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厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 卵1日1個でもリスク

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 卵1日1個でもリスク

2019年12月に厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、コレステロール摂取量について次のように記載されました。

脂質異常症の重症化予防の観点からは、200 mg/日未満に留めることが望ましい。

*脂質異常症:昔でいうところの高脂血症。(1)悪玉コレステロール値が高い (2)中性脂肪値が高い (3)善玉コレステロール値が低いことをまとめて脂質異常症と呼ばれます。

厚生労働省の調査によると日本人女性の48%、男性の44%が脂質異常症とされており、日本人の約半数が該当することになります。

卵一個のコレステロールは250mg。ヴィーガンやベジタリアンでなければ肉や魚やバター、チーズ、また卵の入ったケーキや菓子パンなどからもコレステロールを摂取することになるので、卵を一日一個食べるだけでもリスクがあるということになります。

「日本人の食事摂取基準」は5年に一度改定されています。じつは「日本人の食事摂取基準」で厚生労働省がしめすコレステロールの上限値にはこれまでに変動がありました。

2010年度版「日本人の食事摂取基準」までは成人男性750㎎、成人女性600㎎が上限とされていました。他の食べ物からコレステロールを摂取することも考えて「卵は一日一個まで」とよく言われてきたのはおそらくこのころの話でしょう。

しかし2015年度版からはコレステロールの上限値が撤廃されました。これはコレステロールをいくらとっても大丈夫だという方針に変わったということではなく、2015年度版を読めばわかるのですが、血液中のコレステロール値に与える影響には個人差が大きく、「コレステロールの摂取量は低めに抑えることが好ましいものと考えられるものの、目標量を算定するのに十分な科学的根拠が得られなかったため、目標量の算定は控えた。」(参照:2─7─2.生活習慣病の発症予防 2─7─2─1.目標量の設定)ためです。

そして2020年度からは新たに知見をもとに200 mg/日未満が示されることになりました。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」には、この数値を示す根拠として卵の摂取と疾患との関連に関する研究が複数提示されています。

なお、最近に発表された個々の研究を概観すると、アメリカで行われた六つのコホート研究のデータをまとめて解析した研究では、コレステロール摂取量及び卵摂取量と、循環器疾患発症率及び総死亡率の間にいずれも有意でほぼ直線的な正の関連が観察されている 。

22 のコホート調査のメタ・アナリシスでは、脳卒中及び冠動脈疾患と卵の摂取量との間には有意な関連はなかったが、糖尿病患者ではどちらも正の有意な相関が認められている 。

14 のメタ・アナリシスでは、冠動脈疾患と卵摂取量との間に正の相関とともに、糖尿病発症との関連を認めている 。

個々の調査を見ると、アジアでは、中国で行われた 50 万人規模のコホート研究で、卵摂取量と循環器疾患発症率には、「摂取しない」から「1日に1個」までの間で、有意な負の関連が認められている。

日本人における Japan Public Health Center-based prospective study では、1週間における卵摂取量と冠動脈疾患発症と関連はなかったが 、NIPPON DATA80 では女性で虚血性心疾患及び総死亡率と有意な正の関連が認められている 。

アメリカでは、全体では関連が認められなかったものの、糖尿病を持つ高齢者で、卵摂取量と心血管疾患で有意な正の関連を認めている 。

スウェーデンで行われた二つのコホート研究をまとめて解析した結果では、1日に1個以下の卵摂取は心筋梗塞発症率との関連は認められなかったが、男性における心不全発症と関連していた 。

 以上より、日本人の食事摂取基準において、少なくとも循環器疾患予防の発症予防の観点から目標量(上限)を設けるのは難しいが、これは許容されるコレステロール摂取量に上限が存在しないことを保証するものではなく、脂質異常症の重症化予防の観点からは、200 mg/日未満に留めることが望ましい。

日本卵業協会が中心となって進めている「1日にたまごを2個食べよう」という運動(「たまご2個で、みんなニコニコ」プロジェクト)があります。協会サイトには次のような問答があります

Q1 卵は一日何個まで食べても大丈夫ですか?
A:結論的には個数に制限はありませんが、全国鶏卵消費促進協議会では「私がこんなにキレイなのは1日2個のたまごのおかげ」と1日2個を勧めるキャンペーンを実施しています。もしも卵を沢山食べる際は、一日の食事バランスに配慮して野菜も沢山食べることをおすすめします。

これは卵を販売して儲けたい業界側のプロパガンダだということを忘れないで下さい。

卵に健康効果があるという研究もあります。しかしいっぽうで卵の摂取、特に一日2個や「何個でも」などという過剰摂取にはリスクが伴うという多くの研究があります。

体への負担だけではありません。「たまご2個で、みんなニコニコ」で食べる卵がバタリーケージの卵なのであれば、動物虐待へ荷担することになるのも忘れないでください。

動画:日本のバタリーケージ

 

参照 一般社団法人日本動脈硬化学会サイト 2020年1月25日付鶏鳴新聞

 

 

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