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新たな畜産戦略で、動物福祉法改正への道筋を公表

【3分で分かる】今回のポイント

2026年7月、欧州委員会は「EU Livestock Strategy(EU畜産戦略)」を発表しました。

この戦略は、EUの畜産を将来にわたって持続可能で競争力のあるものにするための長期的な方針です。農家の経営、環境、気候変動、疾病対策など幅広い内容を含みますが、動物福祉(アニマルウェルフェア)の面でも重要な方針が示されました。

特に注目されるのは、採卵鶏・ブロイラー・豚について、法改正案の提出時期が具体的に示されたことです。

① 採卵鶏・ブロイラーの法改正(2026年末)

採卵鶏のケージ飼育の段階的廃止やオスひよこ淘汰の廃止などを含む法改正案を、2026年末までに提出予定。

② 豚の法改正(2027年前半)

母豚のストール飼育からストールフリー(ペン飼育)への移行などを含む法改正案を、2027年前半までに提出予定。

③ 動物福祉への移行支援

アニマルウェルフェア向上への投資を支援するとともに、ケージフリーへの移行を資金面・制度面から後押しする方針。

④ 輸入品にも同等基準

EU産だけでなく、輸入される畜産物にも同等のアニマルウェルフェア基準を求める方向。

⑤ 高福祉ラベル

高いアニマルウェルフェアなどを満たす畜産物を評価する新たな表示制度を検討。

⚠️今回決まったのは「法改正のロードマップ」です。
法律が成立したわけではなく、今後欧州委員会が法案を提出し、その後EU議会・理事会で審議が行われます。

詳しく解説

① 採卵鶏・ブロイラーの法改正(2026年末)

欧州委員会は、2026年末までに採卵鶏・ブロイラーの動物福祉規則を改正する法案を提出するとしています。
以下の内容が盛り込まれる予定です。

特に注目されるのは、採卵鶏のケージ飼育の段階的廃止が、正式な法改正の対象として示されたことです。EUではこれまで「End the Cage Age(ケージ時代を終わらせよう)」市民イニシアチブへの対応としてケージ廃止の方針を示してきましたが、今回の戦略では、2026年末までに法案を提出するスケジュールが明記されました。

また、今回の法改正案には、オスひよこ淘汰の廃止も含まれる予定です。その実現には、卵がふ化する前に性別を判定する卵内雌雄鑑別(in-ovo sexing)技術の普及が重要とされています。EUではすでに一部の国で導入されていますが、中小規模の孵化場では普及が十分ではないため、今後さらなる普及が課題とされています。

一方、ブロイラーについても動物福祉規則の見直しが予定されていますが、現時点では飼育密度や品種など具体的な改正内容は示されていません。

② 豚の法改正(2027年前半)

欧州委員会は、2027年第2四半期までに豚の動物福祉規則を改正する法案を提出するとしています。

主な内容は以下です。

  • 母豚ストールから、自由に動けるストールフリー(ペン飼育)への移行
  • 農場で使える実践的な動物福祉指標
  • 輸入品への同等基準

現在、多くの母豚は妊娠中や分娩時に狭いストールで飼育されています。

今回の戦略は、EUがストールフリーへ向けた法整備を本格的に進めることを示しています。

③ 動物福祉への移行支援

EUは、規制を強化するだけではなく、農家が動物福祉を改善できるよう支援することも重視しています。

例えば、

  • アニマルウェルフェア向上への投資を支援
  • ケージフリーへ移行する農家への優遇融資を検討
  • ケージフリー施設の許認可手続きを円滑化

などが盛り込まれています。

つまり、「規制」と「支援」をセットで進める考え方です。

④ 輸入品にも同等基準

今回の戦略では、EU域内の生産者だけでなく、輸入される畜産物にもEUと同等のアニマルウェルフェア基準を求める方向性が示されました。

これは、EUの農家だけに高い基準を課して競争上不利になることを防ぐためです。

将来的には、日本企業がEUへ畜産物や加工食品を輸出する場合にも、動物福祉への対応がより重要になる可能性があります。

⑤ 高福祉ラベル

EUは、「European Excellence Scheme」という新たな任意表示制度を検討しています。この制度では、高い動物福祉や環境への配慮など、一定の基準を満たす畜産物を分かりやすく表示することが想定されています。

この制度では、

  • 高い動物福祉
  • 低炭素
  • 環境配慮
  • 地域性

などを評価することが想定されています。

EUは、動物福祉を単なる規制ではなく、「付加価値」として消費者に伝えることも目指しています。

今回の戦略が意味すること

今回のEU畜産戦略は、まだ法律そのものではありません。

しかし、これまで「動物福祉法制を見直す」とだけ示されていた方針が、「いつ、どの分野の法案を提出するのか」という具体的なロードマップになった点は、大きな前進と言えます。

特に、以下は今後のEUのアニマルウェルフェア政策を象徴する重要な取り組みです。

  • 採卵鶏のケージ飼育廃止
  • オスひよこ淘汰の廃止
  • 母豚ストールからペン飼育への移行
  • 輸入品への同等基準
  • 高福祉ラベルの導入

今回示された方針はEU域内だけでなく、世界の畜産や食品業界にも影響を与える可能性があります。
日本ではまだケージフリーやストールフリー、オスひよこ淘汰の廃止に関する法整備は進んでいません。
しかし、EUは世界のアニマルウェルフェア政策を牽引してきた存在でもあります。
国際的な基準が変化する中で、日本の畜産業や食品企業にとっても、今後こうした動向を注視していくことがますます重要になるでしょう。

※本記事は、欧州委員会(European Commission)が2026年7月7日に公表した「EU Livestock Strategy」の公式ページ、および掲載されている Communication, Annex (Commission Key Actions), Staff Working Document の内容をもとに作成しています。

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