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「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」OIE動物福祉基準

OIE動物福祉基準とは

OIE(世界動物保健機関)には日本を含む世界180ケ国が加盟しています。
そのOIEでは、動物福祉の14の基準(コード)が採択されています(2015年1月時点)。これらの動物福祉基準について、OIEのサイトには次のように書かれています。
 
OIEの各国事務局はOIEの動物福祉基準を正しく人々に伝え、そして彼らの政府にこの基準を実行に移すように説得すること (The World Organization for Animal Health (OIE)より)

つまり、OIE加盟国である日本は、この動物福祉基準を遵守するよう努力していかねばなりません。

アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム

現在(2014年7月)、OIEの動物福祉基準に「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」を追加する準備が進められています。
OIEの動物福祉基準を作るときは、まず案が提出され、その案に対して、各国がOIE コード委員会にコメント(意見)を出す→コメントを擦り合わせて再度案を作成→各国がコメントを出す、という作業を何度か繰り返して最終的に採択されるという流れになります。

「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」第2案 日本からのコメントに要望

「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」第2案に対して日本から提出するコメントついて、私たちアニマルライツセンターと、PEACEは、日本の動物保護団体として、以下2点を要望しました。

2014年7月

1
OIE第2案、第7.x.5条 1. 飼養環境の設計に関する推奨事項 、f)について
第1案の際に、日本から提出されたコメントは
『帯電機器(例 カウトレーナー、帯電式の出入口)は、牛の快適性を阻害する問題の増加と関連があるため、(可能な限り、)使用すべきではない。(もし、使用する場合は、牛に対する苦痛やストレスを最小限にするよう実施しなければならない。) 』
とされており、カッコの中を追加するよう求めていますが、変更を求めず、OIEの第2原案を支持していただきたいです。

理由
乳牛の清潔さを保つことは重要ですが、その方法としてアニマルウェルフェアを阻害することが明らかなカウトレーナーの使用を容認する条文を入れるべきではないと考えます。
カウトレーナーは、乳牛をつないで飼育することを前提とした器具であり、つなぎ飼い自体が動物福祉の国際基準である5つの自由のうちの一つ「正常な行動ができる自由」を奪うものである以上、カウトレーナーは原案にあるとおり、「使用すべきではない」とすべきであると考えます。
わが国の「肉用牛生産の振興に関する法律」に基づき定められている「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」には、地域ブランドの確立、飼料自給、コスト削減といった観点から、放牧の推進が謳われており、すでにカウトレーナーを使用しないですむ酪農を日本は目指しているところです。
この「使用すべきでない」とするOIE原案は、日本の方針にも合致するものであると考えます。

2
OIE第2案、第7.x.5条 2. 飼育者の能力と動物の管理に関する推奨事項 、m)痛みを伴う処置 、i) 除角と断角について
第1案の際に、日本から提出されたコメントは
『乳牛の除角が必要な場合、生産者は獣医アドバイザーから、その牛の種類や生産方法に応じて、適切な手技(、麻酔や鎮痛剤の利用)及び時期に関する指導を求めなければならない。 』
とされており、カッコの中を削除するよう求めていますが、除角・断角について変更を求めず、OIEの第2原案を支持していただきたいです。

理由
麻酔や鎮静剤なしの除角・断角は、牛にストレスをあたえるものであり(※1)、わが国の乳牛の93.9%(※2)の農家で行われていることを鑑みると、「麻酔・鎮痛剤の使用は、除角については強く推奨され、断角については常に使用すべき」というOIE第2案を支持し、そのコードを積極的に参照して、アニマルウェルフェアの向上に努めるべきだと考えます。
※1 Taschke, A.C., Fölsch, D.W., (1997) Ethological, physiological and histological aspects of pain and stress in cattle when being dehorned, Tierärztliche Praxis (25), 19-27.
(実験概要)
101頭の子牛(3~4ヶ月齢)に対し、無麻酔下で焼ゴテによる除角を実施。 搾乳牛16頭に対し、ワイヤー鋸を用いて無麻酔下で除角した。
(実験結果)
除角中、すべての子牛は明確な痛みに対する反応を示し、唾液中コルチゾル濃度は除角後に有意に増加した。搾乳牛へ行った除角では、わずかな期間だけ乳量が減少した。
※2 2008年畜産技術協会調べ

「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」第1案の際に、日本側から出されたコメント
http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/wto-sps/pdf/terre_comment_aw_may_2013_jp.pdf

その後日本から出した第2案へのコメント

2014年8月に提出された日本のコメントは、カウトレーナーについては残念ながらOIEの第2案に対して次の通りカウトレーナーの使用を認めるコメントとなりました。

動物の行動を管理するために設計された帯電機器であって、ウェルフェア上の問題発生の増加に結びつくもの(たとえば、カウトレーナー、帯電式ゲート)は、使用されないものとする。

除角、断角の際の鎮静剤の使用については、OIE原案を否定するコメントは提出されませんでしたので、この点は良かったと思います。

しかし、日本は第2案コメントにおいて次のコメントを追加しています。

e)床、敷料、寝床の表面及び舎外区域

乳用牛が、舎内、舎外にかかわらず、繋がれていなければならない場合には、最低限、横臥し、立ち上がり、自然な姿勢を維持し、スムーズに回転することができるようにするものとする。タイストール牛舎で飼われている牛は、ウェルフェア上の問題を防止するため、繋がれない状態で十分な運動ができるようにするものとする。
野外で繋がれている場合には、歩くことができるようにするものとする。家畜飼養者は、牛が繋がれている場合には、ウェルフェア上の問題のリスクが高まることを認識しておくものとする。(Loberg et al., 2004; Tucker et al., 2009).

f) 場所、建物及び設備

繋がれている牛は、最低限、横臥し、野外で繋がれる場合には、回転し、歩くことができるものとする。

つまり、回転できない状態で繋いでもOKだとし、さらには繋ぎ飼いが動物福祉を損なう可能性があるという記述を削除するように求めています。

「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」第3案

第2案への各国の意見をうけて、2014年12月に発表されたOIEの第3案は、日本からの意見に譲歩したものになっています。
カウトレーナーについては日本からのコメントのとおり「カウトレーナー」という言葉が削除され、回転できない状態での繋ぎ飼いについては「スムーズに回転することができるようにするものとする」という文章が「自分を毛繕いすることができるようにするものとする」という文章に変更されてしまいました。

「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」採択

その後OIEは、2015年5月の総会採択を目指して、加盟国に3回目の意見照会をおこない、2015年5月24~29日の第83回OIE総会で「アニマルウェルフェアと乳牛生産システム」が採択されました

2015年7月1日 第1回 OIE連絡協議会を傍聴したPEACEから、当日配布された「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」を見せていただきました。これが採択されたOIE基準となります。

カウトレーナーについては残念ながら使用を認める内容になりました。

動物の行動を管理するために設計された帯電機器(たとえば、カウトレーナー)は、適切に設計、使用及び保守されていない場合には、ウェルフェア上の問題を引き起こすおそれがある。
電気牧柵及びゲートは、ウェルフェア上の問題を防止するように正しく設計及び保守され、製造者の取扱説明書に従った形でのみ使用されるものとする。

角の切断については、麻酔や鎮痛剤の使用を強く促す内容になっていると思います。

麻酔及び鎮痛剤の使用は、摘芽を実施する場合には、強く推奨されており、除角する場合には、常に使用されるものとする

繋ぎ飼いについては、方向転換できない繋ぎ飼いをしても良いとする日本のコメントは反映されましたが、繋がれている場合はウェルフェア上の問題があるとする一文を削除するよう求める日本のコメントは却下されています。

牛が、舎内、舎外にかかわらず、繋がれていなければならない場合には、最低限、妨げられることなく横臥し、立ち上がり、自然な姿勢を維持し、自分を毛繕いすることができるようにするものとする。タイストール牛舎で飼われている牛は、ウェルフェア上の問題を防止するため、繋がれない状態で十分な運動ができるようにするものとする。
野外で繋がれている場合には、歩くことができるようにするものとする。家畜飼養管理者は、牛が繋がれている場合には、ウェルフェア上の問題のリスクが高まることを認識しておくものとする

日本で周知されていないOIE動物福祉基準 

「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」はOIEサイトで、こちらからご覧になることができます(英文)。日本語翻訳したものは残念ながら公開されていません。本来なら日本のサイトで公開すべきですが、今回の乳用牛の基準だけでなく、これまで採択された14の動物福祉基準はいずれも日本で翻訳公開されていません。
基準を作るために日本でも委員会を開きコメントを作って提出し、時間を割いています。せっかく基準が作られても国内でなんら周知されないのであれば、絵に描いた餅に過ぎません。費やした労力は無駄に終わってしまいます
当法人はこれらの動物福祉基準を翻訳公開し、畜産業者までいきわたるよう周知するよう行政に求めていますが、今のところそれは実行されていません。

 

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