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動物の命の絶望的軽さ。畜産業者の要望で畜舎が建築基準法から外れる

社会は良くなっている、なんて感じている人はいるだろうか。

日本の畜産業者による畜産動物たちへの扱いやそれに合わせた国の動きを見ると、日本社会がますます悪くなっていっていることは間違いないようだ。

動物への暴力と人への暴力は隣り合わせでつながっているが、人々はそのことに気がついていないようで、動物への扱いの酷さ、命の軽視、差別は悪化の一途をたどっている。

今回農林水産省が改正を提案したのは、鶏や豚や牛などの畜産動物を収容する畜舎を、別の特例の法律を作って、建築基準法から除外して、畜舎をもっと安く作れるようにしようという法律だ。建築基準法とは「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的」としており、つまり、崩れたり危険なことにならない最低限の基準を定めたものだ。これを緩和するために特例法をつくるという。そしてそれは4月21日衆議院を通過し、5月には参議院を通過してそのまま改善もなく成立する見込みだ。
特例の緩和策は、法律が成立後に農林水産省が省令で決めるため、詳細はわからないが、日本の基準ではなくより甘い海外の基準のものを取り入れてOKにするということなどが見込まれる。

地震大国の日本で!大きな畜舎を建てるコストを安くしたいために、安全を犠牲にするというわけだ。

「畜舎等での作業は、人の滞在時間が少なく、ほとんど牛しかいないのに、安全マージンが大きすぎると感じる。」など、人が少しの時間しか居ないんだから安全基準を緩めよという内容で、この言い分が農林水産省の資料に繰り返し出てくる。

問題は2点。

1:人が滞在する時間が少ないからというのが緩和の理由になっているが、つまり人が死ぬ確率が低いしいいか。というものだ。

2:農林水産省の資料、畜産業者の主張というものには、そこに動物が常時閉じ込められていることを一切無視している。言い換えれば「動物は死んでもいい、補填もされるし」という非人道的な改正と改正理由である。

その恐ろしい考え方をもはや隠そうとすらしていないのだから、絶望的と言える。

大きな地震があったら崩れる可能性あり

事業者はA基準とB基準(結構緩めたもの)を自分で選べとしている。A基準は建築自体は建築基準法と同等で手続きを簡略化しただけだが、ただし将来は建築も緩められるかもしれないからA基準で申請しておいたらいつか建築もゆるくできるかも、というもの。

しかしB基準は建築自体ゆるくていいよ、というものだ。しかも、農水省の資料には小さくこう書いてある。

例えば震度5強程度の地震では倒壊しないが、震度6強から7に達する程度の地震では倒壊するおそれを否定できない基準

田村貴昭議員(福岡)は、衆議院農林水産委員会でこの耐震性の問題について指摘し、震度6強の揺れというのがどの程度のものなのか、また震度6強以上の地震の頻度を気象庁に質問した。

震度6強の揺れとは?

震度六強の揺れにおける人の体感、行動は「立っていることができず、はわないと動くことができない。」また、「揺れにほんろうされ、動くこともできず、飛ばされることもある。」とされている(気象庁 森地震火山部長)

震度6強の地震の頻度は?

平成8年(1996年)以降、日本付近で発生した地震で、震度六強以上を観測した地震の回数というのは20回

つまり、25年間で20回、立っていられなくて這わないと動けず、人もふっとばされることもあるような地震が起きているのが日本という国だ。

2016年熊本地震がそれに該当しているが、このとき、畜産動物は325,387頭羽が斃死し、12,305件の畜舎が倒壊し、504.7億円の損害が出ている*1。農業用ハウスの損傷が945件の比較すると随分高い割合で倒壊しているのではないか。
なお、これらの畜産業者は、国の保険に入っていれば被害は補填される。この国の保険には年間850億円が費やされている。でも動物の命は戻らないし、動物が味わった苦しみも取り消せない。

建築家はなんと言っているのか

田村議員はさらに、農水省が開催した3回だけの検討委員会での建築家の意見を引用して、危険性をさらに指摘した。

建築技術系の委員から次のような発言がされているところです。現行法でもかなり緩和されており、私ども専門家からしても、正直、限度だと思っております、こう指摘されています。別の委員からも、畜舎基準の低減率があり、既にかなり落としているというところで、正直、これ以上落とすのは無理だと建築の専門家は大体思う、低減の数値を見ると、これはもう限界値だろうと思っている、こういう発言が次々とされているわけであります、検討委員会で。

議事録*2を見てみると、「私どもも告示のいろいろな低減の数字を思いますと、これはもう限界値だろうと思っています。これ以上で何ができるか。」と懸念を示している。

金子恵美議員(福島)と串田誠一議員(神奈川)も、動物たちの命が蔑ろにされていることを指摘している。また、アニマルライツセンターから野党議員にお願いをし、付帯決議にはアニマルウェルフェアの文言を入れてもらうことができた。尽力いただいた神谷議員、亀井議員、堀越議員、藤田議員には心から感謝したい。

それでも、今後畜舎は大規模化し、安価に安全性低く畜舎が建てられていく。この業界側の思惑を止める力を市民にはないようだ。

[ 衆議院の付帯決議 ]

三 家畜の能力が引き出され、家畜が健康になり、生産性の向上や畜産物の安全につながるアニマルウェルフェアに配慮した家畜の管理の普及促進のための指導、支援を充実させること。

この法律で機械化が進んだらアニマルウェルフェアも叶うなどと農林水産省は述べたが、この法律の趣旨にアニマルウェルフェアは一切入っていない。この法律は乳牛や肉牛などを中心に資料が作られているが、事実、農林水産省の資料には乳牛のつなぎ飼いをなくすような意図は一切なかった。

「人の滞在時間が少なく、ほとんど牛しかいないのに、、、」という主張自体もアニマルウェルフェアから真逆に進んでいることがわかる。動物にかける時間、動物を観察する時間、動物をケアする時間はほとんどないと自ら告白している。

そもそもB基準で畜舎を建てること自体、動物を苦しめることをいとわないということに等しい。確率の問題であろうが、建築基準法から外れ、安全基準の低いものにしてしまおう、安くするために、という意図なのだ。従業員がたまたま中にいた場合のリスクと、畜産動物が常時居て倒壊すれば必ず怪我をして死ぬというリスクを気にしない畜産業者が、どれほどいるのか。今後私達は監視を続けなくてはならない。

災害が起きるたび、畜産動物だけが数十万単位で死亡する、これは人為的なものだ

*1 平成28年(2016年)熊本地震の農林水産業関係被害の状況 https://www.maff.go.jp/j/saigai/zisin/160414/kumamoto/taiou.html
*2 https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/l_tiku_manage/attach/pdf/index-98.pdf

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