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WOAH陸生動物衛生規約 第7.3章 陸路による動物の輸送(日本語訳)

WOAH(旧OIE)の動物福祉規約には「陸生動物の輸送」があります。「海上輸送」、「陸上輸送」、「空路輸送」の三つの規約が作成されており、このうち日本で最も多い「陸上輸送」の福祉の仮訳を掲載します。
仮訳と言ったのは、本来この規約の翻訳公開はWOAHに批准している日本が正式に行うべきものだからです。しかしこの動物福祉規約「陸生動物の輸送」が2005年につくられ、それ以来日本では翻訳すらされていない状況です。
各畜産場も輸送業者も、と畜場・食鳥処理場もこの動物福祉規約の内容を知りません。

読んでもらえばわかりますが、この規約には動物福祉に配慮するには、何をすればいいのか、どういったやり方をすれば穏やかに動物を扱うことが可能なのかという重要なことが書かれています。
2005年にこの規約が国内できちんと周知されていれば、あるいはこの規約に基づき国内法を整備していれば、畜産動物の輸送の際に行われている残酷な扱いはなくなっていたかもしれません。
ARCは国に、WOAHの動物福祉規約を正式に翻訳・公開してほしいと要望していますが現在のところされていない状況です。(WOAHの動物福祉規約は15あり、そのうちの3つ「動物福祉と肉牛生産システム」「動物福祉とブロイラー生産システム」「動物福祉と乳牛生産システム」のみ仮訳が公開されています。)
なおWOHAの動物福祉規約には養殖魚の輸送に関する規約もありますが、これも国内で翻訳・公開されていません。

【仮訳】WOAH陸生動物衛生規約 セクション7動物福祉

7.3章「陸路による動物の輸送」

序文:

本文内の勧告は次に挙げる生きた家畜動物を対象とする:牛、バッファロー、ラクダ、羊、ヤギ、豚、家禽類、およびウマ科の動物。同勧告の大部分は他の動物、例えば鹿、他のラクダ科の動物、および走鳥類にも適応し得る。野生動物および野生化した家畜については異なる条件が必要となるであろう。

第7.3.1条

動物の輸送に費やす時間の総量は最小限に抑えること。

第7.3.2条

1.動物の振る舞い

動物取扱者は、家畜の取扱いと移動に関して経験と能力があり、また動物の行動パターンを知っており、実行すべき職務に必要な根本的な原則を理解していること。
個々の動物の振る舞い、あるいは集団としての振る舞いは、品種、性別、気質、年齢、および育てられた環境によって様々に異なる。このような違いがあるものの、次に挙げる行動パターンは、家畜動物にはある程度、常に見られるものであり、動物の世話をしたり、移動させたりする際には考慮に入れること。
大部分の家畜はグループで飼育されており、本能的に一頭のリーダーに従っている。
集団になると互いに傷つけ合う傾向のある動物は集団にしないこと。
動物によっては、自分の個人スペースを自分で制御したがるものもいるということを、積み上げ・積み下ろし設備、輸送車やコンテナの設計時に考慮すること。
家畜動物は、ある一定距離内に人間が近づくと逃げようとする。この境界となる距離を逃避ゾーンと呼ぶ。この距離は、動物種により、あるいは同じ種であっても個体ごとに異なり、これまでの人間との接し方に左右される。人間のすぐそばで育てられた動物(すなわち飼いならされた動物)は逃避ゾーンが小さい。一方、フリーレンジ式や大規模なシステムで育てられた動物は1メートルから数メートルに及ぶ様々な逃避ゾーンを持ち得る。動物取扱者は、逃避ゾーンへの突然の侵入を避けること。さもないと、パニック的反応を引き起こし、攻撃的行動、あるいは逃走行為につながり、動物の福祉を損なう可能性がある。
動物取扱者は、動物を移動させる際に、動物の肩にある重心の位置を利用すべきである。前に進めたいときには重心の後ろ側の位置に、後ろに戻したいときは重心よりも前の位置に立つ。
家畜動物は広範囲に渡る視野を持っているが、立体視野は前方方向にしかなく、奥行きの認識力は低い。つまり動物は、彼らの横と後ろ側にある物体や動きは検出できるが、距離の判定はまっすぐ前方方向にしかできない、ということである。
家畜動物は非常に敏感な嗅覚を持っているが、輸送中に遭遇したにおいに対する反応は動物ごとに異なる可能性がある。ネガティブな反応を示したにおいについては、動物を管理する際に考慮に入れること。
家畜動物は、人間よりも広い範囲に渡る周波数を聞き取ることができ、高周波域にはより敏感である。動物は持続する大きな騒音や、突然の騒音に対して警戒する傾向があり、パニックを引き起こす可能性もある。このような騒音に対して敏感であるということを、動物を取り扱う際に考慮すること。

2. 障害物、およびそれらの排除

新しい積み上げ・積み下ろし設備を設計する際、あるいは既存の設備を改良する際には、近づいてくる動物が立ち止まったり、ためらったり、あるいは引き返してしまうような障害物となり得るものを最小限にすることを目指すこと。下に挙げたものが一般的な障害物の例、およびそれらの排除方法である。

a) 光沢のある金属や濡れた地面上の反射光 ― 照明の位置を動かすか、照明器具を変更する
b) 暗い入り口 ― 近づいてくる動物の目を直接照らさないように間接照明を用いて明るくする
c) 動物の前方に向かって動いてくる人や設備 ― 動物が通る通路にしっかりとした側壁、または遮蔽版を配置する
d) 行き止まり ― 可能であれば通路を曲げたり、架空の通路を描いたりして、行き止まりを回避する
e) 通路やフェンスにぶら下げた鎖やその他たるみのある物体 ― 取り除いておく
f) 平坦でない床、あるいは床面の急激な降下 ― 平坦でない床面を用いないようにする、あるいはしっかりした人口の床面を配置し、固くて切れ目のない歩行路があるかのように錯覚させる
g) 空気圧式の器具から聞こえるシューッという音 ― 消音器を取り付けるか、または水圧式の器具を使う、あるいは高圧空気を柔軟性のあるホースを使って外へ排気する
h) 金属製の物体がたてるガランガランという音 ― ゲートやその他の装置にゴム製の止め具を取り付けて金属同士の接触を減らす
i) 扇風機やエアカーテンから動物の顔に吹き付ける気流 ― 装置の向きや位置を変える

第7.3.3条 責任について

動物を輸送する意志が決定されたら、輸送中の動物の福祉は最重要の考慮すべき事柄であり、関連する人々全員の連帯責任となる。関連する人々それぞれの責任については、この条項でより詳しく説明される。
それぞれの役割が果たすべき責任については下記のように定義される。

1) 動物の所有者・管理者は次の事柄に責任がある

a) 動物の輸送中の健康全般、全体的な福祉、および輸送への適合性について
b) 要求される全ての獣医学的なコンプライアンス順守、またはその他証明書の用意が確実にされていること
c) 輸送中、輸送される動物種に適任の動物取扱者が、迅速な対応を取る権限を持った状態で存在していること。個人トラックによる輸送の場合は、そのトラックのドライバーが輸送中の単独の動物取扱者になるであろう
d) 動物の積み上げ・積み下ろしに適した人数の動物取扱者を確保すること
e) 動物種および輸送行程に適した設備、および獣医学的援助を確実に提供すること

2) 販売事業者、あるいは買付け/販売代理店は次の事柄に責任がある

a) 運送に適した動物の選定
b) 輸送行程の始まりと終わりの段階での動物の集結、すなわち、動物の積み上げ、輸送、積み下ろし、および維持に適した設備の確保。輸送中の全ての休憩地点の設備、および緊急時のための設備も含む

3) 動物取扱者の責任は、思いやりのある動物の取扱いと世話(特に積み上げ、積み下ろしの間の)、および輸送記録をつけることである。これらの責任を実行するために、動物取扱者は迅速な対応が取れる権限が与えられるべきである。動物取扱者が個別にいない場合は、運転手が動物取扱者となる

4) 運送会社、輸送車の所有者、および運転手の責任は、確実に動物の面倒が見られるように輸送計画を立てることである。特に以下の点に責任がある

a) 輸送される動物の種類、および行程に適切な輸送車の選定
b) 動物の積み上げ・積み下ろしのための適切な訓練を受けたスタッフの確保
c) 輸送トラックに個別の動物取扱者がいない場合は、輸送される動物種のアニマルウェルフェアに関する適切な能力を備えた運転手の確保
d) 緊急時(悪天候を含む)の備え、および輸送中のストレスを最小限に抑えるための、最新の非常事態計画の開発と維持
e) 積載計画、輸送時間の長さ、日程表、および休憩場所を含む輸送行程計画の作成
f) 輸送に適した動物だけを積載すること。これは、輸送車への積み上げを適切に行えるよう、また輸送中の動物の点検が行えるように、そして問題が発生したら適切な対応が取れるようにするためである。もし輸送への適合性が疑わしい場合、その動物は第7.3.7条のポイント3aに従って、獣医による診断を受けるべきである。
g) 実際の輸送中における動物の福祉

5) 輸送行程の始まりと終わりの段階、および休憩地点の施設の管理者は次の点に責任がある

a) 動物の積み上げ、積み下ろし、および安全な維持に適した施設の提供。要求された場合は水と食料の提供も行い、また輸送の再開、販売、その他(飼育や屠殺も含む)までの間、悪天候からの保護も提供する
b) 動物の積み上げ、積み下ろし、運転、および維持を、最小限のストレスと怪我にとどめるやり方で実行するための適切な人数の動物取扱者の提供。動物取扱者が個別にいない場合は、運転手が動物取扱者となる
c) 病気の伝染の可能性を最小限にすること
d) 適切な設備の提供。要求された場合、水と食料の提供も行う
e) 適切な緊急時の設備の提供
f) 動物の積み下ろし後の輸送車の洗浄と消毒のための設備の提供
g) 必要な際には動物に苦痛を与えずに殺処分できる設備とその能力を有したスタッフの提供
h) 適切な休憩回数の確実な提供、および停泊時の遅延を最小限にすること

6) 管轄官庁は次の点に責任がある

a) アニマルウェルフェアに関する最小限の基準を設けること。基準には、輸送前、輸送中、輸送後の動物の点検の要求、「輸送に対する適合性」の定義、適切な認定証と記録の保持も含む
b) 動物の輸送に必要な施設、コンテナ、輸送車に関する基準を設けること
c) 動物取扱者、運転手、および施設管理者のアニマルウェルフェア関連の問題に対する能力に関する基準を設けること
d) 動物取扱者、運転手、および施設管理者のアニマルウェルフェア関連の問題に対する適切な認識付けと訓練の確実な実施
e) これらの基準を、他の機関の信任、または相互の行動を通じて実施すること
f) 健康面や福祉に関する他の側面における基準の効力の監視と評価
g) 獣医学用の薬の利用の監視と評価
h) 国境における動物運搬物に優先順位を与え、不要な遅延が生じないようにすること

7) 動物の輸送とそれに関連する手続きに関わる全ての人々(獣医も含む)は、適切な訓練を受け、各々の責任に見合った能力を有すること

8) 受け手側の管轄官庁は、送り手側の管轄官庁へ、輸送中に生じた重大なアニマルウェルフェアの問題について報告すること

第7.3.4条 能力について

1) 輸送中、動物に対して責任を持つ全ての人々は、第7.3.3条に箇条書きされた責任に応じた能力を有すること。能力の獲得は、正式な訓練を通じてでもよいし、あるいは/さらに実務を通じてでもよい

2) 動物取扱者の能力を査定する際には、少なくとも下記の分野に関する知識、およびその知識を適用する能力に焦点を当てること

a) 輸送行程の計画立案について。これには、適切なスペースの割り当て、給餌、給水、および換気への要求事項作成も含む
b) 積み上げ、積み下ろしを含む輸送中の動物に対する責任について
c) 助言と助力を得られる人材源について
d) 動物のふるまいや、一般的な病気の徴候、およびアニマルウェルフェアが芳しくないことを表す兆し(ストレス、苦しみ、疲労)、およびそれらの緩和方法について
e) 輸送に適合しているかの見極めについて。もし輸送への適合性が疑わしい場合は、その動物は獣医の診断を受けるべきである
f) 関係のある省庁、該当する輸送規制、関連する必須書類について
g) 清掃や消毒を含む一般的な病気予防処置について
h) 輸送中、および関連する活動(動物の集結、積み上げ、積み下ろしなど)の間の適切な動物の取り扱い方について
i) 動物の診断方法、輸送中に頻繁に遭遇する事態(悪天候など)への対処方法、および緊急時の対処方法(苦痛を与えない殺処分を含む)について
j) 動物の取り扱いと世話における種特有の側面と動物年齢固有の側面について(給餌、給水、診断などを含む)
k) 輸送記録およびその他の記録をつけることについて

第7.3.5条 輸送行程の計画について

1. 全般的な考察

a) 適切な計画を立てることは、輸送中の動物の福祉に影響する重要な要因のひとつである
b) 輸送が開始される前に、次の事柄に関して計画が立てられるべきである

i) 輸送に向けて動物を準備すること
ii) 車、鉄道、RO-RO船、もしくはコンテナのいずれかの選択
iii) 輸送の種類と期間
iv) 輸送に使う輸送車の仕様とメンテナンス(RO-RO船も含む)
v) 必須となる書類
vi) スペースの割り当て
vii) 休憩、水、餌
viii) 道中での動物の点検
ix) 病気の予防
x) 緊急の際の対応処置
xi) 予想される天候状況(例えば、ある特定の期間、移動するには暑すぎる、または寒すぎる状態になる、など)
xii) 輸送形態を変更するのにかかる乗り換え時間
xiii) 国境と検査地点における待ち時間

c) 運転手に関連する規則(例えば、最大の連続運転時間など)も可能であればアニマルウェルフェアの考慮に入れるべきである

2. 輸送に向けた動物の準備

a) 輸送中に、動物に新規の餌や、新しい給水方法が提供される予定があれば、適切な順応期間を計画しておくこと。全ての動物について、長期に渡る輸送中の休憩のための停泊時間は、各動物が餌と水を必要な分だけ摂れる十分な長さがあることが不可欠である。種によっては積み上げ前の短期間の給餌遮断が望ましい場合もある
b) 人間との接触、および人間に世話されることに慣れている動物は、積み上げされることや輸送されることにあまり恐れを感じない傾向がある。動物取扱者は、動物の恐れを減らし、近寄りやすさを改善するようなやり方で動物の世話や積み上げをすること
c) 行動に変化が生じるような化合物(精神安定剤など)やその他の薬物は輸送中に定期的に使わないこと。そのような化合物は、動物の中の一頭に何か問題があるようなときにのみ投与されること。また薬の投与は、獣医、あるいはその薬の使用について獣医に指導を受けた者が行うこと

3. 輸送の種類と期間
一回の輸送における最長期間は次に挙げるような要因に応じて決定されること。

a) 動物が輸送のストレスに対処できる能力(非常に若い、年を取っている、授乳中の、あるいは妊娠している動物など)
b) 同じ動物の前回の輸送の経験
c) 疲労を感じ始める見込み
d) 特別な世話の必要性
e) 給餌、給水の必要性
f) 怪我や病気のかかりやすさ
g) スペースの割り当て、輸送車のデザイン、道路状況、運転の上手さ
h) 天気状況
i) 使われる輸送車のタイプ、横断する地形、道路の路面と質、運転手の能力と経験

4. 輸送車とコンテナの仕様とメンテナンス

a) 動物の輸送に使われる輸送車とコンテナは、輸送する動物種、大きさ、体重に適切となるよう設計・構築され、また調整されること。動物を傷つけることがないように特別な注意を払い、接続金具には鋭い突出部がない安全でなめらかなものを用いること。職務遂行中の運転手と動物取扱者の怪我の回避を重要視すること
b) 輸送車とコンテナは、悪天候から身を守るのに、また動物が逃げ出す可能性を最小限にするのに必要となる構造で設計すること
c) 輸送中に感染力の強い病気が蔓延する可能性を最小限にするため、輸送車とコンテナは、輸送の途中で徹底した清掃と消毒が可能なように、また排泄物の密閉が可能なように設計すること
d) 輸送車とコンテナは機械的・構造的に良好な状態にメンテナンスされること
e) 輸送車とコンテナは、気候の変化に対処できるように、また輸送する動物種の温度調整の必要性を満たせるように、適切な換気装置を備えること。換気装置(天然、あるいは機械的なもの)は輸送車が停泊中に稼働できること。また空気流量は調整可能であること
f) 輸送車は、上段にいる動物の排泄物が下段の動物、および下段の餌や水を汚すことがないように設計すること。この条件は、家禽類には当てはまらない。家禽類は通常、プラスティック枠の箱に入れて輸送され、その箱はより良好な換気のため、全方向に空気が通るように設計されているためである
g) 輸送車がフェリーに乗って運ばれるときは、輸送車を十分に固定するための設備が利用可能であること
h) もし輸送車が動いている途中で給餌や給水が必要となった場合、輸送車内にある適切な設備が利用可能であること
i) 必要性があれば、適切な寝床を輸送車の床に追加し、排泄物の吸収を補ったり、動物が滑って転ぶのを最小限に抑えたり、動物(特に若い動物)を固い床面や悪天候から守ること

5. 輸送車(車または列車)、あるいはコンテナをRO-RO船に乗せる場合の特別な対策

a) 輸送車およびコンテナは、船にしっかりと固定できるように、適切に設計され、正しい位置につけられ、メンテナンスされた固定器具が十分な数だけ備わっていること
b) 輸送車およびコンテナは、船出する前に固定しておき、船の動きで位置がずれることがないようにすること
c) RO-RO船は、適切な換気装置を備え、気候の変化に対処できるように、また輸送する動物種の温度調整の必要性を満たせるように(周囲が囲われたデッキ上で、動物を2重の輸送車/コンテナに入れて輸送する場合はとりわけ)すること

6. スペースの割り当て

a) 1台の輸送車、あるいはコンテナ1個に乗せられて輸送される動物の数、および各仕切り部屋への割り当ては、積み上げの前に決めておくこと
b) 輸送車、あるいはコンテナに必要なスペースは、動物が体を横たえる必要があるか(例えば、牛、羊、豚、ラクダ、家禽類など)、あるいは立っている必要があるか(馬)によって決まる。体を横たえる必要のある動物も、最初に積み上げられたときや、輸送車の運転中にあまりに横揺れが激しいとき、あるいは急ブレーキの際は、立ち上がっている
c) 動物が体を横たえる際には、通常通りの寝る姿勢をとり、他の一頭の上に折り重なることなく、また必要な体温調節ができるようにすること
d) 動物が立っている際には、気候および運んでいる動物種に適した、バランスの良い場所に立てる十分なスペースを与えること
e) 必要となる頭上スペースの量は動物の種によって異なる。各々の動物は、輸送に適した自然な立ち位置(積み上げと積み下ろしの間も含む)を、天井や輸送車の上甲板にぶつからずに、いつでも取れるようにすること。また、動物の頭上を適切に空気が流れるように十分な頭上スペースを有すること。これらの条件は、通常は家禽類(産まれたばかりの雛鳥は除く)には当てはまらないであろう。しかし、熱帯性、および亜熱帯性の気象条件のもとでは、頭を冷やせるだけの適切な頭上スペースがあれば、家禽類にとって利となる
f) 各動物へのスペースの割り当ての計算は、関連する国内の、あるいは国際的なドキュメントから得られる数字を使って実施すること。輸送車上の囲いの数と大きさは変更可能とすべきで、可能であれば、すでに形成ずみの動物のグループ全体を収容すること。一方、あまりに大きすぎるグループのサイズは避けること
g) スペース割り当てに影響しそうなその他の要因には以下が含まれる

i) 輸送車/コンテナのデザイン
ii) 輸送距離の長さ
iii) 輸送車内での給餌・給水の必要性
iv) 路面の質
v) 予想される天候状況
vi) 動物の種類と性別

7. 休憩、水、餌

a) 動物種、年齢、健康状態、および輸送の期間と気象条件等にふさわしく、また必要な量の水と餌が利用可能であること
b) 動物は輸送中、適切な間隔ごとに休憩地点での休息が与えられること。休憩の頻度と休憩時に動物を積み下ろすかどうかは、輸送方法、輸送される動物の年齢と種、および気象条件に応じて決定すること。休憩中は水と餌が利用可能であること

8. 輸送中の動物を点検する能力

a) 輸送中、動物の安全性と良好な福祉状態を確保するため、各動物を定期的に点検するように配置すること。この条件は通常、家禽類には当てはまらないであろう。しかし、枠箱内の全体的な状態を点検するように努めること
b) もし動物が枠箱や多層構造の輸送車に入れられており、点検のための自由なアクセスが出来ない場合には(例えば各層の天井が低すぎる、など)、動物を適切に点検することができず、深刻な怪我や病気に気付かないままになる可能性がある。このような環境では、短期間の輸送のみを許可すること。最大の輸送期間は、輸送条件や輸送する動物種ごとの問題発生率に応じて決まるであろう

9. 病気の予防

動物の輸送はしばしば、伝染病の蔓延の大きな要因となるので、輸送行程の計画は次のことを考慮に入れること。
a) 一回の運搬で、異なる供給元からの動物を混在させることは最小限にとどめること
b) 休憩地点における異なる供給元からの動物同士の接触は避けること
c) 可能であれば、動物には目的地で感染し得る病気に対する予防接種を行うこと
d) 予防目的、もしくは治療目的で使う薬品は、輸出国と輸入国の獣医学当局の承認を受けるべきである。また、投薬は獣医、もしくは獣医にその薬品の使用について指導を受けた者のみが行うこと

10. 緊急の際の対応処置

緊急時対応計画書を用意し、その中で輸送中に遭遇するかもしれない重大な不慮の事故、ならびにそれぞれの事故への対応処置、および緊急時に取るべき行動を分類しておくこと。それぞれの重大な事故について、行うべき行動と関連する全ての団体の責任(コミュニケーションと記録保持を含む)を計画書に記載すること

11. その他の考慮すべき事項

a) 極端な気象環境は、輸送される動物にとって危険であり、リスクを最小限にするために適切な設計の輸送車が必要である。暑さや寒さにまだ慣れていないか、あるいは不向きな動物には、特別な予防措置を取るべきである。暑さや寒さが極端に激しい場合には、動物は輸送されるべきではない
b) 状況によっては夜間の輸送が、温度によるストレスや外部からの刺激要因による悪影響を低減させる可能性がある

第7.3.6条 書類について

1) その時点で必須となっている書類が全て揃うまでは、動物の積み上げは行わないこと
2) 動物の運搬時に持っていく書類には下記のものが含まれること

a) 輸送行程計画書と緊急時対応計画書
b) 積み上げと積み下ろしを行う日時と場所
c) 必要な場合には、獣医の許可証
d) 運転手のアニマルウェルフェア適格性(検討中)
e) 動物の識別番号、これにより輸送先の施設まで(可能であれば輸送元の施設まで)の動物の追跡が可能となるように
f) 輸送中、何かしらの福祉的な問題のリスクにさらされたと思われる全ての動物に関する詳細(第7.3.7条のポイント3e)
g) 休憩の長さ、および餌と水へのアクセスに関する書類、輸送の開始前に用意する
h) 運搬中の各積み上げごとの収容密度の見積り書
i) 輸送記録 ― 毎日の動物の検査、重要な出来事に関する記録。病気の罹患率、死亡率、行った対応措置、気象状態、休憩、移動時間と距離、与えた餌と水と消費量の評価、投薬した薬、機械の故障の記録も含む

3) 動物の運搬に獣医の許可証が必要な場合、許可証は以下の項目に焦点を当てること

a) 輸送する動物の適応性
b) 動物の識別番号(文字、数字など)
c) 全ての検査結果、治療、および施した予防接種を含む健康状態
d) 必要な場合は、施された消毒処理に関する詳細
許可証発行時に、獣医は動物取扱者もしくは運転手に、個々の輸送に際して、動物の健康に影響を与える全ての要因について知らせること

第7.3.7条 輸送開始前の期間について

1. 全般的な考察

a) もし動物を集めている期間中に、物理的な環境や動物の社交的振る舞いが原因で動物の福祉状態が悪化した場合は、輸送開始前の休息が必須である。休憩の必要性は、獣医もしくは他の適任者が判断すること
b) 輸送開始前の動物の集結・待機場所は下記が可能な場所であること

i) 確実に動物を保持する
ii) 災害(捕食動物や病気を含む)を防ぐ安全な環境の維持
iii) 過酷な気象状況に動物がさらされないよう守ること
iv) 社交的グループの維持を可能にすること
v) 休息、および適度な水と餌を利用可能にすること

c) 以前の輸送時の経験、訓練、もしわかるならば動物の状態について考察を行うこと。これらの考察により、動物の恐れやストレスを減らせるかもしれないからである
d) もし輸送の時間が、普段のその動物への給餌・給水間隔よりも長くなる場合には、輸送前に餌と水を与えること。特定の動物種に対する推奨は、第7.3.12条に詳しく記載されている
e) 輸送中、動物に新規の餌、もしくは給餌方法や給水方法が提供される予定の場合には、適切な適応期間を与えること
f) 各輸送を開始する前に、輸送車とコンテナは完全に清掃され、もし必要であれば、動物と公衆の健康のために、該当の管轄官庁が認可した方法により、必要な処置を施すこと。輸送の途中で清掃が必要な場合には、動物へ与えるストレスとリスクを最小限にしながら清掃を実施すること
g) 動物取扱者が、積み上げる予定の動物たちの間に重大な病気のリスクがある、もしくは動物の輸送に対する適性に深刻な疑いがあると思う場合には、それらの動物は獣医の診断を受けること

2. 相性のよいグループの選定
動物にとって福祉的に反する結果とならないように、輸送前に相性のよいグループの選定を行うこと。動物のグループ分けを行う際には、以下の勧告を適用すること。

a) 一緒に育てられた動物は、ひとつのグループとして維持されること。強い社会的なつながりがある動物同士、例えば母親とその子孫など、は一緒に輸送されること
b) 同種の動物同士は、深刻な攻撃行為の可能性がある場合を除き、同じグループに入れてもよい。攻撃的な個々の動物は隔離すべきである(特定の動物種に対する推奨は、第7.3.12条に詳しく記載されている)。いくつかの動物種では、グループ内社会構造が確立するまで動物の福祉状態が悪化してしまうため、他のグループの動物同士を一緒のグループに入れないこと
c) 若くて体の小さい動物は、乳幼児の世話をしている母獣を除き、年上で体の大きな動物とは分離しておくこと
d) 角や枝角のある動物は、角や枝角のない動物と、相性がよいと判断されるまでは一緒のグループにしないこと
e) 異なる動物種の動物同士は、相性がよいと判断されるまでは一緒のグループにしないこと

3. 輸送に対する適性

a) 各々の動物は、獣医あるいは動物取扱者により、輸送に対する適性を査定するための検査を受けること。もし適性に疑いがある場合には、その動物は獣医の診断を受けること。輸送に不適正と判断された動物は、獣医の治療を受けるための運搬を除いて、輸送車に積み上げないこと
b) 輸送には不適合なため、輸送を却下された全ての動物の取扱いと世話に関しては、所有者と代行者によって、思いやりがあり実効性のある取り計らいがなされること
c) 輸送には不適合な動物には以下のものが考えられるが、これらに限定されることはない

i) 病気、怪我、衰弱、身体の障害、疲労のある動物
ii) 助けを借りずに立ち上がることができず、また四肢で体重を支えられない動物
iii) 両目とも見えなくなっている動物
iv) 苦痛を伴わずには動くことができない動物
v) へその緒が治癒していない新生児
vi) 積み下ろしのときに妊娠期間の最後の10%の段階に入る可能性のある子どもを宿した動物
vii) 輸送により、48時間以内に生んだ子どもと離れてしまう母獣
viii) 予想される気象状況のために、福祉状態の悪い体の状態になりそうな動物

d) 輸送条件に最も適合しており、かつ予想される気象状況に慣れている動物を選ぶことで、輸送中のリスクを減らすことができる
e) 輸送中に悪質な福祉状態を被るリスクがあり、かつ特別な輸送条件(例えば、設備と輸送車のデザインや輸送期間の長さなど)と更なる配慮が必要となる動物には次のようなものが考えられる

i) 体が大きい、あるいは肥満した個体
ii) 非常に若い、あるいは年をとった動物
iii) 興奮しやすい、あるいは攻撃的な動物
iv) 人間と接したことがほとんどない動物
v) 乗り物酔いしやすい動物
vi) 雌の動物で妊娠の最終段階、または高泌乳の牛、母牛と子牛
vii) 輸送の前に、ストレス要因にさらされたり、病原の媒介物と接触があったりする履歴をもつ動物
viii) 角の切断など最近受けた外科手術による傷がまだ癒えていない動物

4. 種固有の要求事項

輸送の処理手順は、動物種によって振る舞いに変化が生じる点を考慮に入れること。逃避ゾーンや社交的なやりとり、その他の振る舞いは動物の種によりで大きく異なり、ときには同種内でも異なる。ある動物種には有効であった設備と取扱い方法は、しばしば他の種では効果がなかったり、危険であったりする。
特定の動物種に対する推奨は、第7.3.12条に詳しく記載されている。

第7.3.8条

積み上げについて
1. 的確な管理・監督
a) 積み上げは、輸送される動物の福祉状態を損ねる可能性があるため、注意深く計画すること
b) 積み上げは、動物取扱者により監督、あるいは実施されること。動物の積み上げは、静かに、不必要な騒音、嫌がらせ、強要なしに行われること。訓練を受けていないアシスタントや見物人は、作業をさまたげるべきではない
c) コンテナを輸送車に積み上げるときは、動物の福祉状態を損ねることがないようなやり方で実行されること

2. 設備

a) 動物収集エリア、動物用通路、積み上げのための傾斜路といった設備は、寸法、勾配、塗装、するどい突起がないこと、床面、等々の点で、動物の生理的要求や能力を考慮した設計・構築をされること
b) 積み上げのための設備は、動物取扱者が動物を点検できるように、また動物がいつでも簡単に移動できるように、適度な照明がなされること。動物がちゅうちょするのを最小限に抑えるため、仕分け用のおり、動物用通路、積み上げのための傾斜路への接続路を、均一の光量で直接照らし、また輸送車やコンテナの内部をそれよりも明るい光で照らすこと。薄暗い光量は、家禽類やその他の動物を捕まえるのに有効な場合がある。人工的な照明が必要となる場合がある。積み上げのための傾斜路およびその他の設備は、滑り止め付きの床面を備えること
c) 積み上げ中および輸送中は換気を行い、新鮮な空気の供給、過剰な熱、湿気、有害な蒸気(アンモニアや一酸化炭素など)の除去、ならびにアンモニアと二酸化炭素の蓄積防止をすること。温暖、もしくは暑い環境のもとでは、換気により、個々の動物の適切な対流冷却を可能にすること。いくつかのケースでは、動物に割り当てるスペースを増やすことで適切な換気が成し遂げられることもある

3. 突き棒、その他の補助具
動物を動かすときは、その動物種特有の振る舞いを利用すること(第7.3.12条参照)。もし突き棒やその他の補助具が必要な場合は、次の原則に則ること

a) ほとんど、もしくはまったく動ける場所がない動物は、物理的な強制、もしくは突き棒やその他の動きを強要する補助具の対象としないこと。電気式突き棒や刺し棒は、極端な場合にのみ用いるものとし、動物を動かすための定常的な手段として用いないこと。機械的な力の利用は、移動するのに補助が必要な動物のみに制限されるものとし、また移動先がはっきりと見通せる場合のみに限定すること。突き棒やその他の補助具は、もし動物が反応しなかったり動かなかったりした場合には、繰り返し用いないこと。そのような場合には、何か身体的、もしくはそれ以外の障害によって移動が妨げられているのではないかを調査すること
b) こういった器具の利用は、電池式の突き棒を、豚および体の大きい反芻動物の後四半部に用いるのみに限定し、決して繊細な部位、例えば目、口、耳、肛門性器部、もしくは腹部に用いないこと。こういった器具は、あらゆる年齢の馬、羊、およびヤギ、もしくは子牛や子豚には用いないこと
c) 実益があり、使用が認められた突き棒としては、羽根板、旗、プラスティック製の櫂、フラッパー(皮またはキャンバス地の短いストラップが一本ついた杖)、プラスティック製バッグ、およびガラガラが含まれる。これらは、必要以上のストレスを与えることなく、動物の移動を促進し、指図するのに足りるようなやり方で使われること
d) 痛みを伴う手段(鞭打ち、尻尾をねじること、鼻ねじの利用、目・耳・外性器への苦痛)や、痛みと苦しみを伴う突き棒、その他の補助具(長い棒、先のとがった棒、金属パイプ、柵用針金、あるいは重い皮ベルトといったもの)は、動物を動かすのに用いないこと
e) 動物を動かすのを促すために、動物に対して過剰にどなったり、大きな騒音をたてたりなど(例えば、鞭をピシッと打つなど)は行わないこと。そのような行動は、動物を興奮させ、押し寄せたり倒れたりする可能性がある
f) いくつかの動物種では、よく訓練された犬を、積み上げ作業の助けとして用いてもよい場合がある
g) 動物をつかまえたり持ち上げたりするときは、痛み、または苦しみと身体的ダメージ(例えば、あざ、骨折、脱臼など)を避けるようなやり方を用いること。四足の哺乳類の場合、人の手で持ち上げるのは、若い動物か体の小さい種のみにするものとし、またその種に適した方法を用いること。羊毛、体毛、羽毛、足部、首、耳、尻尾、頭、ツノ、肢の1箇所だけで動物をつかまえたり持ち上げたりするのは、痛みや苦しみの原因となり、そうしなければ動物の福祉や人間の安全が損なわれるような緊急時を除き、許されないものとする
h) 意識のある動物を投げたり、引きずったり、落下させないこと
i) こういった器具の利用を評価するため、また電動式の道具で動かせた動物の割合と、その道具の利用の結果、すべったり転倒したりする動物の割合を計測するため、数値採点を用いた実績基準を設けること

第7.3.9条 輸送について

1. 全般的な考察

a) 運転手および動物取扱者は、動物が正しく積み上げられたことを確認するため、出発の前に直ちに積載動物をチェックすること。輸送中の早い段階で、各積載動物を再度チェックし、適切な調整がされること。輸送中、とりわけ休憩時やガソリン補給時、あるいは食事のための休憩など輸送車が停止する際には、定期的なチェックを行うこと
b) 運転手は、急ハンドルや急ブレーキのないスムーズで防衛的な運転技術を用い、動物が自分で制御できない動きを最小限にすること

2. 動物を拘束、あるいは抑制する手段

a) 動物を拘束する手段は、対象の動物の種と年齢、および個々の動物のコンディションに対して適切なものであること
b) 特定の動物種向けの推奨事項は、第7.3.12条に詳しく記載されている

3. 輸送車またはコンテナ内の環境の調整

a) 輸送中、動物は暑さや寒さによる危害から守られること。輸送車やコンテナ内の環境を保つための効果的な換気方法は、気象状況が寒いか、暑く乾燥しているか、あるいは暑く湿っているかに応じて変化するであろう。しかし、全ての環境に共通して、悪性ガスの蓄積は防ぐこと
b) 暑い天候および温暖な天候での輸送車やコンテナ内の環境は、輸送車の動きによって作り出される空気の流れで調整できる。暑い天候および温暖な天候では、輸送中の停泊時間は最小にし、輸送車の駐車は日陰の下、適切な換気がなされた状態で行われること
c) 滑りや汚れを最小限にし、健康な環境を保つために、排泄物は必要に応じて取り除くこと。またその除去は、病気の伝染を防止できるやり方で、また全ての健康と環境に関する法令に従った方法でなされること

4. 病気、怪我、あるいは死亡した動物

a) 病気、怪我、あるいは死亡した動物を発見した運転手または動物取扱者は、あらかじめ決められた緊急時対応計画に従って行動すること
b) 病気あるいは怪我をした動物は隔離されること
c) フェリー(RO-RO船)は、輸送中の病気あるいは怪我をした動物を治療する手段を備えていること
d) 動物の輸送により感染力の強い病気の蔓延が広まる可能性を減らすため、輸送される動物同士の接触、または輸送される動物の排泄物との接触、および他の農場の動物との接触は最小限にすること
e) 輸送中、死亡した動物の廃棄が必要なになった場合、それは病気の伝染を防止できるやり方で、また全ての健康と環境に関する法令に従った方法でなされるものとする
f) 動物を殺処分する必要が出てきた場合、可能な限り素早く実施すべきであり、また獣医、あるいは苦痛を伴わない殺処分の能力のある人の援助を頼むこと。特定の動物種向けの推奨事項は、第7.6章に記載されている

5. 水と餌の要求

a) もし輸送時間が長く給餌や給水が必要な場合、あるいは餌と水が常時必要な動物種の場合、輸送車で運んでいる全ての動物に、適切な餌と水(動物種と年齢に応じた)へのアクセスを提供すること。全ての動物には餌と水まで移動できる適切なスペースを与え、また餌をめぐる争いの可能性に対処するしかるべき配慮がなされること
b) 特定の動物種向けの推奨事項は、第7.3.12条に詳しく記載されている

6. 休息の間隔と状態

a) 輸送される動物は輸送中、適切な間隔で休息が与えられるものとし、また輸送車上で、あるいはもし必要であれば適した施設へ積み下ろしてから、餌と水が与えられること
b) 休息時に動物の積み下ろしが必要な場合には、道中で適切な施設が利用されること。そのような施設は、特定の動物種の必要性を満たし、また全ての動物が餌と水にアクセス可能な施設であること

7. 輸送中の点検

a) 陸路で輸送される動物は、輸送開始の直後、および運転手が休憩のための停車を行う時はいつでも、点検されること。食事の休憩の後、およびガソリン補給時の後は、出発前に直ちに動物を点検すること
b) 陸路で輸送される動物は、予定されている停泊ごとに点検されること。鉄道輸送の責任者は動物を運んでいる列車の進行状況を観察し、遅れを最小限にするための全ての適切な措置を取ること
c) 停泊中は、動物が正しく収容された状態が続いており、適度な餌と水があり、また物理的な環境が満足のいくものであるかを確認すること

第7.3.10条 積み下ろしと輸送後の対応について

1. 全般的な考察

a) 第7.3.8条に詳しく記載されている動物の取り扱いに関して必要となる設備および基本理念は、等しく積み下ろしにも当てはまるが、動物が疲労しているかもしれない点を考慮すること
b) 積み下ろし作業は、その動物種の行動的・身体的な特性に関する知識と経験のある動物取扱者の監督の元で行うか、あるいは自身が作業を実施すること。動物は、目的地到着後、直ちに輸送車から適切な施設に積み降ろされるものとするが、積み下ろしを静かに、かつ不要な騒音、嫌がらせ、強要なく行うための十分な時間が与えられること
c) 収容施設は全ての動物に、適切な世話と快適さ、十分なスペースと換気、(もし適切であれば)飼料、および水へのアクセス、そして外部の気象状況からの避難場所を提供すること
d) 屠殺場における動物の積み下ろしに関する詳細については、第7.5章を参照のこと

2. 病気、または怪我をした動物

a) 輸送中に病気、怪我、または障害を負った動物は、適切な治療を受けるか、苦痛を伴わずに殺処分されること(第7.6章を参照)。もし必要であれば、このような動物の世話と治療に関して、獣医のアドバイスを求めること。動物が疲労、怪我、または病気のため歩くことができなくなっているような場合には、輸送車上でその動物を治療、あるいは殺処分するのが福祉の面で最良である可能性もある。獣医、または苦痛を伴わない殺処分の能力のある人の援助を求めること
b) 目的地にて、輸送側の動物取扱者、または運転手は、病気、怪我、または障害を負った動物の福祉に関する責任を、獣医、または他の適任者へ確実に移譲すること
c) もし輸送車上での治療や苦痛を伴わない殺処分が行えない場合は、疲労、怪我、または病気のため歩くことができなくなった動物を苦痛なく積み下ろすための適切な施設、または器具があるものとする。このような状態の動物は、最小限の苦しみのみが伴うやり方で積み下ろされること。積み下ろし後、病気、または怪我をした動物のための個別の囲い、およびその他の設備が利用可能であること
d) もし適切であれば、病気または怪我をした各動物に、餌と水が利用可能であること

3. 病気のリスクへの対策

動物の輸送が原因で発生する病気のリスクの大きさを測るため、また目的地にて輸送した動物の隔離が必要かどうかの検討のため、以下の点を考慮すること
a) 異なる産地からの動物や、異なる病歴の動物を含め、動物同士の接触の増加
b) 病原菌の発散の増加、また免疫抑制を含め、ストレスや、病気への防御力の低下に関連する伝染病の感染性の増加
c) 輸送車、休憩地点、市場等々を汚染する可能性のある病原菌への動物の露出

4. 清掃と消毒

a) 輸送車、枠箱、コンテナ等々、動物を運ぶのに使ったものは、再利用する前に清掃を行い、排泄物と寝床を、水と洗剤でこすり落とし、洗い、すすぐことで、物理的に除去すべきである。病気の伝染のおそれがある場合には、この後に更に消毒を行うこと
b) 排泄物、ゴミ、寝床、および輸送中に死んだ動物の死体は、病気の伝染を防止できるやり方で、かつ全ての健康と環境に関する法令に従ったやり方で、除去すること
c) 家畜市場、屠殺場、休憩地点、鉄道駅など、動物が積み下ろされる施設は、輸送車の清掃と消毒を行うための適切なエリアを提供すること

第7.3.11条 輸送の完了を拒む出来事への対処について

1) 輸送の完了を拒む出来事の際には、動物の福祉を第一に考慮すること
2) 動物の輸入が拒絶された場合は、輸入国側の管轄官庁は、事態が未解決の間、適切な隔離施設を利用できるようにし、動物を輸送車から積み下ろし、それらの動物を確実に収容し、自国内の家畜や家禽類の健康をリスクにさらすことがないようにすること。このような状況では、優先する事項は以下の通りである

a) 輸入国側の管轄官庁は、直ちに拒絶の理由を文書で提供すること
b) 動物の健康状態が拒絶の原因の際には、輸入国側の管轄官庁は、直ちに獣医(可能な場合には、OIEの事務総長によって任命されたOIE獣医)とのアクセス手段を提供し、輸入国が懸念する動物の健康状態の診断を行い、また必要な設備と必要な診断試験の促進の許可を提供すること
c) 輸入国側の管轄官庁は、継続的な動物の健康診断、およびその他の動物福祉に関する事柄が可能になるためのアクセス手段を提供すること
d) もし事態が迅速に解決できない場合には、輸出国側および輸入国側の管轄官庁はOIEに調停を要請すること

3) 管轄官庁が動物を輸送車に乗せたままにするように要求する事態の場合、優先する事項は以下の通りである

a) 必要に応じて、輸送車に水と餌の供給を可能にすること
b) 直ちに拒絶の理由を文書で提供すること
c) 動物の健康状態が拒絶の原因の際には、動物の健康状態の診断を行うための独立した獣医へのアクセス手段の提供、および必要な設備と必要な診断試験の促進の許可
d) 継続的な動物の健康診断、およびその他の動物福祉に関する事柄が可能になるためのアクセス手段の提供、および発生する全ての動物に関する問題への必要な対処手段の提供

4) OIE は、両者が合意した解決策を見つけ、それにより動物の健康状態およびすべての福祉に関する問題を、時機を得て対処できるようにするため、係争の調停のための公式な手続きを利用すること

第7.3.12条 動物種に固有の問題について

以下の文では、アメリカ大陸のラクダ科の動物として、ラマ、アルパカ、グアナコ、ビクーニャを含む。これらの動物は、良い視力を持ち、羊同様に急峻な坂道を乗り越えることができるが、設備の傾斜路はできるだけ平坦にすること。これらの動物は、個々の動物が他の仲間のもとへ努めて戻ろうとするため、集団のときが最も積み上げが容易である。これらの動物は通常おとなしいが、自衛のためにつばを飛ばすというびっくりさせる習性がある。輸送の間は、これらの動物は通常、横たわっている。横たわっているとき、頻繁に前足を伸ばすため、仕切り壁の下の隙間は、十分に高くしておき、立ち上がるときに足が引っかからないようにすること。

牛は社交的な動物で、一頭だけ選り分けられると興奮することがある。社会的序列は、通常およそ2歳頃に確立される。グループ同士を混ぜ合わせると、社会的序列は再確立されねばならず、新しい序列が確立されるまで攻撃的行為が発生するかもしれない。牛の群れを一箇所に押し込めると、牛が自分の個人スペースを維持しようとするため、攻撃性が増加する可能性がある。社交的振る舞いは、年齢、品種、性別によって変化する。コブウシ、およびコブウシ交配種は、通常ヨーロッパ系品種よりも感情の起伏が激しい。若い雄牛は、集団で移動するとき、ある種の遊び心(押したり突いたり)を見せるが、年齢とともにより攻撃的になり、なわばり意識が出てくる。成長した雄牛は、最小で6平方メートルの個人スペースを持つ。小さな子牛連れの雌牛は非常に防衛的になることがあり、母牛がいる前で子牛を取り扱うことは危険である可能性がある。牛は、行き止まりの通路を避ける習性がある。

ヤギは穏やかに取り扱うべきであり、興奮状態のときよりも簡単に導きや後押しができる。ヤギを移動させるときは、ヤギの集団を好む性質を利用すべきである。おびえさせたり、傷つけたり、興奮させるような行動は避けること。弱者へのいじめが、ヤギの場合特に深刻であり、このことは個人スペースへの要求の表れであるかもしれない。なじみのないヤギ同士を一緒に収容すると、身体的な暴力により、または地位の低いヤギが餌と水にアクセスできなくなることで、致命的な事故につながる恐れがある。

以下の文では、ウマ科の動物としてロバ、ラバ、ケッテイを含む。これらの動物は、良い視力と広範囲に渡る視野を持つ。以前に積み上げされた経歴があるかもしれず、それらが良い経験、または悪い経験となっているかもしれない。調教が良いと、積み上げが楽になるであろうが、そうでない場合(特に未経験の馬や、積み上げから粗悪な輸送状態を連想した馬の場合)もあり得る。このような状況では、2人の経験を積んだ動物取扱者が腕を組むか、または臀部の下でストロップを使うことで、一頭ずつ積み上げることができる。目隠しすることも考慮すべきかもしれない。傾斜路はできるだけ平坦にすべきである。馬が傾斜路を上がるときは、階段はたいてい問題とならないが、傾斜路を下るときに、階段を飛び越える傾向がある。従って、階段はできるだけ低くしておくこと。個別の馬房に収容することが馬にとってよいことであるが、仲の良いグループでの輸送も可能かもしれない。馬をグループで輸送するときは、蹄鉄ははずしておくこと。馬は、長時間ロープで動きが制限されると、頭を下げたり持ち上げたりすることができずに、呼吸器疾患にかかりやすくなる。

豚は視力が弱く、また不慣れな環境では積極的に動きたがらないものが多いかもしれない。明るく照らされた積み上げ区画は豚に利となる。豚は傾斜路を乗り越えるのに苦労するため、傾斜路は可能な限り水平にしておき、安定した足場を付けるべきである。理想的には、高い場所へは水圧式リフトを用いるべきである。豚は階段の乗り越えにも苦労する。有効な経験に基づく目安としては、豚の前脚の膝よりも高い階段がないようにすること。不慣れな豚同士を混ぜ合わせると、深刻な攻撃的行動の原因となるかもしれない。豚は非常に熱によるストレスを感じやすい。輸送中、豚は乗り物酔いにかかりやすい。乗り物酔い防止策としては、積み上げの前には餌を与えないことが役立つかもしれない。

羊は社交的な動物で、良い視力を持ち、比較的とらえがたく感情を表に出さない性質をしており、また“群れをなす”傾向がある(興奮したときは特に)。羊は穏やかに取り扱うべきであり、移動させるときには、お互いのあとをついていくという羊の性向を利用すべきである。羊の群れを一箇所に押し込めると、羊が自分の個人スペースを維持しようとするため、損害を与えるような攻撃的および服従的振る舞いにつながるおそれがある。世話するために羊を一頭だけ分けたり、一人きりにしたりすると、興奮し、群れに戻ろうと懸命になるかもしれない。羊をおびえさせたり、傷つけたり、または興奮させるような行動は避けること。羊は急峻な傾斜路を乗り越えることができる。

(翻訳以上)

■WOAH陸生動物衛生規約 第7.3章「陸路による動物の輸送」全文(英語)
https://www.woah.org/en/what-we-do/standards/codes-and-manuals/terrestrial-code-online-access/?id=169&L=1&htmfile=chapitre_aw_land_transpt.htm

■*はアニマルライツセンターが注記

■翻訳はボランティアの協力でアニマルライツセンターが独自に行ったもので、国内の正式なものではありません。

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