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保護うずら~その後

保護うずら~その後

こちらのうずらの一生についてまとめたサイトで、保護したうずらについて書きました。このうずらについて、少し詳しく報告しようと思います。

保護したうずらは2羽です。

この2羽を保護した時の様子と、その後の新しい家族の元での様子を少し書いておこうと思います。

保護したのは「廃うずら」にされるうずらです。卵を産ませるために飼育されているうずらは一年ほどで産卵率が落ちると殺されます。その殺されるうずらたちが「廃うずら」と呼ばれています。

その日殺される予定だった2羽のうずら。引き取った頃の体重はそれぞれたったの100gでした。手のひらにすっぽり入ってしまう大きさです。

日本うずらの平均的な体重が140gなので、体重だけでも、「廃うずら」にされるまで、うずらたちがどれほどの過酷な搾取を受けてきたのかが想像できます。この小さな体で毎日10-13gの卵を産むのはどれほど負担だったでしょうか。
野生のうずらが1年間に産む卵は7~12個程度。いっぽう採卵用に育種「改良」されてきたうずらは年間250個を産まされます。

体重をはかるまでもなく、うずらたちを見ただけで、これまで彼らが味わってきた苦しみが伝わってきました。

1羽目のうずら

このうずらは、地肌が見え、羽がボサボサでした。

保護してすぐは、見知らぬ場所で不安だったのか、廃うずらとして出荷される時の乱暴な作業で心身ともに疲れ切っていたのか(出荷時、小さいうずらたちはカゴをひっくり返して流し込むように出荷用コンテナに積み込まれます)、ごはんもほとんど食べず水も飲まずにじっとしていました。しかし3~4日するとよく食べるようになりました。
初めのころは弱っていたせいか、手の中に抱くとじっとしていることが多かったのですが、ご飯を食べて体力がついてくると、こちらを警戒するようになり、ご飯を食べている最中でも、人が近づくとすぐに食べるのをやめ、小屋に逃げて隠れるようになりました。

砂浴び場をつくると、翌日から砂浴びをはじめました。

2羽がこれまでいた場所はバタリーケージ(地面も四方も金網で、巣や隠れ場がなく、卵が転がりやすいように床が傾いており、一羽当たりの飼育面積が異様に狭い飼育方法)。そこに砂浴び場はありません。初めての砂浴びです。保護してからは毎日飽きることなく砂浴びを繰り返していました。

保護してはじめて、気付いたことがあります。それは、うずらがとても警戒心が強く、人に簡単には馴れないのだということです。これまで鶏を保護したことはありました。どの鶏も、人に対して極端に怯えるということはなく、おそくても1週間ほどもすれば人に馴れて餌を催促しましたが、うずらは違いました。砂浴びしている時も、こちらが近寄るとあわてて小屋に走っていき、隠れました。

ひきとって3週間たとうというころになってようやく、餌を食べているときにこちらが近寄っても、すぐに小屋に飛んで逃げ帰ることは無くなりました。しかしそれでも近づくと餌を食べるのを止め、こちらを何度も見て、どうしようか悩む様子をしたあとで、小屋に戻っていきました。

うずらは近交退化の影響が出やすいといわれており、鶏ほどの極端な育種「改良」(家禽化)が行われていません。そのため野性味がかなり残っているようでした。その分、人の管理下に置かれて狭いバタリーケージに閉じ込められることは強いストレスになったのではないかと思います(鶏ならバタリーケージに閉じ込めて良いというわけではありません。鶏がどのような苦しみを味わっているかはこちらをご覧ください)。

2羽目のうずら

こちらのうずらは、1羽目よりもひどく、頭が禿げていました。そして目をまん丸に開いて怯えたようにじっとしていることが多く、片時も気持ちが落ち着けないように見えました。

うずらを引き取った当初、2羽の寝場所を一緒にしていたのですが、寝場所から小さい鳴き声が聞こえることに気が付きました。カメラを設置して様子をみていると、1羽目のうずらに何度も頭を突かれて逃げ回っていることに気が付きました。小屋の外に出ることもできたのですが、隠れるところのない広い場所に出るのも怖かったのでしょう。小屋の中で右へ左へ逃げ回っていました。
慌てて2羽の小屋を別々にしましたが、この時に、このうずらはバタリーケージの中で、他のうずらに何度も突かれて逃げ回っていたのかもしれないと思いました。

うずらはバタリーケージ飼育されており、数十羽が群れで一つのケージに閉じ込められています。1羽あたりの面積はたった8㎝×8㎝。ストレスからお互いをつついてしまうことがあります。特に弱いうずらは突かれやすいです。このうずらは1年間、狭いケージの中でずっとビクビクしながら過ごしていたのかもしれません。

写真/2羽目のうずら。敷料の下にいつももぐりこんで、じっと外の様子をうかがっていた

このうずらは1羽目のうずらと違って餌を少ししか食べず、小屋の中に隠れたまま、ほとんど出てきませんでした。しかし10日目くらいからだんだん食べるようになり、砂浴びもするようになりました。

それでも怯えがとても強く、人の動くわずかな音を聞き、気配を感じただけでご飯を食べるのも砂浴びもやめて小屋に逃げて敷料の下にもぐりこみました。
掃除などで移動をさせるために手の中に抱くと、眼を丸く開いてびくともせずにじっとしていることもありました。抱かれて安心しているのではありません。それとは正反対で、恐怖で動けないでいるようでした。
広い場所に出すと、慌てて逃げ場所を探して飛び跳ねて壁にぶつかり、右往左往とうろたえるか、逆に床の上にうずくまってじっと動かなくなりました。うずくまっている様子をよく見るとブルブル震えているのが分かりました。そのため広い場所に出すのは止めて自発的に出るのを待つことにしました。しかし保護して3週目がたったころも、自分から出てくることはありませんでした。

家族の元へ

保護から3週間ほどして、2羽のうずらは新しい家族の元へ行くことになりました。以前うずらと一緒に暮らしていたご夫婦で、うずらの習性や、病気、食べ物について詳しい方でした。
お二人は、最近畜産の現状を知り、ブロイラーのメイのレポートも見て、すぐに動物性食品の摂取をやめられたそうです。そして「この現実を見過ごすことが耐えられない」「鶏やうずらの殺処分をほんの少しでも止めたい」「少しでもいい。救える命を救いたい」という思いでアニマルライツセンターに連絡をくれました。
実はこのご夫婦から、うずらや鶏の保護をしたいと連絡があったことが、うずらについて調べ始めたきっかけでした。アニマルライツセンターではこれまで採卵鶏の問題に取り組んできましたが、うずらについてはその実態を知りませんでした。しかし調べを進めるうちに、採卵鶏同様、うずらが過酷な一生を送っていることが分かり、縁があって「廃うずら」を引き取りることになりました。その姿を見た時、ウズラの卵の残酷さを実感したのです。

新しい家での2羽の様子です。二階部分のスペースがうずらたちの部屋になりました。

 

隠れ場があちこちにあり、砂場があり、広く、好きな場所に移動できるため、つつくこともなく、二羽が一緒に並んで座っていることもあるそうです。日光浴にも連れ出してくれています。
名前もつけてくれました。この記事で一羽目と書いてあるのが「ころぞう」二羽目と書いてあるのが「すこっぴ」です。

 

ころぞう

 

すこっぴ

ここで暮らすようになってからは、二羽ともご飯を食べる量が増え、小松菜もたくさん食べます。うんちも立派なものをするようになったそうです。そして、すりむけたように地肌がツルツルになり、もう生えてこないのではないかと心配していた羽毛も生えてきました。ふさふさして見違えるようです。以前はほんとうにツルツルだった頭にも、柔らかい羽毛が生えそろってきているのが分かります。

 

左がすこっぴ、右がころぞう

 

左がころぞう、右がすこっぴ

ころぞうは、呼ぶと来るようになり、手からご飯を食べるようにもなったそうです。すこっぴのほうは、いつもまん丸に見開いて緊張していた表情が少し和らいできました。それでも、怯えがどうしてもとれないようで、人が来ると隠れてしまうそうです。ご夫婦は、1年間も酷い環境のケージの中にいた恐怖が、もしこの先も消えず、人に馴れなかったとしても、すこっぴが幸せで快適でいられる環境、接し方を探っていくとのことでした。

犠牲を終わらせるために

国内で飼育されてているうずらは444万羽います。

ケージから解放されて、思い切り伸びをしたりジャンプしたり、隠れたいときに隠れる場所があって、砂浴びができて、太陽の光を浴び、柔らかい地面の上で過ごす。そんな機会が得られる、ころぞうやすこっぴのようなうずらは、ほんのごく一部です。ほとんどのうずらは、ケージの中で苦痛に満ちた生涯を送り、殺されます。斜めに傾いた床の上で過ごし、足の爪はのびきり、ほかのウズラに突かれても逃げる場所もありません。ケージの高さはたった12㎝。ジャンプどころか伸びをすることすらできないのです。今この瞬間も、うずらたちは苦しんでいます。「うずらの卵」のために。

「廃うずら」の体を見れば、どれだけ酷使され卵を産み続けてきたのかが分かります。この苦しみを継続するのか、終止符を打つのか、それは私たち消費者の選択にゆだねられています。
うずらの卵だけではありません、鶏の卵、豚や牛の肉、すべての動物性食材の裏には、動物の過酷な生涯が隠されています。まずは畜産の現状を知ってください。そして動物性のものを減らす、食べるのを止めるという選択を検討してみてください。

2 コメント

  1. Alex 2021/01/27

    何気なく食べていたものが、とんでもない犠牲の上に成り立っていると気付くのはショックです。
    卵は野菜のように作られるのではなく、母鳥がお腹を痛めて産んでいることが想像できなかった自分がこわいです。
    大切に飼っている鳥だって、うまく産卵できずに死ぬこともあります。
    この子達と一緒に閉じ込められていた子の中には、いろいろな理由で死んだ子もいるはずです。
    それでも、安く買いたい消費者のために、動物たちが物扱いされる現実は変わらないでしょう。
    こんなひどい虐待をなくすには、私たち消費者が畜産物を食べないようにするしかありません。

    返信
  2. 山下久美子 2021/02/11

    最近、うずらを飼おうとペットショップに問い合わせしていたところですが、この記事を拝見し、うずらの保護に協力出来ないかと思いました。
    うずらの飼育経験はありませんが、鶏は過去にあります。お返事お待ちしております。

    返信

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