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餓死させることは究極の動物虐待、畜産にはびこる餓死による虐待に抗議

2020年、和歌山県の鶏肉生産業者有田養鶏農業協同組合が、鶏14万羽を餓死させたと報道された*1 *2。

和歌山県によると、同じ経営者が運営する屠殺場(食鳥処理場)が先に破綻し、行き場を失った鶏たちが残され、餌をあげることもままならなくなり、死亡させたという。淘汰すら、金がなくてできなかったといい、また和歌山県が淘汰を代行することも判断されなかった。しかし死体の処理の行政代執行は行われ、その費用の1億円近くは経営者に請求するという。

見えるのは、動物の苦しみ、動物の命は、なにひとつ考えられていない無情な判断だ。経営者にしても、県にしても。時間をかけて餓死していっているという緊急事態には、悠長に構え、死体の処理には緊急性を見出したのだ。倫理観というものがどこにあるのか、わからなくなる。

私達が告発する前にすでに警察の捜査が始まっていたため告発は私達側は行っていないが、厳正な捜査と、そして刑罰を強く望む。

そしてなによりも、同じことが今後ありうるという今の畜産を変えなくてはならない。意識の低さを改善しなくてはならない。

鶏たちに何が起きたのか

2019年12月から2020年2月にかけて、餌を断たれ、水も断たれた鶏たちに、一体どのようなことが起きたのか。

まず、ここにいた鶏たちは肉用鶏と呼ばれ、彼らは生まれたばかりの赤ちゃんたちだ。本来なら50日間糞尿の上で暮らした末、捕獲されてコンテナに入れられてトラック輸送され、シャックルに逆さ吊りにされて首を切られて殺される。途中で弱った者は、良ければ頸椎脱臼で殺され、悪ければ発見されずに衰弱する。この養鶏場は53日~55日齢でヒナが3kgになったときに出荷し、飼育面積は45.4kg/㎡で*1日本では一般的からやや広め、世界ではありえない狭さで飼育されていた。また、4つの農場で年間132万羽を出荷していたようだ*2。それら農場は驚くほど山奥にあり、どうやって大きなトラックを入れていたのか首を傾げるほどだ。

12月上旬、食鳥処理場が廃業し、そこから”出荷”つまり屠殺ができなくなったという。淘汰はできる限りやったと行政からの情報だが、本気でやったのかどうか、私達は疑問視している。そして次第にエサ代が賄えなくなり、餌が断たれ、12月下旬から死に始め、そして全滅した。

比較的早めに死んだ鶏も居たかもしれない

食べ物が断たれると、鶏がどのくらいで死亡するのか、どのように苦しんだのか。実際にはわからないが、死体から何が起きたか想像すること、論文から苦しみを推測することができる。

14万羽の鶏たち、1羽1羽は異なる個性を持ち、異なる体質を持ち、異なる免疫力で、性格も違う。そのため、様々な死に方が起きただろうと思われる。

最も運が良い鶏は、餌が断たれてすぐにブロイラーでよく発生する突発性の心臓発作などで死亡した鶏だ。念のために言うが、肉用の鶏はみんな赤ちゃんであり、その動物が心臓発作で死ぬのだ。

また免疫がもともと弱かった鶏はさらに免疫が弱り、早めに感染症にかかるなどし、体内の炎症などで死亡しただろう。

餌がなくなると、急激に低血糖になるため、もともと弱かった個体は、それが原因で早期に死亡した鶏も多かったであろう。なぜならもともと肉用鶏の約半数はくる病の傾向があり*3血糖値が異常に低い鶏が多いためだ。

ただしこれらの鶏たちも、1日2日で死ぬことができたわけではない。24時間の絶食では死亡しない*5。

長く苦しんだ鶏たちもいた

外から撮影されたこの写真を見てほしいが、通常の肉用鶏の飼育場とは比較にならないほど、糞尿の地面が陥没するほど、糞尿が積み上がっていることが分かるだろうか。これは鶏たちが長く生きていたことを意味しているのではないか。

また、このように工場畜産で飼育されている鶏の死体は、放置されるとなぜか黒い粉をふいたようにまっ黒になっていく。黒さがそれぞれの鶏で異なることも、見て取れる。
これは一部の鶏は早く死ぬことができ、一部の鶏は長く苦しんだことを示している。
体が半分糞尿に埋まっていたり、死体の上に死体が重なっているケースも見られた。徐々に、1羽づつ、死んでいったのだ。
そしてこの写真が撮られた2月下旬のすぐ手前までいきていたことを意味しているのだ。12月下旬に餌が断たれたのだとすれば、約50日~60日、生き続けた可能性を示している。この日数は人と大きくは変わらない。

2月下旬、まだ死体が白かった鶏に、何が起きたのか想像するだけで、胸が締め付けられる。最も苦しんだであろう鶏の1羽だから。

国境なき医師団の文章を引用しよう*6。

食べないことで気力が失われ、極度の疲労が生じる。次第に無表情になり、反応を示さなくなる。食物が入ってこないために胃は萎縮し、ますます少量の食物しか受けつけなくなる。胃の容積により管理されており、食欲や満腹感などの感覚に関連しているすべてのメカニズムが鈍る。衰弱が激しいために飢えや渇きの感覚を失い、しばしば脱水状態に陥る。

しかし極度に衰弱しても、苦痛を感じる能力まで鈍るわけではない。筋肉が萎縮しているため、あらゆる動きは痛みを伴う。皮膚組織が乾燥して皮膚が裂けることによる痛みもある。当然、感染症も痛みを引き起こす。極度に衰弱しているため、あらゆる病気に感染する危険がある。例えば消化管の内壁にカビが発生することがよくある。そのため飲み込むときに、口内炎ができた状態でレモンを食べるような激しい痛みをともない、飲食が極めて困難になる。

赤ちゃん鶏たちの体に起きたこと*4

最初に血糖値が急激に下がっただろう。これを回避し生命維持のために最初に削り取られるのは脂肪だ。

脂肪からの栄養が得られなくなると、タンパク質、グリコーゲンに切り替わり、筋肉の萎縮をもたらす。同時に感染症にかかりやすくなる。細胞機能に必要なタンパク質がなくなると、筋肉は急激に衰え、様々な体は正常に機能できなくなっていく。

肉用鶏はもともと骨が脆い。さらにはそもそもまだ赤ちゃんなので発達途中である。筋肉の萎縮と骨の脆さに拍車がかかり立てなくなって動きが取れなくなった鶏も多かったかもしれない。

カリウムも奪う。体液がたまり、浮腫、心機能障害などが発生する可能性がある。心拍数の低下、腎臓の機能不全も心不全を助長するだろう。

感染症にかかったり、感染症でなくとも飢餓状態になると下痢がひどくなる。これにより腸内の細菌が増加し、毒素が増え、腸粘膜に損傷を及ぼし、さらに腸が弱くなっていく。すると脱水症状がさらにひどくなる。下痢をしている状態の時、あなたも腹の痛みに苦しむだろうが、動物も同じだ。また、弱った鳥は寄生虫感染にもさらされやすくなる*7。弱った上に血を吸われ貧血になったり痒みで苦しんだりするという状態になる。

また、体温がさがっていく。しかも12月から2月にかけての最も寒い時期だ。寒い中、自分自身の体も低体温になった状態で、眠ることすらできなかった可能性も高い。羽毛に覆われているでしょうと言うかもしれないが、肉用鶏は品種改変によって体が通常な何倍も脂肪で膨れ上がっており、それでいて羽の数が増えているわけではない。そのため、腹の部分には羽毛がほとんど生えないし、更にはまだ赤ちゃんであるために基本的に腹の部分は皮膚がむき出しだ。しかも足元はドロドロで足と胸の部分は濡れるのだ。寒さで苦しんだことに間違いはないだろう。

多くの場合、感染症や免疫異常やどこかの器官の異常で死亡する。飢餓の末期には、厳密にはマラスムスという病名がつくようだ。これは極端な栄養やエネルギー失調で、生命維持が困難なほどの体重になるなどし、感染症もかかりやすい。もしくはクワシオルコルという病名で、極端なタンパク質不足で浮腫や脂肪肝が発生する。そしてあらゆる組織が劣化し、電解質のバランスが崩れ、痙攣し、不整脈や心臓発作などを起こし死んでいくという。

繰り返すが、苦痛に対して鈍感になるということはなく、むしろ過敏になる。老衰ではないのだ、麻酔があるわけでもない。あなたも病気や発熱のときには神経が過敏になるのではないか。

14万羽それぞれの体にどのような変異が起きたかはわからない。しかし上記のどれか、又はそれ以上に悲惨なことが起きたことは間違いがない。

餓死は何よりも精神的に苦しめる殺し方

無気力、不安定な歩行、羽毛の乱れ、警戒心の喪失など立証されている*7。人の10日間の飢餓実験でも、「頻繁に記憶をなくし、精神的にまったく警戒しない状態になり、質問への応答が遅くなり、疲れ、青白く、そして無神経」になったという*8*9。

鶏舎の大きさからするとおおよそ一つの鶏舎には3000羽ほどが詰め込まれていたと思われる。バタバタと仲間が死んでいく中、生き残るのはどのような気持ちだろうか。まだ2~3ヶ月しか生きていない赤ちゃんであっても、鶏たちは中の良い仲間を見つけたり、仲間の後ろにくっついて歩いたり、一緒に砂浴びをしたりする。その仲間たちが徐々に動かなくなっていく。

多くはなさそうであるが、一部器官が露出していた死体が見えた。これはもしかしたら共食いをした形跡とも言えるかもしれない。

地獄だ。

ファスティングや、一部で行われる人間の自死や、野生化で起きる弱い動物の餓死と一緒にしてはならない。逃げ場がなく、自分で餌を探すその場所すらなく、強制的に箱の中で餌が断たれるのだ。鎮痛剤もなければ、2日後にご飯を食べられるという希望もなく、自分で餌を取ろうと努力すらできない。

飼育下の動物に人間によって餌を与えない方法で殺された。餓死したという言葉だけからは見えない壮絶な彼ら彼女らの苦しみを、人々は認識すべきだ。

淘汰くらいはできた

私達は経験からいくつかの対処が可能であったことを強調したい。

入雛を制限する時期をあと2ヶ月早めればよかった

農事組合法人吉備食鶏組合は、有田養鶏農業協同組合と同一経営者であり、かつ管理された施設であったことが伺える。通常通りの経営管理を行っていれば、食鳥処理場の閉鎖は予測可能であったはずである。さらに手元にある資金から餌代が足りなくなることや、人件費が足りなくなること、必要な淘汰ができなくなることも容易に予測がつくことである。本来であれば、農事組合法人吉備食鶏組合及び有田養鶏農業協同組合を経営する平松氏は、より早い時期に入雛(ひよこを農場に入れること)を制限すべきであったものを行わなかった。これは命を軽視し、動物を管理する上で無責任で自分勝手な対応である。

県職員は、「動物愛護管理法はお金があってできることであって、例えば自分の食費を削ってまで愛護をしなければならないかと言われるとそこらへんは最終的に罰則になるのかっていうのはちょっと難しい」と私達に話したが、農場から食鳥処理場、販売の会社をすべて経営し把握する経営者には、14万羽を餓死させるに至ること防ぐことは可能であったと考えられる。

自己での淘汰(殺処分)は可能であった

経営破綻する以前、つまり屠殺場と農場を維持できないと判断した時点で、従業員総出で炭酸ガス等を調達し、淘汰することも可能であったはずである。ゴミ袋とポリバケツと炭酸ガスがあれば淘汰は可能であり、これらは安価である。

炭酸ガスを購入することができないとしても、農場従業員は12月下旬まではおり、また1月中も数名の元従業員が農場管理をボランティアで手伝っていたとのことである。これらの従業員(または元従業員、または役員の家族等)とともに、養鶏で一般的に行われる淘汰方法である頸椎脱臼により殺処分することは可能であったと考えられる。頸椎脱臼は費用はかからない。なお、頸椎脱臼は他の農場では出荷時に出荷できない鶏を1時間以内で、3~4人で200羽淘汰することは一般的である(※決して安楽ではないが餓死より遥かに苦しみの時間が短い。EUでは頸椎脱臼は1日70羽までとされているため、二酸化炭素のほうが望ましい)。とくに、体の小さな20日齢以内の鶏であれば、淘汰はより容易であり、14万羽もの餓死を避けることは可能であったと考えられる。

畜産業全体の問題

動物の福祉を著しく低下させ、長く苦しませた挙げ句に餓死させることは、許されることではない。1羽1羽が苦しみの中で死んでいった。14万羽という数は、2018~2020年にかけて起きている豚コレラで殺した豚の数と同じくらいだ。日本中から激しい非難の的になる犬猫の殺処分数は5万頭に満たない。14万という数は、ただ事ではない。

しかし、この問題はこの業者だけの問題ではないことを強調したい。

今の畜産業においては、餓死や衰弱死をさせる畜産業者が多数残っている。特に鶏は多い。養鶏業では一つの養鶏場だけで一日に何十羽も死に、又は淘汰対象になる。焼き殺してみたり、溺死させてみたり、そのまま廃棄物処理業者に出してみたり、それはまぁ驚くような酷い方法で殺している。

その改善が進まない、そのような風土を持った産業であり続けているのが、今の日本の畜産業だ。

そして、その産業を、これらのむごい扱いを容認しているのが、動物たちをその農場がどう扱っているのかも知りもせずに鶏肉を買い、食べる消費者だ。この無関心な消費者たちがいるかぎり、畜産業は変わらない。

鶏肉という産業の裏側でひそかに失われた14万の個性を、消費者は忘れてはならない。

*1http://kansai-broiler.co.jp/toha/index.html
*2https://azcareer.net/article/%E6%9C%89%E7%94%B0%E9%A4%8A%E9%B6%8F%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E5%8D%94%E5%90%8C%E7%B5%84%E5%90%88/%E5%92%8C%E6%AD%8C%E5%B1%B1%E7%9C%8C%20%E6%9C%89%E7%94%B0%E9%83%A1%20%E6%9C%89%E7%94%B0%E5%B7%9D%E7%94%BA%20%E6%9D%B1%E4%B8%B9%E7%94%9F%E5%9B%B35/
*3https://www.researchgate.net/publication/11146656_Hypoglycemia_Spiking_Mortality_Syndrome_in_Broilers_with_Rickets_and_a_Subsequent_Investigation_of_Feed_Restriction_as_a_Contributing_Factor
*4 https://academic.oup.com/ajcn/article-abstract/20/7/672/4787802 . https://www.sciencedirect.com/topics/food-science/starvation . https://www.disabled-world.com/fitness/starving.php . https://www.sedig.org/physical-and-psychological-effects-of-the-starvation-syndrome
*5 https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0031938419306833
*6 https://www.msf.or.jp/news/detail/adsha600000064mn.html
*7 https://www.michigan.gov/dnr/0,4570,7-350-79136_79608_85016-26946–,00.html
*8 https://academic.oup.com/ajcn/article-abstract/20/7/672/4787802
*9 https://wamu.org/story/16/01/20/what_happens_to_the_body_and_mind_when_starvation_sets_in/

 

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