
ブルボンは1924年(大正13年)に創業し、日本を代表する菓子メーカーとして多くのロングセラー商品を生み出してきました。歴史的には前年に関東大震災があり、ブルボン創業者は、被災地の復興を目の当たりにしながら、傷ついた子供と家庭に夢を与える、同社の使命を実感したといいます。しかし当時の菓子原料の枯渇は想像を絶する状況で、まさにブルボン社創業の歴史は、材料と商品の安定供給体制を築くための、苦難と挑戦の連続だったのです。
そののちのブルボン社は、国内に堅実強固な流通網を構築し、ビスケット、チョコレート、米菓、洋菓子など幅広い商品を展開し、世代を超えたファンを獲得してきました。さらに周知のとおり、アジアや欧米を中心に海外進出も着実に進めています。
特に近年は、価格に対して品質が非常に高い“コストパフォーマンスの良さ”が海外で評価されており、訪日外国人観光客の「日本土産」としてもブルボン商品は人気が高まっています。
独自性のある味、安定した品質、包装の丁寧さが、国境を越えて支持を得ている理由だそうです。
こうした国際的な支持基盤を持つ企業にとって、サステナビリティ、特にアニマルウェルフェア対応はブランド価値と直結します。海外市場向けには、国際基準に沿った調達が求められるため、ブルボンのアニマルウェルフェア方針の明確化は、世界戦略上も不可欠な一歩と言えます。
世界では数百社を超える食品企業が「2025年までにケージフリー卵へ移行」をコミットしており、日本でも有名外資ホテルが、次々と対応を進めています。
注目すべきはアジアでも大手企業を中心に、ある意味では国を挙げて、ケージフリー化が急速に拡大しています。この「2025年」の節目に、ブルボンがケージフリー方針を公的に記載したことは、日本企業の中でも先進的であり、海外からも注目される動きです。
ブルボンが掲げる「5%」は世界基準からすれば控えめです。しかし、国内の菓子大手でケージフリー方針を公式文書に記載した点は、産業界に対するインパクトが大きいと言えます。
特に、ブルボンは卵を使用する焼き菓子やチョコレート菓子を多数展開しているため、原料切り替えの労力は決して小さくありません。
それでも平飼い卵への移行に踏み出し、「拡大する」と明言したことは、食品サプライチェーン全体に変化を引き起こし得る重要なステップです。

『統合報告書2025』では、
「動物福祉は人間の健康に関係する」
「サプライチェーン全体で取り組む必要がある」
と明確に記載されています。
これは、単なる調達基準の変更ではなく、企業文化や経営価値観の方向転換を意味しています。国際市場で戦うブルボンにとって、アニマルウェルフェアは“品質の一部”として扱われ始めていると言えるでしょう。

ブルボンの動きには、以下のような大きな意義があります。
・国際市場での信頼性向上
・国際水準の品質向上
・国内食品企業における新しいアニマルウェルフェア基準値の提示
・長期的ブランド価値の向上
・ESG投資を獲得し、日本ブランド全体に良い影響を与える
とりわけ、外国人の購入動機の上位には「安全性」「品質」「倫理性」が含まれるため、ケージフリー化はブルボン商品の“日本を代表するお土産”、さらには日本を代表するお菓子としての価値をさらに高めるポテンシャルを持っています。
“ケージフリーは世界の最低ライン”となった現在でも、日本の平飼い卵の調達事情は決して楽観視できるものではありません。しかし、あの関東大震災時にスタートをきったブルボン社なら、厳しい環境下を生き抜くこれからの子どもと地球の未来のために、サステナビリティを掲げる不動の先駆者とならんとすることに納得ができます。何より動物たちのことを考えると、同社がリーダーシップを発揮し、持続可能で倫理的な食品業界づくりを牽引していただくことを期待してやみません。