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肉用に飼育される、豚の一生

豚の素顔

豚は探索システムが極端に活発な動物です。
自然に近い環境で過ごす豚は、日中の52%を餌を探したり草をはむことに使い、23%を歩き回って周囲を調べることに費やします。
鼻であちこち掘り返して調べたりさまざまな草や根、昆虫やミミズを探して食べたり、泥に体をうずめて体を冷やしたり、木に体をこすり付けて汚れを落としたり、仲間とじゃれあったり忙しい一日を過ごします。
しかし豚舎の中には転げ回ったり穴掘りをしたりするのに適当な材料は何もありません。体を擦り付ける柱や、鼻で持ち上げるものもありません。

近代ではめったに見かけることのない放牧養豚ですが、放牧されている豚たちを見ると、豚が「産業動物」ではなく、感受性のある生き物であることが良く分かります。私たちが近寄ると警戒してすごい勢いで走って逃げますが、農家の方が呼ぶと、ゆっくりと耳をゆらしながら近寄ってきます。
犬のように人懐こいですが、犬のように過剰に興奮することもなく、頭をなでると気持ちよさそうにし、おなかをなでるとゴロンと横になります。
礼儀正しく、好奇心に満ちた目でこちらを見ます。

食用に飼育される豚

子豚は分娩ストールという囲いの中で産まれ、日本では約21日間、そこで母豚と一緒に暮らします。一緒といっても母豚は方向転換できない狭いストールに拘束された状態で、満足な母子行動がとれるわけではありません。子豚はストールの隙間から母豚の乳を吸います。

去勢

生後7日以内に、子豚たちには、去勢・尾の切断・歯の切断が行われます。麻酔や鎮痛剤などは使用されません。去勢のやり方は、鋭利なカミソリでふぐり(陰嚢)を切開、睾丸を取り出し、一気に引き抜き切り取る、というものです。子豚は痛みで鳴き叫びます。
豚の尾には、先端まで末梢神経が伸びており、麻酔なしで行われている尾の切断は、痛みで豚を苦しめます。去勢されることで、心的外傷性疾患により死亡する子豚もいます。処置後に腹膜炎を起こして死亡したり、ストレスから発育や免疫力が落ちる傾向があることも知られています。

去勢は肉の『雄臭』を防ぐ、という理由から実施されますが、このような暴力的な方法ではない代替手段があるにもかかわらず、この慣行は続けられています。また、諸外国ではこの非人道的な作業に規制を設けていますが、日本では規制は一切ありません。

豚の去勢の詳細はコチラ

歯と尾の切断

生後7日以内に、子豚たちは歯と尾も切断されます。麻酔や鎮痛剤などは使用されません。

歯はもちろん、尾にも先端まで末梢神経が伸びており、切断された豚は痛みで泣き叫びます。
「過密飼いのストレスからお互いを傷つけあうことを防ぐ」という理由で、歯の切断は63.6%、尾の切断は81.5%の日本の農家で実施されています。
なぜ咬んで傷つけ合ってしまうのか、その理由はとても単純です。上述したように豚は探索システムがとても活発な生き物です。好奇心旺盛でいろんなものに興味を示します。しかし過密飼育される狭い豚舎の中には豚の好奇心を満たすようなものは何もありません。そのため探索の転嫁行動として仲間のひらひらした尻尾にかじりついてしまうのです。

豚の生態や習性に配慮した環境を用意すれば歯と尾の切断は必要ありません。しかし豚に必要な環境を与えずに歯と尾を切断してしまう、というのが今の養豚業です。

歯の切断の詳細はコチラ
尾の切断の詳細はコチラ

母豚から離され肥育舎へ収容

日本では、放牧養豚はほとんど行われておらず、豚の多くは、屠殺されるまでの一生を豚舎のなかで過ごします。

産まれて21日くらいたつと、母豚から引き離されて子豚は肥育用の豚舎に移動させられます。離乳は子豚にとって大きなストレスとなります。自然界では豚が離乳するのは生後3-4ヵ月と言われています*が、養豚業では母豚に早く次の種付けをするために母子を引き離します。

離乳の時期について、EUでは28日齢未満で子豚を離乳させてはならないという決まりがありますが*、日本にはそのような規制は何もありません。

豚舎の中は豚にとっては快適なものとは言えません。床はスノコかコンクリートで、豚が大好きな穴掘りをすることはできません。まだ産まれたばかりの子豚なのに遊べる遊具もありません。本当になにもない、ただ自分を閉じ込める囲いと床だけ。その無機質な空間で豚たちは生きる喜びを感じることもできず生後6ヵ月まですごします。

ストレスだらけの豚舎

豚は人間と似ていてうつ病になることもあります。現代の工場型養豚では、昔に比べて豚はストレスを感じやすくうつ病になりやすい傾向があると言われています。うつ病は、給餌効率を低下させる可能性があり、さらに、尾かじりの要因ともなります。人間と同じで、うつ病は一部の豚では体重を減らし、他の豚ではより多くの皮下脂肪を蓄積させます****。

胃潰瘍も豚にはよくある疾患です。

豚の胃潰瘍

と畜場に出荷される豚の90%以上に胃潰瘍の症状が見られると言う報告**があるほど、豚の胃潰瘍は一般的な疾患です。要因として、よく太るよう濃厚飼料ばかり与えられ、粗飼料が少ないことや環境温度など複数の因子がありますが、豚にストレスのかかる密飼いも危険因子だと考えられています***。

* May 10, 2019 Searching for the ideal weaning age
** 家畜の病気「生産病」とは 茨城県獣医師会
*** Gastric Ulcers – the pig site
**** Dec 23, 2019 Russia: Solution for depressed pigs

屠殺

豚たちはあちこち歩いて探索したり、穴を掘ったり泥浴びをしたり、様々なものに触れて楽しんだり、そういった生きる喜びを感じることも許されぬまま、生後6か月で、トラックで運ばれて屠殺場へ連れていかれ、屠殺されます。

わたしたちにできること

豚から何もかも奪うのが養豚です。

最良の選択は肉を食べないという選択です。
どんなにアニマルウェルフェアに配慮して飼育したとしても本来の寿命よりはるかに短い期間で、最終的には恐怖と不安の中で殺してしまうからです。
動物は自分と同じ種の血の臭いをかぐと情動が不安定になると言われています。屠殺される順番を待つ間、見知らぬ場所で仲間の血の臭いをかぎ、電棒で追い立てられて、豚がどのような不安な思いでいるのか想像するのも困難なほどです。

もし肉を食べないという選択が難しければ、世界中の都市や学校で取り組みが進んでいる「ミートフリーデー(週に一日肉なしの日)」を試してみることもできます。

舎飼いではなく放牧で、妊娠ストールも使っていない養豚から生産された豚肉を購入することもできます。
鹿児島県の「えこふぁーむ」は、放牧で妊娠ストールを使用していないだけではなく、切歯・断尾もしていません。そのような肉を買うという選択をすることが私たちにはできます。

私たちには、豚たちに許されない選択肢がたくさんあります。豚に優しい選択をすることが、豚の苦しみを減らすことにつながります。

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