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(パブリックコメント)飼養衛生管理指導等指針案への意見 2020年6月23日まで

家畜伝染病予防法に基づく飼養衛生管理基準(案)で放牧が禁止されるのではないかと危惧されていたが、生産者含め多くのパブリックコメントが寄せられた結果、たちまち放牧が禁止されることはなくなった

だが新規案をみると、放牧が禁止されることがなくなっただけで、密飼いの具体的数値の記載や、アニマルウェルフェアへの言及については以前記載されないままとなっている。いずれもアニマルライツセンターが放牧の禁止の撤回と一緒に先日のパブリックコメントで求めていたものだ。これらは家畜伝染病予防の観点からだけではなく、畜産利用されるすべて動物の苦しみを減らすという意味で、放牧よりもむしろ重要なものだといえる。

現在別のパブリックコメントが行われている。これも豚コレラ(豚熱)、アフリカ豚コレラ(アフリカ豚熱)の影響をうけて新たに作成されるもので、飼養衛生管理基準などの指導指針「飼養衛生管理指導等指針」だ。

アニマルライツセンターはアニマルウェルフェアへの言及が皆無で、消毒と隔離に焦点を当てたこの飼養衛生管理指導等指針(案)に、意見を下記のとおり提出した。ぜひ皆様からも声を届けてみてほしい。(締め切り2020年6月23日)

飼養衛生管理指導等指針案の意見・情報の募集について

アニマルライツセンターから提出した意見

全体的な意見

現在の飼養衛生管理指導等指針案にはアニマルウェルフェアの必要性が記載されていない。アニマルウェルフェアの重要性を明記し、指導事項の一つとすべきではないか。

伝染病予防にはアニマルウェルフェアが不可欠だというのは世界の共通認識となっているといえよう。たとえば、2018年1月20日にベルリンで開催された農業大臣会合(日本からも農林水産審議官が出席された)で採択された声明(コミュニケ)には次のような事項がある。

・第43回世界食料安全保障委員会(CFS)「食料安全保障と栄養のための持続可能な農業開発ー家畜の役割は?」に関する当委員会の政策提言の実現を求める

「食料安全保障と栄養のための持続可能な農業開発ー家畜の役割は?(Sustainable agricultural development for food security and nutrition: what roles for livestock?)」に記載されているものの一つに「家畜疾病状態の監視と管理を改善するために政府間組織は畜産動物の健康と福祉の改善のための財政的および技術的支援を提供する」というものがある。また現在の飼養衛生管理指導等指針案には「抗菌剤の不適切な使用により、薬剤耐性菌が出現」する問題について述べているが、「食料安全保障と栄養のための持続可能な農業開発ー家畜の役割は?」には「畜産動物への抗生物質の予防的使用を減らし、動物の福祉を改善するための行動が必要」というものも含まれる。

さらにベルリン農業大臣会合同声明では「OIEのグローバルな動物福祉戦略とその実施をサポートする。」というものも採択されているが、そのOIEの陸生動物衛生規約 第7.1 章 「アニマルウェルフェアの勧告に係る序論」には「動物の健康とアニマルウェルフェアの間には決定的な相互関係がある」としている。また2018年10月25日 欧州議会は「アニマルウェルフェア、抗菌薬の使用、および産業用ブロイラー農業の環境への影響に関する決議」の中で、「アニマルウェルフェアはそれ自体が予防策として機能し、動物が病気になるリスクを減らし、それによって抗菌薬の使用を減らし、しばしばより高い生産結果をもたらす」としている。研究者は「もし動物のウェルフェアが劣悪であれば個体がり患する確率は増加することが多い・・・疾患の発生はウェルフェアの改善によりしばしば低下するであろうし、疾患に対する抵抗力が不十分であることはウェルフェアが劣悪であることを示唆する(動物への配慮の科学2009から引用)」という。

伝染病予防は畜産動物の隔離と消毒だけでは根本的な解決にはならない。アニマルウェルフェアは病気を予防する重要な要素である。

WAP(世界動物保護協会)が2020年に発表した、日本の畜産動物保護評価はGという最低レベルにランク付けされている。飼養衛生管理指導等指針案に現状日本のアニマルウェルフェアのレベルが低いことを明記し、重要な柱として問題の改善を図るべきではないか。

現在の飼養衛生管理指導等指針案にある、ウィンドウレスのほうが開放型や放牧より防疫力が高いと思わせる記述を削除し、「密飼い」の具体的数値を示すことを提案する。

飼養衛生管理指導等指針案には「肉養鶏農場においては、ウインドレス鶏舎での飼養が増加する一方、依然として開放型鶏舎での飼養や放牧場等での野外飼育も行われている。野鳥からのインフルエンザウイルス、ネズミからのサルモネラ菌等の感染が危惧されることから、防鳥ネット、金網等の侵入防止対策が重要である。」という記載が見られるが、この記述ではウィンドウレスのほうが開放型や放牧より防疫力が高いという風に読み取れるが根拠はあるだろうか。ウインドウレス鶏舎は寒さに弱いクマネズミにとって格好の生息場所であり、実際ウィンドウレス鶏舎のそこかしこにネズミが走り回っている例もある。

1959年-2015年の間にH5,H7型が低病原性から高病原性へ転換した39の事例を調査したレポート(2018年*)によると、転換したH5,H7型のうち2つが昔ながらの裏庭養鶏(裏庭で放し飼いする昔ながらの小規模な養鶏)で発生したもので、残りの37は工場型の飼育密度の高い家禽農場で起こったものであることがわかったという。

*Front. Vet. Sci., 05 June 2018 | https://doi.org/10.3389/fvets.2018.00084 Geographical and Historical Patterns in the Emergences of Novel Highly Pathogenic Avian Influenza (HPAI) H5 and H7 Viruses in Poultry

専門家たちはずいぶん前から鳥の間のH5,H7型がヒト-ヒト間で感染することができる「新型」へ変異する可能性を危惧している。これまで起きた新型インフルエンザのパンデミックはおよそ10-40年おきに発生してるので、次のパンデミックに備えなければならない時期はすでに来ている。

問題はウインドウレスか否かではなく、動物が異様な過密飼育を強いられる工場型畜産ではないだろうか。飼養衛生管理基準には「密飼いの防止」という遵守項目があるが、数値基準がないため機能していない。「アニマルウェルフェアの考え方に対応したブロイラーの飼養管理指針」では1m2あたり33~43kgが望ましいとされてるが、2014年の調査では日本のブロイラー養鶏の平均飼育密度は46.68kgとなっている。にもかかわらず2018年の全国の飼養衛生管理基準の遵守状況調査によると98.9%の肉用鶏経営体が「遵守している」と答えている。具体的数値がなければ基準は意味をなさないだろう。

また、案にはコクシジウム感染症などの病原体侵入リスクについても書かれているが、病原体があるからといって動物が必ず感染するわけではない(高病原性鳥インフルエンザのような病原性の高いものであれば別だが)。感染する要因は、病原性が弱くても環境への存在が多すぎること、そして最も発症するケースとして多いのが「ストレス状態の時」だ。過密であれば病原体は感染しやすくストレスも高くなる*。コクシジウムなど侵入の認知以前の問題で、常にブロイラー鶏舎に存在しており排除は不可能だ。重要なのは過密飼育を避けてこれらの病原体の拡大を防止し鶏にストレスを与えないことのはずだ。

*参照:養鶏の友「鶏の病気とワクチン」2019年12月

個々の記述について

1.飼養衛生管理指導等指針10P
(Ⅳ 我が国における家畜衛生上の課題)(5)家畜の所有者等は、飼養衛生管理上の基本的備えとして、以下の取組を実践することが特に重要である。
【必ず実施すべき事項】
 ① 獣医師等の専門家の意見を反映させた飼養衛生管理マニュアルを作成し、衛生管理区域に立ち入る全ての従事者等が当該マニュアルの内容を遵守するよう看板の設置その他の必要な措置を講ずる。

全ての従事者等には畜産業未経験の新人も含まれるわけだが、看板の設置で防疫に関し十分な理解や確実な遵守が行えるとは考えにくい。
未経験者こそ飼養衛生管理遵守事項を逸脱した行動を起こしやすいことから、
「(経験者・未経験者問わず)採用前に最低限の筆記試験や実技試験(消毒槽の有効濃度やその維持、消毒槽清掃時の注意点、水が抜けるような消毒槽においては遅滞なく修理もしくは責任者への迅速な報告、正しい消毒方法や手洗いのやり方など)を行い合格点に満たない(十分な理解が出来ていない)応募者は就業させてはならない」という措置をその他必要な措置に明確に追加すべきである。
全体的に言えることだが、出来ていない部分を注意・指導し改めていくのではなく正しいやり方を予め習得してから従事することが命ある所有物に対しての所有者の責任であるという根本的なことを見つめ直していただきたい。

2.飼養衛生管理指導等指針12P
(Ⅳ 我が国における家畜衛生上の課題)2 牛、水牛、鹿、めん羊及び山羊(2)

伝統的な母子同居による母乳哺育が生産性に影響を与えているという内容になっているが、母子同居母乳哺育が母子の心身に良い影響を与えるアニマルウェルフェアの一面があることも確かである。
”一方で母子にストレスを与えず免疫力を高める飼育方法は【Ⅳ 我が国における家畜衛生上の課題】の「ⅳ)動物用医薬品の適正な流通・使用と薬剤耐性に対する認識の向上」にも繋がり、動物福祉や飼育方法の工夫に努めることも重要課題である”ことを追加するべき。

3.飼養衛生管理指導等指針14P
(Ⅴ 基本的な方向)(1)にある飼養衛生管理者による自己点検 が「年1回以上」

最低年1回では不十分ではないだろうか。自己点検の結果は家畜の所有者と共有し、衛生管理に問題点がないかを把握するための生産者にとっても家畜にとっても最重要データになるわけだが、それが例えば年1回の実施だと見落とした項目が更に1年間放置される可能性もある。4ヶ月に1回(年3回以上)、もしくは最低でも6ヶ月に1回(年2回以上)とするべき。

4.飼養衛生管理指導等指針20P
(Ⅱ Ⅰ以外で推奨すべき、飼養衛生管理上の事項 )
(4)家畜の所有者等は、野生動物が家畜伝染病の病原体に感染したことが確認されているものとして農林水産大臣が指定する地域において講ずることが必要となる追加措置について、平常時から、各農場で取るべき対応を想定し、訓練する。

一人当たりの管理動物数が多すぎて、訓練時間の枠を取ることも難しかったり、感染の確認が見逃されることが危惧される。効果的な伝染病予防のために、一人当たりの管理動物数を減らすべきではないだろうか。

5.飼養衛生管理指導等指針25P
(Ⅱ 飼養衛生管理者の選任、研修等)3 飼養衛生管理者に対する情報提供に関する方針(3)また、国及び都道府県は、外国人従業員向けの情報提供に配慮し、外国語による資料の作成・提供等を行うよう努める

外国人従業員に十分な理解をしてもらうには、「外国語による資料の作成・提供等」は必須とするべき。

6.飼養衛生管理指導等指針31P
(Ⅵ 通常の家畜の飼養農場以外の場所への対応に関する方針)(1)法においては、家畜の飼養に係る用途にかかわらず、法で指定された家畜を飼養している者は、飼養衛生管理基準を遵守する義務がある。このため、通常の家畜の飼養農場以外の場所(観光牧場、動物園、愛玩動物飼育場等)についても、その定期的・計画的な指導等のため、本指針及び指導計画の対象とする。

観光牧場、動物園、愛玩動物飼育場等での飼養衛生管理基準遵守義務については飼育者以外にも、客などの出入りがある施設では客なども靴の履き替え・防護服などの着用を義務付けるべき。
そのような施設では飼育者のみが飼養衛生管理基準を遵守していても不十分であり、国民一体となって防疫意識を高め畜産の衛生管理への理解と向上に協力しなくてはリスクは回避されにくい。
飼養衛生管理基準遵守は飼育者に限らず動物を利用する全ての人に浸透されなくてはいけないし、動物を利用する全ての人の責任でもある。

6 Comments

  1. 西澤明子 2020/06/19

    鶏の飼育のゲージフリー、豚や牛のつなぎ飼育をやめさせてください。

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  2. 岡本祐子 2020/06/21

    鶏でも豚でも牛でも、動物にも自由に自分の意思で気が向くままに歩き観察し楽しむ権利があるのです。人間がその権利を左右するとは本当に間違っていると思う。人間社会で働くうえで自由が少なくなり管理される人間は報酬というものを頂けるから我慢できるが、動物たちが自然の中を歩く自由さえ奪われるのは残酷過ぎる。彼らは何も人間に期待も要望もしていない、ただ人間と同じく地球に生まれたのであるから、生きている時間、彼ららしく仲間と自然を感じて欲しい。

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  3. 間瀬智恵 2020/06/21

    地球環境維持のための重要な役割を果たしている人間以外の生物に生息場所を返還してください。人間だけの世界を求めることは結局人間に降りかかってきます。地球は人間のものではありません。基本を忘れないでください。

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  4. 動物も人間と同じ、『生き物』です。
    感情もあります。
    人間と同じに、3密状態を無くし、自由な環境を与える法にしてください。

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  5. 狩野直子 2020/06/22

    今のような密飼いは、不衛生さやストレスから動物の疾病率をあげ、人間にも悪影響が出ます。
    隔離や消毒といった、後からの対処でなく、まず、一頭あたりの飼育面積を広げて、健全な飼育環境してください。

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  6. 菅原勇子 2020/06/24

    世の殆どの人達は工場畜産の現状や屠殺方法、屠殺され命を奪われるまでの行程苦しみを知りまそん。ニュースで流れるのは表向きのいい所だけで肝心な知るべきブラックな裏の部分が流れることはありません。もし本当の事を知ったなら多くの人が改善を求めることでしょう。非難される前に日本は世界レベルを越えるくらいに到達すべきです。日本の現状は国民に胸を張れるものではないと思います。もう変えなければならない時に来ています。よろしくお願い致します。

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