日本のマヨネーズ業界で、静かな変化が起きている。
これまでケージフリー卵を使用したマヨネーズは、一部の自然食品店や通販で販売されるニッチな商品だった。しかし近年、その状況は変わり始めている。
イオンは「フリーフロム平飼いたまごのマヨネーズ」を発売し、ライフはBIO-RALブランドで平飼いたまごのマヨネーズを展開している。ヤオコーでも平飼いたまごを使用したプライベートブランド商品が販売されている。
さらに、全国マヨネーズ・ドレッシング類協会はアニマルウェルフェアに関する考え方を公表し、2026年には会員企業の商品検索機能には「ケージフリー」「プラントベース」の絞り込みも導入した。
さらに、国内にはこれら以外にも数多くのケージフリー・平飼い卵使用マヨネーズが存在している。(2026/6/2 アニマルライツセンター調べ)
| 商品名 | 製造元 | 動物福祉 |
| ビオラル 平飼いたまごのマヨネーズ | ライフ | cage free |
| 松田マヨネーズ | ななくさの郷 | cage free |
| 平飼い鶏の有精卵マヨネーズ | ムソー | cage free |
| 平飼い卵マヨネーズ | キユーピー | cage free |
| 平飼い卵マヨネーズ(瓶) | キユーピー | cage free |
| ビオ・マルシェマヨネーズ | ビオ・マーケット | cage free |
| リアルマヨネーズ | ヘルマン | cage free |
| オリジナル無添加マヨネーズ | 小林農園 | cage free |
| アボカドオイル使用マヨネーズ | Primal Kitchen | cage free |
| 僕のためのマヨネーズ | やますけ農園 | cage free |
| 自然派マヨネーズタイプ 平飼い卵 | 恒食 | cage free |
| うちゅうの夜明けマヨネーズ 瓶入り | バイタルフォース研究所 | cage free |
| 平飼いニワトリふくたまごマヨネーズ | テトテヲ | cage free |
| 天佑卵(てんゆうらん) マヨネーズ | たなべたたらの里 | cage free |
| 平飼い卵のマヨネーズ | 創健社 | cage free |
| 平飼い鶏の有精卵タルタルソース | ムソー | cage free |
| 平飼い卵のマヨネーズ | 味の素 | cage free |
| フリーフロム平飼いたまごのマヨネーズ | イオン (TOPVALU) | cage free |
| 平飼いたまごのタルタルソース | イオン (TOPVALU) | cage free |
| 平飼いタマゴのマヨネーズ | 丸和油脂 | cage free |
| やさしいまいにちマヨネーズ | 冨貴食研 | cage free |
| こだわりのマヨネーズ | OGCsmile | cage free |
| 加地さん家の平飼いたまごマヨネーズ | ヤオコー | cage free |
| テンアールのオリジナル無添加マヨネーズ | テンアール | cage free |
| 富士山麓放し飼いたまごのマヨネーズ | エスエスケイフーズ | cage free |
エッグフリーのマヨネーズもさらに多く、かつ増え続けている。
| 商品名 | 製造元 | 動物福祉 |
| エッグケア | キユーピー | egg free |
| GREEN KEWPIE 植物生まれ の マヨネーズ タイプ | キユーピー | egg free |
| マヨドレ | 日清オイリオ | egg free |
| マヨール ゼロプラス | 蒟蒻屋本舗 | egg free |
| 1歳からのノンエッグマヨ | オタフク | egg free |
| えごま油びより | 日清オイリオ | egg free |
| ベジタブルネーズ | ユニオンソース | egg free |
| 国産豆乳マヨ | 恒食 | egg free |
| 豆乳マヨ | チャヤマクロビ | egg free |
| オーガニック マヨネーズ | Spectrum Culinar | egg free |
| 豆乳マヨマヨビーンズ | ナチュラルファーマーズ | egg free |
| 大豆のこだわりマヨネ | ソイコム | egg free |
| 豆乳マヨ | オーサワ | egg free |
| アボカドオイル ビーガンマヨネーズ | ケー・ケンジントン | egg free |
| ソイマヨ | ナチュラルハウス | egg free |
| たまごを使わずに作ったマヨネーズタイプ | イオン (TOPVALU) | egg free |
| アルハ L&Mノンエッグハーフ | 丸和油脂 | egg free |
| アルハ L&Mノンエッグタルタルハーフ | 丸和油脂 | egg free |
| 畑生まれの豆乳マヨ | 誠晃産業 | egg free |
| 豆乳マヨ | キヨトク | egg free |
| 豆乳マヨソース | もへじ (KALDI) | egg free |
| 米マヨ | BIO-RAL | egg free |
| たまごを使っていないマヨネーズタイプ | エスエスケイフーズ | egg free |
| 日清MCTマヨネーズタイプ | 日清オイリオ | egg free |
| ノンエッグマヨネーズタイプ | ケンコー | egg free |
マヨネーズ業界は、ゆっくりではあるが確実に動き始めている。
世界最大級のマヨネーズブランドであるHellmann’sを展開するユニリーバは、長年にわたりケージフリー化を先導してきた。2018年、ユニリーバは2025年までに世界全体でケージフリー卵へ移行する目標を公表した。当時としては非常に野心的な目標だったが、このような大企業のコミットメントは食品業界全体に大きな影響を与えた。その後、多くの食品メーカー、小売企業、ホテル、レストランがケージフリー調達を約束した。
企業は慈善事業でケージフリーを進めるわけではない。消費者の価値観の変化を先取りし、企業価値、およびブランド価値を高め、企業への信頼を獲得し、ESG投資でも有利な条件を得て、企業が健全に経営できる状態に結びつけることができるからだ。
これはケージフリーに限らない。フェアトレード、女性活躍推進、環境対応など、社会的価値の変化をいち早く経営に取り入れた企業は、結果として市場や投資家から高い評価を得てきた。
アニマルウェルフェアも同じ流れの中にある。
しかし現在、ユニリーバは大きな批判にさらされている。
同社は欧州・北米では100%ケージフリーを実現している一方で、アジアやラテンアメリカを含んだコミットメントを消し、2025年には事実上、グローバルでのケージフリー公約を後退させた。
これに対し、Open Wing Alliance(OWA)は現在、強いキャンペーンを展開している。世界中の市民、動物保護団体は、一部の地域では品質の良いものを売り、別の地域では品質の悪いものを売るという不条理な地域格差を認めてはいない。後退したのは欧米以外の地域の商品の品質であるが、抗議運動の中心は欧米にある。ユニリーバは、欧米を含んだ市場で信頼を失おうとしている。
このような状況にあっても、ケージフリーの流れはもはや戻ることはない。欧米でなく、アジア、南米でも定着し始めているからだ。
ケージフリーはコストではない。
信頼への投資である。
ユニリーバが世界を動かしたのも、その価値を理解していたからだ。そして今、後退しようとして大きな批判に直面しているのも、その価値がすでに社会に定着しつつあるからである。
一方、日本はどうだろうか。
イオン、ライフ、ヤオコーのPB商品は重要な一歩だが、世界の流れと比べればまだ初期段階である。
そして、日本のマヨネーズ市場で最も重要な存在がキユーピーだ。キユーピーは現在、「2030年までにキユーピーマヨネーズに使用する卵の20%量を、国内のケージフリー鶏卵で調達する」という目標を掲げている。
しかし、日本企業全体を見ると、まだアニマルウェルフェアを積極的に価値として訴求し、その評価を企業価値へ結び付ける取り組みは十分とは言えない。
興味深いのは、その一歩を先に踏み出したのが小売企業だったことである。イオン、ライフ、ヤオコーは、自社ブランド商品としてケージフリーを消費者に直接訴求し始めている。これは、消費者に最も近い企業がすでにその価値を認識し始めていることを意味する。
変化はすでに始まっている。あとは速度の問題だ。
ケージフリーは消費者向けのブランド戦略であると同時に、グローバル市場への参加条件にもなりつつある。欧米の小売企業や食品メーカーではケージフリー調達が標準化しており、日本企業にとっても今後の国際競争力に関わる課題となる。そのため、日本企業の中には、海外ではケージフリーだが国内向け製品はケージ飼育から来た卵を使うことを容認する企業がある。だが、ユニリーバ後退とそれに対する抗議を経て、次の段階として、世界はそのダブルスタンダードを許さなくなる時が来る。以前であれば評価されていた”一部の地域でのコミットメント”が評価されない時代に突入するのだ。つまり、この課題は、時間が経てば経つほど、ハードルは上がっていくのだ。
ケージフリーはコストではない。動物への配慮であると同時に、企業への信頼を築くための投資でもある。世界の食品企業がその価値を認識して動いてきたように、日本のマヨネーズ業界にも今、大きな機会がある。良いことなら、さっさとやったほうがいい。
その方が企業にとっても中長期的な利益につながるはずだ。