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新型コロナウイルスによる世界の畜産業への影響

新型コロナウイルスによる世界の畜産業への影響

世界は新型コロナウイルスで騒いでいるが、畜産業へはどのような影響があるのだろう。
 
あちこちで外出制限のため飲食店が閉まり、スーパーマーケットで食材が買い占められている。問題は、飲食店用の食材とスーパー用ではパッケージなど形式がだいぶ違うため、ただ単に今まで飲食店へ出荷していた物をスーパーへまわすのにはシステムが成り立っていない。飲食店だけではなく、今は多くが閉まっている学校の給食や会社の食堂も同じことだ。
 

牛乳:店では売り切れ、農場では廃棄

 
農産物全てに影響があるが、畜産物の中では特に日持ちしない牛乳が一番の打撃を受けているようだ。牛乳は冷蔵が必要だし、比較的直ぐに売るか乳製品に加工しなくてはならない。肉のように冷凍するわけにもいかない。飲食店からの需要が激減したため、牛乳の送り先がなく、アメリカやカナダでは酪農場で大量に牛乳が廃棄されている*1*2。品種改変された現代の乳牛たちは、本来の10倍~20倍もの乳を作り続けるため、絞らないわけにはいかない。
 
牛乳の生産を減らすために、頭数を減らすことなども考えられているので、それは牛たちにとっては良いことになるかも知れない*2。ただ、いつか需要が戻った時にそれに対応できるように頭数を削減しない農家もいるだろう。
 
中国でも牛乳の需要が減っているため、乳業業界と政府の機関が協力して「中国国民の牛乳・乳製品の摂取ガイドライン」を発行し、新型コロナウイルスに対する免疫力を上げる為に乳製品をもっと摂るように呼び掛けている*3。特にたんぱく質が不足している人には乳製品が免疫を高めるのに有益だと主張しています。
その主張の裏付けとして一番最初に参照している論文はAgropurという酪農協同組合に資金を受けた研究なので信頼し難い4*。更に、中国人の約85%が乳糖不耐症を持っているのにも関わらず、そういう国民たちにも乳糖が除かれた乳製品の摂取や、徐々に乳糖を摂取することによって寛容することを促している*3。

 
 

畜産の厳しい状況

 
需要の減少により畜産物の先物価格が落ちている。例えばアメリカでは、新型コロナウイルスが中国で発症した1月中旬と比べ、豚肉の先物価格が約40%減少、牛肉や牛乳の価格も約30%減少した*5。失業などでお金の余裕が減っているため、比較的高価な牛肉と比べ鶏肉への影響は少ないようだ。
 

アメリカにおける動物蛋白の先物価格の変化 *5

 
 
一方、インドではコロナウイルスと鶏肉が関連しているという噂により、鶏肉の売り上げが半減し、価格も70%も落ちた*6。
 
このため畜産農家たちが厳しい状況にあるということは、この機会を通し畜産も減り、犠牲になる動物の数も減るかも知れない。
 
コロナウイルスの感染により、閉鎖する食肉処理場も次々と出てきている。
食肉大手のSmithfield社は、従業員300人近くが感染したため、アメリカの豚肉の4~5%を処理する工場を閉鎖した*7。
 

労働者からの搾取

 
従業員の中でコロナウイルスの感染者が出た全ての食肉処理場が閉鎖されている訳ではない。
多くの人々が人間は畜産物を必要とすると思い込んでいるため、多くの国々で食肉処理は「不可欠」とされ、その為の出勤が許されている。
例えばアメリカでは、コロナウイルス陽性の従業員が出た施設でも、感染された可能性のある人に熱も含め症状が出なければ食肉処理を続けられる*8。
 
コロナウイルスの感染で労働者が減っているなか、全米養豚生産者委員会(National Pork Producers Council)は、近日メキシコからのビザを殆ど拒否しているトランプ政権に移民労働者を受け入れる例外を設けることを求めている*9。
 
ブラジルでは新型コロナのパンデミックの中、JBS SAとBRF SAを含む食肉生産者を代表するABPAのロビーは、食品工場労働者の間隔を拡大することを目的とした規制を再検討するよう共同書簡で要請した。必要な最小1.5メートル(5フィート)の距離は、生産量が大幅に減るというのだ(共同書簡によると、豚肉および鶏肉の施設の平均労働者距離は0.85センチ(0.33インチ)だという)*12。
アメリカでも食肉処理場での新型コロナ感染が広がる中、トランプが操業を続けるよう要請をだしたりしている。新型コロナは、はからずとも肉産業における労働者搾取をあぶりだすことになった。
 
 
飛行機の便数が減っていることも畜産業に影響を及ぼしている。
国によっては養鶏業に使われる鳥になる卵の多くを輸入している。例えばロシアでは採卵鶏や肉養鶏の繁殖用の卵は完全に輸入に頼っていて、飛行機による運送が減り問題になっている*10。七面鳥においても似た状況だ。
養鶏業で犠牲になる鳥の数が劇的に減る希望がある。
世界中で養鶏の運営が危うくなっているため、国際家禽協議会(IPC)は国連食糧農業機関(FAO)・世界貿易機関(WTO)・ 国際獣疫事務局(OIE)に支援を求めている*10。
 
一方、ウガンダでは政府が全国の畜産物の市場を全て閉鎖した*11。
いわゆる先進国と比べて、最も賢い対応なのではないか。
この世界的危機を教訓に、人類は畜産という他の動物たちの不必要な扱いを見直すべきだろう
 

 

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