利活動家であったが、より効果的に動物の犠牲を減らすために同団体を設立したという*39

ヴィーガンやベジタリアンは着実に増えてきてはいる。
2019年5月にアメリカとイギリスで行われた消費者調査では、アメリカの消費者の4分の1、イギリスの消費者の半数近くが「肉の消費を減らすか、そうする計画を立てている」と回答した*42
2019年9月には、ヴィーガンと気候変動対策のためのETF(上場投資信託)が米国証券取引委員会に登録され、2020年1月から投資受付を開始することになっている。同信託はアメリカの大企業のうちヴィーガンや気候変動に配慮した企業のみで構成され、動物性食品を取り扱う企業や動物実験を実施している会社の株はすべて除外されるということだ*62
あらゆる観点からリスクの高い「肉食」を減らそうという世界的な流れがあることは間違いない。

毎年何百億も殺される動物の数に追いつくのは簡単なことではない。だが、もしクリーンミートやフェイクミートがいつでも当たり前に購入できるようになれば、動物の苦しみや犠牲は革新的に減らすことができるようになるだろう。

クリーンミート(培養肉)

クリーンミートとはつまり「培養肉」だ。
培養肉と聞くと眉を顰めるひともいるかもしれない。実験室の中で生み出されたフランケンシュタインみたいなイメージを思い浮かべるのだろうか。「試験管ミート」「培養肉」というワードに食欲をそそられない、という人もいるだろう。
しかし実際には、工場型畜産で飼育されて抗生物質、ワクチン漬けで日の光も当たらない建物の中で糞尿まみれで飼育されストレス満載で恐怖の中で殺され、血にまみれ大腸菌にまみれた肉片よりも、培養肉はずっと、クリーンだ。虐げられ、薬漬けになり、あらゆる方法で「汚染」されてしまった動物の肉に食欲をそそられるというほうがむしろ不思議ではないだろうか。

動物飼育による環境破壊もなく
動物を監禁して殺す必要もなく
糞便汚染もない

それがクリーンミート(培養肉)だ。

1936年にイギルスの政治家Winston Churchillはこう言った「50年後、我々はパーツごとに培地で育てることによって、手羽や胸肉を食べるために鶏を飼育するという不条理から逃れなければならない。」まさにそれが今現実のものとなりつつある*11

研究当初は培養肉の元となる初めの動物だけは殺されると言われていたが、今は違う。元となる衛生細胞は動物の筋肉から採取されるが、動物は殺されないのだ*。クリーンミート分野の研究の進歩は目覚ましい。
数年前にクリーンミートの話を聞いた時は絵空事と思っていたが、いまでは世界200以上の企業がこの研究を行っており、牛だけではなく鶏や魚の培養肉の研究も進んでいる。
以前は一切れの培養にかかるコストは数億と言われていたが今は数百万。コストは今後もっと下がっていくだろう。

*細胞培養の培地にウシ胎児血清(FBS)が用いられることが一般的であったが、大量入手が困難であることやコスト面などといった理由から、現在では非動物性成分の成長因子の開発が進められている。
この点において、例えばモサ・ミート社はアニマルウェルフェア基準に適さないウシ胎児血清(FBS)を利用しない方針を示しており、メンフィス・ミーツ社やジャスト社もそれぞれ非動物性成分を独自開発した旨を公表している使用する培養会社もある(エーリック調査レポートより引用)

ビル・ゲイツリチャード・ブランソンのような、実業家として大成功をおさめた人物たちもクリーンミートに投資する時代である。彼らが目を付けたということは、この分野が大きく成長する可能性が高いといえるのではないか。

ホワイトハウスの要請で調査をおこなった全米科学アカデミーは「培養肉」は今後バイオテクノロジー分野でもっとも成長するだろうと報告した*1

国家レベルでこの分野に支援する動きもある。
オランダ政府は培養肉の研究に4億の資金を提供*2、2019年、インドの中央政府は細胞分子生物学センター(CCMB)と国立研究センターに対し、クリーンミート研究のための資金を提供することを発表した*37

日本での動き

ここ日本でもクリーンミート(Shojinmeat Project:精進ミート)の研究がはじまっている。Shojinmeat Projectのスピンオフであるインテグリカルチャー株式会社は、第三者割当増資により合計3億円の資金調達を実施したと2018年5月25日に発表した。
2019年3月には、培養肉の「ステーキ肉」を日清食品と東京大生産技術研究所が共同開発*43。培養肉の技術には細胞を増やして組織をつくる手法が転用可能で、iPSで代表されるように日本はこの分野のトップレベルだとも産経は報じている*44

世界の企業の動き
    • 世界最大の農業企業の1つであるカーギル社は培養肉のスタートアップであるMemphis Meatsに投資。その後2019年には同じく培養肉を開発するAleph Farms社に投資。
    • 2018年、食肉加工大手のタイソンフーズも培養肉の開発を行うエルサレムのバイオテクノロジー企業Future Meat Technologiesに200万ドルを投資した*16
    • 2018年1月、イスラエルのバイオテック・スタートアップSuperMeatが、ドイツの畜産食肉大手PHWなどから300万米ドルを調達*10。2015年にテルアビブで設立された SuperMeatは3年以内に、食料品で現在販売されている従来の鶏肉製品と同等の価格で、「Clean Chicken」を市場に出そうとしている。
    • 2018年7月、培養肉の研究を行うオランダのMosaMeatが、ドイツの製薬会社Merck KGaAとスイスの肉処理業者Bell Food Groupから880万ドルの資金を確保した*18
    • 代替卵を開発して市場に参入し、2011年の会社設立後わずか4年間で多くの顧客を集めたハンプトンクリーク社(現ジャスト社)は、代替卵に続きクリーンミートに着手した。彼らは「2018年末までにクリーンミートを市場に出したい」と言っている。
      ジャスト社の培養肉事業は2018年8月9日のテレビ番組「池上彰が教えたい!『実は…のハナシ。』」でも紹介された。同社は2019年1月、日本の和牛生産者である鳥山牧場と提携し、鳥山牧場の有名な牛肉から細胞培養した肉の開発を始めるとも発表している。
 
培養肉に対する消費者の意識

中国

ニュージーランドに本拠を置く科学企業Plant&Food Researchが、2017年8月に中国の消費者に対して行ったオンライン調査では「あなたは培養肉を買う可能性がありますか?」との問いに「購入する可能性が高い(very likely)」が16.5%、「おそらく購入する(probably likely)」が36.6%、「わからない(maybe)」が25%という結果であった*17
また2018年の調査では、将来の話としてどの肉を好むかという質問に対して、従来の動物飼育を伴う肉を選択した人が29.8%だったのに対して、クリーンミートが38.6%(代替肉は30.7%)という結果であった*35

ベルギー

2019年の調査で、消費者のほとんどが培養肉について肯定的または中立的な意識を持つことがわかった。また培養肉の魅力として一番大きいのが「動物の苦しみ無く肉を食べることができること」だという結果であった*34

インド

2018年の調査で、将来の話としてどの肉を好むかという質問に対して、従来の動物飼育を伴う肉を選択した人が16.1%だったのに対して、クリーンミートが36.5%(代替肉は43.1%)という結果であった*35

植物由来肉(代替肉:Plant-Based Meat)

クリーンミートと同じく動物の犠牲のないのが「植物由来肉」、いわゆる代替肉だ。
こちらは「肉」ではなく植物性原料で作られた肉もどきである。日本でも代替肉は拡がりを見せてきているが、諸外国では動きがもっと早い。
カナダ政府は2018年11月に、植物性たんぱく質に1億5300万ドル投資することを発表*21した。

代替肉の市場拡大は、欧米の食肉業界にとってすでに大きな脅威になっている。アメリカでは牛肉産業グループが「動物性ゼロの肉」には“meat” の表示を禁止しようと働きかけており、EUでも植物性肉に対して“bacon,” “chicken nuggets,”  “hamburger”などの表示を規制させようとしているほどだ*12

企業の動き

アメリカ

    • 2016年10月に畜産物パッカー最大手であるタイソン・フーズがフェイクミート製造企業であるBeyond Meat社の株式を5%取得すると発表(2017年、タイソンフーズは同社への投資を追加*7)。さらにタイソンは2018年2月、自社製の代替肉を販売することを発表(このためBeyond meatへの投資は終了)*40、2019年6月には独自の植物由来商品ブランド『Raised&Rooted』を立ち上げた*63
    • 2017年9月に米国食品卸最大手であるシスコ・コーポレーションもBeyond Meat社と業務提携すると発表した。
    • 2017年9月、ネスレUSAが、植物ベースの冷凍食品(ブリトー、サンドイッチ)、植物ベースの冷凍バーガー、プロテインの製造業者であるSweet Earthを買収することに合意した*6
    • アメリカで四番目に大きいブロイラー会社のPerdue Farmsは2018年9月、VEGAN食や植物ベースのタンパク質などの非肉タンパク質事業を検討している、と報道陣に対して語った*19
    • 2018年12月、ユニリーバがオランダの食肉代替会社であるThe Vegetarian Butcherを買収すると発表。ユニリーバはこの買収を、「消費者の間で増加しているベジタリアンやビーガンの需要に応えるもの」と言っている*22
    • 2019年2月、ボストンに拠点を置くバイオテック社Ginkgo Bioworksは、9000万ドルの資金を調達してMotif Ingredientsという新会社を立ち上げた。Motifは、植物ベースの代替タンパク質の開発を主目的としている*32
    • 米国大手ハンバーガーチェーンのバーガーキング社は一部の地域で2019年4月よりインポッシブル・フーズ社のIMPOSSIBLE BURGERを用いた『インポッシブル・ワッパー』の試験販売を開始したが、予想を上回る販売数量を記録したことから、同社は8月初旬から全米の店舗で同商品を販売*63
    • 2019年4月、イリノイ州に拠点を置く世界夜臼の原料供給会社Ingredionが、動物性ゼロのタンパク質の研究開発を行うClara FoodsへシリーズBの投資を発表*36
    • 2019年8月、アメリカの食肉会社Smithfield Foods(WHグループ)は、植物ベースのタンパク質(乳ゼロのチーズや植物性のバーガーパテなど)の販売を開始すると発表。
    • 2019年8月、ケンタッキーが植物由来のフライドチキンを米アトランタの店舗で試験販売開始*57
    • 2019年9月、マクドナルドが、カナダのオンタリオ州南部の28か所で、Beyond Meatの新しい植物ベースのバーガーを12週間テスト販売すると発表

代替肉の拡がりはもちろんアメリカだけではない。

    • 2017年12月には、カナダの肉会社、Maple Leaf Foodsが米国の肉代替会社 Field Roast Grain Meatを1億2000万ドルで買収。この取引は、先だって同社が植物性たんぱく質の製造会社Lightlife Foodsを1億4000万ドルで購入したことを補完するものだ。Maple Leaf の社長Michael McCainは次のように言っている「買収は持続可能なたんぱく質のリーダーとなり、社会に貢献するという我々の目的に合致する」。
    • ドイツでは2018年、国内最大の家禽生産企業であるPHW GroupがBeyond Meat社と契約した。PHW社は「米国の植物性タンパク質会社との提携を通じて、事業を多様化することができることは喜ばしい」と述べている*14
    • 同じくドイツの大手食肉加工会社リューゲンワルダーも代用肉の生産をしている。同社社長ゴド・レーベン氏は肉が売れなくて売り上げが15%も落ちたました。」「肉離れはブームなどではなく価値観が変わってきているのです」と言っている。
    • 2019年5月に、ブラジルの世界大手食肉加工会社JBSが植物性のハンバーガーIncredible Burgerを発表。まもなく商品の販売が開始されると言われている*41
    • 現時点では市場に鶏肉の代替は出回っていない状況であるが、2019年5月、KFCの代表はCNNに対して、鶏肉の代替の検討を進めていると話した。また同じ鶏肉のファストフードであるChick-fil-Aもすでに代替鶏肉について検討している*48
    • 2019年9月、中国で、植物人工肉製造会社「珍肉(ZhenMeat)」や、食品メーカー「双塔食品」が、植物性の「肉あん月餅」を発売*58
    • 2019年9月、植物由来の代替肉の原料と、肉の形に造形する独自開発した3Dプリンターを製造しているイスラエルの代替肉製造ベンチャー企業のリデファイン・ミート(Redefine Meat)が、600万ドル(約6億4200万円)の資金調達に成功。出資したのはイスラエルのベンチャーキャピタルのCPTキャピタル、ハナコ・ベンチャーズ、ドイツの最大手養鶏企業PHWグループなどの複数のベンチャーキャピタルと企業*59
    • 2019年9月、食品企業ADMと、ブラジルで二番目に大きい食肉加工会社が、ブラジルで植物性タンパク質ベースの製品を生産、販売するために協力。牛肉と同じ食感と味の植物性食品の開発を開始*60


ドイツの大手食肉加工会社リューゲンワルダー社長ゴド・レーベン氏。
(テレビ東京未来世紀ジパング2019年1月30日放送~世界で拡大中!ベジタリアンフード ~2020年どうする?ニッポン~の一場面 より)

総資産5兆3,000億ドルにのぼる投資家ネットワークFAIRRによると、25の大手小売業者と製造業者が植物性タンパク質の戦略を持っていると報告しており、64%が年次報告に「植物由来」や「完全菜食主義者」などの用語を用いていた。植物性タンパク質市場への投資家の関心も高まっているという*54

魚肉の代替

2019年2月から、Whole Foodsなどの小売店が植物由来のツナの販売を開始。
この植物性のツナはアメリカのGood Catch社が開発した商品だ。同社は「地球と海と生き物を尊重する」ことをミッションとして掲げている。他の植物由来の代替食品のメーカー(ビヨンド・ミート、インポッシブル・フーズなど)と同様、Good Catch社も急増する需要への対応に苦労しており、資金調達を急ぐために2019年6月26日、コンバーチブルノート(転換社債の一種)の発行により1000万ドル(約10億8400万円)を調達したという*50

持続可能な食品の開発をしている Terramino Foodsも、真菌ベースに藻類を組み合わせて作った魚を使わない「サーモン」のバーガーを開発し、2018年末に売り出される予定となっている*15

日本人にはまだ認識が浅いかもしれないが、乱獲と環境破壊で海の魚は急速に減りつつある。
海の「代替肉」の普及はより急がれるべきかもしれない。

著名人も代替肉へ投資

NBAの選手であるDeAndre Jordan、Kyrie Irving、Chris Paul*30や、Hollywoodの人気スターで熱心な環境保護活動家であるLeonardo DiCaprioがBeyond Meatに投資したことも話題になっている。
ディカプリオは次のようにいっている
“植物から直接、おいしくてヘルシーな肉を作れる同社の能力は、結果的に、気候変動に対処しようとする消費者たちの日常的なアクションを助けている”

彼は2018年9月26日、ツイッターで次のような発信もしている。

「植物性のハンバーガーは、牛肉のハンバーガーよりも水の使用量が99%少なく、土地の使用は93%少なくエネルギーの使用量は50%近く少ない。そして温室効果ガスは90%削減される。未来のタンパク質への投資家であることを誇りに思う。」

Beyond Meat

Beyond Meat社のビヨンドミートはすでに市場に出ており、スーパーマーケットのWhole Foods Marketやテスコ、ファーストフードのA&W Canada、2019年7月からはダンキンドーナツ(米国)でも販売*53されている。9月からは、サブウェイが米国とカナダの685の店舗で、代替肉を使った「Beyond Meatball Marinara」を販売すると発表した。
同社は2019年5月2日にナスダック市場に上場し、株価は一時IPO価格の3倍を超えた*65

インポッシブルフーズ社

代替肉の製造・開発のために2011年に設立された同社は2019年までに7億5000万ドル以上の資金調達に成功している。同社にはマイクロソフトの創設者であるビル・ゲイツ氏やコースラ・ベンチャーズ、グーグル・ベンチャーズ、ホライズン・ベンチャーズ、UBS、バイキング・グローバル・インベスターズ、テマセク、セイリング・キャピタルなどの機関投資家が投資している*65
インポッシブルフーズ社のIMPOSSIBLE BURGERは、アメリカのバーガーキングで販売がはじまっており、2019年9月からはカリフォルニア州のスーパーでの販売も開始し、一般の消費者も生の状態で購入できるようになった*64
同社は2035年までに動物性食品の必要性を排除することを目標にかかげている*38

 

日本の動き

海外ほど目覚ましい動きではないが、国内でも代替肉市場に参入する企業がある。

    • 不二製油グループ本社株式会社(半世紀以上にわたって植物性食品の開発・生産・販売)*25
    • グリコ栄養食品株式会社*13
    • 食品卸売業者の西本Wismettacホールディングス株式会社(Ocean Hugger Foodsが開発したトマト、醤油、砂糖、水、ゴマ油から作られたマグロの代替品であるAhimiを全世界で売り出す売り出す予定だ。西本ではナスからつくった「うなぎ」も開発しているという*26。)
代替肉の世界の市場状況
    • 「植物ベースのタンパク質市場 – 世界の機会分析と業界予測(Plant Based Protein Market – Global Opportunity Analysis and Industry Forecast (2017-2022))」によると、世界の植物性たんぱく質市場は2022年までに108億9230万ドルに達し、2017年から2022年にかけてのCAGR(年平均成長率)は6.7%だという。
    • アジア・太平洋地域の食肉代替食品市場の2020年までのCAGRは10.5%と見込まれ、急成長市場とみなされている*63
    • Allied Market Researchによる2018年の報告書「Meat Substitute Market by Product Type, Source and Category: Global Opportunity Analysis and Industry Forecast, 2018-2025」*24によると、代替肉市場は2018年から2025年までの間に7.7%のCAGRを記録し、2025年までに75億円に達すると予想されている。
    • 消費者市場調査のEuromonitorは、今後10年間で、肉の代替品がアメリカでは10%、全世界では23%に成長すると見込んでいる*13
    • ニールセンが2016年に行った63か国の消費者を対象としたアンケート調査では、23%の人がより多くの植物性たんぱく質を求めているという結果だった。またニールセンの調査では2016年度から2017年度に、植物性たんぱく質の売り上げは7%増加したという。米国人の39%、また同調査ではカナダ人の43%は植物ベースの食品を食事に積極的に取り入れるよう努めているということが分かった*4
    • アメリカでは2018年の植物性食品の売り上げは去年に比べて40%以上増加*20
    • 独立行政法人農畜産業振興機構 調査部の2017年月号の記事*3によると、アメリカの「代替肉」分野の売り上げは世界最大で、アメリカの小売店では「本物の」畜産物と並べて代替肉が販売される光景が見られるようになってきているそうだ。
      ”調査会社によると、一般消費者の36%がフェイクミートを使うことがあると回答し、うち66%の人が「肉よりも健康的だ」と答え、さらに、うち31%が食べる理由として「肉を食べない日(Meat-free days)」を意図的に作りたいからだと答えている。”(””内は同記事より引用)
    • 畜産問題のシンクタンクSentience Instituteが2017年10月に行った調査では、米国の成人の54%は、動物性食品の(肉、乳製品、卵)を減らし植物性食品を増やそうとしており、また米国の成人の47%が屠殺場の禁止を支持し、33%が畜産の禁止を支持しているという結果*5であった。
    • 欧州委員会が2018年11月に公表した報告書「REPORT FROM THE COMMISSION TO THE COUNCIL AND THE EUROPEAN PARLIAMENT“on the development of plant proteins in the European Union”」によると、人が摂取する植物由来のたんぱく質の増加は、西欧・北欧を中心にEU各地で見られるという。また、今後増加が見込まれるのは、食肉と牛乳・乳製品の代替製品市場であり、それぞれの年増加率は14%、11%となっている。
    • 2018年12月6~7日、欧州委員会が開催した「2018年EU農業アウトルック会議」では2030年に食肉消費が減少するという見通しが示された。その理由として次のものが挙げられている*31
      * 社会的および倫理的な懸念(動物福祉、水質汚染)の増大
      * 環境や気候への問題
      * 健康上の懸念
      * EU域内の高齢化
       また、生鮮食肉については次のような傾向から消費量の減少が見込まれている。
      ・ 特に若い消費者の間で、植物性由来のたんぱく質への移行と、フレキシタリアン(準菜食主義者)、ベジタリアンおよびビーガン(完全菜食主義者)の増加に伴う食事パターンの変化
      ・ 消費者が食肉の原産地や有機や動物福祉基準への準拠といった生産方法にますます重点を置くようになるとともに、量よりも品質を好むこと
      ・ 生鮮肉から加工肉および調理済み食品への移行
    • 中国では、約10社の植物肉企業が創業、60以上の企業が「人工肉」市場への進出をすでに表明しているという*58
    • Food Frontierの新しいレポートは、2030年までにオーストラリアにおける植物性食品の消費支出が30億ドルに成長すると予測*61
    • Euromonitorによると、中国の植物性食品市場は、2014年以来33.5%成長し、2018年は97億ドルにまで上昇した。2023年までには119億ドルになるだろうと予測されている*67

 


 

世界ではじめてつくられた培養肉(クリーンミート)に資金提供したのはGoogleの共同創業者で、推定純資産は306億ドルと言われているルゲイ・ブリンだ。
かれはクリーンミートに投資した理由を「動物福祉のためだ」という。

「人々は近代の食肉生産に間違ったイメージを持っている。人々はごく一部の動物を見て自然な農場を想像する。しかしもし牛がどんなふうに扱われているかを知ったら、これは良くないと分かるだろう。」*9

クリーンミートやフェイクミートがあたり前のようにスーパーの「肉」コーナーに並び、動物を苦しめ殺して作られた肉はすみへ追いやられ、苦しみに終止符が打たれる日はそう遠くはないかもしれない。

 

 

 

*1 Preparing for Future Products of Biotechnology (2017)
http://dels.nas.edu/Report/Preparing-Future-Products-Biotechnology/24605
*2 Macintyre, Ben (2007-01-20). “Test-tube meat science’s next leap”. The Australian. Retrieved 2011-11-26.
*3独立行政法人農畜産業振興機構 調査部の2017年月号[消費者の求める需要に対して揺れる米国の畜産業界]
*4 PLANT-BASED PROTEINS ARE GAINING DOLLAR SHARE AMONG NORTH AMERICANS CONSUMER | 09-22-2017
http://www.nielsen.com/us/en/insights/news/2017/plant-based-proteins-are-gaining-dollar-share-among-north-americans.html
*5  Survey of US Attitudes Towards Animal Farming and Animal-Free Food October 2017 https://www.sentienceinstitute.org/animal-farming-attitudes-survey-2017
*6 Plant-based protein interest increases DEC. 1, 2017 – BY KEITH NUNES
*7 Tyson Foods further invests in Beyond Meat Latest investment expands beyond the company’s earlier purchase of a 5 percent stake
*8 培養肉は世界を救うか 都心が「畜産」王国に ポスト平成の未来学
*9 Google’s Sergey Brin bankrolled world’s first synthetic beef hamburger
*10 イスラエルのバイオテック・スタートアップSuperMeat、ドイツの畜産食肉大手PHWなどから300万米ドルを調達——3年以内に人工鶏肉を販売へ
*11 Feb 13, 2018 A revolution in meat production?
*
12 Cattle ranchers take their ‘beef’ with veggie burgers and ‘meatless meat’ to the next level

*13 Rose Flavoring and a Wine Shortage: These Are the 4 Food Trends to Watch in 2018
*14 ON APRIL 13, 2018 PHW Group to distribute Beyond Burger in Germany
*15 Fungi-Based Salmon Burger Joins the Sustainable Meat Alternative Market APRIL 23, 2018
*16 ON MAY 2, 2018 Tyson Foods leads $2.2 million seed investment in Jerusalem-based Future Meat Technologies
*17 Protein: A Chinese Perspective An on-line consumer survey conducted in China
*18 Mosa Meat secures US$8.8m investment to bring lab-grown meat to market by 2021
*19 Perdue considering non-meat protein options
*20 Greenleaf Foods Launched to Lead Plant-based Sector Oct 24, 2018, 09:35 ET
*21 Canada Is Seriously Committing $150 Million Dollars Into The Vegan Food Industry
*22 Unilever buys Dutch meat-free company The Vegetarian Butcher
*23 livestock’s long shadow
*24 Meat Substitute Market Expected to Reach $7,549 Million, Globally, by 2025
*25 2018年3月8日Plant-Based Food~植物性食 新時代~発表会&試食会
*26 Vegan sushi goes global with help of Japanese food wholesaler Japanese company to pitch tuna and eel alternatives to health-conscious MAY 14, 2018 11:45 JST
*27 Oxford Farming Conference 2019 address by the Environment Secretary
*28 細胞培養肉を開発の米新興企業 アジアでの事業に将来性 1/13(日) 16:00配信
*29 White Paper Meat: the Future series Alternative Proteins January 2019
*30 DeAndre Jordan, Kyrie Irving, Chris Paul Invest In Plant-Based Food Company Beyond Meat
*31 調査・報告 畜産の情報2019年3月号 EU農畜産業の展望 ~2018年EU農業アウトルック会議から~
*32 Motif Ingredients Raises $90m Series A to Engineer Alternative Proteins in Ginkgo Bioworks Spin-Out
FEBRUARY 26, 2019
*33 https://www.newprotein.org/maps
*34 PERCEPTION OF BELGIAN PEOPLE REGARDING CELL BASED MEAT © 2019 Ipsos. All rights reserved. Contains Ipsos’ Confidential and Proprietary information and may not be disclosed or reproduced without the prior written consent of Ipsos.
*35 A cross-country survey on the appeal of plant-based and clean meat in China, India, and the USA Contributors: Christopher Bryant Keri Szejda Varun Deshpande Nishant Parekh Brian Tse Date created: 2018-08-31
*36 Clara Foods Secures Series B Financing Led By Ingredion, Fast-Tracking Animal-Free Protein Development
*37 Clean meat programme gets Central govt funding
*38 Impossible Foods Announces $300 Million Funding Round to Accelerate Scaleup
*39 This Animal Activist Used to Get in Your Face. Now He’s Going After Your Palate.
*40 Tyson Foods sold its stake in alternative protein company Beyond Meat
*41 JBS launches plant-based burger line in Brazil
*42 MAY 28, 2019 UK vs US: A Look at 5 Global Lifestyle Trends
*43 2019.03.22 プレスリリース 【共同発表】肉本来の食感を持つ 「培養ステーキ肉」 実用化への第一歩 世界初!サイコロステーキ状のウシ筋組織の作製に成功(発表主体:日清食品ホールディングス)
*44 本物そっくり「人工肉」に注目 味や抵抗感払拭に課題も 産経新聞
*45 World Livestock 2011 Livestock in food security
*46 OECD-FAO Agricultural Outlook 2018-2027
*47 肉を半分に減らさないと地球に「破滅的被害」2019.1.25
*48 KFC is considering plant-based fried chicken but has no plans to test right now, executive says PUBLISHED THU, MAY 30 2019
*49 How Will Cultured Meat and Meat Alternatives Disrupt the Agricultural and Food Industry?
*50 「代替ツナ」開発の米企業が10億円を調達、代替肉生産も支援7/2 Forbes Japan
*51 Cargill invests in cultured meat company Aleph Farms
*52 エーリック海外情報 畜産の情報  2019年8月号 EU酪農・乳業の現状と展望
*53 ダンキンドーナツ公式ツイッター https://twitter.com/dunkindonuts/status/1154009027069825024?s=20
*54 JULY 24, 2019 Unilever, Tesco, Nestle ranked top on meat alternatives: report
Appetite for disruption: How leading food companies are responding to the alternative protein boom Engagement update, July 2019
*55 Subway is jumping on the Beyond Meat bandwagon with meatless meatball subs BY CAITLIN O’KANE AUGUST 7, 2019
*56 Smithfield Foods Launches Plant-Based Protein Portfolio Under Pure Farmland™ Brand August 12, 2019
*57 植物由来の「フライドチキン」、ケンタッキーが試験販売 米 8/27(火) 13:23配信
*58 人工肉の「鮮肉月餅」が人気、植物肉市場は「おいしい」のか 2019年9月14日 11:12 発信地:東京 [ 中国 中国・台湾 ]
*59 2019.09.12 イスラエルの代替肉製造ベンチャー企業が600万ドルの資金調達に成功
*60 ADM and Marfrig Team Up to Produce Plant-based Burgers in Brazil
*61 Aussie plant meat industry set to go from $30million to $3billion, study claims By AAP 4:41pm Sep 4, 2019
*62 投資もエシカルに。ニューヨーク証券取引所に世界初「ヴィーガン」ETFが上場へ 8月 30, 2019
*63 海外情報 畜産の情報  2019年10月号 米国における食肉代替食品市場の現状
*64 お肉じゃないよ。人工のお肉「インポッシブルバーガー」ついに発売 2019.09.24 16:05
*65 2019年5月14日  植物原料バーガーの米インポッシブル・フーズが3億ドル調達
*66 McDonald’s Tests New Beyond Meat Plant-Based Burger In Canada
*67 NOVEMBER 19, 2019 Beyond Meat vs Zhenmeat: The battle for China’s meatless market

参照サイト

Open Philanthropy Project Farm Animal Welfare Newsletter How Can We Reduce Demand for Meat?

http://elliot-swartz.squarespace.com

Memphis Meats: Richard Branson predicts the world will no longer need to kill animals in 30 years

Plant-based profits: investment risks and opportunities in sustainable food systems

 

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1 Comment

  1. 2019/05/03

    ここまでして肉に執着するのも異常と言える。草に土下座しながら植物を食べるか。光合成だけで生きることを試みて欲しい。

    返信

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