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創業107年目の決断 ケージフリーに移行!「本物の菓子作りに妥協なし」和菓子水野屋

老舗和菓子店の決断

大正2年創業、宮崎県で3店舗の和菓子店を営む老舗和菓子店水野屋が、ケージフリー宣言をしました。100年以上愛され、受け継がれてきた水野屋の歴史に、アニマルウェルフェアの新しいページが始まったのです。

養鶏所が多い宮崎の地で和菓子店を営む水野屋は、もとから良い卵の選択には意欲的でした。水野屋の菓子の味をひきたてる卵を妥協せずに使用することで、大正以来の味を守ってきたのです。しかし和菓子で人の心を和ませたいと願う3代目社長水野裕介氏は

”採卵鶏のことを考えると複雑な心境になった”  といいます。

”体にやさしく人を幸せにする和菓子に、採卵鶏の苦しみは似合わないのではないか…”

水野屋の味を受け継ぐ菓子職人であり経営者でもある水野氏は、じつは過去にも平飼い卵使用に挑戦していました。しかし残念ながら当時の平飼い卵の質は、味や安全性ともに水野屋のクオリティに合わなかったそうです。

ケージフリーを支える大規模平飼い養鶏場との出会い

ところがこのたび、アニマルライツセンター発ケージフリー・エッグスマートキャンペーンにおいて、水野屋とARCとの出会いがありました。引き合わせてくれたのはARC支援者の方々です。そしてかねてよりARCが卵について情報交換していた大規模平飼い養鶏所、フュージョン(株)を紹介することになったのです。

フュージョン(株)は水野屋と同じ宮崎県内で、エイビアリーシステムを導入し大規模平飼い鶏舎を経営しています。同社はアニマルウェルフェアの考え方に即した平飼い卵を量産し、価格も安定しています。しかも安定しているのは価格のみならず、安全性に関しても、信頼される水準を容易に維持できる環境が、100年の歴史を持つ老舗和菓子店から評価されました。

水野屋の経営理念

それでも水野屋が主力商品に使用する卵を、ケージ卵の3倍近い価格の平飼い卵に変更するのは、経営的には大きな迷いがありました。

”この変革を水野屋のお得意様は受け入れてくれるだろうか?”

…じつはその英断の陰には、大正2年創業水野屋の歴代経営者に受け継がれてきた、菓子に賭ける並々ならないスピリットがあったのです。大正2年に創業した初代水野屋の歴史は、当時の大都会、長崎で菓子作りを学んだ初代経営者による飴玉売りからはじまりました。そのころ宮崎では甘いものが珍しく、飴売りに始まった菓子店は繁盛し、商売は順風満帆だったそうです。しかし戦争がはじまり砂糖が統制品になると、水野屋自慢の和菓子も、砂糖の代替品である「サッカリン」という添加物を使わざるを得なくなりました。すると現社長裕介氏の祖父にあたる初代社長は、あっさりと水野屋の看板を下ろす決断をしたのです。

このころの「サッカリン」といえば、美味しいとは言えない甘味料でした。なので本物の菓子でなければお客様に売ることはできないと考える初代水野屋社長には、廃業のほかの選択はできなかったのです。和菓子屋の若旦那として育った現社長の父も、店を継ぐことなく働きに出されました。そのころ宮崎県内には水野屋を含めて2軒の和菓子屋があり競合していましたが、水野屋が閉店したことにより、サッカリン和菓子を売り続けたもう一軒の和菓子屋はかなりの大儲けをすることになったそうです。しかし本物の砂糖が手に入るようになるまで、水野屋初代社長の「本物の和菓子でなければ売れない」という考えは変わることはありませんでした。

地方都市にたたずむ和菓子店水野屋には、このような壮絶な歴史がありました。しかし「本物でなければ売ることはできない」という経営理念が100年続いた老舗経営の根幹にあるからこそ、今回のケージフリー宣言も実現したのだと思います。経営者の人柄が客を呼ぶとはこのことで、だれもが苦しかった戦時中でさえ、粗悪な菓子を売らなかった水野屋は、廃業しながらも地域の信頼と愛着を勝ち得ました。そしてその後、経営再開した水野屋は、風雅な和菓子店を県内に3店舗も展開する安定企業に成長したのです。

現在水野屋の主力商品で卵を使用するものは、カステラ・どら焼き・ボーロと、みな江戸時代に九州地方へ伝わった伝統菓子です。あたりまえですが伝来当初はすべて平飼い卵が使用されていました。バタリ―ケージは戦後にアメリカから伝わった工業畜産ですから、ケージ卵は日本の伝統和菓子の材料にはふさわしくないと、水野社長は判断しました。そこには「本物の和菓子でなければ売れない」という水野屋の創業の理念が貫かれてたのです。

ケージフリー宣言は企業の未来力を高める

水野屋は経営的なリスクを覚悟で平飼い卵に変更する決断をしてくれました。水野屋の理念は現社長の若い息子夫婦にも受け継がれています。しかし企業にとって、10年先の心豊かな食生活のため、アニマルウエルフェアにコストをかけることは、決してデメリットではありません。水野屋がケージフリーを宣言することで、顧客の意識も変わり、顧客は別の商品の選択の際にも、アニマルウェルフェアを意識するようになるでしょう。

さらに水野屋のケージフリー商品が売れることで、同業他社が水野屋の戦略を意識し、平飼い卵の調達方法を模索しはじめます。しかし残念ながら現状では、菓子のような大量の平飼い卵を必要とする需要に応えられる業者は少ないので、その分供給力が刺激され、平飼い養鶏業が闊達になるきっかけを作ります。一企業の勇気あるケージフリー宣言は、その業界全体のケージフリーを牽引するのです。そして水野屋のような先駆者は、その追い風を受けて、さらにその先のビジネスに進むことができるでしょう。

大正2年から100年続く老舗和菓子店を、次の世代に受け継ぐため、経営者が今できることは何か。

バタリ―ケージの歴史を変えていくために水野屋が本業を通じて貢献することは、自社にアニマルウェルフェアという潜在力・未来力をつけることにつながります。ケージフリー宣言とは商業的に言い換えれば、その企業がビジネス上ローリスクであるというという安全宣言でです。さらに企業自身の将来的な持続力を証明する宣言とも言えますから、企業がコストをかける対象として十分に価値のあることです。

大正2年創業の和菓子水野屋 西都本店
宮崎県西都市中妻1-12
TEL.0120-098353

http://www.wa-mizunoya.com/

※ケージフリー宣言を機にホームページリニューアル中につき、商品の一部に記事と異なる原材料表記の商品があります。

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