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バタリーケージ飼育-採卵鶏の一生

バタリーケージとは

(写真上は2011年、下は2019年日本の養鶏場)

バタリーケージとは、ワイヤーでできた金網の中に鶏を入れ、それを連ねて飼育する方式です。鶏のまわりはすべて金網で囲まれています。糞が下に落ちるように床も粗い目の金網になっています。
ケージの中には、巣も砂場も止まり木も何もありません。たった一本の藁もありません。
卵が転がりやすいよう、ケージは傾斜しています。 日本での鶏1羽あたりの一般的な飼養面積は、370㎠以上430㎠未満程度*1。 これは20cm×20cm程度の大きさです。 日本の採卵養鶏場の92%以上*1でこのバタリーケージ飼育が行われています。

EUではすでにこのバタリーケージは禁止になっています。欧州委員会の科学獣医学委員会による報告書は、バタリーケージに対して非常に批判的であり、

現在使用されているバタリーケージは、その小ささと酷さで、鶏の福祉にとって本質的な重大な欠点を有することが明らか

と結論づけています*2。

さらに、日本の採卵養鶏場の少なくとも半分以上がワクモに汚染されていると言われていますが、ケージに閉じ込められている鶏はワクモから逃れることができません。吸血された鶏は、かゆみ、吸血された部分の脱羽、かゆみを伴う皮膚炎、貧血、ストレスで苦しみます。貧血で死んでしまうことさえあります。重度に汚染された農場では小さな鶏の体を何百、何千匹ものワクモが毎日吸血することもあります。
ワクモは体温のより高い鶏に集中することもあり、吸血される鶏の苦痛は想像を絶します。

詳細:ワクモ

巣・止まり木・砂場

バタリーケージには、止まり木も、巣も砂場も設置されていません。

鶏は本来、朝起きたら羽ばたきし、毛づくろいをし、砂浴びをして羽をきれいにし、一日に10000から15000回地面をつつき採食・探索する動物です。

安全な巣の中で卵を産みたいという強い本能があり、被食種である鶏には、隠れたいという欲求もあります。止まり木は、特に夜寝るときに鶏が積極的に利用するものです。
しかし、この金網の中では、それらの欲求をかなえることはできません。

鶏はバタリーケージの中で、巣作りの材料がなくても巣を作る真似をします。
砂場がなくとも、鶏たちはしばしば給餌箱に頭をつっこみながら両翼を動かし、砂浴びの真似事をします。羽は汚れ、金網ですれ切れます。 土の上を歩いていれば自然に擦り切れる爪は、伸びきり、金網にからまります

(写真は2016年日本の養鶏場)

バタリーケージと改良型ケージ(エンリッチドケージあるいはファーニッシュドケージ)

EUで禁止になっているのはバタリーケージであり 、ケージ飼育そのものは禁止されていません。改良型ケージ(面積をひろげ、砂浴び場・止まり木・巣を設置したケージ)は許されています。しかしこの改良型ケージもケージ飼育には違いなく、EUの規定でも改良型ケージは1羽あたりたったの750平方センチメートル(30cm×30cm程度)です。

改良型ケージは、広さだけでなく高さの制約も鶏たちの行動を著しく制限します。EUの法律では改良型ケージの高さを最低45cmとしていますが、その高さでは、鶏たちが首を伸ばしたり、羽ばたいたり、身体を揺らしたりなどの当たりまえの運動が満足にできません。しかしこういった動きは鶏たちの羽骨を強くするために欠かせないものなのです*3。高さに制約がなければ、鶏たちは高さ56cmまで活動するという研究もあります*4。

改良型ケージでは砂浴び場が設置されていますが、広さが足りないため砂浴び行動が制限されてしまいます。さらに本当に砂が設置されているわけではなく、人工芝が設置されます。それでは砂浴びの機能は充足されません。

詳細:砂浴びの必要性

鶏が頭を動かし地面をつつく行動(forage)も、ケージフリーの鶏よりも改良型ケージの鶏のほうが少ないことが指摘されています*5。鶏は爪で引っかいたり餌をさがしたりするのに665から1217㎠、羽繕いをするのに800から1977㎠のスペースを使っているという研究もあります*6。

鶏たちが十分に羽ばたきしたりグルーミングしたり砂浴びをしたりしたいという要求は、改良型ケージの中で満たされることがないのは明らかです。どんなに改良しても「ケージ飼育」では鶏の本能を満たすことができず動物の生態に配慮した飼育とは言えません。

「バタリーケージの卵を食べたくない!キャンペーン」ではバタリーケージ飼育を含めたケージ飼育そのものの廃止を目指します。

デビーク

過密飼育によるつつき合いを防ぐために、雛の段階で鶏のクチバシは麻酔なしで切断(デビークあるいはビークトリミング)されます。デビークは日本の採卵養鶏の約83.7%で実施*1されています。

くちばしの表面の角質層と、骨の間には神経と血管の通ったやわらかい組織があり、デビーク時には出血し、痛みで雛は苦しみます。

詳細:嘴の切断

育種「改良」

鶏の祖先は赤色(せきしょく)野鶏だと言われています。その赤色野鶏の年間産卵数は数十個ほど。しかし家畜化された鶏の産卵数はいまや320個。この不自然な「産卵能力」は、鶏の体の代謝に負担をかけ、骨粗鬆症やそれに伴う骨折などの生産疾患で鶏を苦しめています。産卵能力を強化されたことで生殖器障害のリスクも高まっています。
骨粗しょう症による骨折、生殖器の病変、卵つまり、腹水は、生産性を重視した育種「改良」続けられている採卵鶏では一般的です。

詳細:採卵鶏の品種改変の問題

強制換羽

産卵を開始して約1年が経過すると、卵質や産卵率が低下し、不揃いな卵が生産されます。この時点でと殺される場合もありますが、長期にわたって飼養しようとする場合には、強制換羽がおこなわれます。

強制換羽とは、鶏に2週間程度、絶食などの給餌制限をおこない栄養不足にさせることで、新しい羽を強制的に抜け変わらせることです。換羽期に羽毛が抜けかわると再び卵を産むようになるという鶏の生態を利用し、卵の質を均一にし、生産効率を上げるために行われています。

ショック療法ともいえる強制換羽は、通常の鶏飼育時よりも死亡率が高いことが知られています。 日本の採卵養鶏の66.1%で強制換羽が実施*1されています。

強制換羽により死に至る原因は衰弱や餓死ですが、これは動物愛護法にも抵触します。近年は「福祉的」という理由で低栄養飼料による強制換羽が行われる場合もありますが、鶏を飢えの状態におくことに変わりはありません。季節の変化で自然に換羽する場合でも鶏にとってはストレスなのです。それを強制的に行うことは鶏に大きな負担を与えます。

(2015年日本の養鶏場 強制換羽で死亡した鶏たち)

廃鶏

鶏たちは質の良い卵を産まなくなる生後1年半~2年程度で、出荷され、屠殺されます。この「不要」になった鶏たちは「廃鶏」と呼ばれています。本来ならば1年間に20個程度しか卵を産まないはずなのに、品種改変の結果300個以上も産まなければならなくなった採卵鶏たちの体は、出荷時にはボロボロです。爪は伸び切り狭いケージの中で羽が折れ擦り切れて、皮膚が露出し、細菌感染で眼瞼周囲炎や副鼻腔炎になり顔を腫らせている鶏もいます。毎日卵を産み続けた結果自らに必要なカルシウムまで排出し、骨折している鶏もいます。

出荷

一度に何千羽、何万羽と出荷される採卵鶏たちは、出荷時には暴力的にカゴに詰め込まれます。

屠殺場での長時間放置

肉用の鶏ならば屠殺場についたその日に殺されます。長時間留置すると肉質に影響が出るからです。しかし採卵用の鶏は違います。輸送時間も長く、その日の営業時間中に屠殺が間に合わなければ次の日に回されます。鶏たちは次の日まで狭いカゴの中で、糞尿や卵にまみれ、水も餌もなく、寒さ暑さに耐えながら次の日まで待たなければなりません。長いときには4日以上、頭をもたげて立つこともできないカゴの中に留置されることもあります*7。

詳細:屠殺場での長時間留置の問題

日本では意識を失わせるためのスタニングもなく、首をいきなり切るという方法はめずらしくありません。EUでは屠殺前のスタニングが法律で義務付けられていますが、日本にはそのような法的枠組みがありません。
鶏たちは生きたまま首を切られるだけでなく、ネックカットに失敗して生きたまま熱湯タンクに漬けられることもあります。

詳細:鶏の屠殺方法について

2018年度には採卵鶏で212,109羽(肉用鶏で508,406羽)の鶏が生きたままで熱湯処理されています。イギリスとスウェーデンではこれは法律違反にあたります。アメリカでは法律違反ではありませんが、改善が進められています。生きた鳥を熱湯処理する割合は、日本は米国の9.6倍と多いものになっています。

詳細:生きた鶏を熱湯処理する問題

*1 2014年飼養実態アンケート調査報告書
*2 European Commission:  Scientific Veterinary Committee, Animal Welfare Section.  Report on the welfare of laying hens.  30 October 1996.  Brussels, Belgium.  Conclusion 9 (emphasis added).
*3 Moinard, C., Morisse, J. P. and Faure, J. M., 1998. Effect of cage area, cage height and perches on feather condition, bone breakage and mortality of laying hens. British Poultry Science, 39: 198‐202.
Appleby, M. C., A. W. Walker, C. J. Nichol, A. C. Lindberg, R. Freire, B. O. Hughes, and H. A. Elson. 2002. Development of furnished cages for laying hens. Br. Poult. Sci. 43:489–500. Axtell, R. C., and J. J. Arends. 1990. Ecology and management
*4 Dawkins, M. S., 1985.  Cage height preference and use in battery‐kept hens. Veterinary Record, 116: 345‐347.
*5 Lay D et al, 2011. Hen welfare in different housing systems 2011 Poultry Science 90 :278–294
*6 Whitehead, C.C. (2004) Overview of Bone Biology in the Egg‐Laying Hen. Poultry Science 83:193–199
*7 72時間放置する屠殺場も!農水省からの3度めの通知 2019/03/24

  詳細:砂浴びの必要性

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