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企業がケージフリーできない理由

メディアがケージフリーを報じる時代

2021年つまり昨年を、わたしたちはアニマルウェルフェア元年と位置付けました。その根拠はあらゆるメディアがウェルフェアについて特集を組み、将来の養鶏はケージフリーになるかもしれないと予測するようになったこと。それに反応するより早く、多くの支援者の働きかけにより、全国のスーパーの卵売り場には平飼い卵が置かれるようになったことなどがあげられます。さらに最近では多くの食品企業やホテルが、平飼いへの移行を検討し始め、なかには現在ケージ卵を使用しているにもかかわらず、ホテルなどが将来必ずケージフリーへ移行することを約束するようになりました。

さてこのように世の中は、ケージフリーへ動いているように見えています。では、実際に平飼い卵が売れるようになり、企業は使用する卵をケージから平飼い卵へ移行し始めているでしょうか。もっと言えば、平飼い卵の需要や生産量は確実に伸びているのでしょうか。

答えは是であり否でもあります。是である理由は、平飼い卵を買いたいという消費者の声があるから、ケージ鶏舎を平飼いに変える農家が、実際に出てきていること。もちろん支援者のみなさまに要望されて背中を押されたケースもあると聞きます。さらにもともと平飼い設備のある養鶏所の中には、ケージフリー鶏舎を増設する(すでにした)動きも出てきました。

では何が否なのか。理由は、ケージフリー卵がアニマルウェルフェアであることは報道もされ、農家の意識も高まってきている。それでもまだ平飼い鶏舎の割合や卵の数はこんなに伸びた!といえる状況ではなく、平飼い鶏舎の割合は1パーセント未満といわれているからです。鶏をケージから解放するミッション遂行のためには、鶏の住処である鶏舎が変わることが大事ですから、この状況ではまだまだ救出が進んでいるとはいえません。

この鶏舎の動向に影響を与えているのが、卵を使用する企業です。何度も説明し、支援者のみなさまは耳が痛くなるかもしれませんが、企業が使用する卵を平飼いに変える(と宣言する)ことで、生産者は鶏舎をケージフリーに変えざるをえなくなります。ケージフリー卵でなければ納品できない状況になれば、鶏は自然と平飼いの住処にお引越しです。

消費者と企業の違い

ところで、みなさまもご存じのとおり、アニマルライツセンターは消費者と企業にむけて啓発活動をしています。消費者に向けては数々の発信のほか、セミナーを通して直接アニマルウェルフェアのお話をしています。セミナー担当者はこう言います。「アニマルウェルフェアの中では、卵がいちばん理解されやすい。採卵鶏がバタリーケージで虐待的な飼育をされていると話すと、普通の消費者でもその日から平飼い卵に変え、消費行動が変わる」

企業に対しても、基本的には消費者に対するのと同じように、採卵鶏の飼育の実態を伝え、ケージフリーに向かってほしいと伝えています。しかし企業は消費者のようにその場で「わかりました。ケージフリーへ移行を始めます」とは言ってくださらない。それはなぜか。企業は冷酷だから?動物福祉に関心がないから? いいえ。企業も人の集まりです。お会いするみなさん親切で心優しいし、ペットを飼うなど動物が好きな人もいるでしょう。現に、企業交渉に出席した担当者は、個人としてはむしろケージフリーの大切さを納得する人が多いのです。

ここまで読むと、何を小難しく考えるのか。企業が簡単にケージフリーできないのは当たり前じゃないかと言われるかもしれません。ケージフリーは個人がYESでも組織ではNO。この壁をどうしたら壊せるのでしょうか。

その悩みを解決する上では、個人と組織の対応の違い、消費者と企業とでは、同じ物を購入するのでも、そもそもそのメカニズムが違うと知ることが助けになるかもしれません。

欲求と必要性

営業の方はよくご存じの理論ですが、消費者が何かを買うときに感じるのは、その「必要性(needs)」よりも「欲求(wants)」だといわれています。この原理は悪用もできて、キャラクター、パッケージなど本質とは関係ないことを起爆剤として商品がヒットすることもありますが、それこそが「欲求(wants)」商法です。逆に良い方に機能するのが、アニマルライツセンターの話を聞いて、今日の買い物から平飼い卵に変えることになるというケースです。話を聞いた消費者は「欲求(wants)」が先にきて、そのあと安全性も高いよね、味もよいよねなど「必要性(needs)」を探す心理が動きます。所説ありますが、平飼い卵は味や栄養価がケージとそれほど違うことはないといいますから、ケージフリー卵を買う消費者は、間違いなく採卵鶏が虐待されない卵を欲しており、「必要性(needs)」ではなく「欲求(wants)」で消費行動を決定しているのです。

それに比べて企業は「必要性(needs)」がないと平飼い卵を買うことはしません。どんなにアニマルライツセンターがかわいそうな鶏の姿を見せて、担当者の心がうち震えても、企業人たるもの「必要性(needs)」がないのに、鶏が虐待されないことを「欲求(wants)」してはいけない、感情では動いてはならないのです。

必要性だけで動く企業

さあ、ここからは残念な説明です。表題の、企業はなぜケージフリーしたがらないのか。

もっとも簡単な理由は、企業の判断の基準は「必要性(needs)」だけだからです。それを根拠に品質や価格が見合った原材料をもとめています。多くの企業にとって今はそれがケージ卵だということ。

そしてもう一つの理由は、企業は物事を複数で決定するからです。同じかわいそうな映像を見ても、心に刺さる人と刺さらない人がいる。複数の人に温度差が生じると、より安定的な方、つまりケージ卵を変えない方に結論が向かいがちです。

この違いを考慮すると、消費者と企業、それぞれの啓発の仕方をかえなければならないことがわかります。では「欲求(wants)」では動かない企業に対し、わたしたちは、企業に対してどのような交渉をすればよいのでしょう。

これがARCの戦略だ

現在わたしたちは企業を訪問するとまず、その企業が抱えている課題がどのようなものであるかを聞き取ります。そして卵に関する予算感を見極め、さらに今アニマルウェルフェア取り組んでいるなら、現在どのような段階にあるのかを正しく把握します。そのうえで成熟度に合わせた移行サポートをしていくのです。だたし現況では、わたしたちが企業訪問すると、とくにケージフリーに関してはまだ情報収集のフェーズであり、アニマルウェルフェアのプロジェクトすら発足していないことがほとんどです。その場合はいったんその企業を「育成枠」へ戻し、時期を見て改めてふたたびコンタクトをとります。

人間が持つ「必要性(needs)」は、大きくわけて2つの種類があるそうです。1つが「顕在needs」、もう1つが「潜在needs」といいます。顕在needsはそのままの意味ですが、潜在needsはまだ自覚できていない必要性のことです。わたしたちの企業交渉の姿勢は、まず企業の状況を理解し、問題提起をして「潜在needs」に気づいてもらい、それを切迫感ある「顕在needs」として認識してもらうという作業に近いと思います。企業が気づいていない「潜在needs」を引き出して「それやりたいかも」と思わせるわけです。

アンケート作戦

その作業の一環としてアニマルライツセンターは今回、企業アンケートを行いました。アンケートは集計中のため、詳細な結果は後日報告するとして、特筆すべきことは「アニマルウェルフェアやケージフリーに取り組まないことはリスクだ」と、ほとんどの企業が回答してきたことです。
このアンケート結果からわかることは、企業が「アニマルウェルフェアやケージフリーはリスクだ」という潜在ニーズを持っているということ。それが「潜在needs」であって、「顕在needs」でないと判断できるのは、どの企業も「だからアニマルウェルフェアやケージフリーに取り組むべきだ」とは回答してこないからです。

さて、アニマルウェルフェア2年めの今年、企業のふところの見えない奥深く、つまり「潜在needs」にはケージフリー移行があることがわかりました。これは朗報と言ってよいとおもいます。ではこれをどうやって顕在化していくか。それができるかどうかが鶏をケージから救い出す分岐点です。いやできるかどうかではなく、やるのです。頭を使う1年になりそうです。

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