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豚を苦しめる「品種改良」

「家畜」と呼ばれる牛や鶏や豚には、人為的な「品種改良」が行われています。

  • よく太り、一日でも早く出荷するために行われる「成長率の向上」。乳や卵なら「乳量」「産卵数」の増加
  • 脂肪が交雑した霜降り肉などを作るための「肉質改良」
  • より多くの子供を産ませるための「繁殖能力の向上」

こういった人間側の都合でおこなわれる「品種改良」により、動物はさまざまな生産病を抱えるようになっています。
生産病とは、家畜の能力を高めるための選択的繁殖や、多頭羽飼育に代表される工場型管理などの、生産性を極度に追及することでおこる疾患です。高速成長病ともいえるブロイラーの疾患や、高泌乳化にともなう乳牛の疾患などが代表的な例です。豚も同様で、成長率と繁殖率の向上を目指した「家畜改良」が、豚たちに大きな負担を与えています。

成長率の向上-足の障害

脚弱は、豚の主要な生産病であり、昔から世界中で問題になっています。要因には、床の状態や、拘束飼育による運動不足などさまざまなものがありますが、成長率の早い豚を選抜した「品種改良」もその一つです。

動物福祉を考慮せずに豚を早く成長させる遺伝的選択は、広範囲で深刻な本題を引き起こします。特に脚障害、そして高レベルの活動が必要な場合やストレスの多い状況に遭遇した場合の心血管機能不全など。

IFAW「RECOMMENDATIONS FOR THE ON-FARM WELFARE OF PIGS」 -SUBMISSION TO THE OIE BY THE INTERNATIONAL COALITION FOR ANIMAL WELFARE March 2016

 

ブタでも運動器病は問題となっている。英国では繁殖雌豚脂肪の28%、淘汰の9%は運動器病という。また、肥育豚でも93.8%が運動器病であったとも言う。スノコ床の間隔や角の鋭利度が影響し、発酵床では蹄の伸びすぎも問題となる。拘束飼育による運動不足は骨や筋の発達を弱め、跛行の原因ともなる。
しかしブタの場合には、増体の早さへの選抜に伴う骨形成不全、すなわち肢や関節の変形を起こす骨端軟骨や助軟骨組織の病気、が主因と考えられており、ウェルフェアを無視した選抜の罪は問われなければならない。

(2009年2月「畜産技術」アニマルウェルフェアの発想と技術開発の方向 佐藤衆介氏)

骨軟骨とは、軟骨が骨化せずその部分が懐死し、やがて骨軟骨表面にまで病変が及んでくる病気です。骨軟骨症は静かに進行します。外観上健康な4.5か月齢の豚の多くが四肢の関節にもうすでに骨軟骨症がある、という報告もあります。一見健康そうに見えてもその関節では骨軟骨症が徐々に進行しており、やがて脚弱という症状になって現れます*1

写真:日本。足が弱り、なかなか立ち上がることのできない豚

欧州食品安全機関は、「ほとんどの研究が、骨軟骨症と成長率の間に相関関係があり、高い成長率を選択することの負の副作用を示している」と報告*2しています。

足の不自由な豚は、同じ囲いに収容された豚たちと競争しなければならない場合、不利になり、食物や水にアクセスすることが困難になります。これは、彼らが痛みに苦しむだけでなく、しばしば飢えと渇きにも苦しむことを意味します。

空腹で苦しむ母豚

増体を目指した「品種改良」には、別の負の側面もあります。それは母豚が空腹に苦しむということです。より太るように「改良」されたということは、それだけ飼料要求率も高いということです。しかし子供を産むために飼育される母豚は妊娠期間中、制限給餌されます。制限給餌は母豚の生殖能力を最適化するために養豚業で実施されています。
餌を満足に食べることの出来ない母豚は、空腹に苦しみ、日本で一般的な妊娠ストールでは、母豚は目の前の柵をかじり続けたり、口にモノが入っていないのに口を動かし続けたり(偽咀嚼)などの異常行動を起こすことが知られています。

成長率の向上を目指し続ける日本

日本で「豚肉」に利用される豚の種類はおもにバークシャー、ランドレース、大ヨークシャー、デュロックですが、下の表をみてもらうと、1日平均増体重がいずれもかなり増加していることが分かります。
1980年代と現在では検定方法が異なるため大雑把な数値の変化ですが、バークシャーを除く3種においては、出荷日齢である180日齢ごろには、30年前と今とでは、20kgもの開きがあります。
これだけ増体したにもかかわらず、国のかかげる家畜改良増殖目標は、動物福祉への悪影響について議論もないまま、「引き続き増体性に関する遺伝的能力の向上を図る」ことを掲げています。

種類

1日平均増体重(g)

1980年*

 

現在**

 

国の掲げる目標値***

バークシャー640706750
ランドレース709881950
大ヨークシャー731907970
デュロック745912

1030

* 農林水産省 豚の改良動向に関する資料 
** 2015年時点の家畜改良増殖目標による

繁殖率の向上-子豚の死亡と母豚のストレス増加

繁殖率の向上を目指した「品種改良」も豚にとっては有害です。多くの研究が、産子数の増加は、豚の福祉の低下の危険因子であると結論付けています。

繁殖率の向上により、死産と産まれてきた子豚の死亡率が高くなります。後者は、低体重で産まれた子豚の割合が増加するためです。また、低体重の子豚は、生涯を通じてストレスに対する反応性が高まるなど、長期的な負の影響と関連しています。
産子数が多いと、母豚の乳首を奪い合う競争が起こります。これは母豚にとって苦痛であり、一部の子豚が乳量を十分に得ることができないことにもつながります。

IFAW「RECOMMENDATIONS FOR THE ON-FARM WELFARE OF PIGS」 -SUBMISSION TO THE OIE BY THE INTERNATIONAL COALITION FOR ANIMAL WELFARE March 2016

写真:日本。体が小さいまま死んでしまった豚

欧州食品安全機関は、産子数12頭以上になるような遺伝的選択はすべきではないとしています。

11〜12頭以上の産子数を目指した選択的繁殖は、子豚の死亡率の増加を意味します。

勧告-遺伝的選択は、母豚1頭あたり12頭の産子数を超えないようにする必要があります。

Animal health and welfare aspects of different housing and husbandry systems for adult breeding boars, pregnant, farrowing sows and unweaned piglets ‐ Scientific Opinion of the Panel on Animal Health and Welfare 29 October 2007

日本の状況

日本の母豚1腹当たりの産子数は、近年微増傾向で推移しているものの、海外よりも下回っています。しかしそれでも1頭あたりの産子数は11頭。豚はイノシシが家畜化されたものですが、そのイノシシが4-5頭ほどの産子数であることを考えると、かなり「家畜改良」されています。
もう十分ではないかと思いますが、家畜改良増殖目標は「海外の先進的な事例にひけを取らない産子数の確保」を掲げ、2025年までに11.8頭を目指すとしています。

これ以上の「改良」が必要なのか?

アメリカでは、800の企業からのデータ収集の結果、2013年から2016年の間に母豚の死亡率が約2倍に上昇したことが分かりました*4。この死亡率の上昇は母豚の脱肛に関係しています。脱肛は母豚の直腸、膣、子宮が外に出てしまう疾患で、母豚は痛みで苦悩し、治癒しなければ死に至ります。脱肛の原因は複数の因子がからんでいます。アメリカではこの問題についてまだ調査中ですが、この脱肛も高い繁殖率と決して無関係ではないでしょう。

「品種改良」は母豚の限界を超えてしまっているのです。

「品種改良」と繰り返し書いてきましたが、人間に都合のよい「改良」は豚にとっては「改悪」でしかありません。どうしても「品種改良」するなら、動物福祉にどのように影響を及ぼすのかをまず調査すべきでしょう。でも、日本ではそのような調査が行われている気配はありません。国が掲げる家畜改良増殖目標を読んでも、「改良」にあたっての動物福祉への考慮については、なにも言及されていません。
このような日本で目標の数値を掲げることはとても危険です。

私たちにできること

そもそもの話ですが、「畜産」という産業自体が動物にとっては苦しみでしかありません。「品種改良」は人間から動物への搾取がもっとも分かりやすい形で表れてると言えます。畜産業にお金を落とし続ける限り、動物は苦しみ続けます。

苦しみを減らすために必要なのは、肉を食べない、あるいは減らすという選択です。
植物性食品に含まれていて、動物性食品から十分に摂取できない栄養素はありません。

「適切に準備されたベジタリアン食は、健康に有益であり、必要な栄養素を満たしており、 いくつかの疾患の予防や治療にも利点がある」

アメリカとカナダの栄養士会の出しているこのガイドラインは、すでに国際的な同意が得られています。

でも肉を食べないというだけでは十分ではありません。現に目の前で畜産利用され苦しんでいる動物がいるからです。「品種改良」は国が予算を割いて進めている事業です。農林水産省に、最低限の動物福祉を守るよう、動物を苦しめるような「品種改良」を行わないよう、意見を届けることも重要です。

農林水産省意見先

私たち一人ひとりの行動で、苦しむ動物を減らすことができます。

 

*1 新母豚全書2008
*2 Animal health and welfare in fattening pigs in relation to housing and husbandry Scientific Opinion of the Panel on Animal Health and Welfare (Question No EFSA-Q-2006-029) Adopted on 6 September 2007
* 3 Solving hunger and aggression in gestating sows – University of Minnesota
*4 ‘We’ve bred them to their limit’: death rates surge for female pigs in the US-.the guardian

参照

Lameness in Pigs January 2014,the pig site
THE WELFARE OF INTENSIVELY KEPT PIGS Report of the Scientific Veterinary Committee Adopted 30 September 1997
Growth rate and lameness in replacement gilts December 2017
Front. Vet. Sci., 28 November 2016 | https://doi.org/10.3389/fvets.2016.00108 | A Review of Pain Assessment in Pigs
The welfare implications of large litter size in the domestic pig I: Biologica factors 22(2):199-218 · May 2013

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