アニマルウェルフェアの設備投資に対して国が理解を示さず補助がないことがケージフリーや妊娠ストールフリー、鶏の屠殺場改善のネックになっている。このことを問題視し、自らも長崎県で放牧養鶏を行う国会議員山田勝彦議員が、衆議院農林水産委員会で大臣に理解を求めた。
山田議員から国際的な水準をクリアするケージフリー、ベターチキン、妊娠ストールフリー、つなぎ飼いフリーの設備投資に対し、支援があるかを確認したところ、農林水産省は牛の放牧については牧柵の支援などがあり、また採卵鶏の平飼い飼育については畜産クラスターで支援が可能であると回答した。
畜産クラスター事業での支援は以前から可能となっているが、実際には非常にハードルが高い。地域全体で畜産の収益性を向上させるために、畜産農家と地域の畜産関係者(流通加工業者、農業団体、行政など)が連携して事業を行うことが条件となるためだ。ケージフリーは1羽あたりの産卵率をあげるなどはできる可能性があるが、地域で収益性を上げたりを押し通すことは簡単ではないだろう。そもそも羽数を増加させるることはアニマルウェルフェアの目的にかなっていない。また、生産者がやろうとおもっても、その周辺の関係者の理解を得る必要があることも大きなハードルだ。
これに対し、山田議員はアニマルウェルフェアを独立させる必要があると訴えた。
江藤大臣は、アニマルウェルフェアは難しい課題だとし、「ゲージの中に入れて前しか向けない状態で卵を産み続けることについて、いかがなものかという指摘は国際的にもあ」ると課題は認識しているが、国内的にも批判が大きくなっていることは気がついていないようだ。アニマルウェルフェアを独立させるのは、小さな予算しかとれない可能性などを示し否定的だった。だが、これは単なる制度の技術的な話でしかない。本質は、アニマルウェルフェア自体に価値を認めるかどうかなのだが、この部分はぼかしたままとなった。
もう一点重要なことは、「環境省の法律に従ってですねやってることだけはご理解いただきたい」と述べ、農林水産省のアニマルウェルフェアへの取り組みが動物愛護管理法が根拠となっていることを明言したことだ。主体性のない環境省が手動なのではお先真っ暗である。別の記事で書くが、畜産動物のアニマルウェルフェアの特性を考えると、必ずしも環境省の動物愛護管理法だけが根拠ではないはずだ。食料・農業・農村基本法という農林水産省の法律があり、これもまたアニマルウェルフェアを推進しなくてはならない根拠なのではないかと思う。
山田勝彦議員:次に、アニマルウェルフェア、動物福祉についてです。 私自身、8年前、スイスに農業福祉を学びに行った際、畜産の方法が日本と全く違うことに驚きました。 牛も豚も鶏も放し飼いでなければ法律違反になることを知りました。 私は帰国してすぐ、地元長崎県の大自然の中で放し飼いで養鶏を始めました。 おそらく700人以上いる国会議員の中で、動物福祉を実践している人は少ないと思います。そういった意味で現場の思いを込めて質問させていただきます。
アニマルウェルフェアとは、動物が意識や感覚がある存在であることを理解し、たとえ短い一生であっても、動物の生態欲求を妨げることのない環境で適切に扱うことと定められています。 この考え方は1965年イギリスで提唱され、世界中で採用されています。 そして日本は世界に比べ、このアニマルウェルフェアがかなり遅れています。 世界中で動物保護活動を行う世界動物保護協会が発表した2020年の動物愛護指数ランキングで日本は最低ランクのGです。 資料5をご覧ください。 国際水準のレベルを取り入れなければ評価されません。 狭く窮屈な環境から動物たちを解放していく、卵はケージフリーへ、肉用の鶏はベターチキン、豚は妊娠ストールフリー、牛は繋ぎ飼いフリーこのような動物福祉に配慮した環境を整えるための設備投資に対し、国からどのような支援があるのでしょうか?
松本畜産局長:お答えします。 アニマルウェルフェアに対応してできる生産方式としましては、例えば牛の放牧に必要な牧柵、吸水施設等の整備に対する支援、また、乳用牛の自主的な行動を促す飼養管理システムであります搾乳ロボットや、採卵鶏の平飼い方式の導入に対しまして、畜産クラスター事業やICT化等機械装置の導入事業などによりまして支援を行ったとこでございます。
山田勝彦議員:はい、ありがとうございます。 畜産クラスター事業の中で、アニマルウェルフェアの取り組みを支援できるようになったということですただ、畜産農家のほとんどはこの情報を知りません。壱岐の島で新たに放牧を始めた若手農家さんから話を伺いました。 みんな良い牛を育てるために環境が大切だと理解していて、限られた環境、牛舎の中で牛のストレスを減らす努力をしていると私に教えてくれました。 畜産動物の放牧を積極的に進めていくのであれば、例えば、アニマルウェルフェア環境整備支援事業として畜産クラスターから独立させ、現場にわかりやすく発信していくべきだと考えております。 こういった考えに対して、大臣、ご賛同いただけでしょうか
江藤拓農林水産大臣:このアニマルウェルフェアですね。 難しいですね。平飼いをされてることでありますが、ゲージの中に入れて前しか向けない状態で卵を産み続けることについて、いかがなものかという指摘は国際的にもあります。 しかし日本の限られたこの今土地の状況の中でですね、国民の需要を満たすために卵を生産することについてはですね、なかなか現状では難しい部分ありますが、ただいま環境省の法律に従ってですねやってることだけはご理解いただきたいと思います。このアニマルウェルフェアの部分を畜産クラスターから分離するということでありますが内数であることの方がですね、やりやすいと思いますよ。これを別途にするとですね、果たしてどれだけの予算規模を獲得できるのかっていうこともあるかもしれませんし、基本的にはアニマルウェルフェア推進すべきだと思いますが思っておりますが、しかし日本の現実ともですね、見合いながら日本で日本の事情があるということもですね、同時に国際社会には説明する必要もあるんだろうというふうに思ってます。
山田勝彦議員:ありがとうございますまだまだ質問があったけど時間がまいりました。今国会で動物愛護法の改正が予定されておりますアニマルウェルフェアの向上をしっかりと訴えてまいりますありがとうざいました。