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工場畜産が続く限りどこかの生態系が大豆のために消えていく

アマゾン、パンタナール、グランチャコ、セラードなど南アメリカはどんどんと生態系を削り取っていっている。その開発の目的は大豆だ。その大豆は工場畜産で飼育される畜産動物たちのエサにされる。

もはやこの破壊のサイクルは明らかであり、また森林破壊はやめようというのも地球市民のコンセンサスであるが、それでも破壊は止まらない。それもそのはずで、畜産物の消費量が下がっていないのだから当然だ。

熱帯地域の生態系を破壊する要因には大きく

  • 大豆(75%が鶏や豚などの畜産動物のエサ)
  • 牛肉
  • 木材
  • パームオイル
  • コーヒー
  • カカオ

があるが、圧倒的に多くの面積を破壊しているのは大豆だ*1。そしてこの6つの主要原因の中で、大豆だけが人間が直接消費するのではなく、動物に食べさせて少量の畜産物に変えてから摂取するという間接消費財である。つまり、一番減らしやすいのは大豆なのだ。しかもかなりの食糧生産の効率化が望める。

それでも減らない。つまり森林破壊、生態系破壊は続いている。残念ながら、その破壊は激しさを増している。2019年には火災が多すぎると騒がれていたが、たいして騒がれなかった翌年には過去10年間最悪の破壊が行われた*4。2021年はもう破壊が禁止されている乾季の前の時期に破壊が進んでしまったという。

南米での大豆生産は2000年から2019年の間に、26.4Mhaから55.1Mhaと、2倍以上に達している*2。グランチャコ、パンタナール、セラード、そしてアマゾン南部が今まさに、脅かされている。

グランチャコ

グランチャコは南アメリカでアマゾンの次に大きな生態系であり、アルゼンチン、ボリビア、パラグアイ、ブラジルの4つの国にまたがっている。その炭素貯蔵量はこれまで見積もられてきた量よりも遥かに=19倍も大きいという*3。

そんな重要なエリアであるグランチャコの破壊の一番の原因は飼料用大豆である。工場畜産から来た鶏肉や豚肉や牛肉を食べたいという世界中のニーズがこの地域の貴重な生物多様性を台無しにし続けている。

アマゾン南部マットグロッソ州

Mongabeyは大豆のニーズがアマゾン南部のマットグロッソ州の森林破壊が激しくなっていることを指摘している。この破壊に伴う放火は先住民の敷地のすぐそばで始まり、放火された火が先住民の家に落ち煙が覆い、先住民は奥地に追いやられてしまっている。それでもこの開発は合法だという。大豆畑に上空から撒かれる農薬の被害もある。
恐ろしいことに、もはや牛の放牧よりも飼料用大豆の栽培のほうが魅力のある産業になっているという。産業が儲かることの方を優先している政権が主導している場合、産業側が倫理観を発揮しない限り、人権侵害も環境破壊も大幅に進んでしまうわけだが、現状、この大豆のサプライチェーンおよび大豆の最終形である畜産物の消費者たちは倫理観を発揮していない。

パンタナール

ブラジル最大の天然の湿地帯で世界最大級の熱帯性湿地でもあるパンタナール、このエリアは特に2020年から議論の的になっている。この地域で問題となっているのは大豆畑で使用される農薬。湿地帯であるということは水資源がここに集まっているということであり、上流で使用された農薬がこの湿地帯にたまる。ここで水や魚などをとって暮らす先住民たちはその影響を受けざるをえない。パンタナール自体で開発が激化しているのではなく、水が汚染されてしまっているということだ。これにより、魚などの水棲動物も影響を受けている。2019年、2020年と上流で森林開発がされ、大豆畑になり、そこに撒かれた農薬が下流に移動しているのだ。このパンタナールは氾濫原でもあり、水はその周辺の地域~下流に流れていき、広い地域のバイオームで暮らす動物も摂取する。その中に、農薬という化学物質が混ざることになる。農薬だけでなく、上流の開発によって沈泥が溜まっており、魚がいなくなっていっているともいう。*6

これも畜産の影響である。

セラード

セラードの開発については過去の記事でも書いてきたが、その開発が止まったという情報は残念ながらない。それどころか2020年の開発は2019年よりも13%増加していてやや加速気味だ*8。
セラードの原生植物は半分はすでに失われ、アマゾンとセラードの開発がその周辺の乾燥を激化させ、乾季の影響が大きくなっている*9。
これは予測されていた変化だ。アマゾンは今後さらに劣化したサバンナ化し、セラードの農場は2040年には39%が減ってしまうと予測されている*7。

デューデリジェンスを狭く捉えすぎ

EUや英国はお皿から森林破壊を取り去ろうと努力をはじめた。ノルウェーの主要サーモン養殖業者は南米産の大豆を仕入れないと決めている。完璧ではないようだが大きな決断といえる。日本ではまだそんな英断をする企業は見られない。非常に単純でわかりやすい因果関係であるが、その部分をあえて無視しているのかもしれないし、トレーサビリティが全くできていない結果かもしれない。

日本社会はデューデリジェンスの意味を狭く捉えすぎてはいないだろうか。
近年日本企業がデューデリジェンスという言葉を使うときは狭い範囲の人権だけを指しているように聞こえる。しかしそれはあまりにも悪意のある選択に見える。デューデリジェンスは否定的な結果を回避するために合理的な注意を払うことであり、環境や動物や暴力の問題にも広く注意を払わなくてはならない。自分たちが雇用している人間やサプライチェーンの中にいる人間だけの人権を守っていることは、それは利己的すぎる。そのビジネス活動によって影響を受けるすべての環境や動物や人に注意を払わなくてはならないのではないか。今まさに畜産を通して地球全体を窮地に陥れる否定的な結果を生み出し続けているわけで、これに注意を払わないことは”悪”だ。

現状維持をしておけば許される時代は終わり、過去数十年の悪しき慣行=工場畜産から離れなくてはならない。とても簡単な結論だ。
一刻も早く、優れた判断能力を取り戻し、公正で正義ある判断を下すことを企業に期待したい。

 

*1 豊かな国の食事が招く森林破壊
*2 Massive soybean expansion in South America since 2000 and implications for conservation
*3 https://dialogochino.net/en/climate-energy/44454-deforestation-in-the-gran-chaco-an-overlooked-carbon-bomb/
*4 The Brazilian Amazon deforestation rate in 2020 is the greatest of the decade
*5 https://news.mongabay.com/2021/07/as-soy-frenzy-grips-brazil-deforestation-closes-in-on-indigenous-lands/
*6 https://news.mongabay.com/2021/06/demand-for-soy-puts-pressure-on-pantanal-brazils-largest-wild-wetland/
*7 http://www.observatoriodoclima.eco.br/area-de-cultivo-de-soja-no-brasil-pode-diminuir-39-ate-2040/
*8 https://chainreactionresearch.com/report/cerrado-deforestation-2020-soy-beef/
*9 https://news.mongabay.com/2021/07/amazon-and-cerrado-deforestation-warming-spark-record-drought-in-urban-brazil/

 

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