鶏の屠殺方法の改善を。

2017/03/19

現在日本での鶏の屠殺方法(食鳥処理)は、コンテナに詰め込まれてきた鶏(卵用であっても、肉用であっても)をシャックルに足をひっかけて逆さ吊りにし、良ければ電流の流れる水槽(電気水槽式スタナー)に頭を浸けられて意識を失わせ、悪ければなにもせずに意識のあるまま、首(頸動脈)を切り、失血死させたのち、熱湯につけられる。
苦痛を軽減するために、本来なら電気やガスなどで意識を失わせた後で首を切るべきだが、そのような処置なしでいきなり首を切ったあとで、放血を促す、暴れるのを抑えるなどと言った目的で電流をあてるというところもある。

EU指令では気絶処理なしで首を切るという行為は容認されていないが日本にはそのような法規制はないのだ。
 

欧米ですすむ改善と日本ですすまない改善

欧米では少なくともこの電気水槽式スタナーが概ね使用されており、より人道的なControlled Atmosphere Killing(CAK)またはControlled Atmosphere Stunning(CAS)といったガス殺方法も広まっている。さらに、最も異なる点としては、CAKやCASにとどまらないより人道的な方法の研究を行うべきという意識があり、さらには人道的な屠殺の方法や現在の屠殺の方法の問題点についての研究や議論が活発に行われている。これは豚や牛などでも同様で、より改善を重ねようという研究が行われ続けている。

屠殺という作業は肉や卵や牛乳を作る産業と商品には必須であるにも関わらず、偏見や差別が前に出てしまい、タブー視され行われてきていないことが、日本の最も大きな問題である。動物福祉に配慮されるということは、それは動物にとっての苦痛を減らすだけでなく、人権にも配慮するということであり、不当な偏見や差別がある日本でこそより一層進められるべき分野であるはずだろう。
議論すらされない日本では、やはり動物福祉の改善が大幅に遅れている。

ガスによる屠殺とは?

ガスにさらして鶏の意識を失わせ(あるいは殺し)たあとで頸動脈を切断して放血する方法のことである。

これまでの研究から、潜在的に適切なガスは、二酸化炭素、アルゴン、窒素に絞り込まれている*2。

  1. 40%以上の二酸化炭素に曝露する
  2. 40%以下の二酸化炭素に暴露し意識を失わせた後で、高濃度の二酸化炭素に切り替える二層式
  3. 二酸化炭素と不活化ガス(窒素・アルゴン)の混合物に暴露する
  4. 不活化ガス(窒素・アルゴン)に暴露する


1の方法はEU指令においては、家禽を食用目的で通常屠殺する際の使用することは許されていない。それは高濃度の二酸化炭素が多くの動物に呼吸困難を引き起こすためだ。高濃度の二酸化炭素は急速な無意識を引き起こすが、高カルシウム血症や低酸素のために窒息や行動興奮の兆候が見られるなど嫌悪感を有することが示唆されている*4。
そのため、2の方法が推奨されている(EU指令においても2の方法は通常屠殺として許されている)。
一部の科学者は、2の徐々に二酸化炭素を増加させる方法のほうが1よりも福祉的だと考えている。しかし徐々に二酸化炭素を増加させるというのは無意識に導くまでに時間がかかることを意味し、鶏はこの間呼吸困難の様子を示すため、必ずしもこの方法がよいとも言えない。
より人道的な方法は不活化ガスを使用した3や4の方法だろう。

3や4のようなアルゴンまたは窒素といった不活性ガスは、麻酔性を有するが、高圧下でのみ生じる。不活性ガスへの曝露は、鳥類における進行性の低酸素症をもたらす。哺乳動物や鳥類は不活性ガスの化学受容体を持たず、そのようなガスと接触すると嫌悪感を経験しないため、動物福祉の観点から不活性ガスが望ましい場合もある。
しかし、後の研究では、不活性ガスを使用して気絶した鳥は、低酸素の結果として激しい羽ばたきや痙攣などの悪影響を経験している可能性があることが示されている。一部の研究者は、二酸化炭素の吸入による呼吸不快感は不快であるが、不活性ガスを使用して低酸素症を引き起こす場合には、羽ばたきの羽ばたきと関連する外傷のリスクが依然として高いと主張している*3。

低気圧耐圧(LAPS)による屠殺とは?

これは、鳥を密閉されたチャンバー内に置き、真空ポンプにより大気圧が低減させる方法のことである。研究は、LAPSが体腔で調整できる速度で体減圧が起こる場合より人道的で、無痛に無意識の状態にすることができることを示唆している*5。しかしEFSA(欧州食品安全機関)はこの方法を調査し2014年に「LAPSで使用された減圧率が、家禽の痛みや苦痛を引き起こすことなく無意識および死亡を誘発するかどうかは不明である。」とする報告*6 を出しており、ガス殺同様この方法もまだ研究の必要がある。
この方法は現在(2017年時点) 米国の1つの大規模加工工場で商業的に使用されている*1。

いずれにしてもこれらの方法は、日本で一般的に行われているガスや電気によるスタニング無しの屠殺に比べて、鶏の苦痛がずっと少ないのは間違いない。そして、意識のある状態で懸鳥作業が行われないことも動物福祉上の大きな利点である。
 

電気水槽式スタナーの問題点

世界的に一般的な電気水槽式スタナーにも多大な問題点があり、CAKやCASへの切り替えが望まれている。
その問題点とは、
1:意識のあるまま懸鳥され逆さ吊りにされる

  • 生きている鶏を輸送用コンテナから出したり懸鳥するさいに、鳥を投げたり落としたり叩きつけたりする虐待が発生している
  • 足が破損することもある
  • 金属製のシャックルに足を引っ掛けられる事自体に苦痛がある
  • 鳥には横隔膜がないので、逆さまの鳥の内臓の重さが呼吸が制限され苦しむ
  • 日本も批准しているOIEコードでは「骨折又は脱臼した鳥は、加工のためのシャックルに掛けられる前に、苦痛を与えることなく殺処分されること」とされているが、現在の日本で到着した鶏の骨折や脱臼のチェックはなされていない


2:意識を失わせることができないケースがある

  • 複数の鶏が水につけられることにより、個々に電流を受ける強さが異なるという。そのためすべての鳥が死ぬまで意識を失い続けるために十分な電流を受けるとは限らない
  • パニックで翼をばたつかせている場合、頭を水につける前に羽などを通し感電させられ、無用な痛みが発生する可能性がある
  • 鳥が、逃れようと頭をもたげているときに水槽を通過すると、感電させないままに首を着られたり、熱湯につけられたりすることがある。
     

この割合は4%であり、100羽のうち4羽が適正に失神できていないという
※EFSA, 2012. Scientific Opinion on the electrical requirements for waterbath stunning
 

アニマルウェルフェア以外の利点

イギリスmoy park社(処理場、KFC社の取引先)では
「鶏が落ち着くように荷受では青い光を使っており、鶏の鳴き声などほとんどなく静かに対応していた。スタニングにはアルゴンと窒素と二酸化炭素の混合ガスに2分45秒暴露していた。懸鳥時にはすでに鶏は死亡していた1年半前までは電気バスによるスタニングを使用していたが、ガススタニングの方が鶏にも懸鳥するスタッフにも負担が少なく、さらに骨折や傷物率も減り、AWへの配慮が実益にも結び付いたことだった。放血の状態を確認したところ放血(頭ごとの切断)後、1羽当たり55ミリアンペアの電流を流して筋肉を弛緩させることで、放血もきちんとできるとのことだった。」(鶏肉卵情報 2014.10月号)

諸外国ではガス殺への切り替えが進む

すでにイギリスの家禽の71%がガス殺による屠殺に切り替わっているという*7。企業の動きはさらに早く、マクドナルド、サブウェイ、スターバックス、北米有数のレストランチェーンの一つであるRestaurant Brands International(バーガーキングとティム・ホートン)、カナダ最大のレストラン会社CARAなどがCASへの切り替えを発表している。



電気水槽式スタニングすら行われていないことの多い日本、つぎに設備投資をするのであれば、この問題がすでに指摘されている電気水槽式スタナーではなく、CAKまたはCASシステムの導入が行われるべきだろう。

そして、まずは失神処理が行われていない割合や方法、と畜場到着時の骨折、脱臼、衰弱、化膿性皮膚炎や死亡の数の把握と報告など、実態が把握され、この議論が日本社会できちんと始まるべきだ。

国政にご意見を

アニマルウェルフェアに配慮し、動物の苦痛を軽減した畜産を推進するよう農林水産省に意見を。
http://www.maff.go.jp/j/apply/recp/index.html
屠殺を所管する厚生労働省に、屠殺場での動物福祉に取り組むよう意見を。
http://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/sanka/koe_boshu/



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*1 Humane Slaughter: Broiler Chickens-compassion in food business
*2 Gas Killing of Chickens and Turkeys-human slaughter association 2005
*3 A Review of Different Stunning Methods for Poultry—Animal Welfare Aspects (Stunning Methods for Poultry) 2015
*4 EU Regulation Changes View on Stunning at Slaughter-the poultry site 2013
*5 What is Low Atmospheric Pressure Stunning (LAPS)?-SPCA 2017
*6 Scientific Opinion on the use of low atmosphere pressure system (LAPS) for stunning poultry
*7 Animal Welfare at Slaughter Improving in UK the sheep site 2015

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