LOADING

Type to search

牛乳の放牧のパッケージは虚偽ではないのか?

みなさんは次の牛乳のパッケージを見てどう思うでしょうか?

  

広々とした草原で牛が自由に草を食む、穏やかな光景を思い浮かべるのではないでしょうか?

放牧のイラストや写真の入った牛乳がスーパーの棚に並んでいるのをよく見かけます。これらの牛乳のメーカーに確認したところ、いずれもこの写真のような放牧牛乳ではありませんでした。そもそもどのような飼育環境なのかを把握もされていませんでした。さまざまな生産農家の牛乳が混じっているため、そのパックの中に入っている牛乳がどういった飼育環境によって作られたものかが分からないというのです。

「この牛乳のパッケージのように、放牧された牛から搾乳された牛乳なのか?」との質問に「牛は普通放牧していますよね?」と『質問の意図がよく分からない』といった風のメーカーもありました。

しかし日本の牛は普通は放牧されていません。

牛乳を販売する会社であっても乳牛が放牧されていると思っている。これは日本人がいかに畜産動物の飼育環境について誤った認識をしているかを示しています。それは認知度調査にも表れています。
「乳牛の多くが繋がれた状態でほとんどの時間を過ごしていることを知っていますか?」との質問に69.5%の人が「知らない」と回答しているのです。

乳牛メーカーがパッケージにこのようなごまかしをしていることも実態に気が付かない要因であるかもしれません。

つなぎ飼育されている牛たち

実際のところは、日本では乳を絞りとるために飼育されている牛のほとんどが、つなぎ飼育されています。
畜産技術協会が2014年におこなった全国一斉飼養実態調査によると、搾乳牛のおもな飼養方法は71.9%が「つなぎ飼い」だという回答です。
同調査では「パドックや放牧地に牛を放していますか」という質問もされており、それに対して72.5%が放していないと回答しています。これはつまり、繋ぎっぱなしだということです。

乳牛を配した牧場風景等の写真又は図案による表示の規制

「放牧風景のパッケージを見て放牧牛乳だと思って購入してしまった」という声がアニマルライツセンターにはたびたび寄せられています。
これを受けて、全国飲用牛乳公正取引協議会に問題提起をしたところ、表示を改善してほしいという声は他にも寄せられているということでした。
そして、一年間を通じて放牧ではない場合は放牧の画像は基本的に使わない、使う場合は「イメージです」と注釈することを盛り込んだ飲用乳の表示に関する公正競争規約及び同施行規則の改正を予定している、また現時点でもメーカーには注意喚起をしているということでした。

その後、一部変更*された飲用乳の表示に関する公正競争規約及び同施行規則が、2017年12月28日から施行され、公正競争規約施行規則に次の一文が盛り込まれました

オ 乳牛を配した牧場風景等の写真又は図案による表示のうち、次の表示
(ア) 年間を通して放牧牛からの生乳が使用できない場合の当該表示。ただし、表示がイメージである旨が1箇所以上表示されていればこの限りではない。

上の写真はいずれも「イラストはイメージです」などのことわりが入っていません。ですので、このような表示方法は「飲用乳の表示に関する公正競争規約」に反しているということになります。

しかし「イラストはイメージです」と記載されていれば、それでよいのでしょうか?

牛が広々とした草原で自由に草を食んでいる幸せなイメージは、実際の飼育環境とはあまりにかけ離れています。

消費者庁に情報提供を

少しでも規制ができたのは一歩前進ですが、それでも「イラストはイメージです」などの一文があれば放牧牛乳であるかのような写真や図を表示しても良いという内容であることには納得ができません。

放牧牛乳ではないのに放牧だと想像させてしまうようなパッケージは次の三つの法律に抵触する可能性があります。

景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)

(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの

食品表示法

食品表示法に基づく食品表示基準は(表示禁止事項)を記しています。

(表示禁止事項)
第九条 食品関連事業者は、第三条、第四条、第六条及び第七条に掲げる表示事項に関して、次に掲げる事項を一般用加工食品の容器包装に表示してはならない。

この中には

十三 その他内容物を誤認させるような文字、絵、写真その他の表示

という項目があります。

健康増進法

(誇大表示の禁止)
第三十一条 何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。

*どのような場合が誇大表示にあたるのかについてはこちらのガイドラインを参考にしてください。食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)

「イラストはイメージです」などの表示が入っているかどうかにかかわらず、パッケージのイラストや写真で放牧牛乳だと誤認して購入してしまった場合は消費者庁の食品表示法違反被疑情報提供フォームから情報提供をしてみてください。

忘れないでほしいのですが、スーパーで大量販売されている低価格で「放牧」と表記されていない牛乳は、つなぎ飼育だと考えてほぼ間違いありません
放牧であるかのようなイラストの牛乳をみかけたら、メーカーに確認してみてください。そしてそのイラストのように、実際に自由に放牧された牛乳を販売してほしいと伝えてみて下さい。

写真は日本-つなぎ飼育される乳牛

 

*同改正は食品表示法(平成25年法律第70号)に基づく食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)、不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(平成26年法律第118号)(いわゆる景品表示法の改正)の施行に伴い行われました。

 

5 コメント

  1. RK 2023/05/07

    ソフトクリームに関しても同じような規制はありますか?

    返信
    1. ソフトクリームのような乳製品になると、そのような規定はありません。

      返信
      1. RK 2023/05/14

        お返事ありがとうございます。追加で教えていただけないでしょうか?
        (1)「アイスクリーム類及び氷菓公正取引協議会」に問題提起する価値はあると思いますか?
        ソフトクリームでも、じっさいはつなぎ飼いなのに、放牧のイメージが広告に使われているのを
        よく目撃します。一方で、手間とコストをかけて放牧している牛の牛乳を使っているソフトクリーム業者もあるため、大問題だと思います。
        (2)景品表示法と食品表示法は、どのようなものにも適用するのではなく。食品や商品ごとに細かく規定が定められているのでしょうか?

        返信
      2. R 2023/05/15

        ソフトクリームでも消費者庁に情報提供する価値はありますか?

        返信
        1. もちろんあると思います。現状の競争規約は飲用乳のみですが、今後乳製品についても規約を作る必要性があると思われます。ぜひ意見を積み上げてくださいませ。

          返信

Leave a Comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *

暴力的または攻撃的な内容が含まれる場合は投稿できません

SHARE