アニマルライツセンター代表の岡田千尋は、日本エシカル推進協議会(JEI)副会長として、国際化粧品規制協力会議(ICCR)のステークホルダー会合に登壇しました。
ICCRは、日本、EU、アメリカ、カナダなど各国の化粧品規制当局が参加する国際会議で、化粧品の安全性や国際的な規制の調和について議論が行われています。
今回の発表では、「The Future of Ethical Cosmetics(エシカルな化粧品の未来)」をテーマに、化粧品業界がこれから向き合うべき課題について提案しました。
化粧品の動物実験は、今や倫理的な課題であるだけでなく、企業経営上の重要課題にもなっています。
一方で、コラーゲンやグリセリン、ヒアルロン酸、ケラチン、ラノリンなど多くの動物性原材料については、その原料となった動物がどのように飼育され、どのような環境で生産されたのか、トレーサビリティが行われていない現状があります。
発表では、動物福祉だけでなく、人権、環境、持続可能性の観点からも、動物性原材料をサプライチェーン全体で把握し、責任ある調達を進める必要性を提案しました。
また、アパレル産業で進み始めているような動物由来素材からの転換についても紹介し、化粧品業界でも将来的な移行を検討すべきであることを訴えました。
今回のICCRでは、アニマルライツセンターも参加する「美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会(CFB)」もステークホルダーとして参加しました。発表はJAVA理事の亀倉氏とPEACE代表の東氏がおこないました。
CFBからは、すべての加盟国間で、化粧品における動物実験は廃止されるべきであるという共通認識を持つこととともに、加盟国が化粧品業界における動物実験を禁止する目標期日を設定し、この目標を達成するための具体的なロードマップを作成することを提言しました。
残念ながら、各国の規制当局など参加者から本発表に対する質問や意見はありませんでした。
なお、企業・業界団体側のステークホルダーとしては、ドイツおよびフランスの化粧品業界団体も発表を行いました(発表内容の詳細は確認できませんでした)。
一方、会議終了後には、アメリカの委員から声を掛けられ、「動物実験だけでなく、責任ある調達についても取り上げたことは非常に重要だった」と感謝の言葉をいただきました。
また、日本では現在も化粧品の動物実験を禁止する規制が存在しないこと知り、驚いていました。
世界では、化粧品の動物実験禁止だけでなく、サプライチェーン全体の透明性や責任ある調達への関心も高まりつつあります。
アニマルライツセンターは、今後も日本エシカル推進協議会や美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会などと連携しながら、動物実験の廃止と、動物にも人にも環境にも配慮した化粧品産業の実現に向けて取り組んでいきます。
「美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会」では、化粧品の動物実験禁止を求める署名活動を行っています。締め切りは8月末です。
日本では、化粧品の動物実験はまだ禁止されていません。この問題は、まだ終わっていません。
化粧品のために動物が苦しむ時代を終わらせるために、皆さまの力が必要です。署名へのご協力をお願いいたします。

JEIでは、「エシカル基準」を策定しています。この基準は、
という8つの分野で構成されています。
私たちは、エシカルな化粧品とは、安全であるだけでは十分ではないと考えています。人、動物、社会、そして環境すべてに配慮したものであるべきです。企業には、これらすべての分野で改善を進めていただきたいと考えています。
消費者は、もはや製品だけを評価しているのではありません。その製品をつくる企業そのものを評価しています。日本でも同じ変化が見られます。
2023年、アニマルライツセンターが実施した消費者調査では、74.4%が化粧品の動物実験に反対しました。女性では80%を超えています。また、61.1%が「企業は動物実験を行わずに製品を開発すべき」と回答しました。
これは、消費者が企業に責任ある行動を期待していることを示しています。現在、動物実験は倫理的な課題であるだけでなく、ビジネス上の課題でもあります。機関投資家や消費者は、企業が動物実験から脱却することをますます求めています。
では、原材料はどうでしょうか。
多くの化粧品原材料は動物由来です。
しかし、消費者、そして多くの場合は企業自身でさえ、その原材料がどこから来て、どのように生産されたのかを十分に把握できていません。
例えば、
コラーゲン、
グリセリン、
ヒアルロン酸、
ラノリン、
ケラチン、
そしてエラスチンです。
これらの原材料の背後には、実際の動物たちがいます。豚では、コラーゲンやグリセリンは、母豚がほとんど身動きできない妊娠ストールで飼育される生産システムに由来している可能性があります。鶏では、コラーゲンやヒアルロン酸は、ケージ飼育、高密度飼育、極端な急速成長と結びついている場合があります。魚では、高密度養殖や、と畜時の動物福祉の欠如が懸念されています。羊では、ラノリンやケラチンが、ミュールジングや毛刈り時の不適切な取り扱いと結びついている場合があります。
こうした問題は消費者には見えにくいものですが、サプライチェーン全体に存在しており、もっと注目されるべきです。また、こうした生産システムは、薬剤耐性菌や将来のパンデミックのリスクといった、より広い社会的課題にも関係しています。
多くの動物由来原材料は、もはや動物製品には見えません。粉末や液体、専門的な化学成分のような形になっています。そのため、その由来や生産方法は見過ごされがちです。しかし、それらは今なお動物と畜産システムから生まれています。
企業は、その原材料となった動物が自由に動くことができたのか、水を飲むことができたのか、苦痛を伴う処置を受けていなかったのかを知っているでしょうか。
トレーサビリティがなければ、企業は原材料に伴うリスクを評価できません。今日のグローバル経済において、トレーサビリティがないことは当たり前であってはなりません。追跡できない原材料については、本当に責任ある調達と言えるのか慎重に考える必要があります。政府は、不透明なサプライチェーンのリスクについて社会の理解を促進すべきです。またICCRは、トレーサビリティの改善と国際的な制度調和を進める重要な役割を果たすことができます。
2024年、私たちは「エシカル通信簿」を通じて9社を評価しました。多くの企業は、すでに動物実験に反対する方針を持っています。しかし、動物由来原材料の調達、動物福祉方針、原材料レベルでの情報開示については、公開されている情報はごくわずかでした。
消費者は、企業よりも原材料の由来や生産方法についてはるかに少ない情報しか持っていません。この情報格差は重要な問題です。社会から声が上がっていないからといって、リスクが存在しないわけではありません。現在、消費者は適切な選択をするために必要な情報を持っていません。透明性は、説明責任であり、消費者保護の問題でもあります。
動物福祉は、企業ガバナンスの課題になりつつあります。動物に関する問題は、これまで何度も消費者行動、投資家の期待、企業の評判に影響を与えてきました。動物由来原材料には、動物福祉だけでなく、人権、環境、違法行為、持続可能性など、さまざまなリスクが伴います。企業は人権や環境のデューデリジェンスを重視していますが、なぜ動物由来原材料だけが十分なサプライチェーン・デューデリジェンスの対象外なのでしょうか。動物、労働者、土地、水、生態系に関わるリスクを理解しないまま、原材料を使い続けるべきでしょうか。
企業が率先してこれらの課題に取り組むのか、それとも社会問題となってから対応するのかが問われています。私たちは、ICCRが責任ある調達、デューデリジェンス、企業ガバナンスの議論の中に、動物由来原材料を位置づける役割を果たせると考えています。
多くの動物由来原材料は、工場畜産や集約的養殖から生まれています。これらのシステムに伴う動物福祉、環境、持続可能性のリスクは、すでによく知られています。こうした課題は、食品分野では長年議論されてきました。
それにもかかわらず、多くの化粧品原材料はいまも同じサプライチェーンに依存しています。
しかし現実には、これらのリスクに対処することは容易ではありません。動物由来原材料は、レンダリングや加工を経て、粉末や液体など元の動物とはかけ離れた形になります。それを追跡するには、農場、孵化場、屠殺場、加工施設、飼料生産、さらには国際的なサプライチェーン全体を把握する必要があります。
そのため食品業界でも、植物由来、発酵由来、その他の次世代素材への転換が進んでいます。これは、動物福祉、環境、そして長期的な持続可能性に貢献するものです。
私たちは、畜産や養殖の副産物に依存した原材料を見直す時期に来ていると考えています。
アパレル業界ではすでに動物由来素材からの転換が進んでいます。化粧品業界も、この変化に加わるべきです。
これらの課題は、国境やサプライチェーンを越えて存在しています。一つの企業、一つの団体、一つの国だけで解決することはできません。だからこそ、ICCRは重要です。ICCRはこれまで、化粧品業界が直面するさまざまな課題の解決に重要な役割を果たしてきました。これからの化粧品産業には、規制当局、企業、研究者、市民社会の協力が不可欠です。ICCRは、それらを結びつけることができる特別な立場にあります。
化粧品の動物実験を終わらせましょう。
そして、動物由来原材料という次の課題にも取り組み始めましょう。
その原材料の背後では、今この瞬間も何十億もの動物が深刻なアニマルウェルフェア上の問題を抱えた環境で生き、命を落としています。動物たちは待つことができません。
ICCRが、動物実験の廃止と責任ある調達の推進、その両方をさらに前進させることを期待しています。