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鶏を茹で殺した割合、肉用鶏はまたも悪化

屠殺の失敗の割合といえる放血不良の数が厚生労働省の食肉還元調査により発表された。大きく悪化し犠牲数70万羽を超えた2023年、2024年の数字はどうなったか。

放血不良とは

屠殺の際に首を切るのに失敗し、血が抜けず、生きたまま熱湯で茹でられ、全身やけど状態で皮膚が真っ赤になったりピンクになる、最悪の殺し方のことだ。この数字が世界ではほとんどない、または米国では大幅に減少しているにも関わらず、日本では年々増加してきていることに、警鐘を鳴らしてきた。放血不良が多いということは、屠殺のレベルが低く、動物たちは極限の状態まで苦しめられたということだ。屠殺時に生きたまま熱湯に入れられた場合違法であるとして罰則に処せられる国もある。

2024年はどうなったか

全体の数値としては、675,712と2023年よりは微減したものの、高い犠牲数のままであった。減ったのは採卵鶏の廃鶏の屠殺場での犠牲数であり、肉用鶏はむしろ犠牲数も割合も増やしている。肉用鶏だけで、490,805羽が生きたまま熱湯に入れられ、2023年から16,242羽増加したのだ。

肉用鶏は

肉用鶏の屠殺数は年間7億5千万羽を超える。0.001%であってもインパクトが大きく、より慎重に失敗のないように最大限の努力をすべきだ。だが、現在、この肉用鶏での屠殺が雑になっているのか、意識の低下が見られるのか、悪化しているのだ。

放血不良の割合が高い=ひどい屠殺場から順に見ていこう。

茨城:0.3877%で12165羽、2023年から悪化(前年は0.1519%、4188羽)している。エスファクトリー千葉(株)の結果であり、水戸にある食鳥処理場だ。何かが起きているのか、倍増している。

大阪:0.2580%で1315羽、ここも悪化(前年は0.2079%、1078)している。鳥ぴん株式会社の結果だ。

愛媛:0.2295%で9618羽、マルハフーズ株式会社の結果だ。

福岡:0.1744%で3248羽、株式会社あらい 農事組合法人福栄組合 株式会社トリアンフーズの結果だ。

宮崎:0.1669%で239323羽、2023年から悪化(前年は0.1024% 147665羽)している。の結果だ。

沖縄:0.1658%で6351羽、名護市食鳥処理施設の結果だ。

岐阜:0.1142%で4707羽、岐阜アグリフーズ株式会社、コーチンミライズ株式会社、農事組合法人東濃ミートセンターの結果だ。

鳥取:0.1001%で19965羽、2023年から悪化(前年は0.0893% 17925羽)している。伊藤ハム米久ホールディングス株式会社、名和食鶏、株式会社大山どりの結果だ。

大きく改善させてほぼゼロに近い数値となったのは三重県で0.0021%だった。その他0.05%以上改善させたのは青森県と福島県、やや改善したのは鹿児島県と新潟県などだ。改善しているところがある一方で、その減少数を大幅に上回る悪化が上記都道府県で起きていた。毎年この悪化と改善は多少なり繰り返す。それは、システム的なまたは組織的な改善が図られていないことを指す。つまり、意識が低いのだ。

採卵鶏は鹿児島が異常値

とにかく前年から継続して鹿児島県が異常だ。鹿児島には、株式会社エヌチキン、マルイ食品株式会社、野田第2工場、有限会社二幸食鳥松元工場の4箇所がある。統計データには個別の数値は報告されていないため、どの屠殺場の数値が異常なのかは不明だ。いずれにしてもこの4社合計で7万4千836羽の犠牲があり、これは採卵鶏の40%を占める。なお、「屠殺数が多いからではないか」という意見もあるやもしれないが、鹿児島を遥かに上回る数の屠殺を行う茨城県の17,935,271羽と比較しても、放血不良の割合は高すぎる。茨城県はは一万羽をきり、9,804羽で0.0547%だ。

鹿児島の採卵鶏の廃鶏放血不良の割合放血不良数全体の屠殺数採卵鶏内での放血不良の割合
2023年0.9471%106,552羽11,250,697羽47%
2024年0.7078%74,836羽10,573,297羽40%

次に割合が高い順に、

徳島県(オンダン農業協同組合、食鶏産地格付包装流通センター) 0.4205%

愛知県(一般社団法人シライフーズ、株式会社丸文牧野商店、六ツ美養鶏加工協同組合) 0.3743%

新潟県(新潟ポートリー事業協同組合)で0.3676%

兵庫県(印南養鶏農業協同組合、食鳥センター㈲、アリノベ八千代工場) 0.3332%

沖縄県((株)沖縄県鶏卵、食鳥流通センター) 0.3017%

となっており、北海道、岡山、群馬と続く。

大幅に改善したのは大阪府と香川県だった。

課題は続く

食品ロス削減が強く求められる時代にあって、食品どころか命を苦しめロスさせている。生産過程で様々な意味で非倫理的な過程を経ているのが今の国産鶏肉だ。アニマルウェルフェアへの対応は食鳥処理場側にとってもメリットが大きい。従業員の心身の負担を軽減することができ、離職を防ぐことにつながる。アニマルウェルフェアへの対応というのは、空気制御式気絶処理CASを導入することだ。

その導入が根本解決の一つだが、それができるまで、屠殺ラインにアニマルウェルフェアの専任者を配置し、屠殺に失敗した鶏がいないか、注意深く観察し、万一見つけたらすぐさま取り除いて安楽死させなくてはならない。世界動物保健機関の規約に総規定されているのだから、最低限やるべきだ。なかなかの速さで流れてくる鶏すべてを、数時間に渡って集中して監視し続けることは、並大抵のことではない。だからこそ、システムの改変が必要なのだ。

67万5千羽、この膨大な数。圧倒される数。それだけの数の、苦しみ。想像してほしい。

震え、怯え、もがく鶏たちのために、一日も早い改善を、せつにせつに、願っている。

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