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飼育密度が異常、日本の採卵養鶏場

動物愛護管理法には「飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること」が罰則として規定されている。しかし、この規定は機能しておらず、異常な過密飼育が日本では横行している。肉用鶏の過密飼育も世界と比較して異常値であるが、今回は採卵鶏の異常っぷりを解説する。

日本の採卵養鶏場の飼育密度

日本最大の養鶏企業(※2022年に経営破綻し会社更生法を申請)の飼育密度は285㎝2/羽である。これは15㎝✕19㎝だ。鶏の大きさはそんなに小さくはなく、つまり鶏の大きさよりも小さい面積しか与えていない。

別の業者はメディアに対して360㎝2/羽であると述べており、これでも鶏の大きさよりは小さいと言える。

当然ながら鶏が自然な行動をすることは一切できないし、かならず檻か別の鶏にぶつかり続けることになる。

このような状態になる。

1つ目の養鶏場は1羽あたりの面積が285㎝2である。1⃣

なんの空間もない。まさにギュウギュウ詰めでこの中で24時間400日~600日間一度もここから出ることなくご飯も食べて糞もして寝ることを繰り返す。この中には8羽が入れられている。

下の写真は同じ養鶏場の別のケージだが、ここには9羽入れられている。上の写真よりもケージに入ってから日数が経っているため、鶏たちはみんなぼろぼろになっている。上記の8羽でもギュウギュウ詰めであるにも関わらず追加で1羽入っているのだから鶏たちは相当なストレスと身体への影響を受けたはずだ。

別の養鶏場を見てみよう。2⃣下の写真もウィンドレスの鶏舎。通常ならこの大きさのケージの場合は4~5羽を入れている養鶏場がお多いのだが、ここは8羽入れている。弱い鶏の場合、仲間の間から顔を出すことすら、苦しそうになんとか顔を出すといった状況であった。鶏たちのとさかは薄ピンクになっているが、このケージの中で最も弱った鶏のとさかはもはや白というか黄土色になっていた。

別の養鶏場、3⃣これは開放鶏舎であるため自然の採光がある。しかし開放鶏舎の場合一つの鶏舎に1~2羽を入れてとにかくそのケージ自体を小さく仕切る。体の幅ギリギリの状態のケージに2羽詰め込んでいる。1羽がご飯を食べようと思ったらもう1羽は必ず奥に移動しなくてはならないが、前後を入れ替えるのもお互いの体に乗り合ったりしなければ入れ替わることができない。こんな状態では24時間だって過ごしたくないはずだ。

1羽あたりの飼育スペースが少し大きめの養鶏場を見てみよう。4⃣生協などによっては開放鶏舎で飼育スペースを大きくしているというところもあるが、そのようなケースがこれだ。いずれにしても羽根は広げられず、また社会性があり群れで暮らす動物を個別に飼育することに問題がある。

日本では1羽あたりのスペースを決めるのは生産者自身

日本には、畜産動物たちを守る法律が動物愛護管理法しかなく、その中では畜産動物個別の条項がないため特に何も規定されていない。犬や猫にはある最低面積の規定が畜産動物にはないのだ。最底面積の規定は欧米はもとより、韓国の法律などを見てみてもしっかりと規定されている。

日本では1羽の鶏に何平方センチメートルのスペースを与えるかを決めるのは、この養鶏場のオーナーだ。オーナーが動物の苦しみに理解がなく、目先の自分の利益だけを考え、動物に一歩の譲歩もしないような性格であれば、1⃣~3⃣の写真の養鶏場のような飼育スペースの小ささになる。非常に残念なことに日本の養鶏場のほとんどが、海外の養鶏場の半分以下の面積に鶏を詰め込んでいる。同じケージでも、日本の飼育は劣悪なのだ。

世界の飼育密度と比較、日本は異常

世界はどの程度の広さで鶏を飼育しているのだろうか。

ここでは”ケージ”に限定する。

世界の動物保護団体はいつも”ケージの中で鶏はたったA4サイズしか与えられない”と言っている。A4サイズというのは623.7cm2である。日本の飼育スペースと比べるとずいぶん大きい。最大手養鶏場の2倍以上ある。

EUは2027年にはケージ飼育がすべて禁止される予定であるが、現時点では750㎝2を与えなくてはならない規定になっている。

韓国も同様に750㎝2を与えなくてはならない規定になっている。新設された養鶏場はすべてこの規定に沿わなくてはならず、また2025年8月31日までにはすべての鶏がこのスペースを享受できるようになる。

これらは日本の一般的な飼育の倍である。

米国オレゴン州は2012以降バタリー建設禁止され2024年からすべてのケージ飼育が禁止されまたオレゴン州内ではケージ飼育された卵の売買が禁止になるが、現時点ではケージ飼育されている場合は2012年以降建築された場合750cm2以上でなくてはならないとされている。その前の規定では2004年以降建築:平均値430cm2以上(白色レグホン)、490cm2以上(褐色産卵鶏) とされていたが、これでも日本の現在の飼育面積より広い可能性が高い。

日本の卵の生産がもはや異常だと気が付かなくてはならない。世界の動物保護団体が、ケージ飼育はこんなにひどいと映像を暴露するたびに、日本の動物保護団体であるアニマルライツセンターは絶望する。その映像に映し出されているのは、日本より広い面積を与えられている鶏たちだからだ。ケージ飼育はどれも悲惨だし、多少の面積があっても鶏たちは死んだほうがマシと評価されるほど苦しい。しかし、それでもなお、せめて世界の水準と同じくらいは広くしてあげてほしいと思うのだ。

日本政府の曖昧さが足を引っ張る

畜産技術協会のアニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針では「③ 飼養スペース 鶏1羽当たりの飼養スペースについては、死亡率を調べた海外の知見等からは、 430~555 ㎠とすることが推奨されるが、必要な飼養スペースは、飼養される鶏の品 種(系統)や鶏舎の構造、換気の状態、ケージのタイプ、鶏群の大きさ等によって 変動する。 そのため、適切な水準について一律に言及することは難しいが、重要なのは、管 理者及び飼養者が鶏をよく観察し、飼養スペースが適当であるかどうかを判断する ことである。 スペースが過密な場合は、鶏にとってストレスとなり、羽つつきの発生や死亡率 の増加、生産性の低下を招き、逆に、余分なスペースの追加も羽つつきが発生する原因となることが知られている。」と規定されている。

今やこの時代に、世界の動向として「430~555 ㎠とすることが推奨」されているなんてことはあり得ないことであり、意図的なミスリードである。しかも日本の養鶏場の多くはこの面積すら達成できていないのだから、絶望的である。

農林水産省が新たに策定している採卵鶏の飼養管理に関する指針(案) では「飼養スペースが過密な場合は、鶏にとってストレスとなり、羽つつきの発生や死亡率の増加、生産性の低下を招き、逆に、余分なスペースの追加も羽つつきが発生する原因となることが知られている。必要な飼養スペースは、飼養される鶏の品種(系統)や鶏舎の構造、換気の状態、ケージのタイプ、鶏群の大きさ等によって変動する。」などと書かれているにすぎず、余分なスペースが一体どの程度を指しているのかも謎である。これでは広いスペースでは羽つつきが発生するように受け取られ、虚偽としか言いようがない。なお、羽つつきがなぜ発生するのか、また発生を抑制する方法を研究した論文はたんまりあるため、この1文で終わらせるのではなく、しっかりエビデンスを示しながら対処方法を明記したほうが生産者のためにはなるのだろう。

鳥が環境ストレス要因に対処するのが困難な状況で発生しやすい採餌行動ができる環境、餌の繊維質の多さによりつつきが減少するフェザーペッキングはサラサラした良質な敷料の欠如と関連があり敷料に早期(幼少期)にアクセスできる環境では羽つつきが減る幼少期にケージで過ごした鶏はフェザーペッキングが発生しやすい などざっと出てくるので気になれば検索してみるのが良いだろう。その中に、ケージの中のスペースを狭くすれば羽つつきが減るからそうしようなどという馬鹿げた研究者は世界にはいない。

飼育スペースを広げると生産性が落ちて経営ができない??

飼育スペースを広げれば、生産者は利益が減ると主張する。しかしこれもまた、正確ではない。

飼育システムをケージのままで飼育スペースを世界水準である750㎝2まであげようとするとたしかに同じ面積で飼育できる羽数は減る。しかし、その鶏舎をケージフリーにした場合、生産性は落ちないケースが有る。1段、2段ケージの養鶏場である。ケージ飼育の場合、積み上がったケージの間に必ず人間が通る1m以上ある通路が用意されているが、これがスペースを食っているのだ。ケージフリーの場合はこの通路はいらないため、1段、2段ケージの養鶏場であれば飼育面積を広げながらケージフリーにし同じ羽数を保つことができ、しかも少し付加価値をつけて売ることができる。

ひたすら大規模化を目指してきた6段、9段と重ねているような鶏舎はもはや問題外であまりにがめつくやりすぎているため、単純に動物に配慮しコストを払う必要が有ることは間違いない。これまで動物への配慮をゼロにしていたのだから、そのくらいのコストがかかるのは当たり前だろう。もちろんそのコストは動物の苦しみによって安さを享受してきた消費者も一緒に担うべきだ。

なぜ日本が畜産動物の保護が最低ランクになるのか、それは明確に”動物への配慮がない”からである。

企業はこのような日本の飼育からきた卵をそろそろ見直さなくてはならない。

なお、ケージフリーの飼育も飼育面積の規定は大変重要であり、多くの国がその最低面積の規定を持っていて日本にはなくケージでもケージフリーでも日本の畜産物を信じてはいけないことには変わりはない。ただし、平飼いや放牧の養鶏場の場合、自ら適正な飼育面積を規定し公表している農家も多く、またケージの広さは規定していないのにケージフリーだけは規定しているような食品を仕入れる側の企業もある。そのような農家や企業のケージフリーの卵は優先されるべきだろう。

また消費者や企業は、卵を食べる量を減らす、卵が入っている賞品を買わない、マヨネーズはエッグフリーにする、加工品から卵を抜くなどの選択も鶏たちを救う一つの助けになる。

5 コメント

  1. kamisomeya yuzu 2022/09/21

    想像はしていたが、ここまで酷いとは思わなかった。平飼い農家を支えたいという気持ちで定期的に平飼い卵を購入する。ただ、卵の価格には大きな幅があるが、その理由が消費者には分かりにくい。だから主に6個¥200弱の商品を選ぶことになる。こんなに安価で人件費、餌代、設備維持費を賄えるわけないだろうと思いながら。

    返信
  2. ruru 2022/09/24

    命を頂いているのに、こんなに酷い扱いとは正直驚きました。
    もっとこういう扱いなのを知らせるべきです。
    素人が生意気ですが、物価が上がり、色んなものが高くなっているけど値段が上がってもいいからもう少し環境を整えて欲しいです。

    返信
  3. ee 2022/10/01

    ピュアな人を騙すための感情に訴える綺麗事である。
    こういうの書く人に限って毎日肉を食べ、廃棄し、肥えてます。

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  4. Natu 2022/11/13

    心が淋しい人ですね。

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  5. 吉村皓一 2023/03/05

    1500万羽の鶏が殺処分されたと言う。養鶏場の過密飼育と不可分の問題だ。日本のバタリー飼育はEUでは違法である。メディアはアニマルウエルフェアについて報道するべきだ。
    吉川貴盛元農水省が500万円で買収されたのはアニマルウエルフェアを日本に持ち込まないようにするためだった。日本には未だ、動物の権利と言う観点が欠けているとしか言いようがない。他の生物の命を戴いて命を繋いでいると言う事を子供のうちから教えて行かなければならない。

    返信

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