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乳用の牛とは

まずはじめに、人間と同じで、牛も子供を産まなければ乳は出ません。勘違いされている人もいますが「乳牛」という種類の牛がいるわけではないのです。人為的に妊娠させられることによって牛は乳を出すようになります。

人工授精

現在、牛の繁殖はほぼ100%人工授精でおこなわれてます。

乳用に飼育される牛は、生後13~16ヶ月で初めての人工授精が行われます。
その後10か月の妊娠期間を経て出産し、搾乳がはじめられます。より効率よく乳を搾り取るために、出産後1~2カ月でまた次の人工授精が行われます。このあと→妊娠・出産→搾乳→人工授精→妊娠・出産、、と繰り返されます。出産前の2か月ほどの乾乳期間を除いて、乳用の牛はずっと乳を搾り取られていることになります。

2013年日本。すべての牛がつながれています

出産

テレビなどで牛の出産を、人間が手伝っているシーンがありますが、本来自然界では、牛は自力で子供を産むことができます。実際に完全放牧酪農を行い、自然繁殖を行っている酪農場では牛は自力で出産します。

人間が牛の赤ちゃんを胎内から引っぱり出してあげなければならないのは、牛舎で、畳一帖分のスペースで繋ぎ飼育され運動不足の母牛に、出産する体力と筋力、さらに言うなら、すべての自由を奪われて気力を出すことができないからにほかなりません。

つなぎ飼いが一般的な日本では、つながれたままで出産する乳牛もめずらしいことではありません。

子牛と母牛の引き離し

写真は2013年日本

子牛には母牛の乳を吸いたいという強い欲求があります。

しかし牛乳を早く生産ラインにのせるために、子牛は産まれてすぐに母牛から引き離されます。母牛から引き離された子牛は一頭一頭が個別の檻の中で飼育されるか、つなぎ飼いされるのが一般的です。

本来子牛は1時間に6000回、母牛の乳を吸いたがる生き物です。その多くはたんなるおしゃぶりに過ぎませんが、子牛の精神の安定に欠かせないものと言われています。その乳を吸いたいという強い欲求をかなえられず母牛から引き離された子牛は、仲間のオス牛の睾丸や柵の出っ張り部分など、乳首に似たものに飛びつくという異常行動をおこします*1

母牛もまた、子牛への強い愛情を持っています。

「母牛は子の体をなめると親子の情がうまれ、哺乳するとさらに強まり、半日でも同居した親子を引き離すと、互いを求めて鳴き、特に母牛は2~3日、子を求めて激しく咆える」

(1998年「家畜行動学」より)

「イギリスの動物保護団体RSPCAの畜産動物部、主任研究員のジョン・アヴィジニウスは、我が子を取り上げられた母牛が、少なくとも6週間にわたって嘆き悲しむ姿を見たという。子牛が連れ去られると、母牛はすっかりうちのめされた様子で畜舎の外に向かい、我が子を最後に見た場所で何時間も子供を呼び続けた。力ずくで動かさない限り、彼女はその場を離れようとしなかった。6週間が過ぎても、母牛は我が子と別れた場所を見つめ、ときには畜舎の外でしばらく待っていた」

(2005年「豚は月夜に歌う」より)

子牛が傍にいることで、母牛は心の安寧を保つことができるのです。 

母子の引き離しについての詳細はコチラをご覧ください

断角・除角

牛の性質をおとなしくさせる、飼育者が怪我をするのを防ぐといった目的で行われます。角の切断(断角)もしくは、角を根元から焼切る除角が行われます。
角の表面は爪と同じで硬くて痛みを感じませんが、角の中には神経と血管が通っており、角の切断の際には、血が噴き飛ぶこともあり、断角・除角は牛に大きな痛みを与えます。
角の断角・除角は、乳牛の85.5%以上*3に行われており、一般的に麻酔は行われていません。

断角・除角についての詳細

牛舎内でのつなぎ飼い

日本の多くの乳牛は、搾乳期間中を牛舎の中で繋がれたままで過ごします

牛乳と聞いて、広々とした草原で草を食む牛の姿を想像する方もいるかもしれませんが、実際には日本の酪農で放牧はほとんど行われていません。日本の搾乳牛の72.9%の主な飼養形態が「つなぎ飼い」です*3。ほとんどの乳牛は牛舎内での繋ぎ飼いで、ご飯を食べるのも糞をするのも寝るのも同じ場所で、一生の多くの時間を過ごします。

これでは他の牛とコミュニケーションをとることもできません。
牛は自分の舌が届かない部分をほかの牛に舐めてもらいます。舐めてもらいたい部分を相手の牛の口元に持っていき打診すると、相手の牛は一分間くらいその部分を舐めてやります。もっと舐めてほしいときは再び相手に打診し、5分から10分も舐めてもらうこともあるそうです。そうやって舐めてもらっている間、牛は目を半開きにして気持ちよさそうにウトウトし、心拍数も低下しているそうです*4
しかし繋がれたままの牛には相手の牛に打診することも、舐めてやることもできません。糞が定位置で落ちるよう、繋ぎひもは短く、方向転換すらできません。

乳量の増加と病気の増加

乳牛の品種「改良」の結果、年々一頭あたりの乳量は増加しています。

日本の乳用牛の年間平均乳量は8000kg。中には20000kg以上出すスーパーカウなどもいます。本来子牛のために必要な乳量は、年間1000kg程度(肉用牛の年間平均乳量も1000kg)*5にすぎないということを考えれば、乳用に飼育される牛が、乳量確保のためにどれだけ過酷な品種改変を行われてきたかが分かります。

この品種改変は乳用牛に大きな負担を与えています。
高泌乳量の牛ほど第四胃変位、産前後におこる低カルシウム血症による起立不能*6、乳房炎、跛行などの病気になりやすいと言われています*7

ダウナー牛症候群(低カルシウム血症を伴わない起立不能)も同じく高泌乳量の牛に多発すると言われています*8

病気になった牛は、改善が見られなければ屠殺されます。

品種改変による乳量増加の詳細はコチラをご覧ください

2013年日本 起立不能になった牛

屠殺

牛の寿命は本来20年ほどですが、牛乳のために飼育される牛たちは病気になりやすく、乳牛として役に立たなくなると、生後5,6年で、屠殺されます。
日本の乳用牛の平均除籍産次は2012年で3.5産*9。除籍とは牛舎から牛が出ていくことです。出ていく先は、別の農家に売られる場合もありますが多くの場合は屠殺場です*10

乳用牛のライフサイクルはとても速いものになっています。使い捨てと言っても過言ではありません。

乳を搾られ続けたあとの牛の肉は硬いため、安値で取引され、加工食品の原料や、肥料や革製品などにも利用されています。

わたしたちにできること

スーパーで販売されている牛乳のほとんどが、牛に多大な犠牲を強いて作られています。日本における乳牛の農家一戸あたり平均飼養頭数は72頭(2012年)。EUの33頭と比較すると倍以上と高く、年々1戸あたりの飼育頭数は増えており、生産効率を重視した大規模化が進んでいます。
私たちには牛乳を飲まないという選択ができます。飲む量を減らすという選択をすることもできます。また、動物福祉に配慮された牛乳を買うという選択もできます。
1ヘクタール当たり1、2頭という飼育密度で、牛が自分で土地から草をとって食べて、その糞が土地に還元されるという自然循環型、自然交配・自然分娩、数カ月は母と子を一緒に生活させて、角の切断もしていないという酪農家もいます。そういう牛乳を購入することもできます。
私たち一人ひとり選択で、牛の苦しみを減らすことができます。

*1 「黒い牛乳」中洞 正著

*3 畜産技術協会 平成26 年度国産畜産物安心確保等支援事業(快適性に配慮した家畜の飼養管理推進事業)乳用牛の飼養実態アンケート調査報告書

*4 「アニマルウェルフェア 動物の幸せについての科学と倫理」佐藤衆介著

*5 2013年「ウシの科学」広岡博之編

*6 家畜診療所だより(畜産技術ひょうご)117号 発行:2015年2月9日) 題名 : 管内における乳牛の分娩性低カルシウム血症の実態調査と検討 筆者 : 兵庫県農業共済組合連合会 淡路基幹家畜診療所 三原診療所 

*7 乳牛の供用年数の延長を考える 供用年数短縮の要因 扇勉

The impact of genetic selection for increased milk yield on the welfare of dairy cows Animal Welfare, Volume 19, Supplement 1, May 2010, pp. 39-49(11)

*8 ダウナー牛症候群乳熱早期発見 治療を 家畜疾病図鑑Web

*9 家畜改良事業団「乳用牛群能力検定成績のまとめ」

*10 酪農だよりひろしま 「牛が牛舎から出て行った理由がわかりますか?」~検定成績表の除籍理由を活用しよう!~

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