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1人の100歩より100人の10歩が動物を救う

食肉消費は毎年、毎日、増え続けている。どんなにプラントベースが話題にのぼろうと、私たちの周りにプラントベース商品が増えてきたねなんて言える時代が来ていたとしても、現実は残酷なものだ。

ただ知らせていくだけではどうやっても間に合わないほど、一人あたりの消費量が増えていく。畜産動物の犠牲数を減らす戦略を超現実的に調べ、考えなくては、畜産のための動物の犠牲数を半減させるという私たちの目標は叶わないのは明白。効率的で、効果的な方法を考えるために、数値的に肉の消費、増加、そして効果的な戦略を考えてみたいと思う。

日本の肉消費はどう増えているのだろう

Our World in Data(OWID)のFAOフードバランス由来データで見ると、日本の動物性食品は増え続けてきた。
(※OWIDは「供給量=消費可能量」。家庭・外食での廃棄は差し引かれていない。)

  • 肉(全肉:鶏・豚・牛など合計)
    直近データの日本は 約60.4 kg/人/年(2022)
    約165 g/人/日 の肉が“食べられる量として”社会に流通。

  • 日本は 約19.9 kg/人/年(2022)
    約54.5 g/人/日 に相当。

日本は、肉の消費量は中間消費層であり、卵の消費量は大量消費層に位置づけられている。

重要なのは増加量だ。

日本の肉の増加(販売量ベース)は、

  • 肉の年間増加:+45,000トン/年(2022→2023)
    = 45,000,000 kg/年 の純増だった。

この増加を、日本人の肉消費水準(60.4kg/人/年)で「何人分か」に換算すると、 45,000,000÷60.4≈745,000人年/年
つまり年間で約74.5万人分の“1年の肉消費”が上乗せされている計算です。

これを日割りすると、745,000÷365≈2,040人年/日、つまり、、、日本の肉消費量は、毎日「約2,040人が新たに1年分肉を食べる」のと同じペースで増えている。

もしも、今年毎日2040人が、または今年74万5000人がヴィーガンに変わっていっていけば、今年はおおむね肉消費量を上げ止まらせることができるが、それができなければ動物の犠牲は増える。そして例えば一日2500人をヴィーガンにすることができれば肉の消費は減るかもしれない。
でも、、、はて、それは現実的なのか・・・自分たちの今の力では立ち止まってしまう。

一人あたりの消費を減らさないといけない

一方、日本の人口は減っていっている。おおよそ年約55万人=日約1500人減少しています。にもかかわらず、肉の消費が増え続けているということだ。
つまり、一人あたり肉消費の増加が構造的に進んでいるので、この構造、流れに待ったをかけなければ動物の犠牲は減らない。

完全に肉をやめる人(ヴィーガン)だけでこの増加を抑えることはできません。
しかし行動変容研究では、厳格な食規範(ビーガン/完全菜食)を求めるほど参加障壁が高く、広い層に浸透しにくいことが繰り返し示されています
一方、「減らす(flexitarian / meat reduction)」のほうが受容されやすいとするレビューもあります。価値観の違いなどでもなく、実証データとして、減らすほうが運動の裾野を広げ、結果が出やすいのです。

個人ではなく集団的シフトを

「集団的シフト」は、個人説得より何桁も効率がいいことは明らかだ。

たとえば、行動科学では、選択の“デフォルト(初期設定)”を植物性にすると、肉選択が大きく減ることが大学イベント等での複数の研究で確認されている。植物性の食事がまず第一の選択に来て、オプションで肉付きを選べるというメニュー構造にするということ。

地球環境の変化をこれから目の当たりにしながら長い人生を過ごす人が多い高校や大学、ここでは植物性メニューをデフォルトにしたメニュー校正に変えてみるのは、間違いなくそこに通う人々の利益につながるだろう。もっとも長く環境問題の危機に直面する小学生の給食なども切り替えたら当事者(小学生)への利益があることだが、この判断には頭の硬い大人たちが従事するため難易度は高いかもしれない。

社会的責任や持続可能性を訴求する企業にとっても、社員食堂や社員向けイベントから変えてみるのは大きな変化につながるだろう。”ひとるのヴィーガンメニューを選べる”のではなく、”追加したいひとは肉を選べる”にマインドを切り替えるのだ。

個人にはたしかに力があり、最も簡単に変えられる。とくに自分自身の決定権は自分にあるのだから、すぐにでも変えることができる。しかし、“個人の強い意志”にたよった運動は動物にもたらす効果が小さく、その積み重ねだけでは、とても間に合わない。食料システム、社会システム全体の構造を見て消費を下げる戦略を立てなくてはならない時代なのだ。

動物の犠牲にまったはない。今日も、明日も、明後日も10日後も、毎日、殺されていく。あまりに多い犠牲数に、圧倒されてしまうが、それでも、その1頭1頭を見捨てることなく、救わなくてはならない。その価値が、動物たちにはある。だから、効果的な方法、できるだけ小さな力を大きく変える方法を一人ひとりが選んでいく必要がある。

いま必要なのは“集団的・段階的シフト”

ここまでの論理は単純明快だ。

日本は人口が減っている>それでも肉(卵も同様のリスク)の総量が増えている>1人あたり消費が上がっている

この構造のもとでは、完全ヴィーガン転向の“人数勝負”だけで増加を相殺するのは現実的でない。一人ひとりの決断は重要だが、残念ながら、それでは間に合わないのだ。

減肉・減卵を「多数派の行動」と「集団の仕組み」で起こさない限り、動物の犠牲は増え続ける。

つまり日本で動物の犠牲を止めるための主戦略は、

「植物性の食事をする人を増やす」運動に加えて、
“動物性タンパク質を食べる多数派の人が、量・頻度を減らす社会”を作ること。

が最も合理的な帰結なのだ。

データ補足

マサチューセッツ工科大学の2023年発表の研究 MITの研究チームは、実際の食選択(イベント用メニュー選択)で “vegan / vegetarian”とラベルを付けると、肉食者がその料理を避けやすくなることを複数のランダム化比較実験で示しました。 ラベルを外した場合、ベジ/ヴィーガン側の人が間違って肉料理を選ぶ増加は起きず、デメリットは主に「肉食者の回避」に集中。 つまり “ヴィーガン/ベジというアイデンティティ前面の訴求は、一般層にとって心理的ハードルになる

ラベル比較(plant-based vs vegan/vegetarian) 米国・ドイツの消費者実験で、“plant-based”表記の方が “vegan/vegetarian”より好意・購買意図がわずかに高いという結果。 “vegan”は味・社会規範から距離があると感じられやすい、という消費者心理が示唆

行動介入の系統的レビュー Meat reduction 介入の実験研究を分野横断で集めた系統レビューでは、 メニュー設計、選択環境(可視性・比率)、デフォルト、情報提供などが肉消費/購入を下げるのに有効と結論

我慢ではなく代替が必要

https://doi.org/10.1016/j.foodqual.2023.105067
https://doi.org/10.1016/j.appet.2021.105739
https://doi.org/10.3390/nu17142369
https://doi.org/10.3389/fsufs.2023.1103060

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