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産まれてすぐに引き離される、母牛と子牛

子牛には母牛の乳を吸いたいという強い欲求があります。
実際には乳を飲まずにしゃぶっているだけということもありますが、その行為は子牛に心の安寧をもたらします。

酪農での引き離し

現代の酪農では、子牛はその願いをかなえることができません。
自然哺乳による旧来の飼育法では、子牛が自然に離乳するのは、5-6ヶ月齢です*1(6-8ヵ月とも言われています*2)。しかし酪農では、多くの場合、子牛は産まれて0日齢で強制的に母牛からひき離されます。

出産後すぐに子牛を奪われた母牛 – Animal Equality UK

母子を引き離す理由として、牛乳を早く生産ラインにのせるため、そして授乳をさせないことで母牛に早く次の発情をこさせるため、などがあげられます。いずれも経済利益のために行われています。

母牛から引き離された子牛は、母牛から搾り取った初乳(分娩後 1 週間くらいまでの乳)を人間の手で与えられます。初めに与えられる乳は母親からの抗体が必要なため、母親の乳が与えられますが、それ以降は母親のものとは限らず、余った乳が粉ミルクと混ぜ合わせて与えられます。

母牛から引き離された子牛はその後、一頭一頭が個別の囲いの中で飼育されるか、つなぎ飼いされるのが一般的です。
2014年の調査*3によると、子牛の25.0%がつなぎ飼い、50.9%が1頭での単飼だということです。

つなぎ飼い25.0%
つながない方法での 1 頭飼い50.9%
群飼20.8%
その他2.8%
無回答0.6%

*群飼:母牛と共に群飼されると言う意味ではありません。他の育成牛たちとともに群飼されるという意味です。

写真:日本 母牛から引き離されて単飼される子牛

肉牛飼育での引き離し

酪農のことばかり書いてしまいましたが、引き離しの問題は肉牛でも同じです。乳牛から産まれたオスや、乳牛と和牛を掛け合わせた交雑牛(F1)は肉牛として飼育されます。産まれてすぐに引き離されるのは同じです。

さらに乳牛が交配されない和牛飼育においても、近年は超早期母子分離法(出産後3-5日で引き離し)の導入が推進されており、母子行動をほとんどさせなくなってきています*4*5

引き離された肉用の子牛は、2014年の調査*3によると、11.9%がつなぎ飼い、20.4%が1頭での単飼だということです。

繫ぎ飼い(チェーン) 1.7%
繫ぎ飼い(ロープ) 10.2%
単飼20.4%
群飼 63.0%
その他4.3%
無回答0.4%

*群飼:肉牛飼育では、数か月間母子を同居させて飼養する昔ながらの自然哺育を行う農家もあります。ですので、割合は分かりませんが、「群飼」には母牛との群飼も入っているかもしれません。

写真:日本 母牛から引き離されて単飼される和牛の子

本来の母牛と子牛の行動

現行の母牛と子牛の管理方法は、牛本来の行動からはかけ離れています。
本来であれば、母牛は自分で孤立した場所を探し、そこで出産します。出産後は子牛をやぶの中に2〜10日間隠して保護し、そのあと再び群れの中に戻ります。現代の乳牛でもこの本能はかわっておらず、もし母牛に自由が与えられれば、農場の中でもプライバシーを保てる場所を探し、そこで出産します*2

しかし母牛にそのような自由は許されていません。特に日本はつなぎ飼育が主流で、つながれたままの状態で出産することさえ珍しいことではないのです。

強制的に引き離されるストレス

分娩後、5分接触すれば、母子の絆が形成されるのに十分で、その後一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、絆は強くなります。乳牛と子牛の早期の分離は、自然な母体と乳児の行動を妨げ、両方の福祉の低下の原因になります*2

母牛がうけるストレス

子牛の引き離しによる母牛のストレスは数値にも現われています。心拍数の急激な増加、反すうの減少、睡眠障害、そしてストレス指標の一つと言われている目の白い部分の増加も確認されています*2

子牛を引き離された母牛は、いつもすぐに苦痛を感じるというわけではありません。はじめは子牛の姿が見えなくても、もともと子牛は捕食者からかくしておかなければならないので、姿が見えないのが当然だからです。しかししばらくたって哺乳のために子牛を呼び出しても返事がなければ、母牛は動揺し、子牛を探して鳴き始めます*2

発生はストレス指標のひとつです。

子どもを奪われて鳴く母牛-Never again

子牛がうけるストレス

子牛は分娩後48時間で母親を認識することができ、引き離されたあとも3〜5週間、母親を求め続け、さらに引き離しの2年後でも母牛を認識することもできます*2

引き離しは子牛にストレスを与え、健康を損なう可能性があります。母牛から引き離される苦痛は心拍数に現われます。引き離し時、子牛の心拍数は急速に増加します*2

子牛の場合もまた、引き離しによる苦痛が遅れてくることがあります。引き離し時には、子牛は沈黙し、軽い反応だけだったものが、18時間後、母牛が戻ってくるはずなのに戻ってきていないことが分かった時に鳴き始めることもあります。*2

母子が一緒に居ることで乳量はどう変化するのか

子牛に乳を吸われた母牛の全体の乳量は減少せず、少なくとも子牛と引き離された母牛と同じ量の乳を生産します。また、一日2回の制限で子牛に乳を吸われた母牛は、引き離された母牛に比べて、1日あたりの乳量が高い(少なくとも14%高い)という報告もあります*2

ただし全体の乳量は母子が一緒にいても変わらない、あるいは増える可能性があったとしても、子牛が吸った乳量は人間の消費のための乳量からひかれることになります。子牛が20%を飲むと、搾乳時は通常の80%の収集ということになります*2

もし母牛と子牛が一緒に居ることができたら、どんな良いことがあるのか

まず第一に、母牛と子牛は幸せになれます。

いずれ屠殺されるにせよ、いえ、最終的に屠殺するからこそ、自然な行動表現ができる環境を確保するべきだと言えます。幸せは健康にもつながります。

母子行動は母牛に大きな効果をもたらします。

母子行動が生理に及ぼす効果は絶大で、子牛の吸乳行動も母牛のホルモン分泌に強く影響し、乳汁分泌や親和行動促進にかかわるオキシトシンおよび乳生産に関わるプロラクチンや成長ホルモンは、機械搾乳時に比べて2~3倍にも達することが明らかにされています。

2010年3月15日 畜産学経営情報 アニマルウェルフェアの飼養管理指針㊦ 佐藤衆介氏より引用

子牛も同様です。

引き離されず、母牛から乳を吸うことができると、3週間にわたって下痢の発作が減り、消化機能が改善されます。また他の子牛のへそを吸うという異常な行動が防止されることもわかっています。これは「乳を吸いたい」という欲求が満たされるためです*2

また、舐めるという母性行動は、子牛に安寧だけではなく、大きな健康効果をもたらします。

子牛の皮毛上上のバクテリアが、母牛からの舐行動により66-95%も激減することである。私が子供のころは母親は子供の擦り傷によくつばを塗ったりしたが、ヒトの唾液にはリゾチーム、ラクトフェリン、白血球、ラクトベルオキシタダーゼ、抗体、カチオン性タンパク質といった抗菌物質が含まれることは20-30年前から知られていた。同様な殺菌物質がウシの唾液にも存在するのかもしれない。

「アニマルウェルフェア 動物の幸せについての科学と倫理」佐藤衆介氏 より引用

引き離さないことによる商業的なメリットはあるのか

上に書いたように、子牛が母牛の乳を吸うことで人間の消費に回す乳量は減ります。さらに子牛に乳を吸わせる時間が長いほど、母牛の発情は遅くなります。
しかしいっぽうで分娩-受胎間隔は子牛に乳を吸わせた牛のほうが短いという報告もあります*2
子牛のほうは、母牛と共に暮らすことで、子牛のもっとも一般的な病気である下痢が減って健康になり、体重が増加することが分かっています。母牛から社会的スキルを学び、群れになじみやすくなるというメリットもあります*2
さらに、子牛の世話を母親に任せれば労力が減るという利点もあるでしょう(山地酪農では実際にこれが行われています)。

もし表面的な利益のみを考えるなら、母牛から子牛を奪い、子牛が飲むべき乳をすべて人間の消費に回すほうがメリットが大きいでしょう。でも長期的な視点ではどうでしょうか。
母牛と子牛の健康、さらには群全体の健康を考えると、母から子を奪い続けるのは賢い選択ではないかもしれません。
さらには働く人の意欲と言う点も重要です。
母牛と子牛を無慈悲に引き離すという現在の慣行に喜びを感じている人はあまりいないでしょう。引き離しを行わない農場では従業員の満足度が高いという報告もあります。
畜産で働きたいという人が著しく減少している今、牛からいかに搾取するかだけではなく、牛の幸せにも目をむけることが必要ではないでしょうか?

消費者に求められること

母子を引き離すという惨い行為に加担したくなければ、そのような牛乳や乳製品、牛肉や肉エキスの入ったものの購入をやめるしかありません。あるいは母子の引き離しを行っているのかどうかをメーカーに確認する必要があります。
しかし、幸いなことに最近では牛乳の代わりに豆乳やアーモンドミルク、ライスミルクなど様々な商品が気軽に手に入れることができるようになっています。肉製品についても同様で、代替品が多数でまわっています。
栄養学的に必須アイテムではない乳や肉を無理に購入する必要はないのです。

どうしても乳や肉が必要なのであれば、引き離しをしないで、牛の幸せや動物福祉を考えて飼育している少数の農家もいらっしゃいます。そういうところから購入することもできます。

私たちにはたくさんの選択肢があります。私たちの一つ一つの選択が、動物の幸せにつながっています。

写真は日本

*1 日本家畜臨床感染症研究会誌4巻3号2009 哺乳育成期子牛の栄養管理が発育に及ぼす影響 後藤篤志

*2 February 2013 Information compassioninfoodbusiness Dairy Cow-Calf Separation and Natural Weaning 

*3 平成 26 年度国産畜産物安心確保等支援事業(快適性に配慮した家畜の飼養管理推進事業)乳用牛の飼養実態アンケート調査報告書

*4 佐賀県研究成果情報 (作成 平成 30 年 2 月)新技術情報名 超早期母子分離後も母牛の増飼を継続することで繁殖成績が向上する

*5 「ウシの科学」広岡博之編集

 

 

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