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経済合理性優先?高級スーパーがAW進まない理由

食品の価格高騰の話題を聞かない日はないですが、一般の商品が値上がりした分、もともと高価格帯の商品との価格差が縮まり、手が届きやすくなったと思われるのが、じつは高級スーパーの商品です。

平飼い卵の浸透に一役買っているのは、むしろ庶民的なスーパーで、平飼い卵取り扱い数の前年比が、飛躍的に伸びたスーパーもありました。現在首都圏のほとんどの有名スーパーと、アニマルライツセンターはお話し合いをして、平飼い卵などアニマルウェルフェアの推進を協力して進めているところです。

ところが一部をのぞき、いわゆる高級スーパーマーケットにはお話合いを断られることが多く、この企業の対応が、小売業全般のアニマルウェルフェア推進の足かせになっていると考えています。

もともと高級スーパーであれば、平飼い卵は高級品として1ないし2ブランドの取り扱いがあるのが普通です。しかし、それ以上増やすのが、じつは難しい現状にあるのがいわゆる高級スーパーで、そのあたりがNGOとの交流お断りの背景にあるのではと推察します。

1,流通経路が多層的・分散的

高級スーパーの多くは、商品を自社生産ではなく、卸業者や専門ブランド、地域の生産者など、多岐にわたる供給元から、創業以来の付き合いで仕入れています。これにより、NGOが「この商品を改善してほしい」と要求したとしても、しがらみ、制約感があるのだと思われます。また、契約期間中の変更が難しく、対応までに長期間かかることも理由ではないかと推察します。

このように、スーパーは見た目以上に「商品選定の主導権」を握っていないケースが多く、NGOとの対話が即対応にはつながらないという現実があります。

2,サプライチェーンの情報共有不足

複数の仕入先・加工業者を通じて商品が供給されることで、「その商品がどのような動物福祉レベルで生産されているか」という情報が、末端の店舗やバイヤーまで届いていない場合が多いと思われます。たとえばわたしたちが「もっとアニマルウェルフェアに配慮された卵を増やしてください」とお願いしても、一般スーパーと違い高級スーパーは、生産背景を把握するための体制が整っていないため、早期に判断・改善できる基盤がないのではないかとおもいます。

3,社会的価値よりも経済合理性を優先する構造的要因

アニマルウェルフェアを推進する市民団体を、軽視する傾向がある高級スーパーは、つまるところ、アニマルウェルフェアを軽視する傾向があるといわざるをえません。アニマルウェルフェア商品のなかにはいわゆる高級品もあるのに、どうしてこのような心理が動くのか?それは企業構造と収益モデルに根ざした問題があるからです。

まず、高級スーパーとは「高付加価値商品を効率的に売る」ことに特化しており、そのための判断基準は味・品質・ビジュアル・話題性など、直接的な購買意欲につながる要素です。そうなるとアニマルウェルフェアのような長期的な企業価値は、その経済的効果が短期では見えづらく、投資対効果(Return On Investment:ROI)を示すのが困難です。

また高級スーパーの多くは、大手流通グループの子会社・関連企業である場合が多く、グループ全体の方針に沿って動くため、グループ方針にアニマルウェルフェアが上がっていない段階では、方針転換しづらいという制約もあります。

さらに、高級スーパーという付加価値てんこ盛りスーパーの場合、アニマルウェルフェアという新しい社会的価値の導入は「他の付加価値とのトレードオフ」になると見なされがちです。たとえばアニマルウェルフェアに配慮された畜産品は価格が高くなるのではないかという懸念から、他のなにかの付加価値を犠牲にしなければ、従来の「高級だが手の届く」イメージから逸脱してしまうことを懸念して、あえて取り扱いを避けることもあるのでしょう。

その結果、社会的課題への取り組みは「大企業のCSR部門がやるもの」「行政や専門家が先導すべきもの」として企業活動の中心から切り離されがちで、高級スーパーの現場レベルの優先度は、極めて低くなっていると思われます。

4,管理コストと制度設計への忌避感

アニマルウェルフェアに配慮した商品展開を行うには、仕入れ先の選別、表示の変更、スタッフへの教育、消費者への説明など、店舗オペレーション全体にわたる制度設計が必要です。これは単なる一商品の追加ではなく、「流通・販売・広報の仕組みを部分的に再構築する作業」となり、コストと時間がかかります。

また、こうした取り組みは一度始めれば、継続的に更新と管理が求められるため、企業としては「一過性のプロモーションでは済まない」ことを理解しており、歴史ある老舗高級スーパーは概して硬直したオペレーションマネジメントのため、新しいことに着手するのを避ける傾向があります。

加えて、消費者や市民団体から「不十分な対応だ」と批判されるリスクもあり、そうした批判に耐える内部体制やコミュニケーション能力が整っていない高級スーパーにとっては、着手そのものが過剰な負担として映るのです。

こういった事情のある高級スーパーとお話し合いを進め、高級スーパーの企業価値を損なわないために、アニマルライツセンターには、最新の情報提供とともに以下のような準備があります。

今や、スーパーマーケットはアニマルウェルフェア推進の騎手であり、高級スーパーにも同様の対応が求められていることは言うまでもありません。高級スーパーの中に少しずつでも“社会と動物に優しい選択”を増やしていくのが、アニマルライツセンターのミッションです。そのためには、胸襟をひらき、まずお話合いをしたいと願ってやみません。そして、今回のに分析に誤りがあるとしたら、ぜひともご指摘ください。消費者のみなさんも、お気に入りの高級スーパーが、NGOとの対話に積極的かどうか確認をしてみてください。そしてまだ話し合ったことがないのなら、ぜひアニマルライツセンターとともに、アニマルウェルフェアの向上に一歩踏み出してほしいとお願いをしてください。

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