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56,000頭の全ての豚が2ヶ月にわたり殺される農場・・・

2022年7月23日、栃木県内の養豚場で豚熱の発生(県内4例目)が確認された。今回の飼養頭数は約5万4千頭(後に5万6千と訂正された)、ニュースでは国内最大規模の殺処分であることが強調されている。これにより国内の豚熱は全83事例、殺処分数は約353,852頭となる。(既にと畜されていた頭数を除く)* 人で例えると福島県いわき市や埼玉県川越市、大阪府高槻市が人口35万人の都市である。(平成27年10月01日時点)** 発生しては殺すことでその場しのぎを繰り返してきたが、私たちはいつまで、どれだけの命をこれからも無責任に殺処分し続けていくのだろうか。

今回の発生は匿名のメールによる県への情報提供で判明しており、所有者が獣医師に連絡したわけでも獣医師が県に連絡したわけでもなかったとのこと***。5万頭規模の超巨大農場の管理体制がこんなことではまたすぐ次の発生が来るのではないかと不安で仕方がない。

またこのような殺処分の現場ではアニマルウェルフェアが特に蔑ろにされることが過去の事例からわかっている。
豚の場合、殺処分方法は消毒薬(パコマ)の注射や電殺、炭酸ガス殺である。

簡単に説明すると殺処分時のパコマ使用は国際的に認められていない、それだけ動物を苦しめるものと認識されているにも関わらず日本では使い続けている。電殺器は当てる位置がずれていたり時間が短かったりメンテナンスが不十分であれば効果は薄れ動物を余計に苦しめる。炭酸ガス殺には最低限測定器が必須であるが現場では簡易なやり方で行われる、そもそも二酸化炭素は嫌悪刺激があり豚を苦しめる。(苦しみが少ない方法でするならアルゴンや窒素など不活化ガスを正しく使わなくてはいけないがガスの値段は高い)

そして迅速さが重視される現場で5万4千頭分の致死までの福祉的観察や問題があった際の対応、致死確認などがどれだけ慎重に正確に行えるだろうか。

死体を入れたフレコンバッグが埋める際に動いていたということも耳にする。
つまり死にきれずに生きたまま埋められる豚がいるということだ。

今回の殺処分には約2ヶ月を要するという。

これまでなんでもやってくれて便利だからと自衛隊を安易に頼ってきたために、総務大臣から動物を殺す際の自衛隊派遣に是正勧告が出された(2022年4月22日)****。そのためかこの栃木の豚熱殺処分に自衛隊は派遣されていない。
また7月から9月の暑い時期であることも相まって2ヶ月という時間が設定されている。

ここで豚熱に関する特定家畜伝染病防疫指針*****の内容に目を向けてもらいたい。

出だしからして基本方針にある防疫対策上最も重要とされる「早期の発見及び通報」の体制が整っていなかったことに目も当てられないが、更に根深いのはこれまでの多くの豚熱殺処分にも当てはまる「病原体の早期封じ込め」に関してである。
防疫指針には早期封じ込めのために24時間以内の殺処分と72時間以内の死体処理が記載されているが、これは「肥育豚飼養農場で 1,000 から2,000 頭程度の飼養規模を想定」とした目安であり、天気や気温、畜舎の構造などにより変わってくることなので、現実に即して行うことと補足がしてある。それはそうだろう、一度発生すれば実際の状況に合わせて進めていくしかない。

しかし大規模農場が珍しくもない今日において何を基準に「病原体の早期封じ込め」とするのだろうか。もはや5万4千頭で2ヶ月かかってしまうのだ、2ヶ月を早期とは言い難い。

2018年9月9日に1例目が発生してから2022年7月時点でこれまで関連農場を除き最も殺処分頭数が少なかったのは5例目の10頭(岐阜県可児市の農業大学校で発生)なのだが、この時は消毒作業含め20時間程度で終わっている。極端な考え方をすれば今回の2ヶ月が早期になるならこの10頭も2ヶ月かけようが問題ないことになる。しかしそれは常識的ではない。「病原体」の「早期」封じ込めのために指針で目安を設けているのだ、殺処分規模で「早期」の基準が変わるのは本来おかしなことである。

消毒作業にかかる時間も農場の規模によって一概ではないので大雑把ではあるがこれまでの83事例中200時間を超えたのは以下の17事例であった。(消毒作業に5日と仮定して120時間、指針の目安である72時間を加え192時間とし、大まかに200時間を目安とした)

  • 210時間(65例目 約10000頭:1農場)
  • 210時間(54例目 3024頭:1農場)
  • 213時間(82例目 約5000頭:1農場)
  • 214時間(61例目 7026頭:1農場)
  • 215時間(80例目 約3000頭:1農場)
  • 224時間(8例目 15433頭:6農場+関連と畜場)
  • 242時間(53例目 3174頭:2農場)
  • 245時間(28例目 7828頭:2農場)
  • 245時間(52例目 1127頭:2農場)
  • 276時間(9例目 17390頭:2農場)
  • 297時間(73例目 約3900頭:2農場)
  • 308時間(76例目 約7862頭:27農場(関連農場多いが頭数は少ない農場が多い)
  • 309時間(59例目 5887頭:1農場)
  • 310時間(69例目 4109頭:2農場+関連と畜場)
  • 333時間(64例目 9790頭:2農場)
  • 453時間(71例目 5020頭:1農場)
  • 719時間(66例目 約39000頭:3農場)

※記載時間は関連農場含め最も時間がかかった農場の時間(30分単位は切り捨て)。複数農場の場合同時進行で行われているため殺処分頭数は参考程度。

ちなみに今回の殺処分を2ヶ月で計算すると1488時間である。(※これは消毒作業を含まない殺処分と死体処理までの時間)

一体どこに”早期”の要素があるのだろうか。

病原体の早期封じ込めのために陽性なのかどうかも調べることなくほとんどの疑似患畜は殺処分される、しかし実際は工場畜産の大規模化により明らかに早期封じ込めとは程遠い時間がかかってしまっているのが現実なのだ。

なにより、2ヶ月間、その農場では豚たちの殺されるときの恐怖と悲鳴が充満し続けることになる。遅く殺されるほど、その恐怖、ストレスは高くなることは間違いがない。豚は血の匂いを嗅ぎ分け、仲間の声を聞き分ける。2ヶ月かかるということは、一つの豚舎が1日で終わるわけでもない。

防疫とアニマルウェルフェアの両方の観点からも、この問題を改善するには、生産者や企業はアニマルウェルフェアに則した健全で節度ある生産への取り組み・飼養頭数の削減を、行政は古い価値観を捨て正しくアニマルウェルフェアを支援していくことが動物の命を利用するこの社会の最低限の責任というものではないだろうか。そして生産者や企業、行政に責任を果たさせるためには、市民が監視し意見を届け続けることと、消費を減らす・もしくは避ける事が必要だ。

そして、これからの2ヶ月で殺される54000頭の豚たちのために、たった今必要なのは、防疫指針にあるように、殺処分動物へ「麻酔剤を使用するなど、可能な限り動物福祉の観点からの配慮」を確実に行うことだ。

意見先:

栃木県 畜産振興課
〒320-8501 宇都宮市塙田1-1-20 県庁舎本館13階
電話番号:028-623-2352
ファックス番号:028-623-2353
Email:chikusan@pref.tochigi.lg.jp

* https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/csf/attach/pdf/domestic-512.pdf
** https://www.chuukakushi.gr.jp/_files/00072984/r01pamphlet.pdf
*** https://www.yomiuri.co.jp/national/20220723-OYT1T50363/
**** https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/hyouka_040422000156798.html
***** https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_bousi/attach/pdf/index-41.pdf

1 Comment

  1. 中野律子 2022/07/29

    この様な事をするのが人間ですか?命ある生き物、私達も生き物です、痛みを感じ、喉も乾く何故それが分からないのでしょう!不必要な数を増やし利益ばかり求める社会では人間の住める地球など、必要では無いですよね、生き物どうし共存共栄してこその地球そして人間より弱い存在の生き物を助けていく事が人間の使命では無いでしょうか!もう二度とこの様な事がない様罰は与えなくてはなりません!

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