日本では毎年1億羽以上のオスひよこが生まれ、その多くが殺処分されていると推定されます。
この問題を解決する方法として、近年世界で急速に普及が進んでいるのが「卵内雌雄鑑別」です。
ひよこが孵化(ふか)する前の卵の段階で雌雄を判別することで、オスひよこの殺処分を回避する技術であり、アニマルウェルフェアの向上と、より持続可能な養鶏の実現に向けた新たな選択肢として注目されています。
この記事では、卵内雌雄鑑別の仕組みやメリット、技術の種類、そして日本での導入に向けた現状についてご紹介します。

採卵鶏のオスは卵を産まず、肉用鶏のように効率よく肉を生産することにも適していません。そのため、多くのオスひよこは孵化直後に殺処分されています。
この問題は世界的なアニマルウェルフェアの課題として認識され、すでに一部の国では、オスひよこの殺処分を減らすための規制や新しい技術の導入が進んでいます。
ひよこが孵化する前に、卵の状態で雌雄を判別する技術です。
オスと判別された卵を孵化させないことで、オスひよこが生まれた後に殺処分されることを防ぎます。
孵化させない卵については、技術や地域などによって、飼料やワクチンなどへの活用も行われています。
現在ではさまざまな方式が開発され、海外ではすでに商業利用されている技術もあります。

卵内雌雄鑑別は、オスひよこの殺処分を防ぐだけでなく、さまざまな効果が期待されています。
オスひよこの殺処分をなくすことができます。
オスと判別された卵を早い段階で取り除くことができれば、不要な孵化を減らし、孵卵器のスペースやエネルギーなどを、より効率的に利用できる可能性があります。
アニマルウェルフェアに配慮した卵の生産は、企業の社会的責任やサステナビリティへの取り組みにつながり、商品の付加価値やブランド価値にもつながる可能性があります。
私たちが日本で実施したアンケート調査でも、卵内雌雄鑑別の導入には高い支持が示され、「オスひよこが殺処分されていない卵を選びたい」という消費者が多くいることが分かりました。
卵内雌雄鑑別の技術は、大きく「侵襲型」と「非侵襲型」に分けることができます。

卵殻に小さな穴を開け、卵内の液体などを少量採取し、ホルモンやDNAなどを分析して雌雄を判別する方法です。卵に手を加える工程が必要となります。
卵に穴を開けることなく、光やMRI、画像解析などを利用して外部から卵の情報を測定し、雌雄を判別する方法です。
卵殻を傷つける必要がないため、穴あけや封止の工程が不要で、異物混入のリスクも抑えられるという利点があります。近年は、AIなどと組み合わせたさまざまな非侵襲技術の開発・商業化が進んでいます。
「非侵襲型」の技術にも、さまざまな方式があります。

すでに海外では商業化が進んでおり、ドイツのOrbem「GENUS FOCUS」はMRIとAI、AAT「CHGGY Zoom」はハイパースペクトル測定、Omegga「Omegga One」は分光技術とAIを活用しています。一方、日本でも、日立ソリューションズ・クリエイト・農研機構・九州工業大学による画像認識AIを用いた技術や、セツロテック・徳島大学によるゲノム編集と光透過検査を組み合わせた技術の研究・開発が進められています。
特に大きな違いの一つが、卵の性別を判別できる時期です。
現在公表されている情報では、Orbemは孵卵11~12日目、AATは12日目、Omeggaは6~7日目。一方、日本では、日立ソリューションズ・クリエイト、農研機構、九州工業大学の共同研究で孵卵3日目の判別技術が開発されています。
アニマルウェルフェアの観点からは、胚が痛みを知覚する可能性を考慮すると、より早い段階で判別できることには重要な意味があります。一方、実際の孵化場への導入には、判別精度、処理能力、導入コスト、設置スペース、既存設備との組み合わせやすさなど、さまざまな条件が関係します。
海外ではすでに商業利用されている技術がある一方、日本の技術は現在研究・開発段階です。今後、日本の孵化場でどのような技術が実際に導入できるのか、実証と検討を進めていくことが重要です。
海外ではすでに卵内雌雄鑑別技術を商業利用している孵化場があり、オスひよこの殺処分を規制する国も現れています。
一方、日本では技術の研究・開発は進んでいるものの、現時点では商業規模での卵内雌雄鑑別の導入は確認されていません。
今後は、国内外の技術メーカー、孵化場、卵メーカー、行政などが連携し、日本の生産環境に適した技術を検討しながら、実際の孵化場での実証導入につなげていくことが重要です。
▶ 世界の導入状況はこちら
卵内雌雄鑑別は、オスひよこの殺処分という長年の課題を解決するための有力な選択肢です。
アニマルウェルフェアの向上だけでなく、生産の効率化、企業の社会的責任、そして「オスひよこが殺処分されていない卵を選びたい」という消費者のニーズにも応える可能性があります。
日本国内でも技術開発が進み、海外にはすでに実用化された複数の選択肢があります。
日本で今必要なことは、実際の孵化場で商業的に導入し、この方法が一般的なものになる道筋を作ることです。
オスひよこの殺処分をなくしていくために、より多くの人にこの問題を知らせ、卵内雌雄鑑別という選択肢があるということを広めていくことが重要です。
オスひよこの殺処分をなくすための署名にも、ぜひご協力ください。
▶おすひよこの殺処分をなくそう!