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「ケージなら、いじめは減る」の嘘:Inside the cageから

「ケージなら、いじめは減る」の嘘:Inside the cageから

― Inside the Cage が示した、逃げ場のない傷害

日本では、農林水産省や採卵養鶏の生産者、一部の研究者がこれまで、「平飼いでは羽つつきやカニバリズムが発生し、ケージ飼育のほうが『疾病や傷害からの自由』を守れる面がある」と説明してきた。

しかし、この説明には決定的に欠けている点がある。

第一に、ケージでも羽つつきやカニバリズムは、それぞれのケージごとに発生している。第二に、ケージには弱い鶏が逃げられる空間が一切ない。第三に、平飼いでは環境や管理の工夫によって羽つつきを減らす余地があるが、従来型ケージではその改善余地がない。

クチバシを切り取るビークトリミング(デビーク)をなぜ行うのかを考えれば、もともと誰もが知っていることであった。だが、市民を騙すかのように、ずっとつつきが平飼いで発生するもののように国や生産者は語ってきたのだ。

問題は「羽つつきが起きるかどうか」ではない。自然な行動である群のの中での序列を作ることでもない。

ケージは傷害を防ぐのではなく、弱い個体が逃げられない状況を固定化する。そして改善の余地がない。これこそが問題である。

ケージでも序列は生まれる

鶏は社会性のある動物であり、集団内で序列を形成する。これは平飼いだけの問題ではない。小さなケージの中でも序列は生まれる。

研究でも、ファーニッシュドケージ内の鶏に優位個体と劣位個体が生じ、劣位個体は資源利用や行動面で不利になることが示されている。Shimmuraらは、ファーニッシュドケージにおいて優勢な鶏と従属的な鶏の行動、資源利用、身体状態に差があることを報告している。

6羽ケージで1羽が最下位になるなら、ケージ内の約17%が継続的な劣位個体になる。2羽が劣位に置かれるなら約33%である。これは仮説であり、直ちに全ケージへ一般化できる数字ではない。しかし、固定された5~8羽の小集団で生活するケージでは、劣位個体が同じ相手から逃げられない構造に置かれることは明らかである。

Inside the Cageで見た「逃げられないいじめ」

Inside the Cageでは、2026年2月から始まったキャンペーンであり、日本の採卵鶏農場で日々の観察を続けている。

そこで見えたのは、ケージ内にも序列があり、弱い鶏が繰り返し追い込まれている現実だった。

弱い鶏はケージの隙間に追いやられていた。
他の鶏にマウントされ、背中の羽毛が抜け落ちていた。
顔を上げることすらできず、うずくまっていた。
ケージの隙間に挟まれ、動けなくなり、弱り、死んでいった。

レポートには、挟まれて衰弱した鶏について、外そうとすると痛みで鳴き、皮膚が壊死状態になり、ケージから出しても起立できなかったことが記録されている。水を二度ほど少し飲んだあと、首を落とし、目を閉じていった。

また、弱い鶏はケージの中で踏まれ、背中の羽毛が失われ、体が汚れ、餌も十分に得られず小さくなっていった。見つければ「隔離のため空いているケージ」に移したが、数が多すぎてすべてを移動することはできなかった。起立できるなら、そのまま見なかったことにして通り過ぎることもあった。

これは「ケージなら傷害が少ない」という説明と矛盾する。

ケージでは、傷害は発生している。しかも、弱い鶏は逃げられない。

平飼いの羽つつきと、ケージ内の固定化された被害は同じではない

平飼いでも羽つつきやカニバリズムは起こる。これは否定しない。対策をしない平飼いは、深刻な福祉問題を生む。

しかし、平飼いで羽つつきが起きることと、ケージが福祉的に優れていることは同義ではない。

平飼い飼育を長期間同じ個体を追跡した研究では、鶏の羽つつき行動について次の分類が示された。

  • 継続的な加害者:5.0%
  • 継続的な被害者:7.9%
  • 加害・被害の両方:29.4%
  • 中立:3.9%
  • 一貫しない個体:53.8%

この研究は、羽つつきの加害・被害が個体によって固定される場合もある一方で、すべての鶏が継続的被害者になるわけではないことを示している。

ケージとの比較で重要なのはここである。

平飼いでは、群れの中を移動し、距離を取り、環境構造を使って回避する余地がある。もちろん、そのためには適切な管理、敷料、止まり木、避難できる空間、採食・探索行動を満たす環境が必要である。

一方、従来型ケージではそれができない。

5~8羽の固定集団で、同じ相手と、毎日24時間、1年半以上を過ごす。弱い鶏は群れを離れられない。隠れられない。距離を取れない。別の場所に移動できない。

この違いを無視して、「平飼いでは羽つつきがあるからケージの方が傷害から守られる」と説明することは、動物行動学上も、現場の実態からも不正確である。

羽つつきは「平飼いだから起きる」のではない

羽つつきは単なる攻撃行動ではない。採食・探索行動を満たせないこと、環境刺激が乏しいこと、敷料が不十分であることなどに関連する異常行動として扱われてきた。

Rodenburgらは、羽つつきは傷害やカニバリズム、標的となった鳥の苦痛死につながり得る重大な問題であり、低照度やくちばし切断だけに頼る現在の管理には問題があるとして、科学的な予防策の必要性を論じている。

つまり、必要なのは「鶏をケージに閉じ込めること」ではない。

必要なのは、つつきが発生しにくい環境を整えること、そして攻撃を受けた個体が逃げられる空間を確保することである。

ケージは「疾病や傷害からの自由」を実現していない

Inside the Cageで確認されたのは、ケージ内の羽つつき、マウント、序列、衰弱、挟まれ、皮膚損傷、壊死、趾の損傷、起立不能、死亡である。

弱い鶏は、毎日同じケージ内で同じ相手と暮らし続ける。逃げられない。攻撃から距離を取れない。体調が悪くなっても、他の鶏に踏まれ、つつかれ、さらに弱る。

ケージは傷害をなくしていない。

むしろ、傷害が起きたときに、弱い個体が逃げられない状況を固定する。

「平飼いでは羽つつきがある」という事実は、ケージを正当化しない。平飼いには改善すべき課題がある。しかしケージには、逃げる自由そのものがない。

疾病や傷害からの自由を語るなら、まず、傷つけられた個体が逃げられる環境を確保しなければならない。

ケージは、その最低限の条件を満たしていない。

結論:

ケージは羽つつきをなくさない。

ケージは序列もなくさない。

ケージは傷害もなくさない。

ケージが行っているのは、弱い個体が逃げられない状況を固定することである。

Inside the Cageで私たちが見たのは、「傷害の少ない飼育」ではない。

逃げ場を失った鶏たちの姿だった。

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