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OIE陸生動物衛生規約 第7.11章 アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム(日本語訳)

OIE(世界動物保健機関・国際獣疫事務局)の陸生動物衛生規約の7章はアニマルウェルフェアについてですが、日本政府はこの作成に携わり税金を使っているにも関わらず、日本語訳を公開していません。OIEは獣医師が集まり科学的根拠を持って、また世界のレベルに合わせながら国際基準を作っており、畜産後進国である日本にとっては学ぶべきことが多数あります。

アニマルライツセンターは最低限このOIE動物福祉規約を守って欲しいと考えており、日本語訳を行い公開しています。

【アニマルライツセンター訳】2015年版

https://www.oie.int/index.php?id=169&L=0&htmfile=chapitre_aw_dairy_cattle.htm

 

第7.11章 アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム

第7.11.1条 定義 

乳用牛生産システムは、牛乳の生産を意図して行われる牛の繁殖、育成及び管理の一部又はすべての作業を含むあらゆる商用牛生産システムと定義される。 

第7.11.2条 適用範囲 

本章は、乳用牛生産におけるウェルフェアの観点からの側面を取り扱う。 

第7.11.3条 商用乳用牛生産システム 

商用生産における乳用牛は、舎飼若しくは放牧型のシステム又は両方の複合型システムにおいて飼育される場合がある。 

1.舎飼型

このシステムでは、牛は、舎内又は野外の成形表面上で飼育され、飼料、収容場所、水などの動物が最低限必要とするものの提供を完全に人に依存している。畜舎のタイプは、環境、気候条件及び管理システムに応じて決められる。この舎飼型システムでは、動物は、係留されない場合もあれば、繋がれて収容されている場合もある。

2.放牧型

このシステムでは、牛は、舎外で生息し、食餌の選択、飲水及び収容場所の利用に関し、ある程度自律している。放牧型システムは、搾乳に必要な建物を除き、いかなる建物も必要としない。

3.複合型システム

このシステムでは、牛は、舎飼型及び放牧型生産システムのさまざまな組み合わせにおいて管理され、それが同時に行われる場合もあれば、天気又は牛の生理状態に応じて変更される場合もある。

第7.11.4条 乳用牛のウェルフェアの基準(測定指標)

表現形質の基準、とりわけ乳用牛の状態に係る以下の基準は、アニマルウェルフェアの実用的な指標になり得るものである。当該システム及び動物管理業務の計画にも配慮が払われるものとする。本指標及びその適切な閾値の使用は、乳用牛が管理されるさまざまな状態に合わせて調整されるものとする。計画及び管理の両方がアニマルウェルフェアに影響を与え得ることを所与のこととすると、本基準は、これら両者の影響を監視する道具とみなすことができる。 

1.行動

特定の行動は、アニマルウェルフェア上の問題を示している場合がある。これには、飼料摂取量の減少、運動行動及び姿勢の変化、横臥時間の変化、呼吸数の変化及びあえぎ呼吸、咳、ふるえ及び体を丸める、過剰な毛繕い並びに常同的、競争的、沈鬱的その他異常な行動の表出などがある。

2.罹病率

感染性又は代謝性の疾病、跛行、産前産後又は術後の合併症等の罹病率、及び損傷率は、一定の閾値を超えた場合には、群全体のアニマルウェルフェアの状態を示す直接的又は間接的な指標になる場合がある。疾病又は一連の徴候の原因を理解することが、潜在的なアニマルウェルフェア上の問題を発見するために重要である。乳房炎及び蹄、繁殖性又は代謝性の疾病は、乳牛の成牛にとって、とりわけ重要な動物健康上の問題でもある。体型、跛行、泌乳形質等のための評価システムが、追加情報を提供する場合もある。

臨床検査及び病理学は、いずれもが疾病、損傷、アニマルウェルフェアを損ねるおそれのあるその他の問題の指標として活用されるものとする。 

3.死亡及び淘汰率

死亡及び淘汰率は、更新産次の長さに影響し、罹病率と同様に、アニマルウェルフェアの状態を示す直接的又は間接的な指標になる場合がある。当該生産システムに応じて、死亡及び淘汰の原因並びにその発生の時間的及び空間的パターンの分析を通じて、死亡及び淘汰率の推定値が得られる場合もある。死亡及び淘汰率は、毎日、毎月、毎年又は生産サイクルの主要な飼養管理活動の機会の利用等により定期的に記録されるものとする。

剖検は、死亡原因の確定に有益である。

4.体重、体型及び乳量の変化

成長期の動物では、期待される成長率から外れた体重変化、とりわけ急激で極端な減少は、動物の劣悪な健康又はアニマルウェルフェアの指標である。後継雌牛の乳量、出生率等将来の生産性が、さまざまな育成段階における栄養の過不足によって影響を受ける場合がある。

泌乳中の動物では、許容範囲を超える体型、顕著な体重変化及び乳量の顕著な減少が、ウェルフェアが損なわれていることの指標になる場合がある。種雄牛を含む非泌乳の動物では、許容範囲を超える体型及び顕著な体重の変化が、ウェルフェアが損なわれていることの指標になる場合がある。

5.繁殖効率

繁殖効率が、動物の健康及びアニマルウェルフェアの状態の指標になる場合がある。ある品種に期待される目標と比較して繁殖成績が悪いということが、アニマルウェルフェアの問題を示唆してい

る場合もある。例としては以下のものがある:

— 発情休止又は分娩間隔の延長

— 低い受胎率

— 高い流産率

— 高い異常分娩率

— 胎盤停滞

— 子宮炎

— 種雄牛の受精能力の喪失

6.外観

外観は、動物の健康及びアニマルウェルフェアの指標だけでなく、管理状況の指標にもなりうる。ウェルフェアが損なわれていることを示唆する外観の特性には、以下のものがある:

— 外部寄生虫の存在

— 異常な被毛の色、質感又は脱毛

— ふん、泥又は汚物による過度な汚れ(清潔性)

— 腫脹、損傷又は病変

— 分泌物(たとえば、鼻、目、生殖管からの分泌物)

— 蹄肢の異常

— 異常な姿勢(たとえば、背中を丸める姿勢、頭を下げる姿勢)

— 衰弱又は脱水

7.取扱時の反応

不適切な取扱が、牛に恐怖と苦痛をもたらす場合がある。指標には以下のものがある。

— 過剰な逃走距離等、人と牛との関係が希薄であったことの証拠

— ミルキングパーラーの搾乳枠への進入を躊躇する、足蹴り、鳴き声を上げる等の搾乳時の拒否的な行動

— 保定器具又は門戸に衝突する動物

— 挫傷、裂傷、角又は尾の折れ曲がり、肢骨折等の取扱中に受けた損傷

— 保定又は取扱中に異常又は過剰な鳴き声をあげる動物

— 進入を繰り返し躊躇する等、追込み柵や保定枠内の不安行動

— 滑っている又は倒れている動物

8.一般的な処置の合併症

飼養管理の円滑化、人の安全及びアニマルウェルフェアの向上 (たとえば摘芽、削蹄)、並びにある種の状況に対する処置(たとえば、第四胃変位)のために、乳用牛に対し、外科的又は非外科的な処置が行われる場合がある。ただし、これらの処置が適切に実施されない場合には、アニマルウェルフェアが損なわれることもある。そのような問題の指標には以下のものがある。

— 処置後の感染、腫脹及び疼痛顕示行動

— 摂食量及び飲水量の減少

— 処置後の体型及び体重減少

— 罹病及び死亡

第7.11.5 条

良好なアニマルウェルフェアに関する規定

乳用牛の良好なウェルフェアの確保は、システム設計、環境管理、並びに責任ある飼養、的確な世話の提供などの畜産技術等、複数の管理要因次第である。これらの要素の一つ以上が欠けている場合には、どのようなシステムであっても、深刻な問題が生じる場合がある。

各勧告には、第7.11.4 条から得られる動物の状態に係る関連測定指標が含まれる。これは、適宜使用されるその他の措置を排除するものではない。

第7.11.6 条

  1. 施設環境等のシステムの設計及び管理に関する勧告

新たな施設を計画又は既存の施設を改修する場合には、動物の健康及びウェルフェアに関連する設計に対する専門的な助言が求められるものとする。

環境のさまざまな側面が、乳牛の健康及びウェルフェアに有害な影響を与えることがある。それらには、温度環境、空気性状、照明、騒音等がある。

a) 温度環境

牛は、想定される状況に適応する品種が用いられる場合には、とりわけ広範な温度環境に順応できるが、天候の急変が、高温又は低温ストレスを引き起こすことがある。

1) 高温ストレス

牛の高温ストレスのリスクは、気温、相対湿度、風速、飼育密度(動物一頭当たりの面積及び体積)、利用可能な日陰の不足等の環境側の要因、品種、月齢、体型、代謝率、泌乳段階等の動物側の要因並びに被毛の色及び密度による影響を受ける。

家畜飼養管理者は、高温ストレスが牛に引き起こすリスク並びに対応が必要になるかもしれない高温及び湿度に関する測定数値を理解しているものとする。牛の移動に伴う毎日の決まった業務は、条件の変化に応じて、適切に修正されるものとする。家畜飼養管理者は、高温ストレスのリスクが非常に高い水準に達する場合には、追加の水の入手を優先事項とし、日陰、扇風機の提供、飼育密度の緩和、地域の実情に応じた適切な冷却装置の設置を含む、緊急時行動計画を定めるものとする。

表現形質の測定指標:摂食量及び飲水量、行動、とりわけ呼吸数及びあえぎ呼吸、外観、とりわけ脱水症状、罹病率、死亡率、乳量の変化

2) 低温ストレス

極端な気象条件が、牛、とりわけヌレ仔及び若齢牛並びに生理学的に問題のある牛のウェルフェアに深刻なリスクを与えるおそれがある場合には、そのような条件からの保護が与えられるものとする。こうした保護は、敷料の追加及び自然又は人工的な収容場所によって提供することができる。

極端に寒い気象条件においては、家畜飼養管理者は、収容場所、十分な飼料及び水を牛に与える緊急時行動計画を制定するものとする。

表現形質の測定指標:罹病及び死亡率、外観、行動、とりわけ異常姿勢、ふるえ、体を丸める、成長率、外観及び体重減少

b) 照明

自然光を十分に受けることのできない舎飼いの牛は、自然な行動パターンを促し、当該牛を十分に安全に観察できるよう、自然周期に従った、その健康及びウェルフェア上十分な補助照明が提供されるものとする。照明は、当該乳用牛に不快を与えないものとする。舎飼いの乳用牛は、弱い夜間照明が与えられるものとする。保定施設の入口及び出口並びにその周辺区域は、十分に照明されているものとする。

表現形質の測定指標:行動、とりわけ運動行動の変化、罹病、外観 

c) 空気の性状

空気の良好な性状及び換気は、牛の衛生及びウェルフェア上重要であり、呼吸器の不快及び疾病のリスクを低減する。空気の性状は、気体、塵、微生物等の空気の構成要素に影響を受け、舎飼型の管理及び畜舎設計に強く影響される。空気の組成は、動物の密度、牛の体格、床、敷料、ふん尿の管理、畜舎設計及び換気システムに影響される。

適切な換気は、牛の効果的な放熱、畜舎単位内のふん尿から発生するものを含む流出ガス(たとえば、アンモニア及び硫化水素)及び塵芥の産生を抑制する上で重要である。非開放型畜舎内のアンモニア濃度は、25 ppm を超えないものとする。有益な指標は、空気の性状が人にとって不快である場合には、それはまた牛にとっても問題となる可能性があるというこである。

表現形質の測定指標:罹病率、死亡率、行動、とりわけ呼吸数及びあえぎ呼吸、咳、体重及び体型の変化又は成長率、外観、とりわけ湿った被毛

d) 騒音

牛は、さまざまな程度やタイプの騒音に順応可能である。ただし、ストレス及び恐怖反応を抑制するため、人によるものを含めて突然の予期せぬ騒音に牛を曝すことは、可能な範囲で、最小限に抑えるものとする。換気扇、警報器、給餌装置その他舎内又は舎外の機器は、騒音を最小限にするように建設、設置、操作及び維持されるものとする。

表現形質の測定指標:行動とりわけ興奮及び神経の高ぶり、乳量の変化

e) 床、敷料、寝床の表面及び舎外区域

すべての生産システムにおいて、牛には、水はけが良く、快適な休息場所が必要である。同じ牛群のすべての牛が、同時に横臥し、休息するのに十分な空間が与えられるものとする。

分娩に使用される区域の設備には、特別な配慮が払われるものとする。そのような区域の環境(たとえば、床、敷料、気温、分娩房及び衛生)は、分娩牛及びヌレ仔のウェルフェアを確保するのに適切なものであるものとする。

舎飼型システムでは、分娩区域はしっかり清掃され、分娩毎に新鮮な敷料が提供されるものとする。分娩のためのグループ房は、‘オールイン・オールアウト’の原則に基づき管理されるものとする。当該グループ分娩房は、しっかり清掃され、グループ毎に新鮮な敷料が提供されるものとする。同一の牛群の分娩房で飼育される牛の最初の分娩から最後の分娩までの期間は、最小限にされるものとする。

舎外分娩房及び放牧地は、当該牛に清潔で快適な環境が提供できるように選定されるものとする。舎飼型生産システムの床面管理が、牛のウェルフェアに大きく影響する場合がある。ウェルフェアを損ね、休息に適さない区域(たとえば、過剰なふんが集積した又は敷料が濡れた場所は、牛の横臥に利用できる区域の設定には含まれないものとする。

牛房の傾斜は、飼槽からの排水を可能にし、牛房内に水がたまらないものであるものとする。

床材、敷料、寝床の表面及び舎外の追い込み柵は、良好な衛生状態、快適性を確保し、疾病及び損傷のリスクを最小限に抑えるため、契約に定められたとおり、清掃されるものとする。

放牧型システムでは、家畜は、良好な衛生状態を確保し、疾病及び損傷の疾病リスクを最小限に抑えるため、牧区間で移動させるものとする。

コンクリート上で舎飼いされるすべての乳用牛に対し、敷料が提供されるものとする。わら、砂、又はゴムマット、砕ゴム充填マットレス、ウォーターベッド等その他の敷料システムにおいては、当該敷料は、適切なもの(たとえば、衛生的で非毒性のもの)であって、清潔で、乾燥した、快適な横臥場所を牛に提供するように維持されるものとする。

間せん棒若しくは隔柵又はフリーストールの設計は、当該動物が均質な床上に快適に立ち、横臥できるようなものであるものとする(たとえば、長さ、幅及び高さは、最も大きな動物のサイズに合ったものであるものとする)。当該動物が、休息し、自然な姿勢で起き上がり、立ち上がる時には頭を自由に動かすことができ、困難なく毛繕いするのに十分な空間が設けられるものとする。個別の場所が、雌牛が休息させるために提供される場合には、雌牛一頭当たり少なくとも一空間を設けるものとする。

通路及びゲートは、牛の自由な移動が可能になるように設計され、管理されるものとする。床面は、滑り及び転倒を最小限に抑え、蹄肢の健全性を増進し、蹄の損傷のリスクを軽減するように設計されるものとする。

舎飼型システムにすのこ床の区画が含まれている場合には、後継牛も含めて、牛は、均質な寝床区画を利用できるようにするものとする。すのこ及び隙間の幅は、損傷を予防するため、牛の蹄のサイズに適したものにするものとする。

牛が、舎内、舎外にかかわらず、繋がれていなければならない場合には、最低限、妨げられることなく横臥し、立ち上がり、自然な姿勢を維持し、自分を毛繕いすることができるようにするものとする。タイストール牛舎で飼われている牛は、ウェルフェア上の問題を防止するため、繋がれない状態で十分な運動ができるようにするものとする。野外で繋がれている場合には、歩くことができるようにするものとする。家畜飼養管理者は、牛が繋がれている場合には、ウェルフェア上の問題のリスクが高まることを認識しておくものとする。

種雄牛が舎飼いシステムに置かれる場合には、休息及び運動をするのに十分な空間をあけて、他の牛を視界に入れるよう配慮されるものとする。自然交配に供用される場合には、床面は、すのこ構造又は滑りやすいものではないものとする。

表現形質の測定指標:罹病率、とりわけ跛行及び損傷(たとえば、飛節及び膝関節の損傷及び皮膚病変)、行動、とりわけ姿勢の変化、毛繕い及び歩様、体重及び体型の変化、外観(たとえば、脱毛、清潔性評価)、成長率

f) 場所、建物及び設備

気候及び建物の立地要因の乳用牛に対する影響は、農場を新設するときに評価されるものとする。それらの要因がもたらす負の影響を緩和するため、乳用牛の品種を農場の立地に調和させることや、代替地を考慮するなどの努力が払われるものとする。

乳用牛のためのすべての施設は、乳用牛のウェルフェアに対するリスクを最小限に抑えるように建設され、維持され、管理されるものとする。

放牧型及び複合型システムにおいては、搾乳区域と放牧地との間の通路及び誘導路は、歩行する全体距離を最短にするように配置及び管理されるものとする。その表面も含めて、通路及び誘導路の建設及び保守は、乳用牛のウェルフェアに対するリスク、とりわけ蹄の健康問題によるリスクを最小限に抑えるようにするものとする。

搾乳、その管理及び保定のための設備は、損傷、痛み又は苦痛のリスクを最小限に抑える方法によって建設及び使用されるものとする。そのような設備の製造者は、それを設計し、使用説明書を作成する時に、アニマルウェルフェアを考慮するものとする。

動物の行動を管理するために設計された帯電機器(たとえば、カウトレーナー)は、適切に設計、使用及び保守されていない場合には、ウェルフェア上の問題を引き起こすおそれがある。

電気牧柵及びゲートは、ウェルフェア上の問題を防止するように正しく設計及び保守され、製造者の取扱説明書に従った形でのみ使用されるものとする。

放牧地等の舎外区域への立入が可能な場合には、草を食んだり、運動したりする機会から得られる乳用牛に対する追加の恩恵、とりわけ跛行のリスクの低減がもたらされることがある。

すべての生産システムにおいて、飼料及び水の供給を通じて、すべての牛が、飼料及び水を入手できるようにするものとする。給餌システムは、興奮行動を最小限に抑えるよう設計されるものとする。給餌設備及び給水設備は、清潔にすることが容易であって、適切に保守されるものとする。

ミルキングパーラー、フリーストール、間せん棒、隔柵、誘導路、追い込み柵及び牛房は、牛の損傷を予防するため、適切に保守され、鋭利な角及び突起がないものにするものとする。

個別の動物を綿密に検査することが可能で、保定施設を有する区分された区域が設けられるものとする。

病気又は損傷した動物は、健康な動物から適宜離して、治療されるものとする。そのための特別な場所が設けられる場合には、当該動物にとって必要なすべてのものを用意するものとする。たとえば、横臥した動物には、追加的な敷料又は代替床面が必要になる場合がある。

油圧式、空気圧式及び手動式設備は、管理される牛の体格に合わせ適宜調整されるものとする。油圧又は空気圧で運用される保定設備は、損傷を防止するため圧力制限装置が装備されているものとする。機構部分の定期的な清掃及び保守は、当該システムが牛にとって適切に機能し、安全であることを確保する上で不可欠である。

施設で使用される機械的及び電気的装置は、牛にとって安全であるものとする。

外部寄生虫防除の目的で使用される薬浴槽及び噴霧誘導路は、密集によるリスクを最小限に抑え、損傷及び溺死を予防するように設計され、管理されるものとする。

待機場(たとえば、搾乳室の入口)は、ストレスを最小限に抑え、損傷及び跛行を予防するように設計され、管理されるものとする。

乳用牛の出荷場及び傾斜路は、傾斜路の斜面も含めて、牛のストレス及び損傷を最小限に抑えるように設計され、第7.2 章、第7.3 章及び第7.4 章に従い、家畜飼養管理者の安全を確保するものであるものとする。

表現形質の測定指標:管理に対する反応、罹病率、とりわけ跛行、死亡率、行動、とりわけ歩様の変化、損傷率、体重及び体型の変化、外観、成長率

g) 緊急時計画

電気、水及び飼料の供給システムの機能停止が、アニマルウェルフェアを損ねるおそれがある。酪農生産者は、それらシステムの機能停止を補う緊急時計画を整備するものとする。当該計画には、不具合を検出する警報器、予備用発電機、主なサービス事業者の連絡先情報、牧場の貯水能力、水運搬サービスの利用、適切な牧場内飼料保管及び代替飼料の供給、また緊急時の殺処分が含まれる場合もある。

緊急時の予防措置は、結果ではなく、投入に基づくものであるものとする。緊急時計画には、避難計画が含まれ、それは文書化され、すべての関係者に伝達されるものとする。警報及び予備用システムは、定期的に点検されるものとする。

  1. 動物管理業務に関する勧告

良好な動物管理業務は、許容可能なアニマルウェルフェアの水準を提供する上で非常に重要である。乳用牛の管理及び飼養に従事する者は、適切な経験を有する、又は必要とされる実用的な技術並びに乳用牛の行動、取扱い、健康、バイオセキュリティ、生理学的要求及びウェルフェアの知識を授ける研修を受けることによって、能力を備えているものとする。乳用牛の健康及びウェルフェアを確保するために、十分な数の家畜飼養管理者が確保されるものとする。

a) バイオセキュリティ及び動物衛生

i) バイオセキュリティ及び疾病予防

本章においては、バイオセキュリティとは、特定の衛生状態下で動物群を維持し、感染性病原体の侵入及びまん延を予防することを意図する一連の措置をいう。バイオセキュリティプランは、動物群のあり得る最高の衛生状態、利用可能な資源及び社会基盤、並びに現在の疾病リスク、リスト化された疾病に応じて、陸生コードの関連勧告に従い、設計、実施及び維持されるものとする。

当該バイオセキュリティプランは、病原体のまん延に係る以下の感染源及び感染経路の管理に焦点を当てるものとする。

— 牛、当該動物群への導入を含む

— さまざまな導入元に由来する仔牛

— その他の家畜、野生生物及び害虫

— 衛生業者を含む人

— 設備、器具及び施設

— 輸送手段

— 空気

— 給水、飼料及び敷料

— 堆肥、排泄物及び死亡畜処理

— 精液及び受精卵

表現形質の測定指標:罹病率、死亡率、繁殖効率、体重及び体型の変化、乳量の変化   

ii) 動物健康管理

動物健康管理は、乳用動物群の身体的及び生態的な健康及びウェルフェアを最適化するものとする。それには、疾病及び当該動物群に影響する健康問題(とりわけ、乳房炎、跛行、繁殖性及び代謝性疾病)の予防、治療及び管理が含まれる。疾病及び健康問題を予防及び治療するために、適宜獣医師に相談して形成された、有効なプログラムが整備されるものとする。当該プログラムには、生産データ(たとえば、搾乳牛頭数、出産、当該牛群への動物の移出入、乳量)、罹病率、死亡率、淘汰率及び獣医学的治療の記録が含まれるものとする。それは、家畜飼養管理者によって更新されるものとする。記録の定期的な監視は、管理の一助となり、速やかに対応すべき改善点を明らかにする。

寄生虫による負荷(たとえば、内部寄生虫、外部寄生虫及び原虫)に関しては、監視、管理及び治療のためのプログラムが適宜実施されるものとする。

跛行は、乳用牛にとって問題となるおそれがある。家畜飼養管理者は、蹄及び爪の状態を監視し、跛行を予防する措置をとり、脚の健康を維持するものとする。

牛の飼養の責任者は、疾病又は苦痛の初期における特有の症状(たとえば、咳、眼漏、乳の性状の変化、運動行動の変化)並びに摂餌及び飲水の減少、乳生産の減少、体重及び外観の変化、行動の変化又は外観の異常等の非特定症状を認識しているものとする。

疾病又は苦痛のリスクが高い牛に対しては、家畜飼養管理者によるより頻繁な観察が必要になる。家畜飼養管理者は、疾病の存在を疑う又は疾病若しくは苦痛の原因を改善できない場合には、獣医師その他資格あるアドバイザー等訓練を受けた経験を有する者に適宜助言を求めるものとする。

ワクチン接種その他牛に処方される治療は、獣医師又は獣医学的若しくはその他の助言に基づき当該手法に熟練したその他の者が、実施するものとする。

家畜飼養管理者は、たとえば、歩行困難牛、とりわけ出産したばかりの牛を識別し、対処する等の慢性病の又は受傷した牛を同定し、適切に管理する能力を有するものとする。獣医学的助言が適宜求められるものとする。

歩行困難牛は、常時飲水でき、少なくとも一日一回飼料が給与され、必要に応じて搾乳されるものとする。それらに対しては、日陰が施され、肉食獣から保護されるものとする。それらは、治療又は診断のため絶対的に必要な場合でなければ、輸送又は移動されないものとする。その場合の移動は、引きずり又は過度の持ち上げを避ける方法により、慎重に行われるものとする。

家畜飼養管理者は、第 7.3 章に規定される輸送の適合性を評価する能力も有しているものとする。

疾病又は損傷の場合で、治療に失敗した又は回復が見込めない時(たとえば、自力で起立不能又は摂餌若しくは飲水を拒絶する牛)には、当該動物は、第 7.6 章に従い早急に人道的に殺処分されるものとする。

日光過敏症を患っている動物には、日陰が供給され、可能な場合には、その原因が同定されるものとする。

表現形質の測定指標:罹病率、死亡率、繁殖効率、抑鬱行動、歩様の変化、外観並びに体重及び体型の変化、乳量の変化

iii) 疾病発生に備えた緊急時計画

緊急時計画は、緊急の疾病発生に直面した農家における管理であって、国家プログラム及び獣医サービスの勧告と適宜整合しているものとする。

b) 栄養

乳用牛の栄養学的要求は、良く解明されている。飼料中のエネルギー、タンパク質、ミネラル及びビタミン含有量は、生乳生産及び育成、飼料利用性、繁殖性並びに外観を決める主要な要素である。牛は、その生理学的要求を満たす適切な量及び品質のバランスの取れた栄養を摂取できるようにされるものとする。牛が舎外条件に置かれている場所では、短期的に極端な気象状況さらされることにより、日々の生理学的要求を満たす栄養の摂取が妨げられるかもしれない。そのような環境では、家畜飼養管理者は、栄養減少期が長期化しないようにし、そうしなければウェルフェアが損なわれる場合には、追加の飼料及び飲水の供給が確保されるものとする。

家畜飼養管理者は、自らの牛のため、適切な体型評価システムに関する十分な知識を有し、品種及び生理学的状態に応じた許容範囲を外れた体型とならないようにするものとする。飼料及び飼料原料は、栄養学的要求を満たす満足できる品質であって、汚染及び劣化を最小限に抑えるよう保管されるものとする。飼料及び飼料原料は、健康に悪影響を与える物質の有無を適宜検査されるものとする。動物飼料の管理及び監視は、第 6.4章の適当な勧告に従い実施されるものとする。

牛の消化不良の相対的リスクは、飼料中の穀物割合が増加する場合又はサイレージの品質が悪い場合に増加する。穀物又は新規の食餌は、徐々に増やすものとし、サイレージ、牧草、乾草等の嗜好性の良い繊維質飼料は、代謝上の要求を満たすため、消化を促進し、通常の第一胃機能を確保する方法で随意に摂取できるようにしておくものとする。

家畜飼養管理者は、消化不良及びその負の結果(第四胃変位、亜急性ルーメンアシドーシス、鼓張症、肝膿瘍、蹄葉炎)に関連して、牛の体格及び月齢、天候パターン、飼料組成並びに急激な飼料の変更の影響を理解しておくものとする。酪農生産者は、飼料配合及び給餌プログラムに関する助言を求めて、牛の栄養専門家に適宜相談するものとする。

妊娠最終齢には、分娩中及び分娩後の疾病及び削痩を最小限に抑えるため、エネルギーバランス、

粗飼料及び微量栄養素の点で、栄養に特別の配慮が払われるものとする。

液状乳(又は代替乳)は、仔牛の健康な発育及びウェルフェアにとって不可欠である。ただし、4-6 週齢を過ぎた後に、全流動食を唯一の栄養源として仔牛に給餌することは、第一胃の生理学的発育を制限する。2週齢を超える仔牛には、第一胃の発育を促進し、異常な口部行動を減少させるため、十分な1日当たり給与量の繊維食及び導入食(濃縮)が与えられるものとする。

酪農生産者は、各自の立地する地域の生産システムにおける微量栄養素の潜在的な欠乏又は過剰に精通し、必要に応じて加工補助飼料を適宜使用するものとする。

すべての牛は、離乳前の仔牛を含めて、その生理学的要求を満たした牛の健康に危害を与えるものに汚染されていない嗜好に合った水が十分に供給され、飲水できる必要がある。

表現形質の測定指標:罹病率、死亡率、行動、とりわけ闘争行動(給餌区域)、体重及び体型評価の変化、繁殖効率、乳量の変化、成長率及び鳴き声

c) 群内環境

牛の管理においては、それが、とりわけ舎飼型システムではアニマルウェルフェアに関連することから、その群内環境を考慮するものとする。

問題点として、闘争及び発情行為、未経産牛と経産牛の混合、さまざまな体格及び月齢の牛の同一房内での給餌、空間的ゆとりの減少、採餌場の不足、給水不足並びに種雄牛の混合などがある。

すべての生産システムの牛の管理において、牛群内の牛の社会的相互関係が考慮されるものとする。家畜飼養管理者は、闘争行動及び過剰なマウンティング行動に基づき、さまざまな牛群内で形成される優越順位を理解し、病気の又は損傷を受けている、幼齢、高齢、コホートグループを形成するには頭数が少ない又は多い等の高リスク動物に傾注するものとする。当該家畜飼養管理者は、とりわけ複数の牛群を混合した後には、動物間の闘争的相互関係が増加するリスクがあることを理解するものとする。

過剰な闘争行為又は過剰なマウンティング行動を発現している牛は、他の措置が失敗した場合には、当該グループから取り除かれるものとする。

家畜飼養管理者は、不適切な牛群の混合(たとえば、新しい牛群への未経産牛の導入、異なる栄養要求にある異なる育成ステージの動物の混合)によって生じるおそれのあるアニマルウェルフェア上の問題を認識し、それを最小限に抑えるための適切な措置をとるものとする。

有角及び無角の牛は、損傷のリスクがあることから、混合しないものとする。

表現形質の測定指標:行動、とりわけ横臥時間、身体損傷及び病変、体重及び体型の変化、外観(たとえば、清潔性)、跛行評点、乳生産量の変化、罹病率、死亡率、寄生虫負荷量、成長率、鳴き声

d) 空間的ゆとり

すべての生産システムの牛は、快適性及び社会化のための適切な空間が提供されるものとする。

空間的ゆとりが不十分及び不適切な場合には、損傷の発生が増加する場合があり、成長率、飼料効率及び歩行運動、休息、摂食、飲水等の行動に悪影響を与えることがある。

空間的ゆとりは、横臥、立位及び摂餌のためのさまざまな空間を考慮して管理されるものとする。密飼いが、牛の通常の行動及び横臥して過ごす時間に悪影響を与えないものとする。

すべての牛は、同時に休息することができ、各動物が、横臥し、起立し、自由に動けるものとする。育成中の動物の場合には、空間的ゆとりは、増体に悪影響を与えることがないように管理されるものとする。異常行動が見られる場合には、空間的ゆとりの増加、横臥、起立及び摂餌に利用できる空間の再調査等の是正措置がとられるものとする。

飼育密度は、放牧型システムでは、利用可能な飼料及び給水並びに牧草の質に依存して決まる。

表現形質の測定指標:行動、とりわけ興奮又は沈鬱行動、罹病率、死亡率、体重及び体型の変化、外観、乳生産量の変化、寄生虫負荷量、成長率

e) 捕食動物からの保護

牛は、捕食動物から保護されるものとする。

表現形質の測定指標:死亡率、罹病率(損傷率)、行動、外観

f) 遺伝学的選択

特定の場所又は生産システムに合った品種又は亜種を選択する場合には、生産性のほかに、ウェルフェア及び健康が考慮されるものとする。

育種プログラムにおいては、牛の健康を含むウェルフェアの向上に資する基準に対し、注意が払われるものとする。アニマルウェルフェア上の問題を限定又は緩和する乳用牛の遺伝的系統は、保護又は発展させることが奨励されるものとする。その基準の例には、栄養管理要求、疾病耐性、耐暑性等がある。

同一品種内の個々の動物は、健全性と長命性を増進することによって、動物の健康及びウェルフェアにとって有益な特性を発現する子孫を増やすように選択されるものとする。それには、感染性及び生産関連疾病に対する耐性、分娩の容易さ、繁殖力、体格及び運動性並びに気性などがある。

表現形質の測定指標:罹病率、死亡率、繁殖月齢の期間、行動、外観、繁殖効率、跛行、人・動物関係、成長率、許容範囲を超えた体型

g) 人工授精、妊娠診断及び受精卵移植

精液の採取は、訓練を受けた技師によって、種雄牛及び採取中に使用される台雌に痛み又は苦痛を与えない方法で、第4.7 章に従い実施されるものとする。

人工授精及び妊娠診断は、資格の有る技師によって、痛み又は苦痛を与えない方法で実施されるものとする。

受精卵移植は、硬膜外麻酔又はその他の麻酔下で、訓練を受けた技術者、なるべくならば獣医師又は動物看護士によって、第4.8 章及び第4.9 章の規定に従い実施されるものとする。

表現形質の測定指標:行動、罹病率、繁殖効率

h) 母牛及び種雄牛の選択並びに分娩管理

異常分娩は、乳用牛にとってウェルフェア上のリスクである。未経産牛は、母牛及び新生仔の両方の健康及びウェルフェアを確保するのに十分な性成熟段階に達する前に、繁殖に供されることがないものとする。種雄牛の品種は、仔牛の最終的な体格に大きな遺伝性の影響を有し、その事が分娩の容易さに大きな影響をもたらすことがある。受精卵移植、精液注入又は自然交配のための種雄牛の選択に当たっては、雌牛の性成熟の程度及び体格を考慮するものとする。

妊娠中の経産牛及び未経産牛は、身体状態が当該品種にとって適切な範囲内となるよう妊娠中管理されるものとする。過度の肥満は、難産及び、妊娠後期又は分娩後の代謝異常のリスクを高める。

経産牛及び未経産牛は、分娩が近づいた時には観察されるものとする。分娩に際し問題が起きていることが観察された動物は、発見後可能な限りすみやかに、有能な飼養者によって介助されるものとする。帝王切開が必要な場合には、獣医師によって実施されなければならない。

表現形質の測定指標:罹病率、死亡率(雌牛及び仔牛)、繁殖効率、とりわけ異常分娩率、後産停滞及び子宮炎、体型

i) 新生仔

分娩介助は、出産プロセスを早めるためではなく、もっぱら難産時の手助けとして行われ、過度の痛み、苦痛又は一層の獣医学的問題を起こすことがないようにするものとする。

新生仔は、低体温症になりやすい。分娩区画の温度及び換気は、新生仔のニーズを考慮したものとする。やわらかくて乾燥した敷料及び補助的な加熱が、低温ストレスの予防に役立つ場合がある。

初乳から十分な免疫を受けるか否かは、摂取した初乳の量及び質、並びに当該仔牛が誕生後どれだけ速やかに初乳を飲んだかによって一般的に決まってくる。

家畜飼養管理者は、受動免疫を与えるため、仔牛が、なるべくならその実の母牛から、誕生後24 時間以内に十分な初乳を摂取することを確保するものとする。初乳は、誕生後最初の6 時間以内に摂取された場合に最も有益である。母牛からの疾病伝播のリスクがある場合には、健康な雌牛の初乳が使われるものとする。仔牛は、可能な場合には、誕生後少なくとも5 日間は、初乳又はそれに相当するものを継続的に与えられるものとする。

最近生まれた仔牛は、臍が乾燥するまで輸送されないものとし、その後輸送が必要になった場合には、第7.3 章に従い行われるものとする。

仔牛は、苦痛を最小限に抑え、痛み及び損傷を予防する方法で取り扱われ及び移動されるものとする。

表現形質の測定指標:外観、死亡率、罹病率、成長率

j) 母仔分離及び離乳

仔牛を母牛から引き離すためのさまざまな手法が、乳用牛生産システムで活用されている。これには、早期分離(通常出生後48 時間以内)又はより緩徐な分離(継続的に乳を飲むことができるようにより長期間母牛と一緒に仔牛を置く)がある。分離は、母牛及び仔牛の双方に多くのストレスを与える。

本章においては、離乳とは、哺乳を基本とする飼料給与から粗飼料への給与の変更をいい、離乳仔牛は、以後その食餌として乳を摂取することはない。この変更は、段階的になされるものであり、その反芻消化器系が、成長、健康及び良好なウェルフェアを維持することができるよう反芻消化器系が十分に発達してはじめて、仔牛は離乳されるものとする。

酪農生産者は、その牛の品種及び生産体系にとって最もふさわしい離乳の時期及び方法に関し、専門的な助言を求めるものとする。

表現形質の測定指標:罹病率、死亡率、分離後の行動(母牛及び仔牛の鳴き声、動き)、外観、体重及び体型の変化、成長率

k) 後継牛の育成

若齢牛は、とりわけ温度ストレスのリスクにさらされている。特別な配慮が、温度環境の管理(たとえば、暖かさ及び適切な育成を維持するための追加敷料、栄養又は保護の提供)に払われるものとする。

後継牛は、牛群で育成されるものとする。牛群内は、同じ月齢及び体格であるものとする。

個別に又は群飼房で育成されるかにかかわらず、各仔牛は、快適に回転し、休息し、起立し、毛繕いを行い、他の動物が目に入る十分な空間を有するものとする。

後継牛は、相互に乳首を吸い合う行動を監視されるものとし、その発生を防止するための適切な措置(たとえば、おしゃぶり装置の提供、給餌慣行の見直し又は変更、その他環境装飾の提供)がとられるものとする。

健康並びにその品種、及び営農目的に合った適切な成長曲線を達するため、育成中の後継牛に係る微量元素を含む栄養について、特別な配慮が払われるものとする。

表現形質の測定指標:罹病率、死亡率、行動、とりわけ相互に乳首を吸い合う行動、毛繕い行動の変化及び横臥行動、損傷、外観、体重及び体型の変化、成長率

l) 搾乳管理

搾乳は、人手によるか機械によるかにかかわらず、痛み及び苦痛を避けるため、静かで思いやりのある方法で行われるものとする。人、乳房及び搾乳器具の衛生に対し、特別な配慮が払われるものとする。すべての搾乳牛は、搾乳の都度、異常乳の有無が確認されるものとする。

搾乳機、とりわけ自動搾乳システムは、乳頭及び乳房の損傷を最小限に抑える方法で使用又は整備されるものとする。そのような機械の製造業者は、動物のウェルフェアを考慮した使用説明書を提供するものとする。

通常の搾乳手順は、泌乳ステージ及び当該システムの能力に応じて定められるものとする。動物の取扱者は、搾乳システムから得られるデータを定期的に確認し、当該牛のウェルフェアを保護するため、状況に応じて行動するものとする。

初めて搾乳される動物に対しては、特別な注意が払われるものとする。それに対しては、出産に先立ち、搾乳施設に馴致させておくものとする。

搾乳前後の長い待機時間が、健康及びウェルフェア上の問題(たとえば、跛行、摂食時間の減少)につながる場合がある。待機時間を最小限に抑えるように管理されるものとする。

表現形質の測定指標:罹病率(たとえば、乳房衛生、乳質)、行動、乳生産量の変化、外観(たとえば、病変)

m) 痛みを伴う飼養方法

管理業務は、管理、アニマルウェルフェア及び人の安全を理由として、牛に対し、日常的に行われている。痛みを伴うおそれのある管理業務は、当該動物に対する痛み及びストレスを最低限に抑える方法で実施されるものとする。そのような管理業務は、可能な限り若齢期に行う、または獣医師の推奨や監督のもと麻酔の利用や無痛法で行うものとする。

当該行為に関連して、アニマルウェルフェアを強化するための選択肢としては、当該手技の中止及び管理手法を通じた当該業務のニーズに対する対処、当該行為を必要としない牛の育種、及びアニマルウェルフェアを強化することが示されている非外科的代替方法への現行手法の変更などがある。

i) 摘芽及び除角

有角の乳用牛は、乳用牛の損傷及び革の傷を減らし、人の安全性を向上させ、施設への損害を少なくし、輸送及び取扱を円滑化する目的で、一般的に摘芽又は除角される。無角牛の選択が、除角よりも望ましい。

若齢段階で除角を実施することは、高齢牛を除角するよりも好ましい。

訓練を受けた技術者による適切な施設での角芽の焼烙は、手技後の痛みを最小限に抑える目的において、推奨される方法である。これは、角芽が頭蓋骨に付着する前の適切な月齢で実施されるものとする。

牛のタイプ及び生産システムにとっての最適な方法及び時期に関し、獣医師又は動物看護士の指導が求められるものとする。麻酔及び無痛法の使用は、摘芽を実施する場合には、強く推奨されており、除角する場合には、常に使用されるものとする。適切な保定のためのシステム及び行為が、摘芽又は除角する場合には求められる。

除角のためのその他の方法には、刃物による角芽の除去及び角芽を焼烙する化学軟膏の塗布がある。化学軟膏を使用する場合には、当該仔牛の他の部位及び他の仔牛に対し、化学熱傷を与えるのを避けるため特別な注意が払われるものとする。この方法は、2 週齢を超える仔牛には推奨されない。

手技者は、使用される方法に関し、訓練を受け、有能であって、痛み及び過剰な出血又は膿瘻感染等の合併症の徴候を認識することができるものとする。

角の発育が始まった場合の除角の方法には、頭蓋近くの角の基部を切断又はのこぎり引きすることによる角の除去がある。

ii) 断尾

断尾によって、乳用牛の健康及びウェルフェアが向上することはなく、したがって、それは推奨されない。健康の維持が問題である場合には、尾毛の刈り取りが、代替法として考慮されるものとする。

iii) 個体標識

耳標装着、耳刻、刺青、凍結烙印及び無線周波数識別装置(RFID)が、乳牛を永続的に個体標識する方法である。どの方法が選ばれたとしても、観血が最も少ない方法(たとえば、一耳当たり最小の耳標数及び最小の耳刻のサイズ)が採用されるものとする。それは、すみやかに、専門的に、適切な器具を用いて実施されるものとする。

凍結烙印及び焼きごてによる烙印は、代替の個体標識法(たとえば、電子的個体標識又は耳標)が存在する場合には、避けるものとする。技術者は、烙印が使われる場合には、使用される方法の能力があり、合併症の徴候を認識することができるものとする。

個体標識制度は、第4.1 条にも従い確立されるものとする。

表現形質の測定指標:罹病率(手技後の合併症)、異常行動、鳴き声、外観

n) 検査及び取扱

乳用牛は、当該生産システム並びに当該牛の健康及びウェルフェアに対するリスクに応じた間隔で、検査されるものとする。搾乳牛は、少なくとも一日一回検査されるものとする。動物によっては、さらに頻繁に検査を受けるものとする。たとえば、新生仔、妊娠後期の雌牛、離乳したての仔牛、環境ストレスを受けている牛、痛みを伴う飼養管理又は獣医学的処置を受けているものがこれに該当する。

病気にかかった又は損傷を受けていることが確認された乳用牛は、できるだけ早い機会に、有能な家畜飼養管理者による適切な治療を受けるものとする。家畜飼養管理者が適切な治療ができない場合には、獣医師による処置が求められるものとする。

牛の取扱に係る勧告は、第 7.5 章にも記述されている。とりわけ痛み及び苦痛を与えるおそれのある取扱補助器具(たとえば、電気突き棒)は、極限の状況の場合のみ、かつ当該動物が自由に移動できるときにのみ使用されるものとする。乳牛は、乳房、顔、目、鼻、肛門性器部等の敏感な部位を突っつかれることがないものとする。電気突き棒は、仔牛には使用されないものとする(第7.3.8 条第 3 項参照)。

牧畜の補助として犬が使用される場合には、適切に訓練を受けるものとする。家畜飼養管理者は、犬の存在が牛にストレスを与え、恐怖をもたらす場合があることを認識し、それを常時管理下に置くものとする。犬の使用は、舎飼型システム、集舎囲いその他の牛が自由に逃れることができない小囲いの中では適切ではない。

牛は、さまざまな視覚環境に順応できる。ただし、ストレス及び恐怖に対する反応を防止するため、突然の移動又は視覚的対照の変化に牛を曝すことは、可能な場合には、最低限に抑えるものとする。

電気拘束は用いないものとする。

表現形質の測定指標:取扱時の反応、罹病率、死亡率、行動、とりわけ運動行動の変化及び鳴き声

o) 職業訓練

乳用牛に対し責任のあるすべての者は、その責任に応じた能力を有し、飼養、牛の取扱、搾乳作業、繁殖管理技術、行動、バイオセキュリティ、疾病の徴候並びに、ストレス、痛み、不快等の不十分なアニマルウェルフェアの指標及びその緩和に関し、理解しているものとする。

正式な訓練又は実務経験を通じて能力が取得される場合もある。

表現形質の測定指標:取扱時の反応、罹病率、死亡率、行動、繁殖効率、体重及び体型形質の変化、乳生産量の変化

p) 災害管理

災害(たとえば、地震、火事、旱魃、洪水、暴風雪、台風)の影響を最小限に抑え、緩和するための計画が施行されているものとする。そのような計画には、避難手順、高台の確認、緊急備蓄飼料及び水の供給、必要に応じた間引き及び人道的殺処分が含まれる場合がある。旱魃の場合には、動物管理の決定が可能な限り早期に行われるものとし、それには牛の頭数削減に関する検討が含まれるものとする。病気の又は損傷を受けた牛に対する人道的殺処分の手順は、当該災害管理計画の一部であるものとする。緊急時計画の参照は、第 7.X.5 条第 1-g 号及び第 2-a-iii 号に見ることができる。

q) 人道的殺処分

病気の又は損傷を受けた牛に対しては、当該動物を治療するか又は人道的に殺処分するかを決定するため、すみやかな診断が行われるものとする。動物を人道的に殺処分する決定及びその手順自体は、能力のある者が請け負うものとする。

人道的殺処分の理由には、以下のものが挙げられる。

— 重度な削瘦、歩行不能又は起立困難になるおそれのある虚弱な牛

— 立ち上がろうとせず、摂食又は飲水を拒絶し、治療に反応しない歩行不牛

— 治療の甲斐ない容態の急速な悪化

— 衰弱を引き起こす深刻な痛み

— 複雑(開放)骨折

— 脊髄損傷

— 中枢神経系の疾病

— 慢性的な体重の減少を伴う多関節感染症

— 未熟で生き延びる可能性のない、衰弱を引き起こす先天性障害を持つ又はその他役に立たない

仔牛

— 災害管理対応の一部として

乳用牛の人道的殺処分の受け入れ可能な方法の記述に関しては、第7.6 章を参照されたい。

 

翻訳:アニマルライツセンター翻訳チーム Misaki Takahashi

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