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除角が牛に与える苦痛

牛同士の突き合い防止、管理者の安全性といった観点から牛の除角が実施されています。日本における除角の割合は、「肉用」に飼育されている牛が59.5%*6、「乳用」の牛の85.5%*6となっています。
牛の角には神経も血液も通っており、除角は痛みを伴いますが、除角の際に麻酔を使用する農家は「肉用」牛の場合は17.3%*、「乳用」牛の場合は14%*6で、多くの場合が麻酔なしで行われています

除角の時の牛の痛みは相当なもので、失神してしまうこともあります。動画をみると除角が牛にとってどのようなものであるかが一目瞭然です。

角の切断後に焼きゴテで止血されることもありますが、切断されて血が噴き出した箇所に焼きゴテを当てられるのですから、その苦痛ははかりしれません。
農家のなかには、止血のために焼きゴテをあてるのは牛に無用の苦痛をあたえるだけではなく、化膿の原因にもなるという人もいます*10。
除角のショックで人嫌いになる牛もいるほどです。それだけではなく、首を固定した状態で大きな恐怖と苦痛を与えることで、頚椎脱臼・骨折などでショック死させてしまうこともあります。

除角は必要なものではない

牛に苦痛を与える除角は絶対に必要な処置ではありません。現に国内でも乳牛農家の13.5%*6、肉牛農家の39.5%*6が除角を行っていません。狭い牛舎の中での過密飼育をせず十分な広さを用意し、放牧して牛のストレスを軽減すれば除角の必要性は下がるはずです。牛にとってより良い選択は除角を行わないことであるのは間違いありません。しかしそれでも除角の必要があるのであれば、角カバーを使用することもできます。

▼牛の角カバー

全農畜産サービス株式会社は「牛の角カバー」を販売しており(3頭分2500円ほど)、このカバーを使用すれば牛の角の切断は必要ありません。
http://www.zcss.co.jp/sizai/yougyu-rakunou/usi14-1.html

子牛の若い時期に除角したほうが痛みが少ない

どうしても除角をするのであれば、できるだけ早いほうが良いと言われています。アメリカ獣医医学会その他多くの団体や機関が、できるだけ若い段階での除角を推奨しています*7。これは子牛が痛みへの感受性が低いということではなく(子牛であっても痛みに敏感であることが示唆されています*8)、角が成長してしまってから断角器で切断するよりも、まだ角が萌芽の段階で除去したほうが牛に与える痛みが少ないと考えられているからです。日本でも農水省サイトに掲載されている「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」に、生後2ヶ月以内の除角が推奨されています。

しかし実際には、乳牛では45%、肉牛では85%が3ケ月齢以上で除角されています*6。

▼なぜ痛みの少ない、若い時期に除角しないのか?

除角をすると成長に悪影響が出るという認識がいまだ残っているためだと言われています。
しかし実際には、角(質,色)と肉質の相関性は低いとされ、生後間もない早期(2週齢~2カ月齢内)に除角する事によって、肉用牛管理の安全性、競合緩和による損傷の減少,肉質の向上,群管理の効率化などの経済効果が確認されています。

黒毛和種子牛について生後2週齢、2カ月齢、5カ月齢、9カ月齢に除角を行い、各々の除角にかかる労力性、除角牛の増体性、行動型、血液性状について調査を行った。 結果、労力性は2週齢除角において最も省力的かつ短時間に処置が可能であった。2週齢除角においては、増体性に特に影響が無く、行動型の逃避反応性も早期に除角前とほぼ同じになり、また血液性状から炎症反応、ス トレス反応も少なかったことより、牛体への影響が少なかったと思われた。このことから、肉用牛農家で早期除 |角を行えば省力的で肉用牛管理においても、安全性が期待でき、人と牛との関係も早く改善されると考えられた。
(「黒毛和種における早期除角の労力性および牛への増体性、行動、生理に及ぼす影響」山口県畜産試験場研究報告 (17), 79-83, 2002-03 )

できるだけ痛みの少ない除角の方法

ストレスに応答して放出されるコルチゾールは除角で増加します*8。前述のとおりできるだけ若い時期に、する方が牛の苦痛は少ないと言われていますが、若い段階であっても成長した段階であっても、痛みを伴います。また、除角するツールですが、国内では焼きゴテ、断角器、除角ペースト(腐食性軟膏)、電気焼烙器などが使用されていますが、種類のいかんを問わず牛に痛みを与えます。ですので、麻酔や鎮静剤での痛みを抑える処置が求められます。後述のとおり、日本の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」においても、麻酔薬や鎮痛剤等を使用することが望ましい、とされています。

麻酔を使用することで、増体も期待できます。北海道根室地方で獣医師が始めた保育預託牧場を運営するトータルハードカーフサービス(別海町)では、局所麻酔薬や鎮静剤などを使用し、牛にストレスを与えない除角方法を取り入れています。牛にストレスを与えないので、除角後の採食量低下を軽減し、増体や成長を阻害せず、除角する作業者にとっても安全な方法だということです。医師の処方が必要で、薬剤費は1頭あたり除角ペースト法が500円以下、焼きごて法で1000円以下*9。

▼どのツールを使えばより苦痛が低いか

焼きゴテ、断角器、除角ペースト(腐食性軟膏)、電気焼烙器のどの方法を使用すべきかですが、角が成長してから使用される「断角器」が日常的に使用されるべきものではないことは明らかですが、それ以外のどの方法がより苦痛が少ないのかについては意見が分かれています。除角ペースト(腐食性軟膏)が苦痛度が低いとする研究もある*7一方で、オーストラリアの基準は除角ペースト(腐食性軟膏)を使うべきではないとしています*11。

除角の規則

▼肉用牛

OIE(世界動物保健機関)の動物福祉基準「アニマルウェルフェアと肉用牛生産システム 」
ii) 除角(角芽の除去を含む)
肉牛は、怪我や皮革の損傷を減らし、人間の安全性を向上し、施設の破損を減らし、輸送と取り扱いを容易にするため、一般的に除角される。生産方式に応じて実用的かつ適切な場合、除角より、角のない牛を選抜する方が望ましい。生産者は、肉牛を除角する必要がある場合、牛の種類と生産方式に応じて最適な方法と時機について獣医顧問(アドバイザー)から指導を求めなければならない。
牛は、実用的な場合、角が発達初期の蕾の段階、またはこの年齢を超えて最初に飼養する機会に除角すべきである。これは角の発達段階において角芽の状態であれば、組織的外傷を最小限にでき、角が頭骨に接していないからである。
発達初期における除角の方法には、刃物による角芽の除去、熱による角芽の焼灼、角芽焼灼のための薬剤塗布を含む。角の発達が始まった後の方法としては、頭蓋骨に近い基部で切削または鋸によって角を除去する方法がある。
生産者は、特に年を取って角が成長した牛について、鎮静または麻酔の利用可能性や妥当性について獣医師に指導を求める必要がある。
肉用牛の除角を行う技術者は、用いる処置について訓練を受けて適切な能力を有し、合併症の徴候を認識できなければならない。

日本の指針「アニマルウェルフェアの考え方に対応した肉用牛の飼養管理指針」
③ 除角
肉用牛の角は繋留時に役立つ等の面があることから、除角を行わないこともある。
しかし、牛は、飼料の確保や社会的順位の確立等のため、他の牛に対し、角突きを行うことがあり、けがの発生、流産等の原因となる。また、けがやストレスによって肉質の低下に繋がることもある。そのため、除角は、牛の攻撃性を低下させ、不要なけがの発生や流産等を防ぎ、また、牛の角によって、管理者が死傷するといった不慮の事故を防止するうえで有効な手段と考えられる。
除角を行う際は、獣医師等の指導の下、牛の健康状態をよく観察した上で離乳時期等と重ならないよう配慮する等、牛への過剰なストレスを防止することとする。
実施に際しては、角根部を触ると角がわかるようになる時期以降に、また、除角によるストレスが少ないと言われている焼きごてでの実施が可能な生後2ヶ月以内に実施することが推奨される。また、子牛市場からの導入後に除角を行う場合は、可能な限り苦痛を生じさせない方法により行うこととし、必要に応じて麻酔薬や鎮痛剤等を使用することが望ましい。
また、除角の実施後は、牛を注意深く観察し、化膿等が見られる場合は、速やかに治療を行い、その実施方法を再度チェックすることとする。
なお、化学的薬品(ペースト)を使用する場合には、角以外の場所や他の牛に薬品が付着して火傷等を起こさないよう、特に注意する必要があるとともに、生後2週間以内に実施することが推奨される。

▼乳用牛

OIE(世界動物保健機関)の動物福祉基準「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」
i) 摘芽及び除角
有角の乳用牛は、乳用牛の損傷及び革の傷を減らし、人の安全性を向上させ、施設への損害を少なくし、輸送及び取扱を円滑化する目的で、一般的に摘芽又は除角される)。無角牛の選択が、除角よりも望ましい。
若齢段階で除角を実施することは、高齢牛を除角するよりも好ましい。
訓練を受けた技術者による適切な施設での角芽の焼烙は、手技後の痛みを最小限に抑える目的において、推奨される方法である。これは、角芽が頭蓋骨に付着する前の適切な月齢で実施されるものとする。
牛のタイプ及び生産システムにとっての最適な方法及び時期に関し、獣医師又は動物看護士の指導が求められるものとする。麻酔及び無痛法の使用は、摘芽を実施する場合には、強く推奨されており、除角する場合には、
常に使用されるものとする。適切な保定のためのシステム及び行為が、摘芽又は除角する場合には求められる。
除角のためのその他の方法には、刃物による角芽の除去及び角芽を焼烙する化学軟膏の塗布がある。化学軟膏を使用する場合には、当該仔牛の他の部位及び他の仔牛に対し、化学熱傷を与えるのを避けるため特別な注意が
払われるものとする。この方法は、2 週齢を超える仔牛には推奨されない。
手技者は、使用される方法に関し、訓練を受け、有能であって、痛み及び過剰な出血又は膿瘻感染等の合併症の徴候を認識することができるものとする。
角の発育が始まった場合の除角の方法には、頭蓋近くの角の基部を切断又はのこぎり引きすることによる角の除去がある。

日本の指針「アニマルウェルフェアの考え方に対応した乳用牛の飼養管理指針」
③ 除角
牛は、飼料の確保や社会的順位の確立等のため、他の牛に対し、角突きを行うことがあり、けがの発生、流産等の原因となる。除角は実施することで牛の攻撃性が低下することから、特に舎内で群飼を行う場合に、不要なけがの発生や流産等を防ぐ有効な手段と考えられる。また、牛の角によって、管理者が死傷するといった不慮の事故を防止するためにも重要な処置である。
除角を行う際は、牛への過剰なストレスを防止するため、可能な限り苦痛を生じさせない方法をとることとし、必要に応じて獣医師等の指導の下、麻酔薬や鎮痛剤等を使用することが望ましい。実施の時期は、確実な処置を行うために角根部を触ると角がわかるようになる時期以降に、また、除角によるストレスが少ないと言われている焼きごてでの実施が可能な角が未発達な時期(遅くとも生後2ヵ月以内)
に実施することが推奨される。
また、実施後は、牛を注意深く観察し、化膿等が見られる場合は、速やかに治療を行い、その実施方法を再度チェックすることとする。
なお、化学的薬品(ペースト)を使用する場合には、角以外の場所や他の牛に薬品が付着して火傷等を起こさないよう、特に注意する必要があるとともに、生後2週間以内に実施することが推奨される。

各国の除角の規制

  • オーストラリア
    いくつかの州と準州では、12か月以上の牛の断角は、獣医師により行わなければ違法*1。
  • イギリス(イングランド)
    断角は麻酔薬を投与する必要があり、除角は、6ヶ月以上経過していない動物でのみ行うことができる。除角方法が化学的焼灼である場合は7日齢以下の牛にのみ行うことができる*2。
  • カナダ
    肉用牛の除角と断角を行う場合の要件として、獣医師の指導を受け、有効な疼痛管理の方法と助言を求めること。」「角がまだ芽の段階(一般的に2~3か月まで)の間に、可能な限り早く除角すること。」とされている。また2016年1月1日からは、角の芽が付着してしまった後で角を断つ場合には、獣医との相談して、痛みを和らげるコントロールをすること」となっている*3。
    乳用牛の場合は、要件として「除角と断角の時は痛みをコントロールしなければならない」「断角の時は出血のコントロールをしなければならない」とされている*4。
    要件:規制上の要件、または容認できる行為・できない行為を概説した業界に課せられる期待のいずれかを指し、動物のケアに関連する基本的な義務である。要件は、これらの措置が、少なくとも農場での動物のケアを担当するすべての人々によって実施されるべき合意のもとにある。 評価プログラムの一部として含まれる場合、要件の実施に失敗した者は、業界団体によって是正措置を強制されるか、市場での選択を喪失するリスクがある。 また、連邦および州の規制の下で、要件が強制力を持つ可能性がある*5。

*1 The Australian Veterinary Association Management of horned cattle species
*2 The Mutilations (Permitted Procedures) (England) Regulations 2007
*3 Code of Practice for the Care and Handling of Beef Cattle
*4 The Code of Practice for the Care and Handling of Dairy Cattle was released in 2009.
*5 Codes of Practice for the care and handling of farm animals
*6 2014年 飼養実態アンケート調査報告書 http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/index.html
*7 http://www.dehorning.com/
*8 Impact of dehorning and disbudding on the well-being of calves E.Mainau, D.Temple, X.Manteca
*9 日本農業新聞(2016.4.19)を参照
*10 現代農業2013年5月号参照
*11 Meat & Livestock Australia Dehorning and disbudding

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