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私たちはこう考える。産業動物の飼養及び保管に関する基準へのパブリックコメント

以下は2013/7/12締め切りの産業動物の飼養及び保管に関する基準パブリックコメントでアニマルライツセンターが送付した意見です。

産業動物の飼養及び保管に関する基準(昭和62年総理府告示第22号)

▼意見1

<該当箇所>
資料5の1ページ (改正案)第1 一般原則
<意見内容>
「管理者及び飼養者は、産業動物の生理、生態、習性等を理解し、かつ、産業等の利用に供する目的の達成に支障を及ぼさない範囲で適切な給餌及び給水、必要な健康の管理及びその動物の種類、習性等を考慮した環境を確保するとともに、」を
「管理者及び飼養者は、命あるものである産業動物の適正な飼養及び保管に責任を負う者として、動物の生理、生態、習性及びアニマルウェルフェアに配慮した飼育方法等を理解し、また動物の健康が食の安全性につながることを認識し、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理及びその動物の種類、習性等を考慮した環境と広さを確保するとともに、」に修正すべき。
<理由>
他の基準同様、命あるものとすべきである。
「産業などの利用に供する目的の達成に支障を及ぼさない範囲」というのがどういう範囲なのか、改正案では明確にされていない。現代の畜産業において、動物は無麻酔で体の一部を切断され、その習性に配慮されているとはいえない環境で飼育されているが、そういった動物への扱いが、「産業などの利用に供する目的の達成に」に欠かせないという解釈になるのかどうかが、この一文では判断できない。しかし、もしそのような解釈ならば、それは誤りである。無麻酔で体の一部を切断したり、メスの豚を方向転換すらできない檻(妊娠ストール)の中に一生閉じ込めたり、肉用鶏に1㎡当たり16羽という過密飼育を強いる行為は、産業の利用に供する目的の達成に欠かせないものではない。残酷な行為をしなくとも目的は達成できるのであり、実際、畜産動物に対して無麻酔での体の一部の切断、過密飼育、妊娠ストール飼育などをしていない畜産業者もある。つまり、「産業等の利用に供する目的の達成に支障を及ぼさない範囲で」は不必要な一文であるため削除が望ましい。

▼意見2

<該当箇所>
資料5の1ページ 第2 定義 (1)
<意見内容>
「産業動物 産業等の利用に供するため、飼養し、又は保管している哺乳類及び鳥類に属する動物をいう。」を
「産業動物 産業等の利用に供するため、飼養し、又は保管している、すべての脊椎動物と頭足類、円口類をいう。」に修正すべき。
<理由>
CIOMS(国際医科学団体協議会)は医学生物学領域の動物実験に関する国際原則の中で「実験者は、人間に痛みを引き起こす処置は他の脊椎動物にも痛みを引き起こすと考えるべきである」と記している。またEU動物実験指令には「本指令には、脊椎動物に加え、痛み、苦痛、ストレスそして持続的な害からの苦痛を感じることが科学的に証明されている円口類、頭足類を含む。」と記されている。
とくに、産業動物としての利用の多い魚類については、この基準から外れるべきではない。過密飼育される魚の養殖場では魚はストレスを感じ病気になりやすいため、たくさんの水産用医薬品が投げ入れられている。また、養殖されるフグは過密飼育のストレスからお互いをかみ合ってしまうため、抜歯が行われるが、抜歯されたフグはしばらく食欲をなくすことも知られている。野生のタラは、海底付近で海草やさまざまな物体を口で操って多くの時間を過ごすが、養殖されるタラには、そのような機会が無いので、タラは仕切りの魚網をかじってこの欲求を満たそうとすることも報告されている。また、OIE(世界動物保健機関)は水生動物衛生規約のなかで「養殖魚の安楽死の方法」を記している。

▼意見3

<該当箇所>
資料5 1ページ 第3 産業動物の衛生管理及び安全の保持
<意見内容>
「産業動物の衛生管理及び安全の保持」を
「産業動物の衛生管理、健康及び安全の保持」に修正すべき。
理由
家庭動物、展示動物、実験動物の基準においては、「健康及び安全の保持」と記載されている。産業動物だけこのように分け隔てることは、産業動物への愛護意識の普及の妨げとなる。経済動物である前に、感受性のあるかけがえのない命であり、このような差別化はすべきではない。
さらには衛生状態と健康が密接に関連があることは周知の事実であり、かつ、動物の福祉と動物の健康にも密接な関連があることも、OIEでも認められている考え方であるため。

▼意見4

<該当箇所>
資料5の1ページ 第3 産業動物の衛生管理及び安全の保持 2
<意見内容>
「管理者は、産業動物の飼養又は保管に当たっては、必要に応じて衛生管理及び安全の保持に必要な設備を設けるように努めること。」を
「管理者は、産業動物の飼養又は保管に当たって、電気・ガス・水道が停止した際、生存が困難になる動物を飼育する場合は、動物の生存を維持するために必要な、自家発電機などの装置を備える、火災の原因となる電気系の設備点検を定期的に行い消火器などの消火設備を設置する、など必要に応じて産業動物の衛生管理、健康及び安全の保持に必要な設備を設けなければならない。また災害時にスムーズな動物救護が行える施設構造にしなければならない。」に修正すべき。
<理由>
2012年の、動物の愛護および管理に関する法律の一部を改正する法律案に対する付帯決議において、この法律の施工するにあたって留意する点として、「十 被災動物への対応については、東日本大震災の経験を踏まえて、動物愛護管理推進計画に加えて地域防災計画にも明記するよう都道府県に働きかけること。また、牛や豚等の産業動物についても、災害時においてもできるだけ生存の機会を与えるよう尽力し、止むを得ない場合を除いては殺処分を行わないよう努めること。」とされている。
東北大震災では、原発20キロ圏内に鶏が40~60万羽、豚は30000万頭、牛は3000頭いたとされるが、その多くが金網の中に閉じ込められたまま、あるいは囲いの中で餓死していったのであり、人が避難して2ヵ月後、まだ生き残っていた畜産動物数千が殺処分されたのである。未曾有の大災害であったとはいえ、二度とこのようなむごいことを起こしてはならない。また養豚業者の勉強会では、停電で換気扇がとまって豚が窒息死し、何百頭も死んだという報告が何度も出されているという実態があり、緊急時対策は、畜産動物の安全保持に欠かせない。
ペット、実験動物、展示動物に比べ、畜産動物の数はずっと多いのであり、災害時対策については、特に基準に明確にすべきである。
また、家庭動物、展示動物、実験動物の基準においては、「健康及び安全の保持」と記載されている。産業動物だけ「衛生管理」と記すことは、産業動物への愛護意識の普及の妨げとなる。経済動物である前に、感受性のあるかけがえのない命であり、このような差別化はすべきではない。

▼意見5

<該当箇所>
資料5の2ページ (改正案) 第3 産業動物の衛生管理及び安全の保持 5
<意見内容>
「管理者及び飼養者は、その扱う動物種に応じて、飼養又は保管する産業動物の快適性に配慮した飼養及び保管に努めること。」を
「管理者及び飼養者は、『アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針』及び国際獣疫事務局(OIE)が定める動物福祉に関する指針を参考に、その扱う動物種に応じて、飼養又は保管する産業動物の快適性に配慮した飼養及び保管に努めること。」に修正すべき。
<理由>
国際的に畜産動物の福祉への取り組みが進められる中、日本においても2011年に畜産動物の、『アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針』が策定されており、「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」の改正案においても、(7) 産業動物の適正な取扱いの推進、の中で「我が国では各畜種について民間の取組により「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」が既に作成されているところであり、その普及啓発を進めていく必要がある。」と記されている。現時点で多くの畜産業者はこの指針を認知しておらず、普及させるためにも、この指針の存在を、産業動物の飼養及び保管に関する基準の中に明記すべきである。さらに、国際的なアニマルウェルフェアの動向に対応するため、OIEの定める指針への対応が必要である。

▼意見6

<該当箇所>
資料5の2ページ 第5 危害防止 3
<意見内容>
「管理者は、地震、火災等の非常災害が発生したときは、速やかに産業動物を保護し、及び産業動物による事故の防止に努めること。」を
「災害対策として、管理者は、関係行政機関との連携の下、地域防災計画等との整合を図りつつ、地震、火災、津波等の緊急事態に際して採るべき動物の救護および避難場所、飼料の備蓄などに関する計画をあらかじめ作成するものとし、管理者は、地震、火災等の非常災害が発生したときは、速やかに産業動物を保護し、及び産業動物による事故の防止に努めること。」に修正すべき。
<理由>
展示動物、実験動物の基準においては、災害などの緊急時に採るべき措置に関する計画をあらかじめ作成するよう、記載されている。産業動物のみ計画の作成が不必要な理由はない。

▼意見7

<該当箇所>
資料5の1ページ 第3 産業動物の衛生管理及び安全の保持
<意見内容>
以下の項目を付け加えるべき。
「飼養・管理者は、「『5つの自由』(①飢餓と渇きからの自由、②苦痛、傷害又は疾病からの自由、③恐怖及び苦悩からの自由、④物理的、熱の不快さからの自由、⑤正常な行動ができる自由)を、飼養動物に対して保証しなければならない。」
<理由>
「5つの自由」は、国際的に認知された概念であり、命あるものに対して最低限確保されなければならない自由である。現在の産業動物の置かれている状況は程遠く、動物が命あるものである以上、改善を促すためにひつようであるため。

▼意見8

<該当箇所>
資料5の2ページ 第4 導入・輸送に当たっての配慮 3
<意見内容>
「産業動物の輸送に当たる者は、その輸送に当たっては、産業動物の衛生管理及び安全の保持に努めるとともに、産業動物による事故の防止に努めること。」を
「産業動物の輸送に当たる者は、その輸送に当たっては、できるだけ短時間に輸送できる方法を採ること等により、産業動物の疲労及び苦痛をできるだけ小さくし、輸送中には必要に応じて適切な給餌及び給水を行うとともに、適切な換気及び通風により適切な温度及び湿度を維持すること。さらに、と畜されるものであっても、輸送時に恐怖やストレス、不快を与える状況に置かず、産業動物の衛生管理及び安全の保持に努めるとともに、産業動物による事故の防止に努めること。」に修正すべき。
<理由>
家庭動物、展示動物、実験動物の基準においては、輸送時の取り扱いについて、上記のような基準が記されている。長時間の輸送、不適切な換気などでストレスを感じるのは、産業動物も一緒である。
さらにと畜されるものであることを前提としているためか、動物同士が重なり合い詰め込まれた状態で輸送されていることが見られるが、これは動物の衛生状況、食の安全の上でも不適切であり、基準への明記が必要である。

▼意見9

<該当箇所>
資料5の2ページ 第4 導入・輸送に当たっての配慮
<意見内容>
以下の項目を追加すべき。
「産業動物を生きたまま輸出入することを禁止する」
<理由>
長距離の輸送は動物に大きな負担を与える。世界動物保健機関(OIE)は2005 年に畜産動物の地上輸送、海上輸送、航空輸送について福祉規約を定めており、その第一条で「最短にすること」が規定されている。日本は繁殖用などに毎年牛と豚だけで1万頭以上を輸入しているが、人工授精等による繁殖技法がある中、生きたまま輸出入する必要性はない。

▼意見10

<該当箇所>
資料5 全体
<意見内容及び理由>
動物についての議論が希薄であり、さらにOIEの基準との兼ね合い、TPPによる影響など、畜産業界の変動が予測され、5年後までこのままの最小限の基準であり続けることは現実的ではない。
よりアニマルウェルフェアを取り入れた明確な基準を設ける必要性があり、議論を続け、随時かいていしていくことが必要である。
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