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アニマルウェルフェアを上げなくてはならない5つの理由

日本において肉の消費量、特に鶏肉豚肉の消費量は過去60年上がり続けている*1。1960年、日本では牛肉はもちろん、鶏肉も食べられていなかったに等しい。鶏肉は1960年には1年間1人あたり0.8kgに過ぎない。1年で1羽に満たない程度の犠牲だったのだ。2020年には13.9kgに増大した。17倍だ・・・。豚肉も11.7倍、牛肉は5.9倍で、牛肉だけはここ数年は増加率が下がっている*2

※農水省より*1

アニマルウェルフェアも上がらず、消費量も増え続ける日本の消費意識は、近年の持続可能性への警鐘を全く反映していないものと言える。アニマルウェルフェアの重要性をもっともっと多くの人が正しく理解して、本気で向上させなくてはならない理由がある。

理由1 薬剤耐性菌でたくさんの人が死んでしまうから

抗生物質(抗菌剤)が効かない強い菌が増え続けている中で、畜産動物に対して約3分の2の抗生物質が与えられている。2050年にはがんの死亡者数を遥かに超えて1000万人/年が薬剤耐性菌が理由で死ぬと予測されていて、今年その達成は早まる勢いで広がっていることが発表された。

アニマルウェルフェアを上げ工場畜産からの脱却を図らなければ予測どおりになる又はもっと悪いことになるだろう。動物たちが薬でなんとか健康を保っていられるという状況を脱しなければならないからだ。

おもったよりも薬剤耐性菌は身近で、すでに多くの人の体の中にある。そして鶏肉、豚肉の中にある。薬剤耐性菌はプラスミド上にある遺伝子を常在菌が取り込んでしまうこともあり、サルモネラやカンピロバクターを鶏肉経由で体に入れたとした場合にその症状(食中毒や下痢など)がなかったとしても危険だということだ。ちなみに肉についた菌は高温で1分以上確実に焼けば死滅するが、菌はまな板や包丁やシンク、その他接触した場所に付着している。

菌たちは耐性をどんどん獲得していく。これは止めることはできない自然の摂理だ。

「2017 年以降、承認された抗生物質は 12 種類のみであり、そのうち 10 種類は、抗菌薬耐性 (AMR) のメカニズムが確立されている既存のクラスに属してい」て、「平均して、ほとんどの新規薬剤は市場参入後 2 ~ 3 年で耐性が報告されてい」るのだ*3。日本では多くの人は癌で死亡しているという統計だが、直接死因ではなく原因死を統計として出すため、統計として出て来ないが癌が死因になっている人も最終的には菌で死亡している可能性もある。侵襲性肺炎球菌感染症による死亡率は19%という研究*4もある。

自分たちの命を縮める原因を、お肉を、卵を食べたいという欲で作り出し続けている。

※抗生物質フリーが良いわけではない。適切な治療はアニマルウェルフェアの一部であり抗生物質フリーを確約する農場はアニマルウェルフェアを放棄している可能性が高いと言える。

理由2 次のパンデミックを防ぐため

2020年に国連環境計画と国際家畜研究所が人獣共通感染症の主要な人為的要因の一つに、「動物性タンパク質の需要の高まり」とそれにともなう「持続不可能な集約畜産」であることを指摘した。つまり、大量生産を支える工場畜産のことだ。

2022年に採択された国連環境計画の決議「アニマルウェルフェア、環境、持続可能な開発のつながり」のコンセプト資料にも「動物の搾取と非人道的な利用が、生物多様性の喪失、気候変動、汚染という3つの環境危機、および現在の世界的な新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックの出現の主要要因であること」と明記されている。

COVID19は、それまでなかった死因を1つ増やした。今後、畜産を起源として新たな死因が生まれることを指摘しているわけだ。過去にも多くの人を殺したパンデミックが畜産起源で発生しているし、今後もそれが起きると指摘されているところだ。

COVID19のように一度発生したパンデミックや感染症は人間の思惑通りには収束できない。取り返しがつかないことになる前に、アニマルウェルフェアを上げて畜産物の量を減らす必要があるということだ。この2つは片方だけではダメで、両方優先度の高いことだ。

理由3 地球が持たないから

工場畜産の中に閉じ込められている動物たちが食べる餌、膨大な量だ。人間が直接食べれば良い植物を動物に食べさせることによって、本来必要な農作物の量を遥かに超える農作物が必要になっている。鶏肉1kgを食べようと思えば4kg程度の飼料が必要になる。畜産動物のために利用される農地は75~80%にも及ぶが人間が畜産物から得るカロリーは18%にすぎない。ほとんどの動物が狭くて小さな場所に閉じ込められていて、その膨大な農地は飼料生産に使われている。

今畜産物の消費はどんどん増え続けていて、農地がもっともっと必要になっている。だから森林破壊は当然の結果なのだ。

さらに、飼料生産は大規模な単一作物の生産ということになる。そうすると土地の劣化が早く、土地が劣化すれば次の農地が必要になり、森林開発は更に必要だ。

環境問題、気候危機、サステナビリティ、、、色々騒がれているが、森林破壊をしながら取り組むよりも、原因(工場畜産)を取り除くことが先ではないのだろうか。

理由4 日本の食産業が衰退してしまうから

畜産が他国から数十年遅れを取っていることは、元々そうなので議論から外すが、日本の食品産業が遅れているわけではない。日本食は世界中に受け入れられ、日本は加工や食のアイデアで世界をリードできる存在、、、だったと思っていた。

でも、その素材が悪かった~!ということになっている。機関投資家向けの畜産動物のアニマルウェルフェアの評価では、日本の食品企業は最低ランクに格付けされ続けている。

今、加工の品質は世界共通で、どこでも高品質なものを作り、高品質に輸送できる。そんな中でアニマルウェルフェアという品質が問われている。日本の食品を扱う企業は、国内からいいものが調達できないなら、海外からいいものを調達し、アニマルウェルフェアを上げていく必要に迫られるだろう。とくに上場企業はそうなるし、上場企業と取引のある企業も、また海外の印判ウンド需要を狙う企業なども同様だ。

日本の食の評価を下げないために、アニマルウェルフェアを国際水準まで上げていく必要がある。政府のように日本独自のアニマルウェルフェアがあるなどと言い訳をしている場合じゃない。

理由5 鶏、豚、牛たちは私達と変わらない動物だから

多くの人がこの理由だけで動物性食品を減らし、避けるようになっていることを忘れてはならない。

だが、残念ながら動物性食品を避けるだけでは、動物を救えない。最も苦しむ、最底の状況に置かれた動物こそが、工場畜産の中に閉じ込められている動物であり、その動物たちこそが、日本で最も、いや世界で最も数が多い陸生動物だからだ。

アニマルウェルフェアをどんどんあげて、畜産物の量もへらしていくこと、両方が必要だ。そしてアニマルウェルフェアを上げる意志のない畜産業者には退場いただかなくてはならないのだ。畜産を行う人にも、畜産物を調達する企業にも、畜産物を食べる人にも、そして畜産に多額の税金を費やすこの国に済むすべての人に、アニマルウェルフェアを向上させる責任がある。

動物たちを残酷な飼育の中に取り残してはいけない。

*1 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-04.html
*2 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/
*3 https://www.who.int/news/item/22-06-2022-22-06-2022-lack-of-innovation-set-to-undermine-antibiotic-performance-and-health-gains
*4 https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2432-iasr/related-articles/related-articles-461/8168-461r05.html

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