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ファクトチェック:バタリーケージが「苦痛、傷害、疾病からの自由につながる」は嘘

昨年末、農林水産省は、石垣のりこ参議院議員の採卵鶏のアニマルウェルフェアを求めた質問に対して、「バタリーケージ飼いは、いわゆるアニマルウエルフェアの五つの自由の中では、苦痛とか傷害とか疾病からの自由にもつながるものだ」と答弁した。(回答全文は最下部に掲載)

石垣議員が「根拠となる研究」を求めたのに対して、この答弁にはエビデンスも研究も示されなかった。

また、国や養鶏業者がよく述べることに「バタリーケージは鶏の闘争で傷つくことが平飼いよりも少ない」というものがある。

結論から述べると、これらの主張は誤りである。

1:闘争で傷つくことは防げる

鶏は人と同じく社会性がある動物であり、社会的な順位付けをする習性がある。これは防ぐものではないし、問題がある行動でもない。

一方、攻撃的なつつきが発生すると、順位の弱い鶏が殺されることもあるため問題がある。平飼い業者でも闘争に悩む業者はたしかにいるが、実際には防ぐ方法がすでにあり、闘争に悩まされていない養鶏業者も多い。

攻撃的なつつきは、とまり木があることによって軽減される事がわかっている*1。とまり木は弱い鶏の逃げ場にもなり、また時折巣箱も逃げ場になりうる。
飼育密度が高くなると攻撃的なつつきが発生しやすくなることも分かっており、つつき用の石やブロック、わらの塊が用意されていると軽減されることも分かっている*2。
幼少期に適切な敷料や高繊維の餌が提供されていなかった場合もまた、大人になってからのつつきが発生しやすいことがわかっている*3。
餌場のスペースの広さも、狭いほうがつつきの増加が見られることも分かっている*4。

つまり攻撃的なつつきは他因子で起きており、様々なアニマルウェルフェアを向上させる対策を取ることによって、改善することが可能だ。

エピソード

ある平飼い養鶏をする方が平飼いのデメリットの一つとして「平飼いは順位付けがあるから鶏は生活が大変だなぁと思いますよ」と述べていたことがあるが、それでも拘束飼育される苦しみ、本来の行動の自由が全て奪われた生活よりは比較にならないほどマシである。またその方に、攻撃的なつつき(いじめ)はあるかと聞くと、「いじめはあるけど、ケージほどではない。鶏たちは穏やかだ」と述べた。

ケージ飼育の業者は、ケージの飼育しか知らないため、自分に都合の良い解釈を述べているが、両方を見ている人は決してそうは言わないのだ。

2:死亡率はバタリーケージだけが高い

6040の商業用鶏群と、16か国の1億7600万羽の鶏のデータから、採卵鶏の飼育形式ごとの死亡率を割り出した研究がある*5。この大規模なメタ分析は、データの数も多いだけでなく広い地域もカバーされており、根拠として十分すぎるほど、信頼性は高い。

この研究によると、従来型ケージ=バタリーケージでの死亡率だけが、他の平飼いやエンリッチドケージを含めた飼育形式よりも有意に採卵鶏の死亡率が高いことが分かった。

3:平飼いの場合改善の余地があるがバタリーケージにはない

同じ研究結果で、以下のことも分かっている。

従来型ケージ(バタリーケージ)を除いて、各システムでの経験値が上がるにつれて死亡率が徐々に低下することを示します。

2000年以降、ケージフリーの鶏舎での毎年の経験の蓄積は、累積死亡率の平均0.35〜0.65%の低下につながっているという。一方でバタリーケージにはこれ以上の改善の余地がないことも示されており、データを見るとやや死亡率が上がっていさえする。

4:サルモネラ菌発生のリスクはケージのほうが高い

糞がケージの下に落ちるため、鶏が糞に触れない為安全とする主張も、上記2から無意味であることがおわかりになるだろう。さらには、バタリーケージは、平飼いや放牧飼育よりもサルモネラ汚染が高いことも科学的に証明されている。詳細はこちらの記事から。

5:今季の採卵鶏の鳥インフルエンザ、すべてケージ飼育の鶏舎で発生

今季(2020年度)の鳥インフルエンザは実に900万羽以上を殺し、畜産の限界を感じざるを得ない状況になっている。その多くを占めたのは採卵鶏である。100万羽規模で飼育されれていた鶏舎が3箇所も発生させたためである。そして、今季の特徴として言えるのは、【いまのところ】採卵鶏はすべてケージ飼育の鶏舎から発生していることだ。

ここで言いたいのは鳥インフルエンザのことではなく、つまり、ケージ飼育は疾病から鶏を守ったりはしないということだ。

6:ケージの中には小動物が入って鶏を襲う

農林水産省が発表している鳥インフルエンザの疫学調査*6を読むと、鶏舎にはねずみだけでなく、猫やその他哺乳類の小動物が出入りしていることがわかる。さらにバタリーケージにはいりこみ、鶏を襲っていることもわかる。逃げ場もなく、追い払うこともできない鶏は、ただ一方的に噛み殺されるだけである。

17例目には「首に咬まれた痕がある個体が認められた」「過去に、キツネやイタチ等の野生動物によるものと思われる、鶏の食べられた死体がケージ内で見つかることもあった」との記述がある*6。


いまさらバタリーケージを援護する根拠はゼロでは?

もう十分じゃないだろうか。そろそろバタリーケージはかばうにはかばいきれないことを認めたらどうだろうか。

世界中がケージフリーに移行しているのにはちゃんとエビデンスがある。みんな別に気合で移行したわけではない。

養鶏業者の方へ

アニマルライツセンターでは海外の団体がエビデンスに基づき作成しているケージフリー飼育のコツを記した簡単なドキュメントを翻訳しています。ご希望の方はご連絡ください。

 


第203回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第1号 令和2年12月8日 より引用

  • 石垣のりこ議員
    ○石垣のりこ君 九四・二%ということなんですけれども、このバタリーケージを使用するメリットというのはどういうものなんでしょうか。また、その根拠となる研究などありましたら御紹介ください。
  • 水田正和政府参考人
    ○政府参考人(水田正和君) ケージの中には、バタリーケージ飼いというものとエンリッチドケージ飼いというようなものもございます。  バタリーケージ飼いは、ケージの一区画ですね、バタリーケージ飼いはケージの一区画の床面積で、あっ、失礼しました。バタリーケージ飼いは、ここに書いてございますような、今資料で出していただいているようなものでございますが、これを、ケージの一区画の床面積を広げまして、止まり木とか巣箱、砂遊び場を設置しているものがエンリッチドケージというものでございます。  このエンリッチドケージに比べましてバタリーケージはどういった利点があるかと申しますと、動きませんので個体ごとの健康管理の点検が容易になるとか、あともう一つは、これ大きいんですけれども、排せつ物が容易に分離されるということでございまして、寄生虫などの蔓延防止と、こういった観点でメリットがございまして、こういう意味からいたしますと、バタリーケージ飼いは、いわゆるアニマルウエルフェアの五つの自由の中では、苦痛とか傷害とか疾病からの自由にもつながるものだというふうに考えているものでございます。
  • 石垣のりこ議員
    ○石垣のりこ君 今御説明いただきましたけれども、結局、このバタリーケージのメリットというと、これ生産の側面からのメリットということがメーンになるわけですよ。  今私がお話ししているのは、アニマルウエルフェアの観点から、福祉の問題としてこういう飼い方はいかがなものなのだろうか、もっと改善の方向性はないのだろうか。別に急に何かをしようというわけではなくて、日本政府として、今後、この養鶏業界含めて畜産全体ですけれども、アニマルウエルフェアの考え方に基づいてどういう農政の在り方、畜産の在り方が提示することができるのかという問題に関してお尋ねしているわけでございます。  このバタリーケージを進めていく世界の趨勢に関しては、次の資料を御覧いただきたいと思います。  今、企業はケージフリー卵に移行しつつあると。把握しているだけでも結構な会社がケージフリー宣言をして、ちゃんと飼育のされ方に関しても配慮された、アニマルウエルフェアに配慮された、こういう生産体制を後押ししていこうという動きがあるわけです。これがどんどん進んでおります。EUではもうケージ飼い、二〇一二年に廃止になっております。  これは、ある程度やっぱり十分な移行期間を設けた上での政府としての補助もありつつの移行ではありますけれども、こういう方向性を示していくことが大事なのであって、生産性が高いからケージ飼いを推奨するという、そもそもその根本的な考え方が違うのではないでしょうか。
     

*1 Use of perches and nestboxes by laying hens in relation to social status, based on examination of consistency of ranking orders and frequency of interaction  , L.S.CordinerC.J.Savory, Applied Animal Behaviour Science Volume 71, Issue 4, 29 March 2001, Pages 305-317
*2 The influence of stocking density and enrichment on the occurrence of feather pecking and aggressive pecking behavior in laying hen chicks , January 2018Journal of Veterinary Behavior Clinical Applications and Research 24
*3 Tahamtani, F.M., Brantsæter, M., Nordgreen, J., Sandberg, E., Hansen, T.B., Nødtvedt, A. Rodenburg T.B., Moe, R.O. & Janczak, A.M. 2016. Effects of litter provision during early rearing and environmental enrichment during the production phase on feather pecking and feather damage in laying Hens. Poultry Science 95(12):2747-2756.
Huber-Eicher B and Sebö F. 2001. Reducing feather pecking when raising laying hen chicks in aviary systems. Applied animal behaviour science 73(1):59-68.
Rodenburg T et al, 2013. The prevention and control of feather pecking in laying hens: identifying the underlying principles. Worlds Poultry Science Journal 69/ 2: 361‐373
*4 Feeder space affects access to the feeder, aggression, and feed conversion in laying hens in an aviary system  JanjaSirovnik HannoWürbel Michael J.Toscano, Applied Animal Behaviour Science Volume 198, January 2018, Pages 75-82
*5 Laying hen mortality in different indoor housing systems: a meta-analysis of data from commercial farms in 16 countries Cynthia Schuck-Paim, Elsa Negro-Calduch & Wladimir J. Alonso Scientific Reports volume 11, Article number: 3052 (2021)
*6 https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/r2_hpai_kokunai.html / https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/attach/pdf/r2_hpai_kokunai-83.pdf

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