と畜場の動物福祉に関するアンケート結果

2016/10/08

*追加で回答のあった2施設を反映させた(2016.10.8)
*動物を移動させる際に使用する追い立て道具の牛と豚の「総計数」に誤りがあったため、修正した:牛59→80、豚78→100(2016.10.8)

■ アンケート期間 : 2016年5月~7月
■ アンケート実施主体 : NPO法人アニマルライツセンター
■ アンケート対象 : と畜場177施設(「と畜・食鳥検査等に関する実態調査の結果について」2015年4月1日現在を参照。このうち「稼働していない」と回答のあったものは省いた)
■ 回答数98施設(回答率55%) *動物の種類のみの回答は回答数から省いた

 

扱っている動物の種類

牛 78施設
豚 79施設
その他動物(めん羊、山羊、馬など) 30施設
*重複あり
 

飲水状況

屠殺までに常時飲水できる  牛:54%、豚:24%、その他動物20%

常時飲水できると回答したのは78施設中42施設(54%)。
屠殺までの時間が10時間以上の施設は66、そのうち常時飲水できると回答した施設は37施設(56%)。
と畜場に到着してから屠殺までの最大時間 シャワーを飲水の代用としている 飲水できない 飲水できる
(常時ではない)
常時飲水できる 総計
10時間以上 7 8 14 37 66
2時間以上~10時間未満 1 3 1 2 7
2時間未満   2   2 4
不明       1 1
総計 8 13 15 42 78
 
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常時飲水できると回答したのは79施設中19施設(24%)。
屠殺までの時間が10時間以上の施設は71、そのうち常時飲水できると回答した施設は17施設(24%)。
と畜場に到着してから屠殺までの最大時間 シャワーを飲水の代用としている 飲水できない 飲水できる
(常時ではない)
常時飲水できる 総計
10時間以上 51 1 2 17 71
2時間以上~10時間未満 3 1     4
2時間未満 1 1   1 3
不明       1 1
総計 55 3 2 19 79

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その他動物(めん羊、山羊、馬など)
常時飲水できると回答したのは30施設中6施設(20%)。
屠殺までの時間が10時間以上の施設は14、そのうち常時飲水できると回答した施設は4施設(29%)。
と畜場に到着してから屠殺までの最大時間 シャワーを飲水の代用としている 飲水できない 飲水できる
(常時ではない)
常時飲水できる 不明 総計
10時間以上 2 4 4 4   14
2時間以上~10時間未満 3 7       10
2時間未満   3   2 1 6
総計 5 14 4 6 1 30

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* 今回のアンケートでは「屠殺までの時間」に輸送時間を含めなかったため、輸送時間を含めると実際に飲水できない時間はさらに長いと考えられる。
* “飲水できる(常時ではない)”には、「ホースで水を飲ませる」「桶に汲んで与える」などの常設としての飲水設備がないものをカウントした。
と畜場における飲水について補足事項
  • OIE と殺における動物福祉基準『陸生動物衛生規約 第7.5章 動物のと殺』には「動物が遅滞なくと殺されるのでない限り、彼らの到着時と、収容所内では常時、適切な飲水を動物が摂取できるようにすること」とされている
  • と畜場の施設及び設備に関するガイドライン(衛乳第97号 平成6年6月23日)には「と畜場を新設及び改築等が行われる場合にあっては、と畜場法施行令第1条に定めるもののほか、当該ガイドラインにも適合するよう関係者の指導方お願いする。」として「獣畜の飲用水設備が設定されていること。」と記載されている。
  • と畜場における牛と豚の飲水状況については、北海道帯広食肉衛生検査所などが、2010 年9 ~ 10 月と2011 年1 ~ 2 月に調査を行っている。牛については49%の施設で常時飲水可、豚については14%が常時飲水可という結果であった。
    (2013「と畜場の繋留所における家畜の飲用水設備の設置状況」)
 

泌乳中の乳用牛の扱い

乳用に品種改変されてきた乳牛の場合、その一日の乳量は20~50kgにも及ぶ。乳用に飼育されている牛や山羊は、泌乳期に適度な搾乳が行われないと乳房に痛みなどの不快を生じさせる。

「可能な限りすぐに屠殺する」と回答した施設は24%

「泌乳牛のと畜なし」「不明」を除いた55施設のうち「可能な限りすぐに屠殺する」と回答した施設は14(25%)であった。またアンケートの回答の選択肢にあった「明らかに乳房が膨満している場合は搾乳する」を選択した施設はなかった。
特別な配慮はしていない 41
泌乳牛のと畜なし 19
可能な限りすぐにと畜する 14
不明 4
明らかに乳房が膨満している場合は搾乳する 0
総計 78

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泌乳中の牛乳の扱いについて補足事項

動物を移動させる際に使用する追い立て道具

「スタンガンなどの追い立て道具」と回答した施設が22あったが、このうち4施設で「やむを得ない場合のみ」「最終手段として」などの但し書きがあった。また、パネルと並ぶ福祉的な追い込み道具((後記の「動物の追い立て方法について補足事項」を参照))とされている「旗(スティック)」をあげた施設が1つあった。
*旗 : スティックの先に旗が付いていて旗の部分でちょいちょいとつついて移動させるもの
スタンガンなどの電気式追い立て道具 22
使用していない 18
ロープを引く 16
頭絡のロープを引く 4
鼻輪のロープを引く 4
自動搬送システム 4
棒(木製) 2
パネル 2
木の枝 1
ホース 1
ホース(プラスチック) 1
1
棒(鉄) 1
プラスチックバット 1
電動ウィンチ 1
1
総計 80

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*「手押し」あるいは「人力による追込み」や「手追い」とのみ記載された回答が、それぞれ一つずつあったが、それらは「使用しない」に含めた。
*複数回答有り
*9施設が未記入であった。
 
「スタンガンなどの追い立て道具」と回答した施設が40あったが、このうち6施設で「やむを得ない場合」「必要最小限度で」などの但し書きがあった。豚のスタンガン使用率は51%(79施設中40)と高いものとなっている。いっぽう福祉的とされるパネルを利用する施設は25%(79施設中20施設)あった。
スタンガンなどの電気式追い立て道具 40
パネル 20
プラスチックバット 10
使用していない 6
自動搬送システム 4
棒(木製) 4
棒(プラスチック製) 3
ホース(ゴム製) 3
棒(ゴム製) 2
ホース 2
可動式仕切り柵 2
棒(鉄製) 1
ホース(プラスチック製) 1
プラスチックパイプ 1
1
総計 100


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*「可動式仕切り柵」とは、追い込み板のついた機械を操作し豚を興奮させないよう追い込む装置のこと
*「手で軽く叩いて誘導」とのみ記載された回答が一つあったが、「使用していない」に含めた。
*「板」「発泡スチロール板」との回答がそれぞれ一つずつあったが、それらは「パネル」に含めた。
*複数回答有り
*2施設が未記入であった

その他動物(めん羊、山羊、馬など)
使用していない 14
ロープを引く 6
パネル 3
スタンガンなどの電気式追い立て道具 2
棒(木製) 2
総計 27

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*「手押し」、「人力による追込み」とのみ記載された回答がそれぞれ一つずつあったが、それらは「使用しない」に含めた。
*複数回答有り
*4施設が未記入であった
動物の追い立て方法について補足事項
  • OIE と殺における動物福祉基準『陸生動物衛生規約 第7.5章 動物のと殺』には、追い立て道具を使用する場合は「動物が応答せず移動しない時には、繰り返し使用しないこと。そのような時は、何か物理的もしくはその他の障害が、動物の移動を妨げていないかどうか調査すること。 」特に電気式追い立て道具は「非常時のみ使用し、動物を移動するため日常的に使用しないこと。」とされている。追い立て道具が使用されていない場合でも、痛みを伴う手順(蹴る、尻尾捻り、鼻をつかんで引っ張る)などでの移動方法は行うべきではないとされている。 
    また、不当なストレス無しで動物を移動させることが可能な有益で許容される追い立て道具として「パネル、旗、プラスチックパドル、フラッパー(皮又は粗布の付属した短いストラップのある長いステッキ)、プラスチック袋及び金属製のラトル(*ガラガラ鳴らすもの)」が挙げられている。
  • 海外には、強制的に動物を移動させるような追い立て道具を使用せずに動物をスムーズに移動させる方法についての数多くの知見が存在する。たとえば“動物をしり込みさせてしまうものの除去”だ。人にとってはささいな「急激な明暗の変化」「作業者の黄色いブーツ」「スロープにかけられている作業者の衣服」「進行先の影」などというものが動物を脅かし、前に進むことを邪魔してしまう。こういった動物をしり込みさせるものを除去することもその一つだ。OIE と殺における動物福祉基準『陸生動物衛生規約 第7.5章 動物のと殺』にも「スムーズな動物の移動方法」のマニュアルが掲載されているが、アニマルライツセンターがと畜場に提出した改善提案書にも、その方法を掲載している。 →
    http://www.hopeforanimals.org/animals/slaughter/00/id=416
 

トラックから係留所へ動物を移動させる際の段差対策

段差は動物のスムーズな移動を妨げてしまうため、無理な追い込みで動物に不当なストレスを与えることにつながることがある。また作業者の労力も増加させてしまう。

段差の存在する83施設のうち、86%(71施設)が何らかの対策をとっていた。

搬入時にスロープ(傾斜面)を設置する 45
それぞれのトラックに対応できるよう、高さの違う搬入口を複数設けている 26
段差があるが、対応策はとっていない 12
段差がない 11
昇降機を使用 6
その他 3
総計 103

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*複数回答有り
*4施設が未記入であった

その他 の回答
・ 専用の搬送用檻を用い,トラックへの積み下ろしはフォークリフトで行う (豚と畜場)
・ トラックの高さによる段差が生じないようプラットホームに傾斜を設けている (牛と畜場)
・ クッション性のあるもの(毛布など)を敷く(牛兼豚と畜場)


 

各と畜場が実施している動物福祉への配慮

この質問は自由記載であったが、98施設のうち66施設(67%)から何らかの動物福祉への配慮をしているとの記載があった。二番目に記載の多かった「作業者へ教育」は23施設(23%)が行っていた。

回答の中でも、A豚と畜場は、特に動物福祉への配慮が充実していると思われたので紹介したい。回答内容は次のとおり。「平成27年度、豚へのストレス削減を目的として、係留所および、と室への通路スロープを改築した。・面積を拡大(一頭当たりの面積が増加)・滑らない床への変更・通路スロープの改善(傾斜の緩和)・係留所に外壁を設置して屋内係留所とし、大型換気扇を設置(温湿度及び臭気の管理を可能とした)」またA豚と畜場では、豚が常時飲水できるようカップ式給水器が設置されており、豚の追い込み道具としては福祉的とされる「パネル」が使用されている。
近年、対米・カナダ・香港・EU・ニュージーランドへ牛肉を輸出しようというと畜場(注)は、と畜場における動物福祉要件を満たすことが求められているが、A豚と畜場のように輸出目的ではなく動物福祉に取り組んでいると畜場もある。
滑らない床の設置 40
作業者への教育 23
送風装置の設置(暑さ対策) 9
照明の調節 7
細霧装置の設置(暑さ対策) 6
気温状況を見て、シャワーをかける(暑さ対策) 4
騒音の軽減(防音設備) 2
と畜場と係留所の遮断 2
明るく衛生的な環境 2
換気装置の設置(温湿度及び臭気の管理) 2
過密の防止 2
その他 17
総計 116

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*複数回答有り

作業者への教育 の内容 (内容の記載があったもののみ掲載)
・作業者に対し、適切な取扱いを行うよう教育している
・追い込みに従事する作業員に対し、ストレスを与えない追いかた等の教育が されている
・人道的取扱い
・動物の移動時に過度なストレスをかけないように、可能な限り穏やかに誘導することを教育
・当該と畜場は対米国、対EU等輸出食肉取扱施設として、国の認定を受けており(注)、動物福祉に配慮した作業手順書を作成し、作業者への教育訓練を実施するとともに、作業状況について施設側及び検査機関が各々点検、記録を行っている
・係留所からと畜場所に家畜を追い込む際には、丁寧に扱い興奮させないようスムーズに移動させることを教育しています
・おどかさない等作業者の教育
・職員にむやみに電気ショックなどを与えないよう指導している
・豚を追い込む際乱暴な扱いをしないよう(生産者又は各問屋からあずかっているたいせつな商品である)注意をする
・肉へのダメージもあるので騒がず追い込む事を教育している

その他 の回答
・スムーズな移動のため、馬は牛の屠殺終了後、畜主自らが搬入し、と畜まで畜主が同伴している
・無理な追い立てをしない
・と殺までの時間が長くならないよう搬入時間を調整している
・育成(系統造成)施設に併設された施設であるため,特にストレス低減については職員の共通認識となっている
・ストレスを防止するため、十分に係留時間をとる
・換気や糞便除去等係留所の衛生管理
・寒冷紗(日よけ)の設置
・ストレスを与えない(走ったり騒いだりしない)
・通路スロープの改善(傾斜の緩和)
・空調管理
・冷房装置の設置
・暖房装置の設置
・と畜場(ノッキングペン)係留所から見えない場所に設置している
・(研究施設に併設のと畜場)動物実験委員会が中心になり動物福祉に取り組んでいる
・(研究施設に併設のと畜場)作業者による影響の対策(手順の点検と従事者への教育訓練)を、動物実験委員会の指導下で進めている
・現場担当者に、搬入時、牛の状態確認を行う
・床のひび割れ、段差などがあれば速やかに改修する
・係留所に突起物がないようにする

注) 米・カナダ・香港・EU・ニュージーランドに牛の肉を輸出しようとする場合は、輸出可能なと畜場として認定されるために動物福祉に関する要件を満たす必要がある。例えば「動物への給水(EUの場合は給水設備の設置)」「24時間以上けい留する場合は給餌を行うこと(EUの場合は12時間)」「ロープを使用して角、鼻環又は両脚を拘束、牽引等しないこと(EU)」「目、鼻、尾等過敏な部位の刺激の禁止(EU)」などだ。
詳細 http://www.hopeforanimals.org/animals/slaughter/00/id=474

 

*アンケート結果に記載しているパーセンテージはすべて小数点以下で四捨五入
*OIE と殺における動物福祉基準『陸生動物衛生規約 第7.5章 動物のと殺』
http://www.hopeforanimals.org/animals/slaughter/00/id=417


アンケートにご協力いただいた関係機関の皆さま、ありがとうございました。





 

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