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動物を殺す目的での自衛隊派遣に勧告

2022年4月22日、総務大臣は農林水産大臣に対して、”自衛隊の災害派遣に関する実態調査”にもとづき、豚熱(豚コレラ)や鳥インフルエンザで動物を殺す際に自衛隊を派遣することにたいして是正勧告を出した。

あまりにも頻発する豚熱や鳥インフルエンザ、そのたびに自衛隊があたりまえのように派遣され、殺される豚を追い込んだり鶏を捕獲するなどの作業をさせ続けることに、多くの人が違和感を持っていたのではないだろうか。

今回の勧告の主旨は、

  • 都道府県が関係団体や市町村に協力を要請する前に自衛隊派遣を要請するケースが有り、つまりはあまりに安易に自衛隊派遣に手を出しているということ
  • 自衛隊派遣や現場での役割分担のルールがしっかり決められていないために、自衛隊への負担が高いこと

だ。

調査報告書を読んでみると、なかなかいい加減な運用がなされている。

例えば「初発事例で県が当初自衛隊に割り当てていない鶏舎まで殺処分を依頼した」事例があったといいます。どういうことかというと、自衛隊が担うと取り決められていたもの以外もついでにやってと言われたということ。これに対して自衛隊側はどうしても対応できない場合のみにしろと要望している。自衛隊を体力があって嫌なことでも文句を言わずにやってくれる都合の良い人たちのように扱っているように見える。

こんな事例も。「自衛隊との役割分担について定めておらず、家畜の殺処分の際、自衛隊が作業に入る鶏舎や作業内容を決めることになった。自衛隊は、捕鳥、殺処分作業を受け持ち、県職員はポリバケツの運搬、フレコンバックへの投入等の後方支援を行った。」取り仕切るべき県職員が機能せず、自衛隊がその場を仕切り、かつ重要な作業を自衛隊が行いなぜかメインに立つはずの県職員がサポートするという結果に・・・。別の事例でも同様に、自衛隊の善意に頼り切った役割分担がなされている。

これはもうここで取り上げる必要のないことだが、「自衛隊はシームレスな交代をしていたが、ローテーション時期に獣医等がそろわず、活動が停滞した。」という事例も・・・。私達が遠方から観察をした際にも、非常に緩慢な交代、始まらない作業、ひたすら待機する人たちが見て取れたのだが、この報告書を読むと納得する。

さて、アニマルライツセンターが問題視したい点は、最も心的負担の高い殺処分を自衛隊に任せているということだ。

命を守る立場の自衛隊が動物を殺しまくる

アニマルライツセンターでは都道府県、農林水産省に対して、自衛隊員に生きた動物を扱わせないことを求めてきた。

その理由は3つ。

  1. 動物の扱いになれない者に動物を扱わせることは、アニマルウェルフェアを低下させ、また精神的なダメージも大きくなる可能性がある。
  2. 自衛隊員のような人命に関わり、時に極限状態に置かれる可能性のある人を、と畜に関わらせ、命を奪うことに慣れさせてはいけない。
  3. 自衛隊員を、本来業務ではない畜産動物の殺処分に関わる業務に配置する事自体、違和感がある。

戦争時などには動物を殺すことで敵を殺す練習がなされたり、敵を動物に見立てることで人を殺すことに慣れさせるなどがこれまでも行われてきた。都道府県職員や畜産関係者や獣医師などの紛争地帯に立ち入る可能性のない人々と、自衛隊員では、立場が全く異なる。

自衛隊の立場を理解せず、単に体力のある都合の良い人として、殺処分を任せ続けてきたことの責任は重いように思う。

そもそも災害なのか?

調査報告書にはなぜ自衛隊が派遣されるのかも書かれていた。

特定家畜伝染病が発生した際に、都道府県がまず人員を出し、足りない場合、農林水産省、他の都道府県等からの派遣を要請し、それでも足りなければ自衛隊の派遣要請を検討するというのが、農林水産省が定めた特定家畜伝染病防疫指針(たとえば「豚熱に関する特定家畜伝染病防疫指針」)に定められている。

でもそこには自衛隊派遣をする根拠は書かれていない。

派遣の根拠になっているのは、自衛隊法の災害派遣の項目。

(災害派遣)第八十三条 都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を防衛大臣又はその指定する者に要請することができる。

「天災地変その他の災害」にあたるのかという疑問が湧く。鳥インフルエンザは近年多発しており、その根本的な原因は工場畜産にある。本来の群れの数で飼育していれば、起こり得ないものである。鳥インフルエンザが低病原性から危険な高病原性になるのは工場畜産場であることがほとんどだ。災害だと判断したとしても、人命は脅かされていないので、畜産農家の財産保護のために派遣されているということか。自衛隊というのはそういうものなのだなと驚かされる。

たんに嫌な作業、大変な作業

自衛隊員になったら派遣される可能性の高い仕事は動物を殺すこと・・・みたいなことになっているが、数々の報道にもあったように自衛隊員にとっても殺処分にかかわることは嫌なことだ。

畜産農家は農場内で度々発生する殺処分に慣れなくてはならないが、その畜産農家ですら「殺処分は従業員にはやらせられない」「従業員に殺処分をやらせるとやめてしまう」など言う。

食鳥処理場などを見てみると、生きた動物を逆さ吊りにしてシャックルに引っ掛けて殺す場所に立っているのは、ほとんどがもはや外国人という状況もある。

とにかく、嫌な仕事だから、自分ではやりたくない。ということなのだ。だから外国人にやらせているし、だから素早くなにも言わずに引き受けてくれる自衛隊に・・・ということになったとしか言いようがない。

肉を、卵を食べる人は覚えておくべきだ。自分たちが肉や卵を食べるために、心的外傷を起こす可能性のある嫌な仕事を誰かに押し付けていることを。

飼育数が多すぎる

そもそも一つの農場で飼育する数が多すぎることも、この問題の根本の原因だ。動物にとって、1万でも異常な群れの数なのに、時には100万を超える。畜産農家はひたすら数を増やしたあげくに、国の金で後始末をさせるという暴挙をあたりまえのように行っている。自分たちの手に負えない数を飼育してはいけない。

誰がやったとしても動物にとっては同じ、虐待

自衛隊に押し付けられていた殺す作業は、結局都道府県や市町村職員がやることになる。その人達も結局は畜産動物の扱いに慣れておらず、急場しのぎで集められるだけの人だ。調査報告書を読む限り自衛隊員のほうがテキパキと仕事をこなしているようであり、動物にとってはマシかもしれないとすら思う。

本当に是正してほしいところは、アニマルウェルフェアに配慮した殺処分の”適切”で”具体的”なマニュアルがないということだ。アニマルウェルフェアに配慮した殺処分は行われておらず、私達の調査でも死にきらないままポリバケツの中で動き続ける(実際にはポリバケツが動きつづける)様子が確認されている。動物に対する配慮が足りない場合、心的負担はより大きくなる。このような現場を県職員は、または農林水産省はまず是正すべきだ。

なお畜産技術協会のアニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の農場内における殺処分に関する指針(第2版)があるが、これは考え方が掲載されているものの、具体的な方法は曖昧なままであり、正直現場で役に立つとは考えにくい。さらには現場で作業に携わる人はこれを読んでいない。

そもそも、虐待的な殺処分方法を都道府県も国も容認または自ら選択して行っており、改善の兆しすらない。

そんな中で、ワクチンを打っているにもかかわらず豚熱は収束せず、鳥インフルエンザも毎年のように発生するようになっている。

畜産物の真っ黒い部分を、人々はいつまで容認し続けるのだろうか。

1 コメント

  1. 梅原ちづく 2022/05/08

    大学生の女の子に知って頂き理解して頂くのが早いと思います,

    返信

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