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あなたの飲んでいる牛乳は健康な牛から絞られたものですか?

あなたの飲んでいる牛乳は健康な牛から絞られたものでしょうか?

牛乳を搾られている牛がどのような方法で飼われているのか想像してみたとき、牛たちが放牧されていると考えている人が多いのではないでしょうか。しかし、日本では約7割の酪農場が、主な飼養方法として牛を短いロープなどでつないで飼育する「つなぎ飼い」という方法を用いています*1。 この写真のような方法です。

つなぎ飼いのほかに、フリーストールやフリーバーンという牛が囲いの中で歩き回れるような方法もありますが、つなぎ飼いのほうが多くの酪農場で用いられています。また、日本では主な飼養方法として放牧をしている酪農場は、2012年時点でたった3パーセントほどであると推計されています*2。 写真はフリーストールのものです。

つなぎ飼いよりもフリーバーン・フリーストール、放牧の方が牛が健康であるということを示す研究結果がいくつもあります。牛乳を飲まれる方は、病気をしていたり、体調の悪い牛から絞られた牛乳より、より健康な牛から絞られた牛乳を飲みたいと思うのではないでしょうか。

牛にも運動が必要

つなぎ飼いをされている牛は前後左右に数歩動くことができるのみで歩き回ったり走り回ったりすることができませんが、乳牛が健康を保つためには運動が必要です。乳牛の栄養・行動学博士のPhillipsは論文の中で以下のように述べています。

牛の先祖は良い牧草地を見つけるために広範囲を歩き回っていたので、現代の牛も健康と生産性を保つためには運動が必要です*3。

また、欧州連合の専門機関の1つである欧州食品安全機関もレポートの中で以下のように述べています。

正常な骨と筋肉の発達のため、また、牛の体調を良く保つために運動が必要です*4。

人間やその他の動物も健康でいるために最低限の運動が必要であるのと同じように、牛も健康でいるためには運動が必要であるというのは当たり前のことでしょう。

つなぎ飼いだと跛行・足に関する病気が多い

跛行(はこう)は乳牛に多大な苦痛をもたらす深刻な病気ですが、つなぎ飼いされ、定期的に屋外での運動の機会が与えられないと牛は跛行になりやすいということが分かっています。
290の農場で4621頭の乳牛を観察した研究*では、以下のような結論が出されています。
* T1:つなぎ飼い(運動なし)、T2:つなぎ飼い(運動あり)、L2:フリーストール/フリーバーン(運動あり)

つなぎ飼育されており、運動の機会が与えられていない牛(T1)の間で跛行が最も頻繁に観察された。フリーストールやフリーバーンなどの牛をつながない飼育方法(L2)では、歩行障害のある牛の数が最も少なかった。足の裏の病気に関しても似たような結果が観測された。T1でもっとも多く発症が見られ、僅差で次にT2で多かった*5。

跛行の発症率に違いがでた理由として、この論文の著者は牛が牧草地で運動する機会を与えられていたことが原因ではないかと述べています。

つなぎ飼いの牛は体が汚れやすい

USDAの研究で以下のような結果が出されました。*スタンチョン:金属性の首かせ。つなぎ飼いの一種。

フリーストールの運用では、清潔度が3(汚い)だった牛の割合が、つなぎ飼い、スタンチョン*、ドライロットよりも少なかった*6。

USDAはこの理由について、つなぎ飼いやドライロットでは土や牧草地へのアクセスがある場合が多いため、体が汚れやすいのかもしれないとしていますが、本当にその通りでしょうか。

ロープやスタンチョンでつながれている牛たちは同じ場所から移動することができず、糞をするのも、食事をするのも、寝転がるのも、すべて同じ場所です。一日に何回か掃除をしても、排泄するたびに床が汚れ、牛たちが休む時にはその上に寝転ぶしかありません。アニマルライツセンターが把握している農場では、つなぎ飼いされている牛たちの方が体が汚く、体や尻尾に糞尿がこびりついてカチカチになってしまっており、フリーストールやフリーバーン、放牧の方が牛の体がきれいな状態のことの方が多いです。

つなぎ飼いされている乳牛の尻尾

つなぎ飼いされている乳牛の下半身

体細胞数や菌の数が増加する

牛が不潔な環境の中で飼育されているとは牛にとって不快であるだけでなく、牛のお乳の中の菌や体細胞の数も増えてしまいます。

牛が不潔であるほうが生乳中の好気性菌と低温細菌が増える*7ということが分かっています。日本の省令により、細菌数は生乳(牛乳になる前の生のお乳)では1ミリリットルあたり400万以下、牛乳では1ミリリットルあたり50000以下でなくてはいけないと定められていますが、菌が増えると風味に異常が出たりすることから、細菌数は少ないほうが良いとされています。

牛の乳房が汚いほど、生乳中の体細胞数が増えるという研究もあります*8。体細胞とは白血球などの細胞のことで、牛が病気にかかっていたり健康状態が悪いと生乳中の体細胞数が増加します。体細胞や白血球が多いということは、細菌感染や炎症が多いということです。白血球は炎症が起こった時に集まってきて、微生物などの異物を食べ、その時に死んだ白血球などが膿となります。異常のない、健康な牛から出された良い生乳であるための指標として体細胞数は少ないほうが良いとされています。

動物用医薬品を販売している企業の広報紙にも、以下のような見解が掲載されています。

生乳の体細胞数が一定値以上を超えたとき人の健康に悪影響を与えるといった確かな基準は、現在のところありませんが、体細胞数の値が高くなればなるほど、生乳が病原菌や抗生剤で汚染されている危険性は高くなります。さらに加えて、体細胞数の値が高いことは、生鮮食品である生乳が衛生状態の悪いところ、あるいは健康でないウシから生産されたものであるとの疑いをもたれることになります*9。

放牧することによって生乳中の体細胞数が減少するという研究もあります*10。自然に近い環境で過ごしていれば、動物は自分で自分の体の清潔を保つことができます。私たち人間が動物をほとんど身動きのとれない不自然な環境に置いてしまうために畜産動物たちは不潔な環境で過ごさなくてはならなくなってしまっているのです。

つなぎ飼いの方が病気になりやすい

つなぎ飼いとフリーストールを比べたとき、つなぎ飼いされている牛のほうが乳房炎という病気になりやすいということがいくつかの研究で証明されています*11 *12。 乳房炎とは、牛の乳房が細菌感染によって炎症を起こしてしまう病気で、牛は乳房に痛みを感じます。
また、エネルギー不足などが原因で体内のケトン濃度が異様に高くなってしまうことから食欲低下や体重減少などを引き起こすケトーシスという病気も、フリーストールと比べてつな飼いの方が発症率が高いということが研究で示されています*11 *13。

つなぎ飼いの方が妊娠・出産時の問題が多い

現代の乳牛たちは出産の際に人間の手助けが必要になる場合も多いですが、つなぎ飼いと比べてフリーストール/フリーバーンの牛の方が難産の割合が少ないことが分かっています*12。毎日運動している牛としていない牛では、運動をしている牛の方が分娩関連の問題が少ない*14 ため、つなぎ飼いの牛も運動不足によって難産が多いのだと考えられます。
また、フリーストールで飼育される牛の方がつなぎ飼いの牛よりも生殖能力が高いこと*11 *13、卵巣嚢腫になりにくいということ*13 も分かっています。

つなぎ飼いでも、運動の機会を

つなぎ飼いよりはフリーストール/フリーバーン、フリーバーン/フリーストールよりは放牧の牛の方が全体的に健康的であると言えるでしょう。しかし、つなぎ飼いから他の方法に移行するのが難しい場合でも、短期間放牧したり、運動の機会を与えることによって牛の健康に良い効果があるということも分かっています。例えばつなぎ飼いされている牛を夏の間だけでも放牧することにより、ケガや跛行が減ったり、舌遊びが減ることが分かっています*15。 舌遊びはストレスによって引き起こされる異常行動であり、放牧することによって身体的な健康だけでなく精神の健康も向上させることができるということが分かります。

つながれて少しの運動をすることも叶わず、不潔な環境に身を置き、ストレスを抱えていたら病気になりやすかったり、体調が悪くなりやすいというのはよく考えれば当たり前の話です。病気が蔓延している農場で生産された牛乳や、体調の悪い牛から絞られた牛乳を安心して飲むことができるでしょうか。牛乳・乳製品を購入する方は、そのお乳を搾り取られた牛がどのような環境で飼育され、健康で幸せな牛であったのかということもぜひ考えてみてください。

牛乳を考え直そう

*1 http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/H26/factual_investigation_cow_h26.pdf
*2 http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/tikusan/bukai/h2603/pdf/05_data5_rev3.pdf
*3 Phillips, Clive. Cattle behaviour and welfare. Oxford: Blackwell Science, 2002.
*4 https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.2903/j.efsa.2009.1143r
*5 Bielfeldt, J. C., et al. “Risk factors influencing lameness and claw disorders in dairy cows.” Livestock Production Science 95.3 (2005): 265-271.
*6 https://www.aphis.usda.gov/animal_health/nahms/dairy/downloads/dairy07/Dairy07_ir_Facilities.pdf
*7 https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(09)70580-6/fulltext
*8 https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(09)70580-6/fulltext
*9 http://www.nissangosei.co.jp/nissan/043.pdf
*10 https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010011745
*11 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9257454
*12 https://www.tandfonline.com/doi/full/10.4081/ijas.2014.2940
*13 https://actavetscand.biomedcentral.com/articles/10.1186/1751-0147-52-14
*14 Gustafson, G. M. “Effects of daily exercise on the health of tied dairy cows.” Preventive veterinary medicine 17.3-4 (1993): 209-223.
*15 https://www.tandfonline.com/doi/full/10.4081/ijas.2010.e59

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