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農林水産大臣藤木眞也政務官にアニマルウェルフェアへの取り組みを要望

農林水産大臣藤木眞也政務官にアニマルウェルフェアへの取り組みを要望

2020年6月19日、アニマルライツセンター、日本女子大学細川幸一教授、ぶぅふぅうぅ農園代表中島千里氏、動物環境福祉協会Eva事務局長松井久美子氏で、農林水産大臣藤木眞也政務官と面会し、放牧禁止撤回のお礼とともにアニマルウェルフェア推進の要望をしました。またこの際すでに達成しましたが「放牧制限しないで」と求めた署名を提出し、改めて皆様の声を届けてきました。

藤木政務官は16日に答申が出て確定した放牧中止について、「検討していたときは”放牧制限”であり中止までは規定がなかった、中止を含んだあんが出てから地元を含め多くの声をもらった」と経緯を述べており、私達市民や放牧に関係する人々の声が着実に農林水産省に届いていたようでした。

最悪のシナリオではこの面会は放牧中止の撤回を求める最後の機会になっていたと思いますが、幸い12日に撤回されいたため、お礼を述べ、また市民が科学的根拠がなかったことに反発したということや、放牧が危険だという捉え方を見直してほしいことを改めてお願いしました。

また、飼養衛生管理に深く関連する飼育密度の改善、そして国内のアニマルウェルフェアで最もないがしろにされている課題の1つである農場内での殺処分方法の改善を要望しました。

密飼いの課題については特にブロイラーについてお話させてもらいました。なぜか、、、それは農林水産省が提示する密飼いの基準があまりにも国際スタンダードとかけ離れ、超過密状態の数値であるためです。

農林水産省の密飼いの参考値

54kg/㎡(18羽/㎡)

EU規制(原則)

33kg/㎡

ブラジルの平均飼育密度

28kg/㎡

タイ最大手食品企業CP Foodsの平均飼育密度

33kg/㎡

また、農場内での殺処分方法の実態については、私達が従業員から得ている情報をもとに話をして驚かない人はこれまでにいないほど、様々、そしてあまりにもひどい方法が取られています。自身が牛の畜産経営も行っている藤木政務官も驚いていました。たしかに牛は獣医が殺処分するため農家自身が殺処分自体を行うことはほぼないかもしれません。しかし養豚、養鶏は全く違う事情です。この件については、アニマルライツセンターで今後さらに詳細をレポートし、また改善に向けて関係者、メディア等への働きかけを行っていきたいと思います。

農林水産大臣 江藤 拓 殿

農林水産大臣政務官 藤木 眞也 殿

放牧中止の撤回のお礼、及びアニマルウェルフェア向上の要望

現在改正作業中である「飼養衛生管理基準(牛、水牛、鹿、めん羊、山羊)」、「飼養衛生管理基準(豚、いのしし)」につきまして、12日付けの食料・農業村政策審議会 第44回家畜衛生部会で放牧中止を削除した案をご提示頂き、また16日の食料・農業村政策審議会 第45回家畜衛生部会で答申されたことを確認いたしました。放牧中止措置を回避してくださったことに、心より感謝申し上げます。

完全放牧を行っている生産者はもとより、「放牧制限の撤回を求める要望書」に連名している動物福祉団体、消費者団体、学識者をはじめ、多くの市民が改正案に含まれていた「放牧中止」「放牧制限」に危機感を頂きました。

この背景には、近年国内でも高まってきているアニマルウェルフェアへの意識があります。

動物たちを閉じ込め消毒することによって防疫を高めるという考え方ではなく、動物自身の免疫力を高めることによって疾病を防ぎ、アニマルウェルフェアに配慮した畜産によって新たな疾病を生み出さないという考え方に対する理解が高まっています。飼育密度が現状の日本の状態であれば、新たな疾病を生み出す可能性があります。また集約的な養鶏場から、鳥インフルエンザが低原生から高原生に変わっていることも事実としてあります。

アニマルウェルフェアに配慮した畜産は、動物がストレスなく快適に過ごすことができ、適切に環境に順応できている状態を目指すもので、消費者への安全・安心な食の提供にもかなうものであり、SDGs、エシカル消費に対する消費者の関心の高まりも背景にあります。

以上から、根本的なアニマルウェルフェアの改善をお願いしたく、以下の2点を要望をいたします。

 

要望1 集約的畜産場における飼育密度の改善を行うこと

肉用牛は13.7~42.1%の農家が、乳牛は63.5%の農家が、豚は19.8%の農家が農林水産省の示す 密飼いに当たります。採卵鶏は、国内養鶏場の平均飼育密度自体が、農林水産省の示す密飼 いにあたっており、相当数の農家が密飼い状態であることを示しています。肉用鶏は農林水産省 が示す数値が18羽/㎡となっており、日本は3kgで出荷することを考えると54kg/㎡です。この数 値は国際的に見て異常な数値です。肉用鶏のブラジルの平均飼育密度28kg/㎡、タイ最大手食品 企業CP foodsの平均飼育密度33kg/㎡、EUは原則33kg/㎡であり、日本はあまりに乖離がありま す。飼育密度の改善は急務です。

 

要望2 OIE動物福祉規約(第7.6章 疾病管理を目的とする動物の殺処分)の具体的な規定の日本語訳を周知徹底すること

アニマルウェルフェアは動物が生きているときの環境に加え、殺処分のあり方も対象としていますが、後者のアニマルウェルフェアが日本では議論されず、放置されてきました。そのため、農家自身も福祉に配慮した安楽死方法を知らず、一般市民から考えると信じがたい方法が取られています。

これらの情報はほとんど表に出ません。なぜなら、ひどい方法で殺処分を行う従業員自身が「身近な人には知られたくないので誰にも相談できずにいる」(首吊りで豚の殺処分を行っている中規模養豚場の従業員の言葉)からです。

2019年に一般社団法人畜産技術協会が「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の農場内における殺処分に関する指針」公開し、農林水産省はこれを各都道府県に配布しております。しかし、この指針では具体的な規定が曖昧なままにされています。そのため、農家は誤った方法を取ることもあります。事実、前出の首吊りで豚を殺処分していた中規模養豚場は、2020年の段階でも首吊りによる殺処分を行っていました。

一方、OIE動物福祉規約は、世界の獣医師が科学的根拠をもとに作成されたものであるため信頼性があり、かつ具体的です。これを守ることは、国際基準に準拠できることとイコールであり、国として、国内の産業としても利点があるはずです。OIE動物福祉規約(第7.6章 疾病管理を目的とする動物の殺処分)の具体的な規定の日本語訳を周知徹底することを要望いたします。

 

最後に~日本の畜産が世界で支持されるために~

ケージフリー(卵)、ベターチキン(鶏肉)、ストールフリー(豚肉)、繋ぎ飼いフリー(牛)などの設備の変換を伴うアニマルウェルフェア畜産に切り替えることは難しいものとは思います。しかしこれらは、世界的な流れであり、欧米はもちろんのこと、畜産物の輸出を多く行うタイや中国、ブラジルなどでも進んでいます。今後輸入の畜産物はアニマルウェルフェアが配慮され、国内の畜産物はされていないという状況に陥る可能性があります。これは国内畜産業にとってはリスクとなりえます。また今後日本が輸出を増やそうとする際にも、アニマルウェルフェアに配慮することは必須要件になります。

消費者の意識を反映して、国内企業でもアニマルウェルフェアへの取り組みが徐々に高まってきています。国としても、アニマルウェルフェアをより向上させていくための後押しをしていただけますよう、お願いいたします。

2020年6月19日

日本女子大学教授・日本エシカル推進協議会理事 細川幸一
公益財団法人動物環境・福祉協会Eva 代表理事 杉本彩
認定NPO法人アニマルライツセンター代表理事・日本エシカル推進協議会理事 岡田千尋

今回、藤木政務官は十分な時間をさいてくださいました、今後の農林水産省の姿勢に注目したいと思います。

最後に改めて、今回尽力してくださった国会議員の皆様、多くの市民、アニマルウェルフェアを重視する生産者、注目してくれたメディアに感謝します。

左からアニマルライツセンター代表理事岡田、日本女子大学細川教授、藤木政務官、ぶぅふぅうぅ農園代表の中嶋氏、Eva事務局長の松井氏

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