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エンリッチドケージはケージ飼育、苦しみが大きすぎる

エンリッチドケージはケージ飼育、苦しみが大きすぎる

ケージフリーに世界が向かう中、国内でいまさらエンリッチドケージをアニマルウェルフェアと呼び始める傾向が出ている。これは世界の水準から大きく遅れ、市民や投資家の評価も一切得られず、そしてなによりアニマルウェルフェアをまったく向上させない取り組みである。

エンリッチドケージ(Furnished cage)とは、EUが2012年に最低要件として定めたケージだ。EU基準ではとまり木が、巣箱、スクラッチエリア(ひっかいて探索行動を行う場所)があり、バタリーケージよりも大きい。wikiでは「鶏の基本的行動要求を満たすために、巣箱・止まり木・砂浴び場などの設備を追加した改良型の鶏用ケージであり、従来の狭小ケージに比べて行動表現機会を増やすことを目指した飼養システム」とされている。

砂浴びエリアもだと言われるケースがあるが実際に砂浴びの基材が入れられることはなく、砂浴びエリアは「形式的」なスクラッチエリアでしかない。神奈川県畜産技術センターの研究では、エンリッチドケージに人工芝を敷いた「疑似砂浴び場」を設置しても、糞が堆積して機能せず、砂浴びのような行動はなくなったと報告している。

さらにエンリッチドケージという概念を拡大解釈して、バタリーケージに止まり木をくっつけただけのものをエンリッチドケージだと言い張るケースもある。通常行動の自由を確保するという本来の目的を忘れ、アニマルウェルフェアを謳うために形式のみを整える選択であり、アニマルウェルフェアウォッシュにもつながる。

エンリッチドケージは結局ケージ

まず第一に、エンリッチドケージ飼育はケージ飼育であって平飼いやケージフリー飼育とは異なる。鶏たちは”ケージ”のなかにおり、平地を歩いていない。アニマルウェルフェアの5つの自由を満たすためには、ケージの外に出さねばならない。ケージの外に出れば、様々な工夫を行うことができ、5つの自由を満たす飼育が可能になるからだ。ケージの中では動物の欲求を満たすには限界があり、エンリッチドケージはスタート地点に達していないと言える。

1:運動ができない=骨が強くならない

歩く、走る、跳躍する、飛ぶ、羽ばたくといった鶏が日常的に行う運動は、ケージという制約の中では不可能だ。行動の選択肢が限定され、退屈・フラストレーション・行動の置換(異常行動)リスクが残る。2023年のEFSAの詳細な調査レポートは採卵鶏の福祉評価で、エンリッチドケージでは行動の制限があり、これにより骨質の低下や運動行動(例:跳躍、飛行、歩行、走行)への影響、押し合い・突き飛ばし行動の増加、羽毛損傷に影響が出ることを指摘している。ケージは運動(荷重運動)を制限し、骨強度が十分に上がりにくい → 骨脆弱性(osteoporosis)や終末期の骨折リスクに繋がる可能性がある。

2:砂浴びができない

エンリッチドケージで砂浴びエリアがあると主張するケースは多いが、実際には砂浴びは形式的なエリアがあるのみで適切な砂などの基材がない。そもそも、採卵鶏が砂浴びをするために必要な行動スペースは一般に約**>1000 cm²/羽と言われ、エンリッチドケージに提供されるスペース(例えば EU の最低基準で750 cm²/羽)ではたりないのだ。砂の深さも5cmが適切だとされる。さらには鶏は砂を跳ね上げていくのでケージであればその砂は周りに飛び散り糞の回収用ベルトコンベアーに落ちることになるが、これは生産者の望む運用とは異なるだろう。
疑似砂浴び場を用意しているとしているが、たんに足でひっかくエリアがあるのみで砂浴びは不可能なのだ。この疑似砂浴び場を砂浴びと伝えるのはウォッシュだろう。

3:採食探索(foraging)もひっかき行動もつつき行動もできない

スクラッチエリアは、本来はそこに餌をまいて探索行動を行うエリアでもあるが、まずこれができる仕様になっていない。一般的なエンリッチド(ファーニッシュド)ケージで使われる「スクラッチマット」は、深い敷料ではなく、硬質プラスチック製の“網状/格子状(perforated or mesh)”の板状パッドである。糞で汚れるため利用がなくなっていくという研究もある。

4:羽つつきが減らない

結果、どうなるかといえば、羽つつきという有害な行動が減らない。仲間同士つつき合ったり、自分の足をつつき続けたりする異常行動だ。「探索機会の欠如」が重篤羽つつきの重要リスクと明示する研究もある。

5:足の障害:フットパッドの過角化・病変

止まり木や金網床で、足裏に機械的圧迫・摩擦が継続することにより、過角化(hyperkeratosis)や病変のリスクがあります。設計(止まり木形状・素材)次第で悪化しやすいといわれているが、ワイヤー部分にも立つことに変わりはないため、足の傷や病気のリスクは高まる。
※竜骨骨折についてはエイビアリーシステムとケージ飼育どちらが高いか研究によって異なる。

エンリッチドケージではなく、ケージから脱せよ

近年、日本政府や一部学者、生産者では、ケージフリーではなくエンリッチドケージに落とし所を見出そうとする傾向が見える。だが、やめておいたほうがいいだろう。

上記の通り動物にはメリットが少ない。まったくないわけではないが、ケージの外に出てからのポテンシャルに比べると小さすぎるのだ。

動物がさして幸せにも健康にもならないということは、消費者のメリットもなくなる。消費者は平飼いか放牧にはお金を払うが、ケージにはこれまで通りのお金しか払わないという傾向が明確になっている。カナダの研究でもそれが示されている。たとえ多少のプレミアがつけられたとしても、それはかなり脆弱であり価値が崩れやすいという研究もされている。別の研究でも消費者がラベルをみてネガティブな感情を抱くことが示されている。

つまり、エンリッチドケージは価格を上げる正当な理由にならない。社会的にも消費者的にも価値が低いのだから・・・。

バタリーケージからエンリッチドケージに移行しようとする生産者は今も日本に入るかもしれないが、黙ってやるしか無い。バタリーケージを新しく建てる生産者が未だに日本は多い(そのお金はある!)のだから、特に問題はないのかもしれない。

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