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養鶏場 鶏を生きたまま燃やす

2017/01/04

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(2016年日本のバタリーケージ養鶏場で撮影 焼却された鶏の骨)


年間出荷700万羽規模の養鶏場で、鶏を生きたまま燃やしていることが分かりました。

2016年4月 アニマルライツセンターに、複数の養鶏場で、鶏が生きたまま焼却されているという通報がありました。
養鶏場には「死鶏焼却炉」を設置しているところがあり、中には一日に50~60羽もの鶏を焼却している養鶏場もあります。

そういった養鶏場では、すでにケージの中などで死んでいる鶏を焼却する場合もありますが、首が曲がるなど体が変形していたり、足が折れていたり、産卵率が悪いなどの理由で、淘汰(殺処分)された鶏を焼却することもあります。
その場合はもちろん適切な方法で安楽殺を行った上で、炉に入れて焼却するものと私たちは認識していたので、この通報があった時は、にわかには信じがたい思いでした。

しかし通報者の話には信ぴょう性があり、複数の農場を対象に調査を進めていました。
そして2016年9月20日に採卵鶏の育雛を行う大規模養鶏会社(以下A養鶏場*1)の保有する農場の一つで、鶏が生きたまま死鶏焼却炉の中に投入されているところを目視で確認しため、同日の19時ごろ県警察に通報しました。

生きた鶏が焼却炉に投入された時点では、焼却炉に火は入っていませんでした。その後、日が暮れるまで点火されなかったため、おそらく翌朝点火し、焼却がおこなわれるものと推察されました。

私たちの通報を受けて、県警察が現場に到着しA養鶏場の社長を呼び出し、社長立会いのもと焼却炉の入り口を開けたところ、入り口付近にいた一羽の鶏が生きていることがわかりました。
しかし、炉の奥の方までは確認されませんでした。死鶏焼却炉の投入口の大きさはとても小さく、20㎝四方程度しかありません。ペットボトルや弁当ゴミなども一緒に投入されている為、それらのゴミを取り出さなければ炉の中全体を見ることはできません。本来なら中のものをすべて取り出し、他にも鶏がいないか、そしてその鶏の生きていないかどうかの確認が行われるべきでしたが「伝染病予防のため」というA養鶏場社長の意見で確認されませんでした。

A養鶏場の規模からいって、焼却炉の中には他にも鶏がいた可能性が高い、と私たちは考えています。
作業者がペットボトルやゴミをぎゅうぎゅうと押し込むように詰めている姿も何度か確認していたので、焼却炉の中は相当パンパンになっていると考えられます。入り口付近にいる一羽を確認できたとしても、ゴミに埋もれたその奥がどうなっているのかまでは分かりません。それに鶏が鳴き声で知らせてくれることもありません。鶏は日が暮れるとおとなしくなり、鳴かなくなるからです。

県警察の「トラブルを避けたい」との意向から、私たち自身は現場近くに控えてはいたもののA養鶏場の社長と対面させてはもらえませんでした。また焼却炉はA養鶏場の敷地内にあるため、焼却炉の中を見ることもできませんでした。

しかし少なくとも一羽生きていることが分かった以上、このまま翌朝まで水も餌もない炉の中に閉じ込めて、生きたまま焼却するという残虐な行為は看過できません。私たちは「鶏を私たちに引き渡すか、あるいは直ちに安楽殺するか」のどちらかを選択してほしいと、県警察を通してA養鶏場の社長に求めました。

しかしA養鶏場の社長はそれに応じず、どちらも実行するつもりはないと言いました。あとで警察に聞いたところ、A養鶏場の社長は、「焼却炉に入れて殺すことは問題がない」という認識だったそうです。

県警察は長時間説得を続けていましたが、社長は応じず、生きた鶏を焼却炉の中に放置したまま、車で立ち去ってしまいました。
私たちのところに戻ってきた県警察は焼却炉がA養鶏場の敷地内にあるので「これ以上何もできない」と言いました。

しかし焼却炉の中にはまだ生きた鶏がいます。このままだと明日の朝焼き殺されてしまいます。「生きたまま焼き殺す」のは一般常識からしても許されない行為ですし、動物愛護管理法の罰則対象にあたるはずです。警察をもってしても「これ以上何もできない」ということがあるのだろうかと、私たちは弁護士に電話をしてアドバイスを仰ぎました。

弁護士の話は、犯罪には事前と事後があり、事前の場合は「警察が犯罪行為を止めさせるために実力行使をしてほしい」と頼むことしかできない(*2)というものでした。つまり実力行使するか否かは警察の判断にゆだねられます。
警察が実力行使をしないということになれば、事後(焼き殺された後)に、動物愛護管理法44法の「みだりな殺傷」に当たるということで告発するしか、私たちには残されていません。

県警察には、実力行使してほしいと重ねてお願いしましたが、「これ以上何もできない」「捜査(*3)をしてこういった殺処分方法が適切かどうか判断しないと動けない」の繰り返しで、A養鶏場の社長に直接嘆願したいという申し出も「できない」と言われました。
対象が動物、しかも最も社会的立場の低い産業動物の鶏であれば、警察の動ける範囲もこれが限界だったのかもしれません。

警察官は立ち去り、私たちもまもなくその場を離れました。焼却炉の中の鶏が生きたまま焼かれようとしているのを知りながら、私たちにはそれを見殺しにしてしまうことしかできませんでした。

A養鶏場は1949年に設立されています。どれだけの期間、何羽の鶏が生きたまま焼却炉に投入されてきたのかは分かりません。しかし「焼却炉に入れて殺すことは問題がない」という認識であったことから、生きたまま焼却炉で焼き殺すことが日常化していたことをうかがわせます。

人間の経済活動に一方的に利用する動物に対して「焼き殺す」というひどい仕打ちが行われるのだろうかと信じがたい思いですが、バタリーケージという非人道的な装置に鶏を閉じ込めることが常態化している今の日本において、生きたまま焼き殺すという行為が横行していても、不思議はないかもしれません。

しかし日本にも法律や基準などが存在します。
 

鶏を生きたまま焼き殺すのは犯罪


■動物の愛護及び管理に関する法律(一部抜粋)
第四十条  動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない。
第四十四条  愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。


生きたまま焼き殺すという行為にはなんら正当性はないみだりな殺害であり、犯罪行為です。また、次のような環境省告示も存在します。

■動物の殺処分方法に関する指針(一部抜粋)
殺処分動物の殺処分方法は、化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法によること

生きたまま焼き殺すという行為は社会的に容認されている通常の方法とは考えられません。
また、法的な拘束力はないものの、日本における畜産動物のアニマルウェルフェア指針として、農水省も関わり普及に努めている次のガイドラインも存在します。

■アニマルウエルフェアの考え方に対応した採卵鶏の飼養管理指針(一部抜粋)
⑤ 病気、事故等の措置
けがや病気については、日常の飼養管理により未然に発生を予防することが最も重要であるが、けがをしたり、病気にかかったりしているおそれのある鶏が発生した場合は、可能な限り迅速に治療を行うこととする。なお、治療を行っても回復の見込みがない場合や、著しい生育不良や虚弱な鶏は、適切な方法で安楽死の処置をとることも検討することとする。


この指針の「動物の付録(1)の(参考)には下記の記述もあります。
 
第3 処分動物の処分方法
6.産業動物
(3)食肉生産以外の処分動物の処分方法
病気等により治療、回復の見込みがないと獣医学的に判断された動物、何らかの理由で飼養続行ができなくなった動物などの処分方法は、その状況によって異なることはもちろんであるが、できる限り処分動物に苦痛を与えないという観点から、安楽死用薬剤の投与、頸椎脱臼、断首等の処分方法を用いる。




 
*1 A養鶏場は、採卵用の鶏が成鶏に達する120日齢くらいまで雛をそだて、それを採卵養鶏場へ出荷する育雛事業を行っています。5県にまたがり事業所を展開する、規模の大きいバタリーケージを使用する養鶏場です。
*2 警察官職務執行法(犯罪の予防及び制止) 第五条 警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞があつて、急を要する場合においては、その行為を制止することができる。
*3「捜査」は犯罪の事後に行われるものです。


 

動物愛護担当部署

翌日9月21日、管轄の動物指導センターへ、A養鶏場への指導を要請。
動物指導センターへ事実関係を伝え対応をお願いしていたところ、9月30日に動物指導センターと管轄の家畜保健衛生所がA養鶏場を訪問。しかし、この訪問に対して、警察の現場検証(写真も撮影)があったにもかかわらず、A養鶏場側は「生きたまま焼いていない」と答弁したという。
前日の警察による現場検証についても動物指導センターには伝えていたため「嘘だと指摘してくれたか」聞いたところ、「自分の目で鶏が焼き殺されているのを確認していないので、嘘だと指摘することはできなかった。」
しかし「生きたまま焼くという行為は虐待に当たる」ということは伝えたとのこと。

家畜保健衛生所

10月4日、家畜保健衛生所に「アニマルウエルフェアの考え方に対応した採卵鶏の飼養管理指針」をA養鶏場に渡すよう要請。
家畜保健衛生所は個々の畜産農家とつながりの深い部署。生きたまま焼き殺してはいけないと認識してもらうために、「アニマルウエルフェアの考え方に対応した採卵鶏の飼養管理指針」をA養鶏場に渡してほしいと頼んだところ、「この指針の存在をA養鶏場に伝え、なるべく指針に沿ってやってくれという話はしたが、指針は法的なものではない。家畜保健衛生所は家畜衛生管理が担当であってアニマルウェルフェアは担当ではない。」
つまりアニマルウェルフェアの指針を渡したり、人道的な扱いをするよう指導したりなどはできない、という回答であった。
だが、「家畜保健衛生所がアニマルウェルフェアを担当する部署ではない」というのは正確ではない。農水省からこの指針の通達が各自治体の畜産部に通達されており、家保は自治体直属の部署であり、アニマルウェルフェアに取り組む意思があるのならばそれを遂行できる立場にあるからだ。つまりアニマルウェルフェアが家畜保健衛生所の担当部署になるか否かは、その家畜保健衛生所がアニマルウェルフェアに取り組む意思があるか否かにかかってくる。

自治体の畜産部

10月4日、A養鶏の所在する自治体の畜産部にこの指針を畜産農家に周知しないのか問い合わせたところ、『農水省から通達は来ているが指針を実際に各農家に渡すのは生産者団体(養鶏団体など)の役目。畜産部と家畜保健衛生所の役目は、その補佐的なものにすぎない。』との考えであることが分かった。つまり当該家畜保健衛生所も当該畜産部も、畜産を担当する部署ではあるがアニマルウェルフェアについて主体的に動くつもりはないということだった。

警察

10月7日、A養鶏場が生きたまま焼き殺すという行為を廃止する明確な意思を見せないのであれば告発する旨を伝え、警察に指導を要請した。
11月2日、警察の担当者と直属の課長がを訪問したとの連絡があった。「よくわからないまま訪問しても仕方ないので、法規制など調べていて対応が遅れてしまった、申し訳ない」と言い、A養鶏場の対応について下記の通り説明があった。
A養鶏場側は社長と役員、現場の人、数名が同席。警察側は「昔と今は違う」と伝え、鶏を扱う企業としてアニマルウェルフェアの認識がなければいけないと指導。A養鶏場側は「4人くらい死鶏焼却炉の中に入れる係がいる。そのものたちに『殺してから炉にいれるよう』指示徹底した。」「トラックの鶏配送業者が殺すのを嫌がって殺処分せずに炉に入れることもあったようだ。殺せなかった鶏は別の容器に入れて担当者が殺して焼却処分するように徹底させた。」

関係団体への要望

2017年2月18日 日本養鶏協会に「農場内における鶏の殺処分・補鳥作業時の留意事項」資料発送
その後、公益社団法人畜産技術協会一般社団法人日本養鶏協会に面会し、意見交換をした。
補鳥作業については、ケージから運搬ケースへ鶏を移動させる際の叩きつけるような暴力的な方法だけでなく、運搬ケースの乱雑な扱いにより鶏の足がちぎれたり首が挟まって死亡したりしている例を示し、出荷から食鳥処理場へ到着するまでの鶏の扱いについて問題提起した。日本養鶏協会からは当協会の会員である出荷業者と、話合う旨を約束していただいた。
農場内での鶏の淘汰方法については、生きたまま焼却死、ビニールに入れて窒息死、水につけて水死、餌も水も与えず放置死などが行われていることを説明し、人道的な淘汰方法を求めたところ、こちらも日本養鶏協会から当協会の会議の際に議論をする旨を約束していただいた。
意見交換を通じて、生産者団体としても、鶏への扱いを改善していきたいという思いがあることが分かった。

また、国内で死鶏焼却炉(死んだ鶏を燃やす焼却炉)を販売する業者9社に対しても、死鶏焼却炉の販売サイト、資料、装置仕様書などに下記二点を記載していただきたいと要望。
・頸椎脱臼などの適切な方法で殺処分された鶏を入れること
・鶏は『動物の愛護及び管理に関する法律』における愛護動物であり、意識のあるまま焼却炉に入れることは、処罰の対象になり得ること

9社のうち2社から回答があり、残り7社からは回答が得られなかった。
回答があった内の1社は「養鶏業界に於ける反発をうけ弊社の存続が危ぶまれます」という理由から記載が難しいとのこと。もう一社は「これから商談などの際にはご指摘の部分を配慮し、合法的な使用を推進、確認の上、販売していきたいと思います。しかしながら販売サイト、各種資料などは、製造元で管理されておりますので、弊社の判断で変更修正することが出来ません。恐れ入りますが製造元の方へ、ご依頼をお願い致します。」との回答であった(製造元へも要望済)。


***************

A養鶏場が焼死させなくなったとしても、それで問題は解決しない。
農場内で動物を殺処分する際にどういった方法があるのか、マニュアルもなく、人道的な方法も普及しておらず、各農場で思い思いのやり方で殺処分が行われているからだ。

私たちが把握しているだけでも、
  • ビニール袋に入れて窒息死
  • 床に叩きつけて殺す
  • ケージにまとめて入れて水死させる
  • 獣医に診せず死ぬまで放置

等の方法が実施されているのが実態だ。

現場で証拠をつかむことができた大手育雛養鶏業者には、警察などへの働きかけによるこの方法を廃止してもらうことができた。ケージに入れてまとめて水死させていた養鶏業者とは、意見交換をして、人道的な方法への切り替えをすることを約束していただくことができた。しかし国内に数千戸ある養鶏場を見張り、証拠を集めひとつひとつ改善要望をしていくことはできない。
養鶏業界全体の意識の改革が必要だ。

 

責任は養鶏業者だけにあるのではない

鶏へのこの残虐な暴力の責任を養鶏業者だけに負わせても、問題は解決しない。
消費者は、養鶏業者にこういった暴力を行わせているのは畜産動物福祉(アニマルウェルフェア)に目を向けず、大量生産の安い畜産物を購入し続ける消費者自身でもあるということを自覚しなければならない。
そして、畜産振興を推進する国や行政は、国内で行われている畜産動物への暴力に対して責任を持たなければならない。法的枠組みも必要だ。
私たちNPOも、畜産動物の苦しみを少しでも減らせるよう、努力を続けていかなければならない。
社会全体で、この問題に真剣に取り組まなければ、鶏へのこの残虐な行為を廃止させることはできないだろう。


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(2016年日本のバタリーケージ養鶏場で撮影 焼却された鶏の骨)
 

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