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採卵鶏を苦しめる「品種改良」

近親交配

ブロイラー(肉用鶏)と同じく、日本の採卵鶏のほとんどは、海外で「品種改良」された外国鶏種だ。国産鶏種の卵は市場の6%ほどしかないと言われている。
採卵鶏の「品種改良」もブロイラー同様寡占状態にあり、世界中の採卵鶏のほとんどはオランダのヘンドリックス・ジェネティックス社とドイツのローマン社の2社に占められる。

この2社で作られた「原種鶏」あるいは「種鶏」が世界中に輸送される。流れとしては、「原鶏種」に卵を産ませて「種鶏」を増やし、その「種鶏」からさらに卵を産ませて孵化した雛が、「食用卵」を産む採卵鶏として養鶏場に運ばれる、という形だ。この過程で鶏の数は実に4500倍に増える*1

採卵鶏は、「卵を少しでもたくさん産む」という育種に焦点をあて、少数の鶏を閉鎖した施設で増殖させ、少数の遺伝子を何千何万も産みだすという、終わりのない近親交配が続いている状態にある。そこに遺伝的多様性はない。それはつまり、環境への適応能力を欠き、病気や環境変化への耐性が低下した鶏が次々と生み出されているということだ。鳥インフルエンザに終わりがみえないのも遺伝的多様性が失われてしまっていることと無関係ではあるまい。だがここではその話はこれくらいにしよう。

卵をたくさん産む「品種改良」が鶏に及ぼす影響

鶏の祖先は赤色(せきしょく)野鶏だと言われている。その赤色野鶏の年間産卵数は数十個ほどといわれている。しかし家畜化された鶏の産卵数はいまや320個*2。この不自然な「産卵能力」は、鶏の体の代謝に負担をかけ、骨粗鬆症やそれに伴う骨折などの生産疾患で鶏を苦しめる。産卵能力を強化されたことで生殖障害のリスクも高まっている。

骨粗鬆症

アニマルライツセンターは以前採卵鶏3羽を保護したが、いずれも骨折しており、さらに脱臼、カルシウム異常、腹部膨満といった症状を呈していた。

骨粗鬆症は、採卵鶏では一般的な疾患だ。

2004年には、産卵鶏の80〜89%が骨粗鬆症に苦しんでいると推定されました。
骨には、卵の殻の生産に使用されるカルシウムを貯蔵しており、骨から卵殻にカルシウムを移動すると、鶏は骨粗鬆症、それに引き続き、骨折を起こしやすくなります。
採卵が一年を超えると、鶏が卵の殻に使うカルシウムの量は、体内に保持されている量の最大20倍になることがあります。
 骨粗鬆症自体は痛みを伴うものではありませんが、それに伴う骨折は急性および慢性の両方の痛みを引き起こします。骨粗鬆症は、鶏がバタリーケージで運動できないことにより悪化します。栄養不足により引き起こされることもありますが、主に遺伝です。 それは、長期間にわたって高い産卵率を維持することができる鶏を育種してきた結果です*5

An HSUS Report: Welfare Issues with Selective Breeding of Egg-Laying Hens for Productivity

イギリス政府の独立諮問機関FAWC(畜産動物福祉協議会)は、かなりの数の産卵鶏が骨折の結果として痛みにさらされており、ケージ飼育の鶏の総死亡のうち約30%の死因は、骨粗鬆症に関連している*4という。
骨折すれば動くことが困難になり餌や水を得ることができなくなる。特に給水器はケージの高い位置に設置されているため骨折は飲水を断たれることを意味する。鶏は衰弱し、やがて死亡する。
 
生殖器の疾患
採卵鶏では、卵巣腺癌、卵管腺癌、卵管靭帯の平滑筋腫等の生殖器の腫瘍が多発する。これら生殖器腫瘍では、産卵との関連が推察され、鶏銘柄による発生率の差も指摘されている*6
 
たくさん卵を産むよう育種された採卵鶏では、腺腫(良性腺腫瘍)および腺癌(悪性腺腫瘍)は一般的だ。これは卵の生産をコントロールするステロイド性ホルモンに卵管が長期暴露されることに起因する可能性があるという*5
 
卵管腺癌
多発例では40%を越える発生率を示し、ウィルス感染や遺伝的訴因の関与が推察されている。
(症状)
産卵率の低下、卵墜症(ARC注:排卵時に腹腔内に卵黄が落下し炎症や腹水の原因となる)、卵秘症(ARC注:卵つまり)などの症状を示す。腫瘍が腹腔内に転移し腹膜炎を併発すると腹水がたまり、腹部が膨張する。
 
-「鶏の病気」鶏病研究会編
*腹部が膨張し、卵を産めなくなったため淘汰された鶏。
 
卵巣腺癌
採卵鶏の生殖器腫瘍の中でもっとも発生率の高い腫瘍である。(中略)産卵開始直後からすでに発現しているが、2年を越えると急に多発するようになる。腹腔内転移を容易に起こす。発現には下垂体の性腺刺激ホルモンの影響が推察されている。
(症状)
腫瘍の腹腔内転移や卵墜が起こり、腹水がたまる。そのため腹部が膨満し、アヒル様の歩様となる。また、産卵も停止する。
 
-「鶏の病気」鶏病研究会編
 
*中央の鶏の立ち方が異常なのが分かるだろうか?お尻が地面につき、ペタンと座っているような立っているような姿勢だ。これは腹部が膨満し地面に接してしまっているためだ。
 
卵管靭帯平滑筋腫
卵管間膜根部の靭帯を形成する平滑筋から発生する腫瘍である。卵管膜や卵管漿膜に転移巣を作るが、良性の腫瘍である。
(症状)
特別の症状はなく、採卵廃鶏の検査の際に発見される。発生率は前二者ほど高くはないが鶏群により差があり、産卵成績の良い鶏群で効率である。
 
-「鶏の病気」鶏病研究会編
 
昔に比べて卵の平均重量は増加しているが*7、大きく重い卵を産むことも鶏の体へ負担をかけている。
重い卵の生産によるホルモン活性により、卵管炎、大腸菌感染で引き起こされる生殖管の炎症にもかかりやすくなる。より深刻な影響を受けた鶏は、卵管が薄くなり、チーズ状の滲出液の塊ができ、それが体腔内にひろがってしまうこともある。そうなると更なる合併症を引き起こし、最終的に鶏は死に至る*5
 
さらに、小さな体の鶏が大きな卵を産むことは、排泄腔の脱肛の要因になる。鶏は赤い部分を突く性質があり、ケージの中に一緒に閉じ込められている他の仲間にそこを突かれると、出血、感染、さらに死に至ることもある*5
 
2005年から2008年にかけて行われたある研究*3では、白色レグホン種(採卵鶏として世界的に普及している鶏種)で20週齢以上の採卵鶏の合計6,572羽の死体を調べた結果、6572羽のうち卵管病変が1715例で記録されたという。
この報告書からは不明だが、おそらく卵管病変が見つかったのは生後1年(52週齢)以上くらいの鶏に多かったのではないだろうか。
採卵鶏はあまり卵を産まなくなる生後1年~2年ほどで「廃鶏」として出荷され屠殺される。ある獣医師は、150羽ほどの屠殺予定の「廃鶏」を解剖し、そのうち約9割が卵巣か卵管に疾患があったと言っていた。卵詰まりを起こしている鶏や、卵巣嚢腫のような状態の鶏や、卵管に腺がんのある鶏もいたという。

日齢がたち、繰り返し繰り返し異常な数の卵を産まされ続けた結果、鶏の生殖器がダメージを被るのは想像に難くない。

採卵鶏だけではない。「品種改良」は動物を苦しめる。ブロイラー乳牛でも、人の利益を優先した選択的繁殖がおこなわれ、動物は「生産病」ともいえる疾患に日々耐えている。「品種改良」と繰り返し書いたが、人間の都合の「改良」は動物にとって「改悪」でしかない。

鶏にとってプラスの「品種改良」はあるのか?

欧州食品安全機関(EFSA)のレポート*7を読むと、生産性追求した選択的繁殖ではなく、ツツキや共食いを抑制する品種改良を推奨している。鶏のツツキには遺伝的要素があるということだ。同じように、遺伝的に人との接触を恐れない鶏や、サルモネラ感染の遺伝的抵抗性を持つ鶏の育種も提案されている。
だがどうなのだろうか。結局は人為的選択に過ぎない。人を恐れない鶏をつくったらどうなるだろうか。人に対して従順でおとなしくなるよう「品種改良」が行われてきた代表的な家畜は犬だが、脳の特性の選択的繁殖を過剰に行うと最後には癲癇になると言われている。スプリンガースパニエルに生じた「スプリンガー・レイジ・シンドローム」がそれで、癲癇のように突然狂暴になる*8。人が選択的繁殖を続けてきた純粋種の犬のほうが噛みつきの問題は多いのだ。

ツツかれた鶏を苦しむのは間違いない。だが「品種改良」によるツツキの抑制が総体的に鶏の苦しみを減らすのか増やすのかは不明だ。ツツキは鶏の強い欲求に基づく探索行動で、本能だ。「品種改良」でツツキのない鶏を作りだしたとして何の弊害も生まれないとは考えにくい。

そもそもツツキが起こるのは狭く鶏の探索本能を満たすものの何もない劣悪な環境が原因なのであって、それはサルモネラ感染だった同じだ。糞だらけで砂浴びもできない不衛生な環境に鶏を詰め込むから感染するのだ。劣悪な環境をまず改善するのではなく、鶏を「改良」することで解決しようとするのは正しいことではないだろう。

だがおそらく劣悪な工場型養鶏は今後も続いていく。そのことを考えると少しでも鶏の苦痛を減らすには鶏自身を改造するしか無いという考えも分かる気はする。
それほど鶏たちはのっぴきならない地獄のような状況にいるのだ。

鶏の苦しみを減らすには

卵を食べる人がいなくなればこの問題は解決する。だがそのような絵空事をいっても、多くの人はまだ卵を食べたいと思うだろう。
それならば卵肉兼用種などの産卵数の控えめな鶏種の卵を選ぶという方法が考えられる。ロードアイランドレッドや横斑プリマスロックであれば採卵専用種のほど産卵数は多くないからだ。しかしそれでもロードアイランドレッドが年間産卵数が270~280個、横斑プリマスロックが産卵数は年150-250個、改良されたものでは実に年365個だという。卵肉兼用であっても「品種改良」はされているのだ。
ならば卵肉兼用の「地鶏」ならどうだろうか?名古屋コーチンは卵肉兼用の地鶏として有名だ。だが在来種の地鶏であっても、じつは産卵性を高めるための「品種改良」は行われているのだ。さらに名古屋コーチンは放し飼いされているとは限らない。名古屋コーチンは肉用と卵用は別々に飼育されており、卵用に飼育される場合バタリーケージで飼育されることが多いからだ。

動物の苦しみと無縁の卵を見つけるのは簡単ではない。いっそのこと食べないという選択が最も簡単だと思わないだろうか?栄養学的に卵は必須アイテムではないのだ。
だが「食べない」だけでは足りない。もう一歩進んで、できることがある。
日本の採卵鶏の親鳥は9割以上が海外で「品種改良」されたものだとは上で述べたが、国はそのような状況を打破して国産鶏種を普及させようと研究を続けている。「家畜改良」は国が推進している事業だ。農林水産省に、動物福祉を無視した無茶な品種改良をしないよう、意見を届けることも大事だ。

農林水産省意見先

 

*1 ~鶏~ 実用鶏作出までの流れ-家畜改良センター
*2 鶏の改良増殖目標 参照
*3 CYSTIC DILATATION OF RIGHT OVIDUCT IN LAYER CHICKEN P.Srinivasan* and G.A. Balasubramaniam
*4 Opinion on Osteoporosis and Bone Fractures in Laying Hens December 2010 Farm Animal Welfare Council
*5 An HSUS Report: Welfare Issues with Selective Breeding of Egg-Laying Hens for Productivity
*6 P142-144「
鶏の病気」鶏病研究会編 1995年
*7 Opinion of the Scientific Panel on Animal Health and Welfare (AHAW) on a request from the Commission related to the welfare aspects of various systems of keeping laying hens – efsa
*8 「動物感覚」テンプル・グランディン

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