世界第2位の食肉会社 Tyson Foods（タイソンフーズ） は、この夏から当社が開発した植物性のたんぱく質代替品を新発売すると発表した。
以前からTyson Foodsは別の植物性肉会社 Beyond Meat （ビヨンドミート）に投資をしていたが、今年4月に投資資金を回収し、自社の代替品を生産する意志を表明した。
ある調査によると、この代用肉の市場は2023年までにアメリカだけで25億ドルにも上る見込みである。(*1)

https://www.livekindly.com/largest-meat-producer-us-vegan-protein/

この様な取り組みをしている企業は他にもあり、特に欧米では多数みられる。

カナダ最大の食肉会社 Maple Leaf Foods は2017年に植物性肉では既に有名な Lightlife と Field Roast を買収し、2018年10月には Greenleaf Foods という植物性食品の会社を設立した (*2)。
今年4月、Maple Leaf 社は3.1億ドルを使い北米最大の肉代替品加工施設を建設することを発表。アメリカのインディアナ州で2020年末までに完成する計画である。(*3)

イスラエル最大の食肉会社 Soglowek は1987年以来 Zoglo’s というブランドで肉の代替品を生産している。現時点ではヴィーガン製品以外には残念ながら卵白が多少使用されている。
2018年には、Zoglo’sの利益の20%をイスラエルの培養肉会社 SuperMeat に寄付することを表明した (*4)。

イスラエルのSoglowek社の肉代替品ブランドZoglo’s（zoglos.com）

ヨーロッパでも大手の企業から比較的小規模な肉会社まで数多くが植物性肉の製造・販売に取り組んでいる。

ヨーロッパ最大の鶏肉会社 PHW Gruppe は Wiesenhof というブランド内で植物性のソーセージやシュニッツェル（ドイツ風のとんかつ）等を出している。
このドイツの会社は2018年には植物性たんぱく質の部署を新しく設け、上記のSuperMeat社にも投資し、 Beyond Meat との協力も始めた (*5)。

ドイツPHWグループの鶏肉専門会社Wiesenhofの植物性商品（wiesenhof-online.de）

もはや、ドイツにある数多くの食肉会社の約半数は代用肉に取り組んでいるようだ (*5)。
Recker Convenience 社は2013年に LikeMeat （ライクミート：肉もどき）という事業を始め、2016年からは食肉大手Heristoのもとで様々なヴィーガンの代用肉商品を販売している (*6)。
Rügenwälder Mühle 社は2014年から植物性のハム・ウィンナー・ミートボールなどを販売し、2018年度には会社の売上約2.1億ユーロの内30％が植物性の商品から来ている (*7)。
Vossko社は消費者向けの代替肉商品の他に企業向けに大豆ミート6種類を10kg単位で販売している。
その他、Meica・Windau・Seiber・Ponnath・Rasting・Gutfried などのドイツの食肉会社も植物性の肉を扱っている。

ドイツHeristo社の元で運営されている LikeMeat の完全植物性代用肉（likemeat.de）

オランダでは大手Enkco社が1990年以来、ViveraというブランドでビタミンB12を含んだ多様な代用肉商品を出している。100％植物性の商品以外は卵蛋白が含まれている。
スイスを代表する食肉加工会社Oriorも20年以上前から数多くのベジタリアンやヴィーガンの肉製品に取り組んでいる。
その他、ヨーロッパ各国の食肉会社が肉の代わりになる食品を提供している（下表参照）。

オランダのEnkco社のベジタリアンブランドVivera（vivera.com）

アメリカのもう一つの大手食肉加工会社 Hormel Foods も、この植物性食品の市場に参入することに興味を示している (*8)。

現実的に、このような流れで動物たちの犠牲は減っていき、肉社会から菜食社会へ変わって行くのだろう。

2019/6/30追加：
日本の食肉会社丸大食品も2018年8月には既に「ごちソイ」というシリーズで「お肉のような大豆バーグ」という食品を出していたことが判明した*9。2019年の春には「大豆ライフ」というブランドで「大豆のお肉を使った」キーマカレーと麻婆豆腐の素を発売している。

2019/8/26追加：
世界第一位の豚肉会社Smithfieldも遂に植物性代替肉食品のブランドを立ち上げる。
Pure Farmland という名前で完全植物性のハンバーグ・ミートボール・ひき肉が9月中旬に発売される予定。*10
2種類あるミートボールの内の一つはチーズ入りで、原材料名には「Vegan Dairy Free Parmesan Style Alternative」と、ヴィーガンという言葉も使われている。

2019/12/19追加：
伊藤ハムが「植物肉」を使った家庭用商品を2020年2月に発売する。味や食感を食肉に似せた大豆由来の素材を使い、ハンバーグや唐揚げなどの商品を展開する。米国では大手チェーンがハンバーガーに採用するなど植物肉が急速に広がる。食肉を本格的に代替する時代をにらみ、植物肉の開発競争が日本でも本格化する（「伊藤ハム「植物肉」に参入　家庭向け、市場拡大にらみ」2019/12/19 日本経済新聞より引用）。

2020/1/14追加：
食肉国内最大手の日本ハムが3月、植物性の材料を使う「植物肉」市場に参入する。大豆を主原料にしたハムやソーセージ風の商品を発売する。動物保護や健康志向の高まりといった観点から植物肉の需要は世界で急増し、2030年には9兆円市場になるとの予測もある。（「日本ハムが植物肉、3月から参入　健康志向で需要増」 2020/1/14 日本経済新聞より引用）

*1. https://edition.cnn.com/2019/05/06/business/tyson-alternative-protein/index.html
*2. https://www.mapleleaffoods.com/who-we-are/our-history/
*3. https://www.mapleleaffoods.com/news/maple-leaf-advances-leadership-in-rapidly-growing-plant-based-protein-market-with-construction-of-a-world-class-production-facility/
*4. https://www.gfi.org/meat-processor-donates-to-clean-meat-startup
*5. https://www.gfi.org/leading-eu-poultry-producer-takes-a-big-step
*6. https://likemeat.de/about-us/
*7. https://vegconomist.com/products-and-launches/rugenwalder-muhle-adds-to-vegan-range-with-launch-of-new-products/
*8. https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-10-22/hormel-looks-to-3-7-billion-meat-alternative-market
*9. http://www.marudai.jp/news/index_180806.pdf
*10. https://www.globenewswire.com/news-release/2019/08/12/1900653/0/en/Smithfield-Foods-Launches-Plant-Based-Protein-Portfolio-Under-Pure-Farmland-Brand.html