世界は着々と鶏をケージの外に解放する準備をととえている。鶏はケージの中にいるべきではないことは世界の共通認識になりつつある。
遅れを取っていたのが我が国日本と、世界で最も採卵鶏を飼育する中国だ。その中国も、中国の業界紙が2023年の中国養鶏業界の1年の言葉は「ケージフリー」と報じただけのことはあり、急速にケージフリー養鶏を拡大させている。大規模なケージフリー養鶏場が増えたことがこの数年の出来事と言える。またそれらの養鶏企業は大幅に増加させる計画も立てて発表しているのだ。そうすることで、食品企業は将来の調達目標を掲げやすくなり、中国国内のケージフリーの取り組みは加速していくだろう。
中国の鶏卵大手である四川省の圣迪乐村 非笼养项目(产业链 Sundaily)は、2025年1月に、30万羽のケージフリー鶏舎を竣工した。今後3~5年で100万羽に拡大することも発表している。中国最大のケージフリー鶏舎であり、今後もケージフリー市場を独占していく勢いだ。
しかもサンルームがあるようで、アニマルウェルフェアが通常の平飼いより高いことを伺わせる。
四川省新徳農牧有限公司は、2020年からケージフリーに取り組み始め、2023年には認証付きのケージフリーで78000羽を飼育し、毎年確実に増加させ、2025年には187000羽に増加させている。特許取得済みの「三段階放し飼い」モデル(平飼い鶏舎+サンシェード+森林放し飼いエリア)を採用しており、高いアニマルウェルフェアを実現させている。なお、ここの養鶏場、ISO9001品質マネジメントシステム、ISO22000食品安全マネジメントシステム、ISO45001労働安全衛生マネジメントシステム、ISO14001環境マネジメントシステムを取得している。果たして日本にそんなクオリティの高い(かつそれを第三者認証で取得している)ところがあるだろうか・・・
韶关市土大妈南岭家禽养殖有限公司—民丰山基地(Tudama)は、2024年に地元政府とともに20万羽のケージフリー養鶏プロジェクトを開始した。ここでもセットになっているのがカーボンニュートラルであり、持続可能な養鶏としてケージフリーを位置づけている。”生食可能な日本やEUさんの卵よりも高品質”であることを豪語しており、ここのブランド「ハッピーエッグ」では産卵鶏1羽につき、少なくとも4平方メートルの屋外スペース、1平方メートルあたり6羽以下の飼育密度、少なくとも4種類の飼料、清潔な砂浴び場、アクセスしやすい高い止まり木、そして1日6時間以上の日光が供給されているという。米国発祥のCertified Humane Raised and Handled®の認証も得ている。将来的に、放し飼いを20万羽、平飼いを30万羽、合計50万羽以上を飼育する予定だそうだ。
2022年には、山西 偏关永奥は20万羽のケージフリー鶏舎を稼働させている。「自然の摂理に適合し、動物の本性を尊重する」理念を持っていると報じられている。
ケージフリー認証のサイトによれば、は20万7千羽のケージフリーの鶏を飼育している。
ケージ飼育鶏舎を作る際にケージフリー飼育を加えて建築する事例など、中国でもまだ迷いはみられるものの、もはやケージフリーは”特別な選択肢”ではなく、畜産の未来であることは確かだ。そして今後はケージフリーがアニマルウェルフェアの始まり、持続可能な畜産の始まりとなるのだ。
さらに、紹介した大規模な事例の多くが、屋外エリアが含まれる放牧であることも重要な点である。日本のようなウィンドレス鶏舎でその光を一切与えず、不健康な鶏にしてしまってアニマルウェルフェアを損なう取り組みは指示されていないことがわかる。
日本はもう少しだけでも焦るべきだ。質も量も、明らかに遅れを取ってしまっている。日本には20万羽規模のケージフリー養鶏場はまだ1件しか無いのが現状だ。徐々に増やしているものの、市場のニーズを満たすことは難しくなっており、とくに将来のコミットメントを出すための安心材料になれるほどのケージフリー飼育が足りない状態が続いている。