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OIEが日本に「畜産動物の輸送および屠殺について、法律に組み込む」ことを勧告

2016年10月11日から26日にかけて、OIEのPVS評価(Evaluation of the Performance of Veterinary Services:獣医サービスの能力評価)が実施されました。評価項目の中にはアニマルウェルフェアも入っています。

この評価結果が、2018年7月27日に、OIEのHPにて公表(OIE PVS Evaluation Reports)されたことを受け、農林水産省のHPでも公表されました。農林水産省のHPではアニマルウェルフェアの評価が3であったということしか分かりませんが、OIEのHPには179枚からなるレポートが公表されています。

評価が3であったアニマルウェルフェアについて、OIEは次の6点を勧告しています。

勧告

・ OIEの動物福祉コードの勧告を見直し、特にまだない畜産動物輸送および屠殺について、適切に国の法律、基準または政策文書に正式に組み込むこと

・ 動物福祉、特に畜産動物の福祉について、環境省、農水省、厚生労働省との更なる正式協力を発展させ、法律、政策、および履行に結びつけるための調整に着手すること

・ 公的な報告や苦情が、動物福祉事件の監視や調査により正式に利用されるためはどのようにすれば良いのか検討し、コンパニオンアニマルと畜産動物の両方において、福祉法をコミュニティが順守できるようにすること

・ 国の法律や基準に基づく畜産動物福祉の管理体制を構築する。それには農場における家畜保健衛生所(農場への毎年のバイオセキュリティ訪問の一環として動物福祉チェック)、食肉衛生検査所(すでに輸出要件においては実施されている)、 畜産市場における獣医師の契約(輸送と動物の扱いに関する福祉基準の確認)などの地方行政による実施を含む

・ 畜産場での動物福祉を監査し実行するGood Agricultural Practice(GAP)プログラムを開発する

・ 研究および教育に使用される動物のためのOIE基準を見直し、必要に応じて法律、基準および外部監査プログラムを更新する

*最後の勧告は動物実験についてものです。OIEのアニマルウェルフェアコードは畜産動物という印象が強いですが、陸上動物衛生規約第7のアニマルウェルフェアには、動物実験に関する章もあります。

犬猫に重点をおいた現在の動物愛護管理法に、畜産動物を組み込むことをOIEは勧告しており、畜産動物の福祉について、環境省、農林水産省、厚生労働省との協力が不可欠との意見を提示しています。

現在動物愛護管理法改正が審議されています。アニマルライツセンターはPEACE、JAVAとともに、畜産動物福祉が担保される法改正を求めています「犬猫法」では国際社会に肩を並べる「動物保護法」とは言えません。

勧告ではまた、畜産動物の福祉について、環境省、農林水産省、厚生労働省との協力の必要性が提示されています。現在のように、環境省は「畜産動物福祉は農水省の担当」と言い、農水省は「屠殺場の福祉は厚労省の担当」と言い、厚労省は「動物福祉は農水省の担当」と言ってお互い責任を逃れている場合ではありません。各省が連携して取り組まねば、畜産動物の地獄のような状況は今後も改善されないでしょう。日本では、豚や牛は屠殺場で何度も電気スタンガンをおしあてられ、水も飲ませてもらえないのです(このような行為はOIE基準に反します)。鶏は屠殺場で、信じがたいような最期の一日を過ごしています(これもOIE基準に反します)。

PVS評価はOIEが加盟国に対して強制的に行っているものではなく、加盟国が申請してOIEの視察団を受け入れるというものです。 農林水産省の資料によると、「我が国としても、OIEによる客観的な評価が実施されることにより、輸出検疫協議が促進され、畜産物の更なる輸出拡大が期待されるといった重要性に鑑み、獣医組織能力の強化を図るため、昨年OIEに対してPVS評価の申請を行い、本年(ARC注 2016年)10月11日から26日にかけて調査団を受け入れ」とあります。

「畜産物の更なる輸出拡大が期待されるといった重要性に鑑み」、この勧告を受け入れて、わたしたちは国に対して、畜産動物福祉を向上させることを強く望みます。

 

PVS評価の詳細と、日本のアニマルウェルフェア評価項目の翻訳

農林水産省の資料によると、「OIEは、動物衛生、獣医公衆衛生及びアニマルウェルフェアの推進のため、官民あわせた獣医組織体制全体の能力を高めることが重要であるとの認識のもと、2006年以降加盟国のPVS評価を実施」しています。PVS評価ツールは、OIEの陸上動物衛生規約の第3.2章「EVALUATION OF VETERINARY SERVICES」を元に作られており、評価範囲にはアニマルウェルフェアが入っています。

OIE PVS Tool(OIE Tool for the Evaluation of Performance of Veterinary Services Sixth edition, 2013)によると、評価は5段階で行われ、アニマルウェルフェアについては次のようになっています。

1.動物福祉に関する国内法はない。
2.一部の分野で動物福祉に関する国内法がある。
3.OIE基準に準拠して、一部の部門(例えば、輸送部門)で動物福祉が実施されている。
4.動物福祉は、関連するすべてのOIE基準に準拠して実施される。
5.動物福祉は、関連するすべてのOIE基準に準拠して実施され、定期的な監査を受ける。

2018年9月時点で135の国で調査済み、2018年8月時点で30のPVS評価が公開済みとなっています。

公開されている30の国のアニマルウェルフェア評価レベルは次の通りとなります
注:「評価無し」とあるのは、過去の評価ツールにはアニマルウェルフェアに特化した項目がなかったためです。カッコ内は調査年です。

アルゼンチン 3 (2014年)
オーストラリア 5 (2015年)
ベリーズ 評価無し (2008年)
ボリビア 評価無し (2008年)
ボツワナ 2 (2010年)
ブラジル 評価無し (2007年)
ブラジル(水棲動物の評価*) 1 (2015年)
カナダ 4 (2017年)
中央アフリカ共和国 1 (2010年)
チリ 3 (2010年)
コートジボワール (水棲動物の評価*) 1 (2016年)
ギニア 評価無し (2007年)
ギニアビサウ 評価無し (2008年)
ハイチ 1 (2010年)
アイスランド 3 (2015年)
イスラエル 4 (2011年)
日本 3 (2016年)
ケニヤ 評価無し (2007年)
ナミビア 評価無し (2008年)
ニューカレドニア 3 (2014年)
ナイジェリア 評価無し (2007年)
パラグアイ 評価無し (2009年)
ルワンダ 評価無し (2008年)
セーシェル 1 (2011年)
南アフリカ共和国 3 (2012年)
スイス 評価無し (2007年)
シリア 評価無し (2008年)
ウルグアイ 評価無し (2007年)
ベトナム 評価無し (2007年)

*PVS評価ツールは陸上動物衛生規約の基準を評価するための基礎として作られていますが、このツールは水棲動物衛生規約の評価にも利用されています。 http://www.oie.int/solidarity/pvs-evaluations/

 

つぎは、日本のPVS評価レポートのⅡ-13アニマルウェルフェアのみ翻訳したものになります。
注:翻訳は国の正式なものではなく、アニマルライツセンターによるものです。*印、リンクはアニマルライツセンターによる追記です。「animal welfare legislation」は「動物愛護法」、「the Act on Welfare and Management of Animals」は「動物愛護管理法」と訳しています。

所見:

動物の愛護と管理に関する法律(1973年、最終改正2012年)は、政府に動物福祉政策と管理に関する広い権限を与えている。
環境省は管轄当局であり、農林水産省は家畜種ごとに畜産機関と協力してガイドラインを設定する重要な役割を担っている。
効果的な外部調整は、環境省と農林水産省の間で、正式な会合と中央レベルでの非公式のコミュニケーションを通して行われる。
PVSの調査団は、現場レベルで環境省と農林水産省の間での効果的な調整を検証することができなかったが、 福祉ガイドラインが農家に広められており、自己評価のための動物福祉チェックリストが使用されていることが分かった。畜産技術協会は、公的資金で、動物福祉に関する知識、態度、慣習に関する農家へのアンケートを通して、実態調査を実施した。その結果、畜産動物のアニマルウェルフェアのガイドラインに概ね適合していることが判明した。地方レベルでは、小動物の動物福祉関連の問題の監督は、地方自治体または都道府県によって管理されている。

迷子の動物やペットの福祉の管理は、十分に提供され獣医師が配置されている。これらは行政がすべての機能を果たす地方レベルで実施されるが、より多くの動物保護団体のようなNGOによる活動も含む。環境省はすべての都道府県で意識啓発プログラムを実施するための財源を有している。動物への残虐行為や動物愛護法違反に関連する苦情を調査する役割よりもむしろ、学校や地域での教育を通じて責任あるペットの所有者に福祉を促進することに重点を置いている。地方行政は通常、迷子動物の捕獲と保護を行う動物保護団体を指定している。

国の動物愛護法があり、畜産部門には動物福祉の基準がある。動物愛護法は、OIE陸生動物衛生規約にそった、動物輸送および人道的屠殺に関する特定の条項が欠けている。しかしながら、「動物の愛護と管理に関する法律」に基づく、畜産動物の輸送と人道的屠殺に関する記述(一般的な基準)がある。農場における畜産動物福祉は、産業界および農家との協力のもと、家畜保健衛生所による継続的なプログラムの一環として監視されている*1。

畜産技術協会および日本馬事協会は、2009年から農林水産省と協力して、肉牛、乳牛、豚、馬、ブロイラー、採卵鶏の飼養管理に関する一連の動物福祉指針のガイドラインを作成*2した。それらは2005年に策定されたOIEガイドラインを参照して作られており、OIEガイドラインの変更時には変更に基づいてそれらを更新した。これらの種ごとのガイドラインは、動物福祉の目的、5つの自由の必要性を提示しており、動物の取扱い、外科的介入、清潔衛生、疾病管理、栄養および動物取り扱いに必要な訓練を含む動物管理も含んでいる。環境省および農林水産省は、畜産動物輸送業者および屠殺場を除く、農家や畜産動物飼育者にこれらのガイドラインを配布する明確な方針を持っている。

日本中央競馬会は、屠殺場における動物福祉のためのガイドの準備を支援している(2014年)*3。日本食肉生産技術開発センターはまた、OIEガイドラインに基づき、資金援助を受けて動物の取り扱いと屠殺のガイドラインを策定*4し、2011年に屠殺場や関係者に配布した。

法律によれば、屠殺場において「屠殺は痛みや苦痛を最小限にする」という、動物の福祉基準が定められている*5。しかしその方法は明記されておらず、スタニング(気絶処理)は義務付けられていない。輸出食肉処理場を対象とした食肉衛生検査所では、輸出に関連する特定の取扱いおよび屠殺の福祉要件が非常によく知られ、実施されていた。 (例えば、係留所での静かな環境、飲水設備、スタニング後の意識喪失の確認、素早い放血のためのよく切れるナイフ)

畜産動物に特化した法律はないけれど、動物を殺すための国の一般的な基準はある*6。

2006年には、国の動物福祉政策が、多くの政府機関の参加により広く改訂された*7。輸送は、1987年に総理府から、2013年に改訂されて環境省から通知された通知*8によってカバーされている。市場や屠殺場へ連れて行かれる動物の移動距離は一般的に比較的短いことに留意されたい。北海道では、例外的に馬がオークションで遠距離を走行する可能性があるが、オークションや屠殺前に一泊、住宅、飼料、水が提供されます。日本の土地面積は比較的小さく、土地インフラも整備されているため、海上や空中での動物輸送は限られる。動物検疫所および、動物衛生研究所、動物医薬品検査所、国立感染症研究所を含む検査所や研究施設では広範囲の動物を使用している。研究所での生きた動物の使用に関する倫理的承認は、各施設内の動物の倫理的使用を担当する委員会によって、内部で管理される。研究における動物使用は最小限に抑えることが公表されている。同様に、獣医学校は生徒による手術を含む、生きた動物を授業に使用しているが、動物の福祉は内部で監視され、動物の苦痛は制御される。 大手術の後、動物を安楽死させる。環境省は、「動物の愛護及び管理に関する法律」に基づき実験動物のための国の一般規則を制定している*9。 さらに、各省庁は、それぞれの関係機関別にガイドラインを定めている。

動物は、商業製薬会社の製品の研究開発のために使用されている。これらの会社は、生きた動物の使用を監視し、不必要な使用を避け、動物福祉の維持を確実にするための「動物使用審査委員会」を持っている。ここには国家基準がなく、政府やその他外部による検査や監督は行われていなかったことが分かった。

日本の製薬会社や大学に対して責任のある省庁として、農林水産省、厚生労働省及び文部科学省は、実験動物の動物福祉を確保するための指針を定めている。さらに、日本学術会議は、2006年に「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」を策定した。これらのガイドラインには、努力目標として外部の検査が含まれているおり実行されはじめたと報告されたが、現場訪問中には明らかにならなかった。

強み

・コンパニオンアニマルをカバーする十分に確立された動物福祉プログラム。
・畜産動物福祉の評価が進行中(生産者アンケート*10)および、さらなる福祉基準の開発作業が進行中である。
・実際の慣行は、農場、輸送、屠殺においてOIE基準に概ね沿っているようである*11。
・保健目的で畜産動物と密接に接触している、国の畜産動物福祉の管理規定の仕組み*1。
・研究所や大学での動物の使用は、内部の倫理審査を通じて管理される。

弱点

・動物愛護法は、動物福祉ガイドラインへの過度の依存を減らすことによって強化することができる。特に動物輸送と屠殺。
・動物福祉に関して環境省と農水省がさらに協調し役割を明確にさせることができる。

勧告

・OIEの動物福祉コードの勧告を見直し、特にまだない畜産動物輸送および屠殺について、適切に国の法律、基準または政策文書に正式に組み込むこと

・動物福祉、特に畜産動物の福祉について、環境省、農水省、厚生労働省との更なる正式協力を発展させ、法律、政策、および履行に結びつけるための調整に着手すること

・公的な報告や苦情が、動物福祉事件の監視や調査により正式に利用されるためはどのようにすれば良いのか検討し、コンパニオンアニマルと畜産動物の両方において、福祉法をコミュニティが順守できるようにすること。

・国の法律や基準に基づく畜産動物福祉の管理体制を構築する。それには農場における家畜保健衛生所(農場への毎年のバイオセキュリティ訪問の一環として動物福祉チェック)、食肉衛生検査所(すでに輸出要件においては実施されている)、 畜産市場における獣医師の契約(輸送と動物の扱いに関する福祉基準の確認)などの地方行政による実施を含む。

・畜産場での動物福祉を監査し実行するGood Agricultural Practice(GAP)プログラムを開発する。

・研究および教育に使用される動物のためのOIE基準を見直し、必要に応じて法律、基準および外部監査プログラムを更新する。

 


*1 家畜保健衛生所が年に一度の農場定期視察の際、動物福祉の監査も行っているという実例をアニマルライツセンターは把握していません。
*2 アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針
*3 日本中央競馬会が平成25年度に採択・助成した「食肉処理施設と畜・解体技術の確立及びスーパーバイザー養成研修事業」
*4 食肉処理施設への家畜の輸送および食肉処理施設での家畜の取扱におけるストレス軽減並びに処理手法の改善に関する指針
*5 動物愛護管理法には「slaughter(屠殺)」という文言はないが、同法第40条のこと
*6 動物の殺処分方法に関する指針
*7 2006年動物愛護管理法改正のこと
*8 産業動物の飼養及び保管に関する基準
*9 実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準
*10 飼養管理指針チェックリストに関するアンケート調査結果 http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/
*11 「農場、輸送、屠殺においてOIE基準に概ね沿っている」という根拠をアニマルライツセンターは把握していません。アニマルライツセンターの調査は、少なくとも屠殺においてはOIE基準に概ね沿っていないことを示しています。詳しくは屠殺のHPをご覧ください

 

 

 

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