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畜産動物たちの悲惨すぎる輸送

交通手段が便利になった今日、海外にも気軽に行けるようになっただけではなく、自宅から出ることすらなく海外の商品が手に入るとは、なんとも贅沢な時代である。通販サイトを見れば服や食べ物、その他こんなものまでと思うほどいろんなものが簡単に手に入る。

当然のことだがこれらは船や飛行機を使い移動したり、輸出や輸入を行うことで成り立っている。

私たちが乗り物に乗る時、気分はどうだろうか。誰もが「それなりに快適だ」と答えるだろう。

この記事ではそんな快適な人の移動や物の輸出輸入ではなく、深刻な海の「畜産動物の生体輸送」についてアニマルウェルフェアの観点から紹介する。

採卵鶏の種鶏や肉用鶏の原種鶏が海外から輸送され日本にやってきていることはたまに目にする情報かもしれないが、肉用牛や乳用牛、繁殖用の豚なども生きたまま輸送され日本に輸入されている。

令和3年の貿易統計によると牛が12906頭(全オーストラリア)、豚が961頭(デンマーク:90 英国:6 オランダ:17 フランス:87 カナダ:517 アメリカ:244)となっている。

ではこれらの生体輸入の牛・豚の輸入目的はというと、用途としては以下の5つがある。

  1. 乳用繁殖用
  2. 肉用繁殖用
  3. 肥育用
  4. と畜場直行用
  5. その他

生体輸出が盛んなのはオーストラリアであり、世界最大の生体牛の輸出国と言われている。

今回は主にオーストラリアの生体牛輸出とアニマルウェルフェアに焦点を当てる。

日本の場合、平成14年~令和2年の検疫年報データでは牛も豚もと畜場直行用はないため、繁殖と肥育が目的ということになる。また豚に関しては繁殖用のみで肥育用はない。(その他の欄は数年おきに数頭生体輸入されているが詳細不明)ただし、牛を北海道から沖縄に船で、関西から東京にトラックで、採卵鶏の廃鶏を数県またがってトラックでなど、長距離長時間の輸送が行われているが、実態の把握すらできていない状態であることを忘れてはならない。オーストラリアの輸送が注目されるが、国内では動物を守る法律もまったくない(動物愛護法では輸送についての規定がされていない!)日本は、輸送距離が短いからといって良い環境にはないことは明白である。

オーストラリアの生体輸送

はじめになぜオーストラリアは生体輸出が盛んなのか。オーストラリアといえば国土が広いことで有名だが、北部のあたりは食肉処理場までの距離が遠く、生きたまま東南アジアに輸出したほうが効率的という事情がある。東南アジアも冷蔵や冷凍の物流網が未発達なので、肉の状態で輸入するよりも生きた状態のほうが都合がよく、双方の事情が合致しているというのが背景にある。

では牛や豚の生きたままの輸送にはどのような問題が起こり得るのか。

収容密度(詰め込みすぎていないか)、収容方法(繋がれているか否か・繋がれているならどの程度自然な行動がとれる状態か)、衛生面(糞尿掃除の頻度)、換気(臭いの状態)、室内の温度・湿度(適正値か)、騒音(突発音や継続的な騒音がないか)、給餌や飲水は十分か、管理者の見回りの頻度、病気など問題が起きたときの備えはあるのか、緊急時の計画や対応・またその訓練などは万全かと、このような福祉的問題が容易に思いつく。

実際に動物がどのような扱いをされているかを調べると、実に悲惨な現実がある。

海外の団体の情報によると牛や羊が沼のような糞尿の上で輸送され、特に羊の多くは熱中症で死んだりしている。https://youtu.be/vh5nZV-CdH8

2013 年には4,000 頭の羊が死亡(そのほとんどは 1 日で死亡)、2016 年には3,027 頭の羊が死亡、2017 年には2,400 頭の羊が死亡。主に熱ストレスが原因。

排泄物の中輸送される牛
排泄物の中輸送される牛

そのようなことが明るみになり、オーストラリアでは2020年、6月1日~9月14日までの3ヶ月、羊が極度の暑熱ストレスに苦しんで死亡するリスクを減らすために生きた羊の中東への輸出を禁止することを発表し、実施された。しかし農務省が禁止期間を短縮しようとしたりしているようだ。

スロベニアやクロアチア、スペインなどEUからエジプトに輸出される港では負傷した動物の輸送やトラックでの長時間待機、換気が悪く糞尿が溜まるような不適切な船や医療サポートの欠如などが報告されている。

またエジプトのと畜場では牛の腱切り、目の刺し傷といったことが屠殺前に動物を無力化する日常的な方法であると書かれている。

OIEコードの「第7.5.2条 動物の移動及び取り扱い・4. 動物の拘束や保定のための規定 b)以下の保定方法は、深刻な痛みとストレスをもたらすことから、意識のある動物には使用しないこと。」に

iv) 動物を動けなくさせることを目的とした肢の骨折、肢の腱の切断又は目つぶし

v) 動物を動けなくすることを目的とするプンティーヤ(釘の一種)、短剣等を用いた脊髄の切断及び、電流の使用(と殺の時のスタニングを除く)

と書かれており、一体どこのと畜場でそんな常軌を逸した扱いをすることがあるのかと誰もが疑問に思う部分であるが、今回のような内容のために入っているのだと納得できる。

農場やと畜場でも十分密室であるが船の中となると海の上であり更に密室度は高くなる。監視の目がなければこのように酷い扱いが起こることは必然とも言える。

無くすことができれば最もよいのだが、この根深い現実にそんなことを言っていても動物は延々と苦しみ続けるだけであり、やはりそこにはアニマルウェルフェアの向上が求められる。

そもそも動物にとって乗り物で運ばれるということ自体が不自然な行いであり、負担が大きいことであることを忘れてはいけない。

船の揺れは人間でも辛いものがあるのだから、いくら扱い方に配慮しても動物への負担は計り知れないと考えるべきであり、だからこそやるなら徹底的な配慮が求められて当然とも言える。

オーストラリアでのアニマルウェルフェア

オーストラリアでは2004年からASEL(The Australian Standards for the Export of Livestock)豪州家畜輸出基準という生体牛輸出の法的効力をもった基準の規定がなされており、船の中での1頭あたりの面積や死亡率などが設けられている。

ASELにおける船上での牛1頭当たり最低必要面積(例)

            最低必要面積(平方メートル)

1頭当たり生体重量  輸送が10日以上   輸送が10日未満

200キログラム以下     0.770         0.770

300キログラム       1.110         1.110

400キログラム       1.450         1.450

500キログラム       1.790         1.725

600キログラム       2.130         2.000

注1:ASELでは、1頭当たりの生体重量5キログラム単位で、船上での最低必要面積を規定。

2:最低必要面積は、生体重量が600キログラム超の場合は、5キログラム増えるごとに、輸送が10日以上の場合は 0.017平方メートル、輸送が10日未満の場合は0.014平方メートルずつ、それぞれ広くなる。

3:角の長さは12センチメートルまでと決められており、それを超える場合は、除角するか、特定条件下で認められた場合には、上記を上回る最低必要面積が求められる。

ASELにおける船舶輸送時の家畜の死亡率の基準値

羊および山羊 2% 

牛および水牛(輸送が10日未満の場合) 0.5% 

牛および水牛(輸送が10日以上の場合) 1% 

ラクダ 2% 

鹿 2%

死亡率1%~2%と聞くと少なく感じてしまうが過去30年間で見ると250万頭以上が死亡していることになるようだ。数としては決して少なくはない。

この規定は船から荷降ろしまでが対象であったが、2011年にインドネシアのと畜場での生体輸入の牛がムチで打たれたり顔面や目を繰り返し蹴られたりといった残虐な取り扱いが暴露され、https://animalsaustralia.org/latest-news/live-export-investigation-on-four-corners/オーストラリア政府がインドネシアへの生体輸出を一時的に禁止したという事件があり、2013年からはこれまでの基準に加えてESCAS(The Exporter Supply Chain Assurance System)輸出業者サプライチェーン保証システムという、到着から屠畜までのアニマルウェルフェアの確保のために、国際規約の水準での取り扱いや、独立した監査機関による監査を受けることといった新たな基準も満たすように義務付けられた。

これにより2015年移行、サプライチェーン全体でのアニマルウェルフェアが向上し、インドネシアのと畜場では牛を気絶させるスタンガンの使用率が2011年は10%以下だったのが95%近くに上昇したと評価されている。

ただこの取組は内容が複雑な上にコストがかかりすぎるということで、より簡素で理解しやすく、安価なシステム構築が必要とされ、新たな取組も試されているといった状況にある。

このようにオーストラリアは生体牛輸出のアニマルウェルフェアを法令で定め、輸出先国サプライチェーン全体においてトレー サビリティーとアニマルウェルフェアの確保を義務付けている唯一の国であると言われている。

動物利用がある以上、常に問題は付きまとう。しかし完璧ではないからといってアニマルウェルフェアを無意味としてしまうと状況は更に悪化するのは明らかだ。

アニマルウェルフェアは苦痛をゼロにするものではなく完璧などないけれど、食など一般的な感覚からして必要性が高いとされ、理解が得にくい分野の終わりが見えない動物利用にとって1歩ずつ常に継続して向上させていかなければならない必要性の高い運動であると言える。

こういった情報を目にするとアニマルウェルフェアへの意識が高いか低いかで、どれだけ動物の苦しみに差が出るかがよくわかる。あなたが絶対に逃げられない世界に放り込まれた時、せめてどうあってほしいのかという視点で考えることが、今この瞬間も苦しみ、これからも延々と苦しみ続ける動物にとっては重要だ。

この動物の苦しみに無関心な社会の中で、消費量を減らしていく啓発と共に、今回のような記事や動画を活用したりしてアニマルウェルフェアの発信を盛り上げ、多くの人に動物問題に関心をもってもらえるような活動をすることが今私たちには求められる。

脚注

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500100&tstat=000001018079&cycle=7&year=20210&month=0&tclass1=000001164306&tclass2val=0
https://www.maff.go.jp/aqs/tokei/toukeinen.html
https://www.alic.go.jp/content/000146090.pdf
https://animalsaustralia.org/latest-news/2022-festival-of-sacrifice/
https://www.animal-welfare-foundation.org/en/projects/animal-transport/live-exports-by-sea
https://www.peta.org.au/issues/live-export-animal-cruelty/

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